No.332596

桔梗√ 全てを射抜く者達 第29射

黒山羊さん

タンクトップ・レギンス・浴衣が寝間着の黒山羊です。
かなり、不思議な組み合わせですが、寝返り打ってもしんどくならず、なおかつ温かい寝間着を探した結果こうなりましたww

最後になりますが、
現在私は2本長編作品を書いています。

続きを表示

2011-11-10 22:57:17 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4410   閲覧ユーザー数:3284

桔梗√ 全てを射抜く者達   第29射

 

 

 

 

視点: 一刀

 

さて、今日の予定は…………久しぶりの休暇だし、特になしだったな。

え?洛陽から帰って来てそんなに時間が立っていない様に感じられるだって?

何を寝ぼけた事を言っているんだ?

 

あれから、俺は自分の軍を持つこととなり、その軍の訓練に明け暮れていたんだぞ。

訓練の内容は俺がかつて会社で受けた訓練と同じだ。あの訓練では学ぶことが多い。たとえ、銃が無くとも、兵士としての心構えを取得するには丁度良い。

それに、俺の部隊は市街戦や山間部でのゲリラ戦を想定した部隊。

それを考慮するとあの訓練方法はかなり効果的だと思われる。

まあ、俺がアレからやった仕事はこんな所だ。

 

さて、やること無いと、つまらないな。朝のランニングももう終わった。

昨日は兵卒相手に俺自身のCQCの訓練をしたし、昨日と同じ事をするのも芸が無いと言うものだ。

さてどうする?暇すぎて死にそうだ。

天気が良いから外で何かをしたい。だからと言って、ハンモックで昼寝というのは休日のいつも通り過ぎてつまらない。さて、何をしようか。そんなことを考えている俺に声を掛けられた。

俺は振り向き、その声の主に返事をする。

 

「焔耶?」

 

「なあ、一刀、暇だったら、私に勉強を教えてくれないか?」

 

そういえば、前にそんな約束をしたな。

確か、杏里に馬鹿にされたのが、悔しかったから、見返すために学を身につけたい。焔耶はそう言ったので、俺が勉強を見てやると言ったんだったな。科目は算数や数学といった分野だったな。

何故その分野かというと理由は焔耶の苦手分野だからだ。

九九がアヤフヤな状態はさすがに不味すぎるな。

 

武官にもある程度の学は求められる。特に算数や数学は必要とされる。

必要な糧食数や部隊の予算を出すのに算数や数学は必要だ。

計算が出来なくては、これらのことを求めるのは困難だ。予算案を立てる事が出来なかったら、他の部分に回る予算の計算が出来ない。そうなると国が機能しなくなる。

……ってか、俺が来るまで、これらの事を桔梗さん一人でやっていたってことだよな。

 

さて、そんな桔梗さんや杏里の負担を軽くするためにも焔耶を鍛えるか。

まずは、卓上であれこれ計算させるより、算数が実生活にどれだけ必要か身を持って知る必要があるな。

それで、自分がどれだけ出来ないか一度分からせる。焔耶の性格を考えると、勉学に対する意欲が増すと思う。やる気がある方が何事もスムーズに進むだろう。

そこで、俺は焔耶を連れて、街へと出かけた。

 

まず、腹が減った俺達は昼食を取ることにした。適当な所に入り、適当に注文する。

そして、俺は早速焔耶に会計という名の計算問題を出した。

かなり時間が掛かったが、焔耶は何とか解けた。しかし、あれだけ時間が掛かるのは少し問題だな。

 

昼食を食べた俺達は色々な所を回り、俺は焔耶に様々な計算問題を出す。

焔耶はそれを頑張って解いていく。時間はかかるが、正解率は7割だった。

だが、問題は九九を覚えていないらしく、頭の中で必死に何度も足し算をしていた。

だから、『時間=距離÷速さ』の問題を出して、割り算をしようとした瞬間、焔耶は気絶した。

これは重傷だな。

 

俺と焔耶は近くの森の中を流れる川の川岸に居る。なんでこんな所に居るかというと、焔耶の計算問題を出すのと同時に、先日覚えた食べられる野草を少し見に来たわけだ。

焔耶はボーっと空を見ながら、『算数万歳。計算万歳』と呟いている。少しやり過ぎただろうか?

 

俺の焔耶の隣で食べられる野草を食べていた。あ、これ結構いけるな、セロリみたいな味がする。

この野草、明日の朝御飯のポトフにでも入れてみるか。寒い朝にポトフは最高だからな。

 

「ん?」

 

 

 

 

それは突然現れ、こちらに、焔耶の背中に向かって飛んできた。

形状は長細い円柱で、木でできている。そして、両端に石と羽毛がついている。要するに、矢だ。

どこから飛んできた?

 

それより、このままでは焔耶に矢が刺さってしまう。

焔耶は相変わらず、呆けているうえに、完全に死角からの矢だ。気付けるはずがない。

今から焔耶に避けるように言っても、時間的に間に合わない。

声を掛けてから、その言葉を焔耶が理解して行動を移す前に矢が刺さってしまう。

 

俺は咄嗟に右手を伸ばし、焔耶の胸倉を掴み、引き寄せる形で倒す。

脚という支えの無い方向に力を加えたので、焔耶はあっさりと倒れてくれた。

焔耶の気が抜けていなかったら、此処まであっさりといかなかっただろう。

俺はそうやって、焔耶を矢の軌道上から逸らす。だが、俺に出来るのはたったそれだけだ。

 

だから、矢の軌道線上にある自分自身を完全に守る術を俺は持っていなかった。

出来るかどうかは、分からないが、俺は体を少しずらし、胸のど真ん中に当たらない様に試みる。

まあこれで、俺の急所に当たらなかったら、ラッキーというものだ。

 

「ぐっ!」

 

あっさりと矢は俺の胸の中央付近へと刺さってしまった。

仕方ないだろう?焔耶や桔梗さんみたいに運動神経が良いわけではない。Distorted Tranquilizerを服用していないのに、そんな簡単に矢を避けられる訳が無い。ましてや、座っている状態だ。

焔耶を助けられただけでも良しとしなければならない。

まあ要するに、俺が避けようとしたのは無駄なあがきだったと言う事だったらしい。

 

深く、深く、矢は俺の胸に刺さっている。

元々の矢の長さが分かっている訳ではないから、どれだけ深く刺さっているのか、俺には皆目見当もつかない。だが、矢じりが見えないからほんの数ミリ刺さっただけのような軽傷ではなさそうだ。

俺の体から40センチほどの矢が生えていて、先には矢羽が見えている。

黒い矢羽がとても印象的だ。これは鴉の羽でも使っているのか?

 

今思ったのだが、どうやら俺は生きているらしい。

ってことは心臓を射抜かれたとかそんな絶望的な状況じゃなさそうだ。

まるで、今ここで出血し過ぎて、死ぬような気はしない。

矢が刺さっているというのに、あり得ないぐらい冷静なのも致命傷では無かったからだろう。

嘔吐感に似た吐血感も全くない。消化器官がやられたわけではなさそうだ。

そして、息苦しいが、息が上手い事出来ない訳ではない。肺も大丈夫そうだ。

ただ、あるのは痛み。そう、強烈な痛みだった。鈍痛。そして、小量の出血。

俺はあまりの痛みで蹲る。不味い!このままではもう1射喰らったら、終わり。

だが、焔耶を見捨てるわけには!

 

「一刀!いきなr……どうした!?」

 

「焔耶!そこの物陰に隠れろ!」

 

俺を引きずって、焔耶は俺が指定した物陰へと逃げ込む。

そして、俺は焔耶に誰かに襲撃されている事を伝え、迎撃しようとしても相手が複数だった場合の事を考えて、俺は逃走を提案する。焔耶はすぐに理解してくれたようだ。

焔耶が周りを警戒している間に、俺は索敵をしながら、逃走ルートを探索する。

そして、どう逃げるか決まった。よし、後は、逃げだせば!

 

 

 

 

俺と焔耶はその場から逃げだす。俺が先頭を走り、焔耶が剣を構え、殿をする。

胸に矢が刺さっているから、背負って貰う訳にも行かず、お姫様だっこをするとなると、焔耶が剣を持って、矢を切り落とすことが出来ない。俺は痛みを我慢して走る。

 

これも一つの戦場。俺か焔耶が殺されるか、生きるかの戦場。

ここが戦場だと認知した俺の体にはアドレナリンやらエンドルフィンがドバドバ出ている。

だから、胸に矢が刺さっていても俺は走れた。

焔耶が俺を追っている事を確認しながら、俺は町に向かって走った。

 

何とか町についた。だが、このまま誰かの目に入っても大丈夫だろうか?

天の御使いが負傷しているという話が民の間に流れてしまって、何かしらの不都合が発生するかもしれない。だから、俺は何処かに隠れて、焔耶に誰かを呼んできてもらうとするか。

 

「あれ?」

 

俺は急に右ひざがガクッとなり、右側に倒れてしまった。

???何だ???

起き上がろうとしても、力が入らない。状況が把握できない。

分かるのは胸がやたらとネチャネチャすることぐらいだ。

 

俺は手でその違和感がなんなのかを調べてみる。

どうやら胸が何かの液体で濡れているようだ。そして、その液体は未だに俺の胸の矢が生えている根元から湧水のように出て来ている。

その液体は生温く、若干の粘り気があり、赤かった。紅かった。

血のように紅い。いや違うな。これは血だから紅い。

俺の胸から湧いて出て来ている液体は血だったのか。

 

…………あぁ、なるほど。出血し過ぎたってわけですか。

そりゃ、そうだよな。幾ら出血が少なくても、深々と矢が刺さっている状態で走れば、傷口が広がる。

傷口が広がれば、隙間から血が出る。そんな状態で走れば、更に傷口が広がって、更に出血。

それが長時間続けば、大出血だ。おこちゃまでも分かるだろう。普通。

で、大量出血すれば、細胞に栄養やら酸素が行かなくなるので、当然力が入らない。

そうなれば、倒れるのも道理というものだ。

 

こんなところで、俺はくたばるのか?

くっだらないボケして死ぬって。神風以下じゃねえか。マジくだらない。

でも、まあ、俺が無力であるという仮説が立証されちまっただけだ。

あ?でも、どうなんだろう?俺は少なくとも焔耶を守れたということは無力じゃなかったのか?

だが、結局の所、俺が死んでるんじゃ、無力であるほかないよな。

やっぱり、俺は無力だったんだな。それ以上、それ以下でもない。

 

まあ、心残りってのが一つだけあるんだがな。想い人と…桔梗さんと俺は結ばれたかった。

桔梗さんが俺の一人の男として見てくれて、接してくれたら、嬉しかったのにな。

 

「………キス…したかった…な。」

 

俺はもう、指一本動かせなくなった。

寒い。寒いな。血が無くなると、こんなにも寒くなるんだな。

 

 

 

 

視点:焔耶

 

「おい!一刀!しっかりしろ!一刀!一刀!!」

 

私は一刀の肩を掴み、揺らす。だが、一刀は何も反応を示さない。

大変だ!早く、一刀を医者に見せないと!私は一刀を抱き上げて、城へと走った。

私は大声を上げて、人混みを素早く開けさせる。

途中で誰かが私に声をかけて来るが、今はそれどころじゃない。

 

速くしないと!

一刀の呼吸が弱くなってきている。

 

「―――――!―――――!」」

 

速くしないと!

一刀の体温が下がって来ている。

 

「――――だ!―――を―!」

 

速くしないと!

一刀が死んでしまう!

 

「おい!俺は医者だ!その患者を見せろ!」

 

一人の男が私の肩を掴んで、叫んできた。

混乱していた私はその言葉を理解するのに時間が掛かったが、何とか理解出来た。

私はこの男が何者か分からないが、嘘を言っているようには思えなかったので、私のこの男を信じることにした。医者の指示に従い、近くの宿屋に上がり、一刀を寝台の上に寝かせた。

そして、医者治療に専念するからと言い、私は締め出された。

 

「頼む!一刀!無事でいてくれ!」

 

私は一刀の祈りながら、そう言う。

此処にいても出来る事は無い。私は城へと行き、桔梗様に一刀が負傷した事を伝えることにした。

 

桔梗様は一刀が負傷した事を聞くと、顔色を変えて、私に詰め寄り、一刀の怪我の程度を聞いてくる。

私は包み隠さず、桔梗様に伝えた。

 

すると、桔梗様は数人の武官を呼び、一刀が現在治療を受けている宿の警護に行かせた。

次に杏里を呼び出し、一刀を怪我させた者の討伐をする為の部隊の編成と軍議を行うと言いだした。

 

「桔梗様、そこまでする必要はありません。」

 

「どうしてじゃ?わしらの巴群の象徴ともいえる天の御遣いが怪我をしたのじゃぞ。

その者を野放しにしておくと言うのか?」

 

「そうは言っていません。アイツの力量なら、私一人で十分です。」

 

「北郷を殺そうとした者を知っておるのか?」

 

「はい。」

 

「誰じゃ?」

 

 

 

 

「兀突骨です。」

 

「あぁ、あやつか。

放っておいても問題無いと思っておったが、今回の件で野放しにするわけにはいかなくなったな。

焔耶よ。好きにしろ。儂らに弓を引くとどうなるか、兀突骨に教えてやれ。」

 

「はっ!」

 

私は執務室から出て、自分の部屋に行く。

部屋には今朝には無かった鈍砕骨があった。予定通りに修理が終わったのだな。

流石は真桜。壊れる前と寸分違わない重さと長さを再現してくれている。

鈍砕骨を持ち、部屋から出て、先ほど私達が襲われた場所へと向かった。

一刀が胸に矢を受けたあの場所へと。

 

あの場所で確かに私は弓矢と剣を持った兀突骨を見た。

 

兀突骨。

 

昔、桔梗様が行った覇軍・武闘大会の決勝戦で兀突骨の姉を負傷させてしまったことがあった。

風の噂ではその後、兀突骨の姉はその時負った傷が原因で病にかかり、帰らぬ人となったと言う。

その後、桔梗様と私を暗殺しようとしてきたので、兀突骨と一騎打ちをした。

兀突骨の指定した場所には100近くの兀突骨の伏兵が潜んでいて、殺されそうになった。

だが、そこに蒲公英が来てくれて二人で何とか兀突骨とその伏兵を倒した。

そして、最後にもっと『武に磨きをかけて、私だけを殺しに来るが良い。私は何時でも、何処でも、何度でも貴様を返り討にしてくれる』と私は言った。

そういえば、あの時だったな。蒲公英と真名を交換したのは。

 

だから、これまで、私達は兀突骨を殺さないでいた。

だが、彼女はまた同じ過ちをした。私の最高の友人である一刀を殺しかけた。

一刀を殺そうとしたのか、私に向けた射撃の流れ矢を一刀が喰らってしまったのか定かではないが、いずれにしても、一刀を死の淵に追いやったのは事実だ。

 

一刀が倒れた場所から、血痕が続いていた為、馬鹿の私でも一刀が矢を受けた場所が分かった。

そして、ここが最初の血痕の場所。つまり、一刀が矢を受けた場所だ。

 

時間はもう夜中だ。日は沈み、辺りは暗くなっている。

だが、月明かりが川の水面に反射し、夜だと言うのに、蝋燭無しでも、周りを見ることが出来るぐらいには明るい。川岸の石の上に座っている蛙の姿もハッキリと見えるぐらいだ。

そして、静寂に包まれている。聞こえるのは虫達の鳴き声や風で擦れる草木の音ぐらいだ。

 

一刀を殺そうとした兀突骨はそんな時間にそこに居た。

 

「兀突骨、貴様覚悟は出来ているだろうな。」

 

「流れ矢でお前の友人を殺してしまったとしても、覚悟は変わらない。

姉ちゃんを殺したお前を私は許さない。どんなことをしてでもお前を殺してやる!」

 

「……くっ!」

 

目が血走っている兀突骨は剣を構えて、私に向かって走り出した。

兀突骨の気は私が憎くて仕方が無いという怒気と、私を殺したくて仕方が無いと言う殺気の2つによって支配されていた。

 

 

 

 

兀突骨は剣を激しく振りまわす。

何処かで剣を学んだような剣術では無く、自己流で編み出した剣術だ。

姉の仇を取る為の剣術。敵が隙をついてこないという前提があるせいか、剣の振り方も無茶苦茶だ。

腕力に任せて剣を振っているだけで、動きが速いだけだ。

小刀を持った一刀でも容易に隙を突くことが出来るかもしれない。

 

更に、自分を護る事を捨てているため、防御や回避へ回ることが出来る姿勢ではない。

防御をすることはするのだが、剣で私の鈍砕骨を防ごうとするだけだ。

回避に至ってはまったくの素人。

攻撃も刃の一番切れる所で私を切ろうとする技術を、兀突骨の武からはまるで感じられない。

剣を私に当てれば、私が勝手に切り傷を負うだろうと思っているのだろうか?

 

唯一褒めるところがあるとすれば、移動の時の重心の置き方だろう。

川岸で丸みの帯びた石が多い此処でも、平地に居るような重心の安定性が兀突骨から見られる。

兀突骨の強さを私がこれまで感じた強さで表すなら、一刀…いや、黄巾党の将と似たり寄ったりだ。

 

だが、私はあえて兀突骨の隙を突く事はしない。圧倒的な力の差を見せて、相手を平伏させる。

相手の持久力が無くなるまで、私は兀突骨の攻撃を回避と防御で対処する。

川岸の為、地面はゴツゴツした石が多く、足場が悪いが、私は脚を広げ、重心を落とし、体を安定させる。基本は回避。私は回避する時は斬撃を後退して、刺突は左右に動いて避ける。

どうしても、避けられないときだけ、防御するが、やはり基本は回避。

その方が体力を使わずに済むうえに、自分の回避能力を上げるための訓練みたいなものだ。

だから、兀突骨と打ちあったのはほんの数合で、兀突骨の実力を測る為にしただけだ。

 

「クソックソッ!何故当たらないんだ!」

 

「お前、誰かから剣術を習ったか?」

 

「そんな必要なんかない!私は自分で編み出した武でお前を倒してやる!」

 

「だが、その結果が今の状態だ。

防御も回避も無茶苦茶。そんな武で私を倒せると思っているのか?」

 

「下手な鍛冶屋も一度は名剣だ!」

 

「それが武で通じると思っているのか?」

 

「そうでなかったとしても、私はお前を倒す!」

 

兀突骨の猛攻はなおも続いた。

そして、持久力が切れたのか、兀突骨は地面にヘタレこんでしまった。

もう、終わりか。思った以上に私の鍛錬の相手というのは荷が重たかったか?

そう思った時だった。

 

「お前ら手を貸せ!姉ちゃんの仇とるぞ!」

 

兀突骨は前の時と同じように仲間を近くに配置していたようだ。

どうやら、ここから先は本気で行かなければ、かなり不味いらしい。

確か、天の国言葉ではこの状況の事を『ピンチ』って言ったよな?

 

 

 

 

「おい!どうした!?早く出て来い!」

 

兀突骨が何度叫んでも、兀突骨の仲間は一向に姿を現わせない。

一体何が起こっているのだろう?私は周りを警戒しながら、兀突骨と対峙する。

 

「「!!」」

 

そして、それはいきなり姿を現した。

数人で列を作り、それが4列もいきなり現れ、障害物を盾にしながら、私と兀突骨を取り囲む。

数は20人。それぞれ兵は弩を小さくしたようなモノを1つ、小刀を一本、装備している。

だが、私に対して敵意が無い。

 

鎧や兜も特徴的だ。

頭だけでなく、顔全体を包み込むようで、装飾の一切が無い兜に、胸と胴、腕、脛と足だけ鎧を身に着けていた。急所だけを守り、後は動きやすさを重視したような作りになっている。

他にも、太ももや腰、肩に小さな鞄がついている。

 

「お前達は何者だ!?」

 

兀突骨が喚くようにそう言う。それもそうだろう。現れるはずの仲間が出て来ず、代わりに見たことも無い集団が20人も現れたのだ。誰だって混乱する。各言う私も混乱している。

謎の集団の中から一人が前に出てきた。こいつがこの部隊の隊長だろうか?

ソイツは武器を腰に引っかけ、兜に手を掛ける。そして、その兵は兜を脱いだ。

 

「鮮花!」

 

私達の城の衛兵の鮮花だった。

 

「おい、鮮花、これはどういう事だ!」

 

「こんばんは。魏延様。

私達、一刀さんの部隊は厳顔様と徐庶様のご命令で兀突骨の伏兵の処理に来ただけです。

初の実戦で少しばかり緊張しましたが、何とか任務は終了しました。」

 

「嘘をつくな!100は居たはずだぞ!」

 

「ですが、貴方の言葉で出て来ないという事は逃げたか、戦闘不能になったか、のどちかとしか考えられませんが?どうですか?」

 

なるほど。これが一刀の組織した部隊だったのか。初めて見た。

『天の御遣い様見守り隊』で構成された部隊だと聞いていた。

作為的なモノではなく、一刀と同じような志を持った兵の中で、自然と一刀の訓練を受けて生き残った精鋭たちが『天の御遣い見守り隊』で構成される結果となったらしい。

とすると、一刀の戦い方と同じように市街戦等の障害物が多い所での戦闘を特化した部隊なのだろう。

弩のような物を構えていたのもなんとなく頷けた。

 

部隊名は『うえあーうるふ?』だったと思う。これは天の国の言葉で、この国の言葉で言うと『人狼』というらしい。何とも一刀が率いるにはピッタリの名前だ。

なんでも、一刀が天の国に居た頃に所属していた部隊の名前らしい。

 

「兀突骨、我が部隊の隊長、一刀さんを殺そうとした罪、償って貰います。コンタクト!」

 

その言葉で、一刀の部隊の兵達は一斉に弩を構え、兀突骨を狙う。

 

 

 

 

「ですが、貴方を倒すのは任務に含まれていませんので、殺しません。

このまま、私達は魏延様と貴方の戦いを見守り、戦いが終わったら、魏延様を一刀さんの所に案内するだけです。一刀さんが会いたがっていますので。」

 

「一刀は生きているのか!」

 

「はい。魏延様が一刀さんを預けられた医者が名医華陀だったおかげで。

もう、普通の生活に支障をきたさない程度にまで回復しています。」

 

一刀が生きている。それだけで、私の心はとても満たされた。

帰ったら、また勉強を教えてもらおう。また一緒に街を歩こう。

どうやら、今の私は一刀が居ないと生きていけなさそうだ。この気持ちがどういうものかは分からないが、私は一刀と一緒に居たい。それだけは私の中では揺るがない事実だ。

 

私は一刀に会うべく、目の前に居る兀突骨を倒すために鈍砕骨を構えた。

今からは攻撃をする。早く一刀に会いたいからだ。

私達を囲っている鮮花達が自分を殺そうとする素振りが無いと理解した兀突骨は剣を構え、私に向かって突進してきた。

 

妙に感覚が研ぎ澄まされているように感じられた。

あぁ、なるほど。さっきは一刀の事が気になっていて、集中しきれていなかったみたいだ。

だから、一刀の無事が確認された今はそんなことを考えなくていいから、戦いに集中できる。

兀突骨の構え方の何処が不味いのかが具体的に手に取るように分かった。

 

「姉ちゃんの仇!!」

 

兀突骨は跳びながらの大振りで剣を振るった。私の頭上から剣が来た。

半歩後ろへ下がり、私は兀突骨の斬撃をやり過ごした。

 

私は兀突骨に向かって鈍砕骨を振るった。兀突骨は大振りの攻撃をした為に、隙だらけだった。

隙だらけの兀突骨は回避も防御も取ることが出来ず、私の鈍砕骨をまともに喰らった。

兀突骨は鈍砕骨を喰らった衝撃で飛び、川へと落ちた。着水の衝撃が激しかったのか、水柱が立った。

私の目の前に残っているのは兀突骨が持っていた剣が一本だけだ。

 

あのまま溺死というのもどうかと思った私は川に入り、うつ伏せで浮かんでいる兀突骨を引き上げ、心音と呼吸を確認する。単に気を失っているだけか。私は兀突骨を剣の傍に降ろした。

降ろすと兀突骨は咳きこみ水を吐いた。

 

「くそ!また勝てなかったのか、私は!何故勝てないんだ!」

 

「それはお前が過去に縛られているからだ。

過去は変えられない。だから、姉という過去の為に戦っている者はいつまで経っても変われないし、強くなれない。それどころか、弱くなる事さえある。と、私の友人が言っていた。

お前の敗因はおそらくそこだろうな。」

 

「…………。」

 

そう言うと、兀突骨は黙り込んだ。もう、私に敵意を向けて来ない。

 

「鮮花、一刀の所に案内してくれ。」

 

「分かりました。」

 

そう言って、私は鮮花の後に続いて華陀という医者の所へと向かった。

 

一刀は完治したように見えたので、思わず抱きついた。

華陀と名乗った医者が『患者から離れてくれ!患者の容体が急変した!』と言うので、一刀を放してみると、一刀は泡を吹いて、白目だった。

 

 

 

 

どうも、黒山羊です。

 

今回のお話は如何だったでしょうか?

なんか知と武の御遣い伝の方でも一刀が矢を受ける描写を書いたのですが、比較すると向こうの手抜き感がマジ半端ねえww

 

それから、焔耶の一刀病があっかしてきていますねww

一刀病って?そんなの決まっているじゃないですか?一刀に惚れてしまうという病気です。

ハーレム属性の一刀にコロッとされてしまうのは、最早病気ですからねww

 

それから、MGSシリーズが好きな方には注目するところが2つあったと思われます。

 

まず、一つ目!一刀の部隊の名前です。

焔耶が『うえあーうるふ?』と言っていましたが、正しくはWEREWOLFです。

MGS4で出てきたアメリカのPMCの名前です。

 

そして、二つ目!一刀の部隊の兵装です。

モデルはずばり、MGS4のヘイヴン・トリーパー、所謂カエル兵って奴です。

まあ、ナノマシンが無いから、あそこまで身体能力は高くないし、高くするつもりもありません。

だって、そこまでしたら、チートのインフレですからねww

それから、装備もP90ではなく、クロスボウという設定です。

さすがに、P90もチート過ぎなのでww。

クロスボウといっても色々種類がありますが、昔ネットで見たクロスボウがモデルです。

スライドを引くと、弓の弦が引かれ、上部に付いたマガジンある矢が装填されます。

そして、引き金を引くと発射されるというスタイルの物です。

うーん、どこで見たんだったけ?まあ良いや。そんな感じです。

 

え?華陀がチートだって?

あれはあんなもんじゃないでしょうか?

 

では、最後のシメに行きましょう。

今回は雛里ンの可愛さを布教するための言葉で閉めようと思います。

え?何で雛里ンかって?雛里ンが可愛過ぎるからですよ。決まっているじゃないですかww

異議は受け付けません。それでは、御唱和下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sieg Heil HINARIN( ゚∀゚)o彡°

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
41
3

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択