No.327742

織斑一夏の無限の可能性28

赤鬼さん

第28話です。

前話より大分、間隔が空いてしまい、申し訳ないです。

やっと、一回戦が開始です。

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2011-11-01 04:16:03 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6339   閲覧ユーザー数:6018

 

 

 

 

 

 

 

Episode28:学年別トーナメント①―結局、お前はおっぱいか!?―

 

 

 

 

 

 

 

 

【さゆかside】

 

 

私は夜竹さゆか、何も突出した才能を持っているわけでもない、だからといって、落ちこぼれというわけでもない、普通の少女だ。

 

そんな普通な私でも最近は譲れない想いがある。

 

―――織斑君に私の処女を捧げる。

 

織斑一夏君、女性しか扱えないISを世界で動かせる希少な男の子で同じ学園に通うクラスメイト。

 

彼を狙っている女子は多い。

 

のほほんさんは飄々としてるけど、織斑君が気になってるっぽいのは一緒にいて分かるし、小学校の頃から仲が良かった幼馴染の癒子も織斑君の事が気になってるみたい。

 

最初、私が織斑君に抱いた印象はISを扱える、珍しい存在にしか思ってなかった。

 

でも、だんだんと気になる存在になっていった。

 

私は今まで何をやっても標準だった。勉強も運動も中くらいで、唯一得意なのは料理を作る事くらい。 ISの適性値に関しても、IS学園に入学できるくらいギリギリだったし。

 

そんな私が、織斑君を気にするようになったのは必然だったのかもしれない。

 

クラス代表決定戦では、IS初心者にも関わらず、イギリス代表候補生のセシリアさんに勝ち、続くクラス対抗戦では中国代表候補生の凰さんを圧倒するばかりか、突如乱入してきた謎の侵入者を倒す活躍を見せた。

 

そしてIS実習の授業では元日本代表候補生の山田先生と引き分けてみせた。

 

代表候補生といっても簡単になれるものではない。

 

たくさんいるIS操縦者の中でも極少数のエリートしかなれない。 ましてや、専用機持ちとなると尚更だ。

 

自分専用のISが用意される―――そんな凄い代表候補生達を圧倒するくらいに彼は強かった。

 

そんな彼の強さに私はいつしか惹きつけられていた。

 

今まで平々凡々と暮らしてきた私に光を見せてくれた織斑君に私は強い憧れを持ち、その感情がいつしか強い恋心へと変化していったのだ。

 

今までは何をやっても普通な私だったけど、こんな私でも誰かの特別になりたい、という想いはある。

 

願わくば、織斑君の特別な存在になりたい。

 

だから、このトーナメントは優勝したい―――周りに強い人はたくさんいるけど、どんな状況でも諦めない織斑君に少しでも近付きたい。

 

だから、トーナメントが開催される前日までペアを組んだ癒子と訓練機を使って特訓に明け暮れ、訓練機を借りれない時は自主練で体力作りに余念を欠かさなかった。

 

だけど、今回のトーナメントで誤算があるとしたら......

 

一回戦の相手が―――織斑君とデュノア君のぺアだという事だ。

 

 

「はぁ......」

 

 

「もう! さゆか、仕方ないじゃん。 ここまで来たら当たって砕けろ、だって」

 

 

「砕けちゃダメでしょ......」

 

 

一回戦から当たる強豪ペアに溜息を吐いてると、肩をぽんぽん叩きながら明るく振る舞う私のペアの癒子。

 

彼女とは小学校からの付き合いで、一番付き合いが長い。

 

彼女は昔から明るいムードメーカータイプな少女で運動は出来る方だけど勉強は全然ダメだったりする。

 

 

「でも、癒子が言うように、いつまでもくよくよしてちゃダメだよね」

 

 

「そうそう」

 

 

私は昔から考え込む癖があるんだけど、癒子が傍にいてくれるおかげで暗い気持ちになる事はそうそうない。

 

 

「じゃあ、そろそろ時間だし......。さゆか、行こう」

 

 

「うん」

 

 

―――織斑君の特別な存在になりたい、その想いは決して色褪せない私の気持ち。

 

今まで普通に過ごしてきた私が初めて異性に興味を持った。

 

織斑一夏、彼に私の想いを伝えたい。

 

待っててね、織斑君。

 

君を好きな人はここにもいるって教えてあげるからね。

 

 

 

 

*◇*◇*◇*◇*◇*◇*

 

 

 

 

【一夏side】

 

 

俺は既に白式を展開し、相手の登場を待っていた。

 

ゲートが開き、対面に陣取る谷本さんと夜竹さん。 ISは二人とも打鉄だ。

 

 

「谷本さん、夜竹さん。 こうして対戦するのは初めてだけど、手は抜かないからな」

 

 

「もちろんだよ。 織斑君こそ油断してると痛い目に合うからね」

 

 

俺の言葉に谷本さんが小振りなおっぱいを揺らしながら答える。

 

さすがに慣れてきたが、ISスーツは体にぴったりフィットなため、ボディーラインがくっきり出る。 ある意味、公開セクハラなスーツだよな、と考えてると、試合開始のアナウンスが流れてきた。

 

 

―試合開始まで後五秒。 四、三、二、一、―――開始。

 

 

いかんいかん、煩悩退散煩悩退散。 気を引き締めねば。

 

 

「先手必勝っ!」

 

 

先に動いたのは谷本さんだ。 打鉄に標準装備されている日本刀を模した近接ブレードを展開し、ブーストを全開にして、突きを繰り出す。

 

 

「甘いっ!」

 

 

繰り出される突きを身を翻し、難なく避け、そのまま展開していた雪片弐型を逆袈裟斬りを放つ。 その斬撃は確実に谷本さんの装着する打鉄のシールドエネルギーにダメージを与える。

 

 

「くぅっ」

 

 

そのまま追撃を仕掛けようとすると、夜竹さんがショットガンを展開し、谷本さんに追撃をさせまいと銃撃を浴びせてくる。

 

瞬時に無反動旋回《ゼロリアクト・ターン》を使い、谷本さんから距離を取り、夜竹さんの銃撃を回避する。

 

谷本さんも夜竹さんもなかなかにいいおっぱ......じゃなくて、いいコンビだ。 谷本さんがBカップ......夜竹さんはCか? ......って、馬鹿か、俺はぁぁぁっ!

 

今はトーナメントに集中しなければ......俺の貞操が危ないんだぁぁぁっ!

 

 

「一夏? 何か変な事考えてるよね?」

 

 

むすっと頬を膨らませたシャルロットが俺の頭上を越え、六一口径アサルトカノン〈ガルム〉による爆破《ペースト》弾の射撃を谷本さんに夜竹さんに浴びせる。

 

 

「うわわっ」

 

 

「きゃぁぁぁっ」

 

 

さらにたたみかけてくるシャルロットの攻撃に、谷本さんも夜竹さんも急後退をして間合いを取った。

 

 

「逃がさない!」

 

 

シャルロットは即座に銃身を正面に突き出した突撃体勢へと移り、左手にアサルトライフルを呼び出す。 光の糸が虚空で寄り集まり、一秒とかからず、その光の粒子は銃を形成する。

 

前に模擬戦をした俺達一組の副担任、おっぱい魔神......失礼、山田先生でも武装の展開には一秒ほどのタイムラグが発生するのだが、俺の相棒《パートナー》であるシャルロットは『高速切替《ラピット・スイッチ》』という特技をもって、量子構成をほとんど一瞬で、それも照準を合わせるのと同時に行う。

 

戦闘と平行して行えるリアルタイムの武装呼び出し―――それはシャルロットの器用さと瞬時の判断力があってこそ光る。

 

そもそも俺の武装は雪片弐型のみ。

 

状況に応じて武装の切り替えなんて......超羨ましいっ!

 

俺も男として、銃には興味がある。

 

しかし俺の白式にある武装は雪片弐型のみだ。 近距離・中距離・遠距離、関係なく俺の武装は雪片弐型のみ......。

 

 

............

 

 

.........

 

 

......

 

 

...

 

 

くっ!

 

何て不器用なISなんだ、白式っ!

 

って、変な事を考えてる場合じゃないっ! 

 

今は試合中なんだからな。 瞬時加速《イグニッション・ブースト》を使い、シャルロット達を追う。 前方ではシャルロットの左に谷本さん、そして右には夜竹さんが位置取り、シャルロットに対して挟撃を行っていた。

 

 

「シャルル!」

 

 

「うん!」

 

 

そのまま、俺はシャルロットの後方から飛び出し、夜竹さん目掛けて上段からの斬撃を振り下ろす。

 

 

「え!? 織斑君?」

 

 

夜竹さんはいつの間にか現れた俺に意表を突かれた形となり、手に持っていたアサルトライフルは両断された。

 

 

「きゃぁっ」

 

 

そのまま追撃を行うべく、横薙ぎに雪片弐型を一閃させる。 その斬撃は夜竹さんの打鉄のシールドエネルギーを大幅に削り取る。

 

 

「さゆかぁっ」

 

 

後方からシャルロットと対峙している谷本さんから夜竹さんを心配する声が聞こえるが、シャルロットに阻まれる形で後退を余儀なくされている。

 

目の前の夜竹さんは息も絶え絶えながら近接ブレードを展開し、正面に構える。

 

 

「......私は、......負けられないの」

 

 

「夜竹さん......」

 

 

「織斑君......貴方は私の憧れの人なの。IS学園に入学した最初の頃は誰よりもISに対して無知だったのに、今では代表候補生にも勝つくらいにまでなった―――」

 

 

初めて知る夜竹さんの想い。

 

 

「私はこれまで何の変哲もない普通な存在だった。 そんな私の何の変哲もなかった日常を彩ってくれたのが織斑君だったの。 こんなに誰かを気になった事なんて、今まで無かった。 毎日、織斑君の姿を教室で眺めてたの―――」

 

 

今まで夜竹さんとはたまに昼食を一緒に取る位しか接点がなかった。 のほほんさんや谷本さんも一緒に、だけど。

 

だから彼女が俺に想いを寄せてくれているとは思わなかった。

 

 

「いつしか私の中で憧れは思慕に変わっていったの。 私は織斑君の事が好き。 だから―――」

 

 

何気にこうして面と向かって、女の子から『好き』と言われるのは慣れない。 でも、何故、嫌な予感がするんだろう?

 

 

「織斑君に私の処女を捧げるまでは私は負けられないのォォォーーーっ!」

 

 

「夜竹さんもかぁぁぁーーーっ!!」

 

 

お互いにスラスターを全開にし咆哮しながら、突撃する。

 

夜竹さんは近接ブレードを頭上に振りかぶり、俺は居合いの構えを取りながら。

 

 

―――俺は絶対に負けられない。 我が貞操を奪われんためにっ!

 

 

俺の放った斬撃は、夜竹さんの斬撃の速度よりも早く、夜竹さんの打鉄のシールドエネルギー全てを断ち切った。

 

 

「きゃぁぁぁ」

 

 

そしてシールドエネルギー残量が0となり、IS各部損傷も甚大となった夜竹さんの打鉄はその稼働を静かに止める。

 

 

―――『試合終了。勝者―――織斑一夏、シャルル・デュノア』

 

 

瞬間、試合終了のアナウンスが会場内に鳴り響く。

 

 

「一夏、さすがだね」

 

 

いつの間にか俺の傍に来ていたシャルロットがにこやかに声を掛けてくる。 アリーナの隅ではシールドエネルギー残量が0になった谷本さんが悔しそうに膝をついていた。

 

 

「ふふふ、一夏は本当にモテるよね~」

 

 

笑顔だったシャルロット。 しかし、それも一瞬。 体感温度が瞬時に五度下がるような感覚に襲われる。

 

 

「えっと......シャルル......?」

 

 

傍にいるシャルロットの気迫に鬼気迫るものを感じ、思わず後ずさる。

 

 

「まさか、試合中に告白されるなんてねぇ~」

 

 

聞かれていた......。

 

多分、プライベート・チャネルを通じて、さっきの夜竹さんの咆哮を聞かれてしまったんだろう......。

 

 

「まったく......女誑しの一夏にはお灸を据える必要があるよね?」

 

 

「へ? 女誑し? 誰が?」

 

 

「鈍感というのは時に罪だよね、一夏。 じゃあ、ロッカールームに行こうね」

 

 

「......え、遠慮したいんだけど......」

 

 

「......無理」

 

 

そのまま俺は悪魔のような笑みを浮かべたシャルロットに首根っこを掴まれ、引きずられる形で会場を後にした......。

 

 

「たぁーすぅーけぇーてぇぇぇーーーっ!!!」

 

 

一回戦を勝ち抜けたはずの俺の悲鳴はアリーナ会場内へと響き渡っていた......。

 

 

 

 

*◇*◇*◇*◇*◇*◇*

 

 

 

 

【癒子side】

 

 

「負けちゃったね、さゆか......」

 

 

「......うん」

 

 

場所は第三アリーナ、ロッカールーム。

 

二人で椅子に腰かけ、今日の試合の反省をする。

 

そもそも今回の試合はフランスの代表候補生に学園で噂のIS操縦者のペアなのだ。 初めから厳しい展開だというのは自分達でも分かっていた。

 

でも最初から投げ出したくなかった。

 

相手がいくら強くても諦める事だけはしたくなかった。

 

さゆかも、私も、織斑君を想う気持ちに嘘はないから。

 

 

「でも、さゆかはいいよね。 試合中に告白までしちゃったんだから」

 

 

いつもは大人しく目立たないさゆかが今日は思い切った行動をしたのは本当に吃驚した。 私でもできないような事をこの子は成し遂げたのだから。

 

 

「ははは、何か無我夢中でさ......」

 

 

小学校の時からの付き合いで、私はその性格からクラスの中心になる事が多かった。 でも、さゆかは違う。 あまり目立つ事は嫌いらしく、普段は大人しい。

 

そんな彼女が試合中に告白までしたのだ。

 

大人しい彼女を変えてしまった織斑一夏。 本当に興味は尽きない。

 

しかし、想いを伝えたさゆかと違って、私は未だ自分の想いを彼に伝えていない。 そう、私はまだスタートラインにも立っていない状況だ。

 

私にとっても初恋になるこの想い、簡単に諦めたくはない。

 

だから私は自分の想いを彼に絶対に伝えるんだ。

 

 

「さゆか、負けないからね?」

 

 

「私だって負けるつもりはないよ。 恋敵《ライバル》はたくさんいるけどね......」

 

 

「は......ははは......」

 

 

恋敵《ライバル》の多い彼の競争率を考えると、乾いた笑いしか出てこなかった......。

 

 

 

 

*◇*◇*◇*◇*◇*◇*

 

 

 

 

【シャルロットside】

 

 

「一夏っ! いい加減、誰彼構わず口説くのは止めなさいっ!」

 

 

今回のトーナメント参加者ほぼ全員が一夏を狙っているのは分かってた。

 

でも、だからといって一夏を好きな気持ちは本当だし、何より僕の事情を知った上で僕を守ってくれるといった。

 

初めての異国の地で誰も知らない、ましてや自分の性別さえも誤魔化し、世界で唯一の男性IS操縦者のデータを盗むためだけに近付いた―――そんな僕を受け入れ、包み込んでくれた人。

 

母親以外に僕は誰からも愛情を向けてもらえなかった。

 

一時期は母親さえ傍にいてくれたらいいと思っていた時もあった。 でも、そんな母も病に倒れ、帰らぬ人となった。

 

母親の死後は実の父親に引き取られた。

 

僕に残された最後の、唯一の血の繋がりを持つ、父親に僕は愛してもらえると思っていた。 そんな僕をあざ笑うかのように、あの人は傾いた自社の利益のためだけに僕を利用するだけだった。

 

ISを指導するだけの教官。 デュノア社の人間。 全員が僕を僕として扱ってくれなかった。

 

デュノア社の利益のためだけに、ただの駒としてしか扱ってもらえなかった。

 

そんな僕を暖かく包み込んでくれたのが、一夏だった。

 

デュノア社の事、僕のこれまでの生い立ち、全てを聞いた上で一夏は僕のために怒ってくれた。 そして受け入れてくれた。 それが堪らなく嬉しかった。

 

そんな一夏のために僕は傍でずっと彼を支えていきたいと思うのは至極当然な事で、僕の中で日に日に大きくなっていく一夏の存在がとても心地よかった。

 

だから一夏を、彼を、誰にも渡したくない。

 

それなのに、それなのにぃ~~~!

 

当の一夏は狙ってかどうかは置いておいて、さも当然のように天然で女の子を口説いてしまうっ!

 

今日の試合だって、そうだ!

 

試合中にも関わらず、告白までされる始末......。 まぁ、プライベート・チャネルを通じての告白だったから、あの試合の参加者以外に知られる事はないけど......。

 

既に箒に鈴、セシリアにラウラ、果ては相川さんにのほほんさん、それに今日の試合中に告白までかましてくれた夜竹さん。 多分、谷本さんもだろう......。

 

あっ、そういえば、試合開始前に会った生徒会長という人も一夏に興味を持っているようだった......。

 

 

......プチ。

 

 

胸の奥底で蠢く黒い感情に大事な何かが切れる音がした。

 

うん、そうだよね♪

 

浮気できないように矯正しちゃえばいいんだよね♪

 

 

「あ、あの......シャルロットさん? あ、足が痛いです......」

 

 

もう小一時間ほど正座をさせられている一夏は足が限界みたいだ。 でも、許してあげない♪

 

 

「ふふふふふふ」

 

 

「シャ、シャルロットさん......?」

 

 

「やっぱり僕、一夏に分からせる必要があると思うんだよね」

 

 

「な、何を、でしょうか?」

 

 

「僕がどれだけ一夏を好きかってことだよ」

 

 

「え、遠慮したいです......」

 

 

「だぁめ♪」

 

 

............

 

 

.........

 

 

......

 

 

...

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

 


 
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