No.284577

【T&B】11話と12話の狭間

結城由良さん

珍しく全年齢向けをpixivに投下したのでこっちにも?

■何番煎じかわかりませんが、軽くジェイクが手下を殺した背景的なものを想像してみましたというか
■ウロボロスとマベの関係が明確になった現状、ジェイクは捨て駒以外の何物でもないですよね

2011-08-25 19:21:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:513   閲覧ユーザー数:513

なあ、

人の心を読めるなんてとんだ呪いだと思わないかい?

あんた、人がどれだけ嘘をついて生きているか知ってるかい?

ささいなものから、重大なものまで、

嘘がつけるから、心の中までは誰も見られないから、

この世界はうまく回ってるのさ。

それがすべて見えてしまったら、

世界がどんなにおぞましいか、あんたには想像がつくかい?

 

「ねえ、パパ、お姉さんと出かけてのに、

 どうして仕事にいっていたって嘘をつくの?」

 

俺の家族の崩壊は、俺のそんなひとことから始まった。

いや、もしかしたら、それ以前に崩壊していたのかもしれないが。

俺のNEXTの発現時期の記憶は混乱していて、

俺自身にもそれが夢だったのか現実だったのか、

他人の記憶なのか自分の記憶なのかひどくあいまいなのだ。

 

流れ込む他人の記憶、食い違う表の声と心の声、

NEXTが暴走するたびにそんなものに翻弄されて、

俺は気がつけばひとりになっていた。

 

心が読めるNEXT――そんなものには誰も近づきたくはない。

後ろ暗いことがない人間などいないのだ。

母親も父親も、兄弟も。俺の前から姿を消した。

 

能力を制御できるようになってからも、結局は同じだ。

表向き親切を装いながら、自分のことしか考えてない輩ばかり。

まだ、悪人を自認して悪いことをやってる方がすっきりする。

俺は自然と、そんな奴らとばかりつるむようになった。

 

もちろん、心が読めるなんて誰にも言わねぇ

そんなお前の悪事を何もかも知ってますよ、なんてばらしたら、

それこそ、文字通りばらされちまう。

幸い俺には別のNEXTがあったから、

だれも2つも持ってるとは思わなかった。

 

表だけきれいな振りをした汚い世界なら、

始めから汚い世界に住んだ方がましだ。

差別はいけないなんて言いながらNEXTを憎み、

引き取ったNEXTの孤児に虐待を繰り返していた自称人権派を叩きのめして、

追われた俺が最終的に行きついた場所は、

NEXTを犯罪に利用する組織(ウロボロス)だった。

 

だが、結局俺はそんな組織(ウロボロス)からも嫌われてしまったらしい。

いや、所詮、組織(ウロボロス)から見れば、

俺みたいな存在(ちんぴら)は捨て駒に過ぎなかったんだろう。

 

クリームもバカな女だ。

俺なんぞを慕ってこなければ、

こんな茶番に付き合わされることもなかったのに。

俺は、組織(ウロボロス)の建てた筋書きを、

俺たちの手下だというその男から読みとると、男を殺した。

 

俺の思想に賛同したなんて口では言っていたが、

ところがどっこい、

俺が最終的にヒーローに殺されるように、

そうなるように仕向けるのがこの男の役目だった。

折紙サイクロンというヒーローの能力を知りながら、

のこのこと交渉に行ったのもわざとだ。

もし俺が生き延びるようなら、隙を見て殺すように、

とまで指示を受けていた。

 

組織(ウロボロス)がそれで何がしたいのかまでは、

この男は知ってなかったが、

生かしておくのは危険だった。

 

「なぜ、殺されたのです?」

 

不安げに問うクリームには、

 

「捕まるような間抜けはいらねぇ」

 

とだけ答える。

 

こいつに、

組織(ウロボロス)からお前は利用されたのだ、

と言っても苦しませるだけだろう。

俺を実際は死地に追いやるために救い出したなんて、

教えてやる必要はねぇ。

これはこいつのための嘘だ。

そうさ、人間、ほんとのことなんて知る必要はないのさ。

 

ただ純粋に俺を救いたい、

とそれだけを願った女。

人生で、そんな女に最後に会えたってだけでも、

感謝するべきなのかも知れないな。

あとはくそみてぇな人生だったが。

 

俺とこいつにもはや行く場所はない。

社会的にはお尋ね者、

そして、頼りの組織(ウロボロス)には見捨てられた。

後は、どれだけ派手に最後を飾ってやるかだけだ。

 

黙ってやられてやるかよ。

組織(ウロボロス)が、

なぜヒーローに華を持たせたいのか知らねぇが、

俺がヒーローなんざ叩き潰してやる。

 

「最後まで、派手に生きようぜ」

「ええ、ジェイク様」

 

俺の言葉に、クリームは無邪気に笑った。


 
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