No.268820

箒の決心、打ち砕く唐片朴

Ikuさん

ISの箒をベースにお話を創ってみました。
箒と一夏の少しだけラブありきのコメディーな展開です。

2011-08-10 21:15:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6317   閲覧ユーザー数:6222

           「箒の決心、打ち砕く唐片朴」

 

 

 今日は何としても一夏を誘う。

 私がそう決めたのだ。

 誰にも邪魔はさせない。

 折角の連休で2日間も寮に閉じこもっていることも無い。

 まわりを上手く出し抜けたらあとは……。

 

 朝の稽古を済ませ、自室でシャワーを浴びる。

 「時間はまだ少し早いか」

 しかし、のんびりとはしていられない。出遅れは致命傷になりかねないからな。

 特にシャルロット、ラウラは要注意だ。

 手早く支度を済ませ、一夏の部屋へと向かう。

 一夏の部屋の前に立って身だしなみのチェック。

 「ああ~う、うん」

 声の調子も整える。

 「コンコン。一夏、私だ。起きてるか?」

 「…………」

 「返事はないか。一夏? 入るぞ」

 ドアを開け部屋へと進む。

 「一夏?」

 夢心地でベッドに横になっている一夏。

 私の声に反応して。

 「ああ、うん? 誰だ……。あ、箒」

 「起きろ、一夏」

 「ああ? まだ早くないか?」

 「起きろと言っている」

 「なんだよ、箒」

 「わ、私に付き合ってもらう!」

 「なんだよ? いきなりな奴だな。買い物でも行くのか」

 「まあ、そんなようなものだ」

 「飯は?」

 「外で取ればいいだろう」

 「たまにはいいか、それで」

 「早く支度しろ」

 「今着替えるから……でも、なんでそんなに急いでるんだ?」

 「じゃ、邪魔が入らないうちに……」

 「邪魔?」

 「いいから! こっちの話だ。」

 「わ、わかった……」

 一夏に背を向けて着替えを待つ。

 男の着替えは早いからすぐにすむだろう。

 玄関のそばで待っていればすぐに出られるな、それに外の様子も確かめなくてはならない。

 ドアに近寄り耳を澄ませて廊下へと意識を集中させると、かすかな話声と足音……それも複数の、これはもしや……。

 「えっと、一夏起きてるかな?」

 「起こせばいい。私が目覚めの良い起こし方を教えてやろう」

 「ラウラ? 無理やりはダメだからね」

 「わかっている」

 なっ、シャルロットにラウラの二人だ。

 これはまずい。折角出し抜いて二人だけになろうと考えていたのに……。

 私は急ぎ引き返し着替え途中の一夏の腕を掴んで、隠れる場所を探す。

 「お、おい? 箒? 何をやって……お?」

 目の前のクローゼットが隠れるのに丁度良いかもしれない。

 一夏を引っ張ってクローゼットの中へ。

 「しー。静かに……」

 一夏の口を手でふさいで息をひそめる。

 ドアの開く音がして。

 「一夏~」

 「一夏、居るか?」

 二人の声が近付いてくる。

 「あれ? 一夏いないね」

 「ふん。まだ時間は経っていないな」

 シーツに手を触れてぬくもりを確かめるラウラ。

 「トイレにでも行ったのかな?」

 「いや、出かける準備をしていたようだな」

 ラウラが注意深く部屋を観察している。

 その様子をドキドキしながら扉の隙間から見る。

 早く二人が部屋から出ていくのを待つ。

 「ラウラ、どうしようか? 探しにいく?」

 「そうだな……」

 ラウラの視線がくまなく部屋中に注がれる。

 狭いクローゼットの中。

 私は一夏にぴったりと身体を押しつけるようにして息をひそめている。

 しかし、心臓の鼓動は静かにしてくれない。

 これでは私の鼓動が一夏に伝わってしまう。

 「ねぇ~もう他を探そうよ」

 「そうだな、では食堂にでもいってみるか」

 「うん」

 二人は部屋を出て行った……。

 少しの間、様子をうかがう。

 「はぁ~」

 大きなため息。

 「あ、あのな箒」

 「な、何だ?」

 「この状態じゃ仕方ないが……俺の腕に箒の胸が……」

 「っ!」

 あわててクローゼットから飛び出す。

 「お、おまえは……」

 「ま、待て! 今のは不可抗力だ。それにこんなところに隠れようとしたのは箒だぞ」

 確かにそうなのだが……私は両腕で胸を隠すようにして一夏を睨む。

 緊急避難とはいえ、胸を押しつけて密着していたなんて……顔が熱くなる。

 「箒? 顔が赤いぞ」

 「なんでもない」

 「そうだが」

 「問題ないと言っている」

 「あ、ああ……」

 一夏の着替えを待って、寮を出た。

 

 何とか正門まで見つからずに来られた。

 とは言っても気を抜くわけにはいかない。早々にここから立ち去らねば。

 「箒、どこへ行くんだ?」

 「良いから黙ってついてこい」

 一夏の手を掴みバス停へと進む。

 そろそろバスが来るころだ。

 「うむ、時間どおり……」

 と、その時遠くの方から呼ぶ声が。

 セシリアが大きな声で呼びながら手を振っている。

 「一夏さ~ん、あら、箒さ~ん?」

 一夏が気付くと余計な展開になってしまう。

 一夏は悪気がなく誰とでも話すし優しく接する。誰にでもが困りものなのだが。

 「うん? セシリアの声が聞こえた気がするが……」

 「ああ、うん。私には聞こえないぞ? 気のせいじゃないか」

 「そうか?」

 身体を動かして声のした方を覗こうとしたので、私は一夏の腕を引っ張って体の向きを

 変えそのまま腕を組んでしまう。

 こ、これは……い、今は仕方がない緊急避難だからな。

 自分で変な言い訳をして腕を組んでしまったことを正当化しようとしている。

 「ほ、箒?」

 「なんだ?」

 「う、腕が」

 「どうかしたか?」

 「箒の……」

 「私の?」

 「いや、なんでもない……」

 一夏の顔が赤い。

 腕を組んで私の胸が……当たっていることに意識しているのか?

 私を意識してくれているのか?

 バスが止まってセシリアの声を黙殺して乗り込だ。

 

 そのまま、駅前まで行って下車。

 「なあ、箒?」

 「な、なんだ」

 「どこへ行くんだ?」

 「着けばわかる」

 「そうだろうけど……」

 私だってきちんとした目的地を考えているわけではないのだが、一緒なら……。

 ただ、一夏と二人だけでデ、デートしたかっただけ……。

 いつもシャルロットに先を越されてしまっているからな、私だって……。

 一夏のことは誰にも負けない。

 長い付き合いと絆がある……はず。

  ただ、一夏が……『唐変朴オブ唐変朴ズ』で女の子たちのことをまるで分かっていない。

 こっちはちょっとしたことでもドキドキして、舞い上がっているのに。

 でも、逆に一般男子のようになったらそれはそれで困る? 

 私だけを見てくれるとは限らない……かも。

 とにかくだ、一夏に私を意識させるのが目的だ。

 場所はどこでもいい。二人だけで一日中一緒に居れば一夏にも変化が出てくるのではないか?

 要は言ってもそれほど甘くはないことも知っている。何しろあの一夏なのだから。

 駅前に着いて、一息&朝食と言うことでモールの1階にあるファーストフード店に入る。

 モーニングセットを注文。

 気分的にはあまり長居はしたくないのだが、時間的に見てもここで朝食を取るのが良いだろう。

 モーニングセットなら学食ほどの量は無いから早めに済むだろう。

 いつもの癖で食事は手早く効率よくが染みついて15分ほどで終わる。

 そのまま駅へと向かい電車に乗った。

 

 電車に乗り降り立った場所は……。

 「箒? ここって」

 「ああ、地元だ」

 「私には懐かしい場所だからな」

 「まあな、箒が転校するまで住んでいた場所だからな。俺は先週も帰ってきたけどな」

 「そうなのか?」

 「ああ、家の様子を見にな」

 「そうか」

 先週も戻ってきているなら、家は片付いているな、それなら一夏の家にしよう。

 「では、一夏の家に行こう」

 「え? 俺の家」

 「そうだ。不都合でもあるのか?」

 「いや、それは無いが……なんで俺の家?」

 そ、それはだな……答えに窮する質問をするな。

 「私が行きたいからだっ!」

 「別にいいけど、家に行っても何もないぞ? 特に食品関係は」

 「仕方ないなっ、近くのコンビニでも寄ろう」

 一夏の自宅へ向かうことを許されたのが嬉しくて、つい舞い上がってしまう。

 「何か浮かれてるのか?」

 「え? おっほん! いや、そんなことは、ないな、うん!」

 「ならいいけど」

 こういうときの一夏には助かる。

 簡単に流してくれるからな、ここで突っ込まれでもしたら私はどうなっていたか……。

 途中にあるコンビニによって、ペットボトルのお茶とお菓子を買う。

 本当なら私が一夏に朝食を作り、そのまま昼夜とつないで私の料理を食べさせたかったのだが。

 朝食は意に反して外で取ってしまったしな。

 ならば、昼食や夕食は私が腕を振るおう、うん、それがいい!

 一人これからの予定を考えているとついつい嬉しさが込みあげて顔がニヤけてしまう。

 「箒? どうかしたのか、顔が変だぞ」

 「なっ! 貴様と言うやつは……それが女に対する言葉か?」

 「あ、いや、悪かった。箒が百面相なんかしているのが悪いんだぞ」

 「なんで私の顔を見ている!」

 「なんでって、一緒に歩いているんだから見るだろう?」

 「前を見ていればいいだろう?」

 「それじゃ話もできないだろう?」

 「むっ、まあ、ゴホンッ。それもそうだな……」

 咳ばらいをしながら一夏の顔を見る。

 「うん?」

 一夏と視線があう。

 「!」

 顔が赤くなっていくのがわかる。

 なんで私は赤くなって……あ、当たり前か、二人っきりだし肩が当たるくらい近い距離で

歩いているのだから。

 急に意識し始めてしまうと、何をするにしても恥ずかしさがこみあげてくる。

 折角、二人だけの時間なのだから有意義にすごさねば。今日は邪魔者はいないのだから……。

 

 その頃の他のメンツはと言うと。

 「ラウラ~一夏いないね」

 「嫁としての自覚が足りないな。教育をしないとならぬな」

 「教育って?」

 「私の嫁としての教育だ」

 「そうなんだ……あ、セシリアだ」

 「あら~お二人とも、ごきげんよう」

 「ねえ、セシリア、一夏見なかった?」

 「一夏さん? そう言えば先ほどバス停にいらしたようですけど」

 「バス停?」

 「ええ」

 「一夏は一人か?」

 「一人でいたの、一夏」

 「えっと、遠くではっきりとは見えませんでしたけど……二人だったような……」

 「二人?」

 「シャルロット、鈴は見たか?」

 「あ、鈴さんなら先ほどカフェの前で見ましたけど」

 「と言うことは……」 

 「箒……」

 「箒さん?」

 「箒か、そう言えば今朝早くに裏庭で稽古していた様子だったが」

 3人が考え込んでいると。

 「何をやっているの3人して」

 「あ、鈴」

 「鈴さん」

 「鈴、箒を見なかったか?」

 「箒? 剣道の稽古じゃないなの」

 「と言うことは誰も箒の姿を確認していないわけか、今朝以外は」

 「どういうことよ?」

 「箒さんの姿が見えませんの。一夏さんも」

 『う~~~~ん』

 4人ともに思案顔。

 「一夏も見えない。箒もいない」

 「まさかっ!」

 「やられたわ!」

 「箒ったら!」

 「追跡ね」

 『賛成!!』

 4人の意見は即一致。

 「では、各自時計を……ヒトヒトサンマル時に玄関に集合!」

 「ラジャっ!!」

 「了解」

 「了解しましたわ」

 4人はそれぞれの部屋へ準備のために戻った。

 

 同じ頃の織斑家。

 一夏と二人、緊張感が増す。

 学園と違う空間、寮の部屋とも違う場所。

 別に何かを期待しているわけじゃない。それは少しは期待もあるが、一夏が相手だからな。

 ここら辺は一夏の一夏たるゆえん唐片朴。

 あいつはほとんど気にしてなどいないんだろうな。

 私が緊張していること、さっきから頬がほてっていること。

 一夏の行動が気になって仕方がない。

 私が想っているほど一夏は考えてもいないだろうが。

 とりあえず居間で寛ぎながら、先ほど買ったお茶でテータイム。

 取りとめのない会話をしていると玄関が開く音がした。

 「一夏?」

 「うん? 千冬姉かな」

 居間のドアが開くと件の人が現れた。

 「一夏居たのか? それに篠ノ之……だけか、ほかの4人はどうした」

 「今日は俺と箒だけだよ」

 「お前が一人だけ連れて自宅にか? 何を考えている?」

 千冬さんが一夏をからかう目で見る。

 「別に俺は何も、箒が来たいと言うから」

 「ほぅ~」

 「うっ」

 千冬さんに睨まれた。

 「で、千冬姉はどうして?」

 「着替えと荷物を取りにな」

 「あ、そうだ。バックにスーツとか入れてあるから忘れずに持っててくれよ」

 「ああ、わかった」

 「あ、そうだ。一つお前たちに情報を渡してやろう」

 「はい?」

 「学園正門で4人とあったぞ」

 「それで?」

 「何やら捜索するようなことを言っていたがお前たちのことではないのか」

 「俺たち? 箒、誰も知らないのか俺と箒が一緒に居ること」

 「あ、ああ、まあ……」

 当たり前だ。そのために出し抜いて来たのだからな。

 「可能性が無くも無いな、あの4人なら。さてどうしたものか」

 「なんにせよ、この家で問題を起こすなよ?」

 「問題なんて」

 「大丈夫なのか、一夏」

 「そろそろ4人が来るぞ」

 「えっ!!」

 「私の方が先に着いたが間もなく来るころだろ。駅に向かっていたのは確かだからな」

 「専用機持ちが6人……頼もしくもあるが物騒なことこの上ないな。6人いれば戦争ができるからな」

 「冗談……なんて言えないか、鈴やラウラは」

 「もう少しでここら一帯は世界で一番危険な地帯に変貌だ。一触即発の危機だな」

 千冬さん顔が笑って居るのが怖い。

 「篠ノ之?」

 「はい」

 「4機相手に勝機はあるか?」

 「スペックなら負けませんが、キャリアが……」

 「そうか。自分がわかっているなら安心だ。一夏、おまえが回避しろ。いいな?」

 「えっ、俺が?」

 「この場でお前以外に誰がやるんだ?」

 「千冬姉が……鬼権限で」

 「ゴンっ!! 誰が鬼だ! バカ者! それに今は学園外だ」

 「痛ぇ~教師でしょ、担任でしょ」

 「生徒のプライベートまで口は出さん。自分で何とかしろ」

 「了、了解です」

 「篠ノ之、適時バックアップしてやれ。面倒を掛けるがよろしく頼む」

 「あ、はい!」

 「ではな」

 そう言って部屋を出て行った。

 千冬さんに頼まれた……一夏のことを頼まれた。この私が……。

 「うん! 私が一夏を守る!」

 「はい? 箒~大丈夫かぁ」

 「問題無い。それよりも4人だ」

 「参ったなぁ~」

 折角一夏と二人だと想っていたのにとんだ邪魔が入った。

 とは言ってもまだ現れていない。しかし、敵はすぐ目の前まで侵攻してきている。

 やはりここは撃退、お帰り願おう~うん、それが良い。

 「なぁ箒。シャルやラウラたちが来るんだろう? 飯の支度どうしようか」

 「なっ! 一夏~!」

 「な、何だよ」

 「まさかと思うが招き入れるのか?」

 「わざわざここまで来てもらって帰すわけにもいかないだろう。知らない仲じゃないんだし、鈴以外はクラスメートだ」

 「一夏……」

 目眩が……さっき回避しろと千冬さんに言われたではないか! それが、回避どころか招こうと……。

 私の気持ちを一夏が知る由もないし、一夏のことだから友達を招待するのと同じ考えなんだろう。

 しかし、私は面白くない! 折角出し抜いたと言うのに。

 何とか一夏をこちら側へ引き寄せて、回避行動をとらせないと。

 悠長な時間は無い。即行動。

 「一夏!」

 「あん?」

 「買い物に行かないか?」

 「みんなが来てからで良いだろう」

 「それでは飲み物やまして食材が全然たらないぞ」

 「そうだな、二人分しか考えてなかったもんな」

 ヨシ! もう少しだ。

 「シャルか鈴に電話して買ってきてもらおう。ナイス名案」

 「いちかぁ~」

 この唐片朴は……。

 「地理に不慣れな4人には無理ではないか?」

 「この前一緒に買い物に出かけたから大丈夫だろ」

 この前……夏休みに一夏の家に訪れた時のこと。それぞれが個別に織斑家を訪問。

 最後に夕食を作るために買い物に出た。その時のことを言っているのだろう。

 この男はとことん私の作戦をつぶす気だな。

 一夏には悪気はないのだから仕方がないのだが。

 「それに全員専用機持ちだし、それに鈴もいるから大丈夫さ」

 ISは個々の位置情報を得るため行動範囲のデータを保存している。

 そこにアクセスすればGPSが案内してくれるのだ。それに元地元の鈴が居れば迷子になることも無い。

 私は大きなため息をついた。

 「仕方がないな……諦めるか」

 小声でつぶやく。なのにこの男はすぐに反応してくる。肝心なことは聞こえていないくせに……。

 「何を諦めるんだ?」

 「あっ、えっ、えっとだな、それは……」

 「それは?」

 一夏が私の顔を覗き込むように見つめてくる。

 バカっ! 顔が近い! そんなに近づいたら私は……私は。

 鼓動は早鐘を打ち、頬は熱いくらいに火照る。

 そんなに近付くと唇が……。

 頭に臨海学校の時のことが蘇る。福音と戦った後の夜の海。

 一夏と二人で岩場の上で……邪魔が入らなければ間違いなく一夏とファーストキス。

 その時の情景と今目の前の一夏と被る。

 えいっ! 女は度胸だっ!

 私は勢いに任せて一夏に飛びついた。もちろん唇めがけて。

 「!」

 びっくりしている一夏の顔。

 やった……一夏とキスした。

 私はゆっくりと瞳を閉じてファーストキスに酔いしれる。

 時間にしたら短かったのかもしれない。唇は自然と離れた。

 嬉しさと恥ずかしさで胸がいっぱいになっているところに、一夏の声が。

 「箒。急に、なぜ?」

 カチン!

 「それを私に聞くのか!」

 「私を異性として意識すると言ったではないか」

 「えっとぉ~そんなことを言った覚えは……」

 「一夏っ! 貴様は」

 「ま、待て箒。それと今のキスとどういう関係が?」

 「そこまで唐片朴だったか」

 「何気に失礼なことを言ってないか?」

 「気付かないお前が悪い」

 「なら教えてくれ」

 「はい?」

 「教えてくれ、箒」

 「そそそっそ、そんなこと考えればわかることだろう」

 「わからないから教えてほしいと言ってるんだ」

 これでは鈴が転入してきた頃の一夏との会話と同じではないか。

 一夏には女への興味が無いのか?

 「一夏、誰かを好きなったことは無いのか?」

 「え、それくらいあるさ」

 「誰だ」

 「学校の先生とか、兄弟とか……」

 千冬さんか……。

 「シスコン」

 「なっ!」

 「お姉さん大好き、先生大好き」

 「お前何を言って……て、箒、誤解だって。千冬姉のことじゃないからな」

 「それは判ったのか?」

 「当たり前だ」

 「なら、わかるだろう?」

 「わからん」

 ずるっ。一夏ぁ~~~。

 「はぁ~お前と言うやつは、みんなが苦労するのも当然だな」

 「何のことだ?」

 「わからなければ、いい」

 それでも一応は一夏に伝えておくことにするか。

 ここまで来て言わないのも私らしくないしな。

 「一夏」

 「あん」

 「今日はみんなを出し抜いて来たんだ」

 「はい?」

 「二人になるため、ここへ来るため、そして一夏と……キス……そして伝えるため」

 「伝える?」

 「そうだ。私の気持ちを一夏に言うためだ」

 「箒の、気持ち?」

 「そ、そうだ」

 「わ、わた、私は一夏のことが、す、好き……大好きだ。昔からずっと」

 さすがに口に出すと恥ずかしいものだな。

 決心したとはいえ抵抗がある。

 「俺も箒のこと好きだぜ」

 「なに? 本当か」

 一夏の応え……本当に私のことを? しかし、あの一夏だ。ここで額面通りに喜ぶわけにいかない。

 「好きじゃなきゃ、剣道続けなかったし幼馴染だって言ったって忘れてたさ。でも、忘れたこと無かった」

 「一夏……」

 もももも、もしかしたら……。

 「俺のファースト幼馴染だもんな。嫌いなわけ無いだろう?」

 ああ、やはりな。さすが唐片朴。

 「一夏?」

 「うん?」

 「馬に蹴られて死ねっ!!」

 前蹴りを一夏の鳩尾めがけて入れる。

 「ぎゃっ~~~!!」

 「ふんっ♪」

 そこで反省しろっ! 女心を弄ぶ奴にはいい薬だ。

 

 その後、捜索隊4人と無事? 合流。

 一夏の家で大いに騒いで短い休日を満喫した。

 色々詰め寄られもしたが、そこはとりあえず告白して「好き」と言ってもらえたので良しとしよう。

 嫌われていないと言うことだけでも大きな戦果だ。

 これで4人よりは一歩先へ出たことは間違いない。

 まだまだ、油断の出来ない相手ではあるがそこは幼馴染の特権を大いに利用して仲を深めようと想う。

 急いでもあの唐片朴には無理だろうから。

 しかし、周りにも気を配り近寄る輩には細心の注意をいらわないとな。

 一夏? このリベンジは必ず。

 首を洗ってろよ? 今度こそは私と付き合ってもらうっ!!

 

おしまい

 

 

あとがき

 ども~Ikuです。

 まずはここまで読んでいただきありがとうございます。

ゲーム以外の二次創作SSはレールガン以来2作目になります。ほとんどゲームが素材のお話ばかり書いてましたが、今度は小説がベースの二次創作となりました。あ、美琴SSはアニメがベースでしたね(^^;

 メインヒロインの箒をベースにいくつかのシーンをアレンジして創作してみました。

 箒の感じが上手く掴めているといいんですけどね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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