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鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第三十一話

NDさん

5日ぶり。そして長いし。

2011-08-10 15:45:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1824   閲覧ユーザー数:1778

~バンエルティア号~

 

『俺とアル……そしてコレットが同行なのは認めよう………』

 

エドが頷き、アンジュに向いて語りだした。

 

そして、声のトーンが上がり、大声で怒鳴るようにアンジュに言った

 

『だがなぁ!!このチャライ赤野朗とは一緒に歩きたくないぞ!!!!』

 

『兄さん。そんな事言うのは失礼だよ』

 

エドはアルを睨みつける

 

『うるさい!!お前は知らねぇだろうが、こいつは物凄く鬱陶しいんだ!!』

 

『鬱陶しいとは失礼じゃないのよぉ。輝きすぎて目が失明しちまうとか表現してくれねぇとなぁ。』

 

『な!?鬱陶しいだろ!?アル!!!!』

 

エドのその言い草に、アルは半分だけ共感してしまう。

 

『でも、今回の任務は討伐と同時に、行方不明者の生存確認だから。知人が居てくれれば助かるのよ。ごめんね』

 

アンジュの言葉に、コレットの表情が不安に歪む

 

『え……?先生とジーニアス……と、プレセアが……死んでる可能性があるの……?』

 

アンジュは、少しだけ返答しにくい表情をしたが、ゼロスが割って入ってくる

 

『ま、ガキんちょの方は頑張っていれば生きてるかもしんねぇけど、リフィル姉さんとプレセアちゃんは別に大丈夫なんじゃねえの?』

 

『まぁ、そうなのかもしれないわね。』

 

アンジュがそう微笑むと、ゼロスはアンジュの手を握り

 

『でさぁ……この依頼が終わったら、俺と一緒に王都で素敵な一日を過ごさなぁい?』

 

『ごめんなさいね。今日は忙しいから。一日中依頼が一通も入らない日で良いかしら?』

 

アンジュの言ったことは、多分これから先に一日も無い日だろうという皮肉であり、

 

それを察したゼロスは、溜息を吐いた

 

『はぁ……やる気がそがれちまうよアンジュちゃん………』

 

『そんな事よりも、早く行かないと置いてかれちゃうわよ?』

 

そんなゼロスを無視して、エド達は出発していた。

 

その様子を見たゼロスは、少しだけ慌てて追いかけた

 

『お……おいおい、そんな勝手に先に行くなよな~!』

 

『アル、ダッシュだ。』

 

エドはそう言いながら、ゼロスを走って引き離していった

 

『お……おい待てって!!ちょっと冷たいぜ、おチビちゃんよぉ。』

 

エドは駆け足に急ブレーキを掛け、振り向く、ゼロスに向かって走り出した

 

『うぉぉおっ!!』

 

殺気を感じたゼロスは、一目散に逃げ出した

 

『だぁぁれがぁぁぁあああマイクロドチビかぁぁあああああああああああああ!!!!!』

 

その鬼ごっこは、30分程続いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~コンフェイト大森林~

 

『はぁ~あ。俺さまさぁ、こんな辛気臭え空気嫌いなんだよなぁ。』

 

ゼロスが、真っ先に文句を言った。

 

理由は、エドは愚か、コレットまでもが話を出さなかったことだ。

 

『コレットちゃんもよぉ。もうちょっと盛り上げようぜ。これじゃぁお通夜に居るのと変わらねぇよぉ。』

 

『あ……ご……ごめんなさい。』

 

コレットは、ついさっきまでの会話を思い出していた。

 

ミアキスの里親を募集して回っているときの、エドの言葉が耳から離れないのだ。

 

《俺はお前のような自覚の無いイライラさせる天然の野郎が嫌いなんだよ!!!》

 

その言葉を思い出すたび、心が沈んでしまう。

 

正直に言うと、ここに居るエドと居るのが少しだけ苦しいくらいだ。

 

嫌いではないのだが、嫌われたくない気持ちが大きい。

 

同じ仲間で同じパーティに居るのだから、もう少し仲良くしたいと思っている。

 

だけど、コレットはエドに纏まる何かに恐怖して、どうしても声が出ないのだ。

 

また、話がずれてしまうとか、そう言う事を考えて

 

『あ~あ。』

 

ゼロスは、つまらなそうに頭を掻きながら文句を言う

 

『おいおいおい、もうちょっと賑やかに行こうぜぇ?さっきまでおチ……エドワードも激しく俺を追いかけてきたじゃん。』

 

『あれはてめぇが……!!ああ!もういい!!』

 

エドはイラつくように舌打ちをして、足音を強くした

 

『だいたい辛気臭くもなるだろ!!人を食う巨人が居ると聞いて、ビクビクしない奴がおかしい!!それに……さっきから草むらの中に

 

なぁ……』

 

エドは、草むらの中にある穴に手を伸ばし、

 

その穴の中から、蛆と蝿の湧いたウサギの死体を取り出した

 

『うわぁおお!!』

 

『草むらの穴の中に、さっきから動物の死体が入ってやがるんだよ……。稀に人間が入ってた。』

 

エドは、もう一つの手で鼻を押さえながら状況を説明した。

 

そして、そのウサギの死体をゼロスに向けて投げた

 

『きゃぁあああああ!!!』

 

ゼロスが、甲高い声で叫ぶ

 

『その巨人って奴は、小さな穴を草で隠す習性を持つらしい。そしてその穴に、食いきれない分を入れるんだろう。知能は人間よりは低

 

いはずだ。』

 

『兄さん……。じゃぁこれからどうするつもりなの?』

 

エドは、少しだけ暗い表情で答える

 

『……さすがに、固まって動けば一気にやられる可能性がある。分担だ。二対二でな。合図は……』

 

エドは、ウサギの死体を練成して、小さな玉を練成した

 

『?何だ?これ』

 

ゼロスが近づいてみると、エドはその白い玉の一つを踏み潰す。大きな音がした

 

その音にほとんどの者が驚き、一歩退がる

 

『!!?』

 

『鉄分とリン酸の殻で、中身を空洞の水素原子を詰め込んだにした爆竹だ。踏めば酸素と化合して、爆発が起こる』

 

その物騒な物を、エドは一人一個ずつ渡す

 

『これで一チーム二個。とりあえず次は誰と誰が組むか決めようぜ』

 

エドがそう言うと、ゼロスが真っ先に手を上げて言った

 

『んじゃぁ、お互い仲良しチームって事で良いんじゃねぇ?ご兄弟チームと、ゼロス&コレットちゃんチームって事で。』

 

ゼロスのその言い草で、一番安心したのはコレットだった。

 

同時に一番複雑だったのはコレットだった。

 

エドの事が怖いコレットは、エドと離れれば、少しは落ち着くと考え、

 

同時に、これでもう仲良くは出来ないという危機感さえ感じた。

 

これで進めるのか、と考えた矢先、エドは冗談じゃないと言うような顔をした

 

『はぁ?何言ってんだ。行方不明者の顔が分からない俺達が二人揃ってどうする。正式にじゃんけんだ。じゃんけん』

 

エドのその言葉に、少しだけ口を尖らせるゼロス

 

『えー?俺さぁ、おチ……エドワード君はともかく、このゴツイ鎧と一緒には歩きたくねぇぜ?』

 

『ゴ……ゴツイ……?』

 

アルの心に、大きなトゲが刺さった。

 

それを聞いたエドは、文句を言うゼロスを一喝するように答える

 

『あぁー。文句を言うな!!とっとと決めるぞ!!アル!!』

 

エドは、アルを呼び止め

 

『じゃ―――んけ―――ん!!!!!』

 

結果が決まったのは、2秒後だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~コンフェイト大森林 西~

 

アルとコレットは、二人で西の方へと周り、歩んでいた。

 

この状況で、少しだけ気まずくなるが、アルは少しだけ戸惑った。

 

『ええと……あの……。ついさっき、兄さんが無茶苦茶を言って……ごめんね。』

 

アルがそう呟くと、コレットは首を横に振る

 

『ううん。それにしても……兄弟とは思えない程、アルフォンス君は大きいね』

 

コレットがそう言うと、少しだけアルの様子が暗くなった。

 

言ってはいけない事だったのかと、コレットは少しだけ戸惑った。

 

『ええと……そいえばね、今私達が探してるジーニアスは、とっても頭が良いんだよ!そのお姉ちゃんに当たる、リフィル先生も物凄く

 

頭が良いけど……。』

 

『へぇ、そのジーニアス君のお姉ちゃん、先生をしているんだ。』

 

『うん!特に遺跡や不思議な物が大好きで、興味を持った物には、徹底的に調べるんだよ。』

 

コレットの言葉で、アルは不安の感情が湧き上がる。

 

自分のこの身体を見たとき、僕は何をされるのだろうか。という不安が

 

またもや暗い空気になった時、コレットはまた慌てる

 

『ええと、だっ…大丈夫だよ。中身が無い事は、ちゃんと先生には極力伝えないようにするから……そいえば、どしてアルフォンスは中

 

身が無いの?』

 

さらに空気が重くなった。

 

コレットは、この空気に一瞬慌てたが、もう諦めてしまった。

 

『…………ごめんね……ごめん…』

 

『う……ううん。大丈夫だよ。聞かれるのはもう慣れてるから。』

 

アルは、コレットの表情の暗さと同時に、自分に構う理由を探していた。

 

話を持ちかけてくれるのは嬉しいが、先ほどの話のように、こんなに落ち込むのは少しだけ変だと感じたのだ。

 

そこで、今日コレットにあった事を思い出す。

 

そしてミアキスの里親を探した事を思い出す

 

『あ』

 

そう言えば、イライラしだした兄さんが言った一言で、コレットの表情が変わったのを思い出した

 

《俺はお前のような自覚の無いイライラさせる天然の野郎が嫌いなんだよ!!!》

 

さすがに、あの言葉は酷いと感じたアルは、その後もなんとかエドに説得をしたところ、

 

さすがに言い過ぎたとエドも少しは反省した。まだコレットに謝ってないけど。

 

アルは溜息を吐いて、コレットに言葉を持ちかける

 

『気にしてる?』

 

その言葉に、コレットは少し反応する

 

『兄さんが言った、イライラさせる天然、とか。嫌いだ、とか』

 

その言葉を思い出すたびにグサグサ来る為、コレットはアルの言葉に反応するように小さな悲鳴を上げた

 

『ああごめん。僕は特にそんな事は思ってないから。』

 

アルがそう言っても、コレットの落ち込みは治らなかった。

 

その様子に戸惑ったアルは、少しだけ戸惑いながら歩き出す

 

コレットも、一緒に居ないと怒られると感じたのか、アルについて行った。

 

『兄さんも、本気で嫌いだとか言ったわけじゃないと思うよ。そもそも兄さん、他にも嫌いな人を僕に言ったりしているけど、心の奥で

 

はちゃんと信頼しているよ。』

 

『……………』

 

アルがそう言っても、やはりコレットは落ち込んだままだった

 

『だからね。兄さんに嫌われたくないなら、そのありのままの自分を押し通せば良いんだよ。コレットは悪意が無いんでしょ?なら兄さ

 

んもきっと受け入れてくれるよ。』

 

コレットは、少しだけ表情に光が差した。だけどまだ暗いままだ

 

『でも、やっぱりすぐには仲良くはなれないと思うよ。コレットとロイドとも、長い時間があって今の友達関係があるんでしょ?』

 

『ロイドは……ロイドはとても優しいから……。』

 

『兄さんは…あまり優しくないけど、確かに我がままだし、まだ子供だけど……僕達も子供だよ。だから友達を作るのは難しいと思う。

 

 

アルは、少しだけ歩くスペースを遅くして、コレットのペースより少し遅くまで歩き、コレットを待った

 

『だから、兄さんが堂々と嫌いと言われても、落ち込む事は無いよ。それでいつの間にか、友達って事になるから。心配すること無い。

 

いつも通りで良いんだよ。』

 

アルの言葉に、少しだけ自身が持てたコレットは、表情が徐々に明るくなっていく。

 

そして、小さいけれども笑顔になり、アルに言葉を返した。

 

『ありがとう。アルフォンス。』

 

コレットのその返事にアルは満足して、コレットの横で一緒に歩く

 

『アル、私達はもう友達だよね?』

 

コレットが発した言葉に、アルはコレットの方を向き、分かるように頷いた。

 

『うん。もう僕達は友達だよ』

 

そう言ってアルとコレットが前を向くと、向こうには銀髪の女性が立っていた。

 

『あ……先生ー!!』

 

『先生?』

 

アルが向こうの女性を見ると、その賢者らしい姿に、アルは納得した。

 

『へぇ……とても若い先生なんだね…。』

 

『先生、大丈夫ですか?ジーニアスと、プレセアは……』

 

コレットが、本気に心配そうな顔で、リフィルを見ていた。

 

『ああ、今探しているところなんだけど……』

 

リフィルは、目の前に居た鎧に目を向ける

 

『その人は?』

 

『あ、この人はアルフォンスって言ってね。私の新しい友達なんだよ!』

 

『初めまして。アルフォンス・エルリックです。』

 

アルが自己紹介を終えると、リフィルは紹介を返さずに、アルをマジマジと見ている

 

『…………………』

 

その眼差しに、アルは不安を覚えた

 

『な………何か?』

 

アルは少しビクビクしながら離れていく、だが同時に早歩きでリフィルはアルの元へと歩み寄る

 

『ちょっと悪いけど、中身を見せてくれない?』

 

『え?………あっ!!』

 

リフィルは、アルの頭を取り、中身を見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~コンフェイと大森林~

 

エドは不機嫌な様子で、チャラチャラした男と一緒に歩いていた。

 

それと同時に、つまらなそうな様子でゼロスは歩いていた。

 

『……なぁんで俺がこんなおチビちゃんと一緒に歩くはめになるのかねぇ。』

 

『うるっさい!!我がまま言うな!!!』

 

『せめておチビちゃんが女の子だったらまだ救いがあるのによ~……。あ、そうだ。女装したらいけるんじゃねえの?』

 

ゼロスの、落ち込みから一気に上るテンションに、エドはイラついた

 

『だぁ―――――!!!誰がするか!!女装なんざぁ男の一生の恥だろうがぁぁあああああああああああああああ!!!!』

 

『そんな事言うなよな~。今、俺様は最高に女に飢えてんのよ~。』

 

『嘘をつくなぁ!!!大体、船に帰れば普通に女が居るだろうが!!それにそれが本当の事だったら尚更気持ち悪いわぁあ!!!!!』

 

大声を上げたエドは、その後息が切れたのか、大きく息を吸って吐いてを繰り返す。

 

そして溜息を吐いた

 

『あぁ―――……やっぱどうすんよ?また一対一で別れるか?』

 

エドがそう言うと、ゼロスが慌てた表情をした

 

『ちょ……ちょっと待てよエドワードさぁん。巨人がうろちょろしてんだろぉ?一人で太刀打ち出来るほど俺も強くねえんだって。』

 

掌返したような言い方に、エドは鬱陶しく感じる

 

そしてまた溜息を吐いて歩き出す

 

そして目の前を見ると、二人の少年と少女が居た

 

『ん?』

 

一人は、銀髪の少年で、もう一人はピンク色のツインテールの少女だった。

 

『おい、あいつらって……』

 

エドがゼロスに問いかけると、ゼロスの表情は一変し、叫ぶようにその少年達に手を振った

 

『あ!おーい!!プレセアちゃ~~ん!!こっちこっちー!!!』

 

ゼロスの言葉で、二人の少年少女はこちらに振り向く、

 

そこでエドが疑問に思う。確かもう一人、20代の女性が居ると聞いたが……

 

振り向いた二人で、一人の少女は無表情で、もう一人の少年は少し嫌そうな顔をした

 

『………何しに来たのさ。ゼロス』

 

『まぁまぁまぁ、そんな硬い事言わずにさぁ~~』

 

少女は、表情を何一つ変えぬまま、淡々とゼロスに語りかける

 

『お久しぶりです。ゼロスさん………』

 

その無機質な声に、エドはゾッとした。

 

まるで、そいつは人間でないような錯覚にも思える。

 

『ところでゼロス。その隣の派手な人は誰なの?』

 

派手と言われて、どうしようもない脱力感が襲われたが、ゼロスは淡々と紹介した

 

『ああ、こいつの名前は……ええと、マメワード・マメリックとか……』

 

エドは、ゼロスの襟を掴み、あさっての方向にぶん投げる。

 

ゼロスの方向に突起物を練成して、その突起物で鉄球を作り、その鉄球を蹴り上げてゼロスを吹っ飛ばした。

 

ゼロスは見えなくなり、どこか遠くへと行ってしまった。

 

『……………』

 

その唐突さに、少年は驚きを隠せない表情になっていた。

 

少女は、未だ無表情のままだった。

 

そして、エドは二人の少年少女へと振り向く。表情は怒りで染まっていた

 

『良いか!!俺の名前はエドワード・エルリック!!錬金術師だ!!!!チビでも豆でも無い!!特に身長の事を俺に持ちかけたら、ガ

 

キだろうが容赦しねぇからな!!!!!』

 

その唐突かつ迫力のある自己紹介に、少年は少し引いた表情になる。

 

少女は未だに無表情だった

 

『そ……そうなんだ……所で……ゼロスがどっか行っちゃったよ?』

 

少年がゼロスが吹っ飛ばされた方向を指差して、エドはケッと唾を地に吐いた

 

『あの野朗はどうせどっかでフラフラしやがるだろ。ほっとけば勝手に帰って来んじゃねえの?』

 

怒り交じりの声で言ったその言葉で、少年は少し戸惑ったが

 

『あぁ~……。確かにそうだよね。』

 

エドのその言葉を、完全に納得した。

 

『んで、お前らが行方不明の野朗だな。20代前半の女性が居ると聞いたが、どこに居んだ?』

 

『ん~と……ちょっと今ははぐれてるんだよね……。』

 

少年がそう言うと、エドは舌打ちをする

 

また、人探しは終わらないし。後、巨人を探さなきゃいけないしと、今日は色々めんどくさい依頼だったからだ。

 

『そうだ。僕の方も自己紹介しておくよ。僕の名前はジーニアス・セイジ。実用性の戦闘魔術なら使えるよ』

 

魔法と言う言葉を聴き、エドは唸る

 

『魔術……ねぇ。この世界では珍しくないらしいんだよなぁ……』

 

『エドワードさんだって、魔術使えたじゃん。ノーモーションだったけど…あれどうやったの?』

 

ジーニアスのその言葉に、エドは返答する。

 

『あれは魔術じゃなくて錬金術って言うんだ。魔法とかじゃなくて列記とした科学技術で……』

 

『科学技術……?いや、そんなはずは……。』

 

ジーニアスは、次第に混乱して、頭を掻いた

 

『エド、今度その錬金術っていうのを教えてくれない?』

 

『いや……弟子はもう間に合ってるんだ。』

 

『そうじゃなくて…本とかそういうのはあるんでしょ?』

 

ジーニアスの言葉に、エドはしばし考え

 

『……んじゃ、帰ったら弟子にでも言ってくれ』

 

そう言って、ジーニアスとの話を終わらせた。

 

『んで?お前の名前は?』

 

『私は……プレセア。プレセア・コンバティール……。』

 

その素っ気無い自己紹介に、エドは少し悩む

 

返答しようもないし、どうもこいつとは仲良くなれそうに無い。

 

『あ……ああ。よろしく』

 

エドは、少しだけ気まずそうに答える。

 

その様子にも、プレセアは無反応だった。

 

『とりあえず、後はもう一人の20代前半の女性と人を食う巨人をぶっ倒せば終わりか。で?その女の特徴は?』

 

『あ―――…。確か僕と同じ銀髪だったよ。』

 

ジーニアスがそう言った瞬間、どこからか女性の悲鳴が聞こえた

 

『ん?何の悲鳴だ?』

 

『あ…!!姉さんの悲鳴だ!!』

 

ジーニアスは葛藤とした表情をしているが、プレセアは全く反応無し。

 

その清清しい程の無表情に、エドは多少の恐怖を感じる

 

『よし……。とりあえず行ってみるぞ!』

 

エドは、その無表情に気分が害されながらも、その悲鳴の元へと駆けて言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『せ……先生!』

 

コレットが、戸惑った表情をしてリフィルを見る

 

『あ……頭返してください!!』

 

アルは頭を取り返そうとリフィルに接近する。

 

だが、リフィルはアルの腕を掴み、背負い投げをする

 

『うわぁああ!!!』

 

アルの中身が空のため、簡単に投げられた。

 

『な……何するんですか!』

 

アルがリフィルに叫ぶように質問すると、リフィルの目は輝いていた。

 

その輝いた目に、コレットは不安を覚え、

 

アルは恐怖を覚えた。

 

『なるほど……?鎧が喋り、そして動く。一体どのような構造だ?』

 

『ぼ……僕、ただ単に鎧に魂を定着させているだけで……』

 

アルのその言葉に、リフィルは興味を持った。

 

そして、アルの鎧の中にあった練成陣に目をつける

 

『なんだこれは?』

 

リフィルの目線に、アルは寒気を感じたが、同時に慌てて言葉を発する

 

『そ……それは僕の鎧と魂を定着させる為の練成陣で……それにはいじらないでください!!』

 

アルは必死に抵抗したが、リフィルはその練成陣に興味を持って、離さなかった

 

『魂と鎧をつなぎとめる………魔法陣だと!?』

 

瞬間、リフィルは完全にアルに興味深々になった

 

『ちょっとこの魔法陣を調べさせてもらうぞ!』

 

リフィルは、身を乗り出し鎧の中に入ろうとする

 

『え!?や…やめてくださぁああい!!!!』

 

アルが叫ぶと同時に、叫びながらこちらに駆けてきた者が居た

 

その者は、物凄い勢いでこちらに来ている

 

『………ぁぁぁあああああああああにやってんだお前はぁぁあああああああああああ!!!!!』

 

エドは、ある程度近づいたら、地面を蹴り、リフィルの胴辺りにとび蹴りをした。

 

鈍い音と共に、リフィルは吹っ飛び、木にぶつかって地面に吸い込まれるように落ちた

 

『姉さん!!!』

 

『姉さん!?』

 

ジーニアスの言葉に、エドではなくアルが先にジーニアスを見つめる

 

『エドワードさん!どうして姉さんを…!?』

 

ジーニアスが疑問の声を出したと共に、アルの方に目を向ける。

 

その瞬間、ジーニアスの目は見開き、驚いたような表情でアルから離れるように歩く

 

『な……!?中身が……空っぽ!?』

 

プレセアは、表情は変えないもののアルに敵意を向け、斧を出していた

 

『手を出すな!!』

 

『エドワードさん!でも……こいつはどう見ても魔物じゃないか!!』

 

ジーニアスの言葉で、アルが反応する。

 

息を吸い込むようなショックの息が聞こえる。

 

そして、アルは俯くように下を向く仕草をした。

 

その様子に、エドは怖い顔でジーニアスとプレセアを見つめる

 

『エ……エドワードさん?』

 

ジーニアスはその表情が怖く、戸惑う表情をする。

 

だが、エドは後に溜息を吐き、落ちていたアルの頭を拾い、アルに返す

 

『大丈夫か?アル』

 

『うん……。ありがとう兄さん。』

 

『兄さん?』

 

アルが言った兄さんの言葉に、少しだけ混乱する。

 

だが、その瞬間、ジーニアスは気づき、理解し、そして驚く

 

『えっ……!?もしかして……兄弟……なの…?』

 

自信なさげに、少しだけ申し訳なさそうに答える。

 

その言葉に、エドはただ頷いた。

 

プレセアは、無表情で斧を片付ける

 

『ご……ごめん…。その……魔物とか……言っちゃって…。』

 

『ううん、大丈夫。僕も、もう慣れてるから。』

 

気まずい空気が、二人の間に流れた。

 

素直に謝ったことで、エドはジーニアスの事は許せた。

 

だが、斧を出して敵意を出していた上に、未だに声を出さないプレセアを見て、何を考えているのか分からず、何も言えなかった。

 

『………………』

 

ただこちらをじっと見ているプレセアに対し、妙な不気味感を感じる。

 

エドはそいつの事は無視して、アルを起き上がらせようとした。

 

『………二人は』

 

プレセアの口が動く。そして、エドは反応する。

 

アルも、今まで喋っていなかった新しい声に反応する

 

『……二人は、身長差が激しく、そして奇妙な兄弟ですね。』

 

『ほっとけ!!!!!!!!!!!』

 

その自然な毒説に、エドは怒りを表し、プレセアに怒涛の声を上げた。

 

奇妙な兄弟という言葉が、アルに一番心に刺さったらしく、そのまま硬直してしまった。

 

『あ―――……ったく。まぁでもこれで、後は巨人を倒すだけだな。その姉さんというのも。ちゃんと見つかって……』

 

エドが振り向くと、鬼のような表情をしたリフィルがこちらを見ていた。

 

その表情で、エドには脂汗のような物が滝のように流れる。

 

『おい……豆粒……』

 

その地獄から這い上がってきそうな声に、エドは逃げ出そうとする。

 

だが、コートをつかまれ、逃げ出せなくなった。

 

ジーニアスは、恐怖からかリフィルに背を向け、耳を両手で隠している。

 

プレセアは、ただこちらをじっと見ている。

 

アルは、プレセアと一緒に離れた場所からじっと見ている

 

『おいコラてめぇらぁああ!!助けろ!!!いや助けてください!!!』

 

『ごめん。無理』

 

『無理です』

 

『頑張って兄さん』

 

後ろから、怒りで生暖かい吐息が吹きかけられる。

 

最初に出会ったときは、それ程怖い存在では無かったが、何故か今では恐ろしい存在になっていた

 

表情が、怒った時の師匠と同じだからだ。

 

『これはおしおきが必要みたいね。豆粒君。』

 

冷たい声で言われ、エドは悲鳴を上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~コンフェイト大森林 ???~

 

『痛ててて……ったく。おチビちゃんったら。ここまでフッ飛ばしやがって……』

 

エドの練成物によって吹っ飛ばされたゼロスは、打った腹を押さえながら苦しげに立ち上がった。

 

その際に、邪魔な草木を手でのけて、フラフラと立ち上がる

 

『どこだ……?ここ』

 

ゼロスは、そのまま歩き続けると、何かを引きずる音が聞こえる

 

ずるずる……ずるずる……

 

『ん?』

 

辺りを見渡すと、遠くで草が動いているのが分かる

 

小動物だろうか?

 

最初は思ったが、それにしては音が大きすぎる

 

瞬間、人が食べ物を吐き出す音が聞こえる。

 

下品で気持ち悪い音だった。

 

『………なんだぁ?』

 

音の鳴る方に近づいていくと、音はだんだんと大きくなっていく。

 

そして草を分けて進むと、緑色から、一瞬で肌色の風景に変わった

 

『………………!!!』

 

あまりの驚きに、何も声を出せずに尻餅をつく。

 

そして、大きな目が、こちらを向いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~コンフェイト大森林 西~

 

パァン!!!!!

 

エドに受けた往復ビンタの途中で、どっか破裂音がした

 

『何?』

 

ジーニアスが、警戒するように音の鳴るほうを見つめる

 

『あ……。兄さんが作った爆竹だ』

 

『作った?』

 

ジーニアスが一瞬疑問を感じたが、瞬時にエドはリフィルから離れ、音の鳴るほうに駆けていった

 

『あ…!待ちなさい!!』

 

リフィルが呼び止めても、エドはただ走り続けた

 

『エド!!これの音って……ゼロスに何かあったんじゃ……』

 

コレットの言葉に、エドは不安の表情をする

 

アルも、表情に出せずとも、不安な様子だった。

 

だが、エドはただ走り、音の鳴るほうへと向かった

 

『………何も無かったら良いけどな……!!!』

 

その言葉を信じ、走り続ける。

 

そして、右を曲がろうとした瞬間、エドは何かに思いっきりぶつかる

 

『ぬぅわ!!』

 

『って!!』

 

ぶつかった瞬間、エドはぶつかった相手と同時に尻餅をついた

 

『兄さん!?』

 

『痛てて……って、ゼロスじゃねえか。』

 

エドがそう言うと、ゼロスは顔を上げた。

 

一瞬エドの方を見たが、ゼロスは別の方角を見る

 

『おお!そこに居るのはリフィル姉さん!いやぁ益々お美人になって……』

 

『おい!!!!』

 

無視されたエドは、ゼロスに思いっきり怒りの声を上げる。

 

『おおっと。なんだ居たの。リフィル様が居るから、小さくて見えなかったぜ』

 

エドの殺意がゼロスに向けられる。

 

『兄さん。落ち着いて』

 

アルが、暴れるエドの手を腕で押さえ、エドはぶら下がった状態で足をバタバタさせていた。

 

キーキー叫びながらゼロスに敵意を見せている

 

『エドワードさん……サルみたいです』

 

『うるせぇ!!!!!!』

 

エドが叫ぶと同時に、何かを引きずる音が聞こえる

 

ずるずる……ずずず

 

『やっべぇ……来たぞ……』

 

ゼロスの顔が、次第に引きつる顔をしている

 

『ゼロスくん?何を見たのですか……?』

 

プレセアの言葉で、少しだけ格好をつけてゼロスは答えた

 

『お……おお。驚くんじゃねぇぜ。ついに見つかったんだ……』

 

動き、軋む音が次第に大きくなる

 

引きずる音から、削れる音のような音が聞こえる

 

そして、大きな影が、エド達を襲った

 

ゼロスは立ち上がり、逃げる準備をした

 

『巨人が………来た。』

 

草を掻き分けて現れた姿は、肌は肌色だが、とても人間には見えなかった。

 

その大きな姿は、どちらかといえば芋虫で、足はまるで使える場所に生えていない。

 

手も、所々吹き出物のように生えており、ブランブランと垂れている

 

先端には大きな口があり、口の中には多数の人間の顔が存在した。

 

体のあちこちには、所々人間の体が集中して生えているのがあったが、それはただうめき声を上げているだけだった

 

『なんだよ………これ……』

 

その化物の口から、大きな舌が現れた。その舌はそこに居た鹿を巻きつけて捕まえた。

 

捕まった鹿は、舌で包まれた瞬間、溶けるように消え、その養分が全て化け物の中に入った

 

まるで、その鹿を吸収するかのように

 

『逃げろ!!!!』

 

エドの言葉に、全員が駆け足で化物から離れる。

 

どうやら化物はそんなに早くは走れないらしく、引きずるようにエド達に向かって歩き出す。

 

舌も伸ばすのに限界があるようだ。

 

10メートル以上は伸びてこなかった

 

『なんなんだよあれ!!どこが巨人なんだよ!!!』

 

ジーニアスが叫ぶように言葉を発した。

 

『人を食うのは間違い無えらしいけどなぁ!!!』

 

『何の突然変異なの!?あれ!!!!』

 

『知るかぁ!!俺が聞きたいわぁああああああ!!!』

 

エドとリフィルが叫ぶように話す。

 

だが、そんな暇は無い。その為にただひたすら走る必要があった。

 

『洞窟だ!!!』

 

アルが洞窟を見つけ、ほとんどの人がその洞窟に向かって走った。

 

『おらぁあああああああああああ!!!』

 

エド達がその洞窟に入ると、一本道がそこのあり、しばらく走ると行き止まりがあった。

 

入り口から行き止まりまで、たった6メートルしか無かった

 

そして、化物がその洞窟に顔を突っ込んだ。

 

『おい……やべぇぞ……』

 

ゼロスが引きつった顔で化物を見た。

 

化物は、案の定舌を伸ばしてこちらに向かった

 

『来たぁあああああああああああああ!!!』

 

『っくそ!!』

 

エドは天井を練成して、出来るだけ分厚いトゲを練成し、化物の舌を上から貫通させ釘を打つように舌の動きを止めた。

 

そして後ろ壁を練成し、新しい道を作り上げた

 

『こっちだ!!!』

 

その一瞬の出来事に、ジーニアスはあまり理解できずに居たが、

 

『う……うん!』

 

とりあえず、今はエドに従うことが懸命だと感じ、エドの作った道をたどった。

 

『豆粒くん。先ほどの技は何?ノーモーションで魔術を使ったようだけど……』

 

豆粒という言葉に突っかかろうとしたが、また殺されそうになるため、怒りを飲みこんで我慢した

 

『………これは錬金術と言って、魔術じゃなくて列記とした科学技術……』

 

『嘘ね。先ほどの魔術反応から、地の流れが変わったわ。多分それは科学技術なんかじゃなく……』

 

後ろで、トゲが壊された音が響いた。

 

『嘘ぉ!?どんだけ力持ちなの!?あの化物!!』

 

ゼロスの叫びが洞窟に響く

 

『どうするの兄さん!!僕達はどの道、あの化物を倒さなきゃいけないんだよ!?』

 

『んな事ぁ分かってるわ!!!!!!!』

 

エドの練成で、ようやく目の前の壁が向こう側に辿り着いた

 

『トンネル作っても意味が無いんだよ!』

 

『良いから黙ってろ!!』

 

エドは洞窟から飛び出し、洞窟の上の山へと飛び乗った

 

その場所から、向こう側の洞窟の入り口に向かって走り出す

 

『エドワードさん!?』

 

『意気地なしはそこで待ってろ!!』

 

エドがそう言うと、カチンと来たのか、ジーニアスは洞窟の上の山へと登っていく。

 

あまり無い運動神経から、登るスピードがやや遅い

 

『おー随分元気があるじゃねーの?んじゃぁ俺様はここでのんびりしてようかな?』

 

ゼロスがそう言うと、アルとコレットとリフィルとプレセアと次々に続いて飛び乗った。

 

しばらくすると、その場にはゼロス一人となった。

 

『…………』

 

何も言えない孤独感が、ゼロスを襲った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こっちだ化物!!!』

 

エドは、見下ろす形で化物を見つめる

 

化物は、その声に反応してエドに向かって舌を伸ばす

 

エドはその舌を避け、持っていた爆竹に練成陣を描き、思いっきりその化物の口の中へとぶん投げた

 

『これでも食って、焼けちまえ!!!!!!』

 

エドがその爆竹を投げると、光に包まれた爆竹が辺りの空気を纏うようになる。

 

そして、着地した化物の口が大爆発を起こした

 

『…………!!!』

 

『強烈な酸素と化合した水素は、衝撃という火種と共に大爆発を起こす……!』

 

化物の舌は、たったそれだけではダメージが足りないらしく、舌の動きは鈍ったが、まだ動いていた。

 

『ちっ!!』

 

『エド!!』

 

『兄さん!!』

 

後ろから、アルとコレットの声がした。

 

『アル!!コレット!!持っている爆竹を貸せ!!』

 

エドがそう叫ぶと、二人は持っていた爆竹をエドに渡し、エドはペンで爆竹に練成陣を描いた

 

『何を描いてるの?』

 

『後で分かる』

 

描き終わった瞬間、エドはペンを投げ捨て、爆竹をさらに化物の口に放り投げた。

 

そして、二つの爆竹は同時に大爆発を起こし、口の中はさらにダメージを負った

 

『がゃぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!』

 

化物と口の中の人間達が大きな声で叫ぶ。

 

そして、化物の舌は衝撃で千切れ、地に落ち、そして溶けていき気化した

 

『行くぞ!!』

 

エドは上から飛び降り、化物と同じ地に立つ

 

アル達も同時に、化物と同じ地に立った

 

『舌が無くなりゃ、こっちのもんだ!!!』

 

エドはそう叫び、化物の下からトゲの突起物を練成し、化物の体の中に突起物を刺した

 

だが、化物はそのトゲを自らの体重でへし折り、何事も無かったかのように動き出す。

 

化物は口を開き、エドに襲い掛かって食いにかかる

 

『おわぁああ!!!』

 

エドは間一髪で避けるが、化物が食べた後は、地面がえぐれ、木の複数が化物の口に入った

 

『やっぱり……そう一筋縄ではいかないね。』

 

『だったら、確実にダメージを与え続けてやれば良い!!』

 

エドはそう言って、地から突起物を練成し、盛り上がった地面に化物はバランスを崩す

 

バランスを崩した化物の目の前はプレセアに変わり、化物の顔が大きく歪む

 

『危ない!!』

 

襲い掛かってきた化物から庇うように、アルはプレセアを押して身代わりとなる。

 

そして、アルは化物の中へと飲み込まれていった

 

『………!!アル……』

 

エドの顔は、絶望に歪んだ。

 

そして、頭の中が真っ赤に染まる

 

『うるぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

エドは化物の腹に向かって大きな突起物を練成させ、攻撃した。

 

しかし、化物は大きな涎を吐き出したものの、アルが出てくることは無かった

 

『………!!!』

 

エドの顔が、さらに絶望へと落ちる。

 

その場で膝を地について、地面を掴むようにエドの手は強く握る

 

『………エドワードさん……。』

 

ジーニアスが哀れみと同情の顔でエドを見つめる。

 

だが、エドがその同情で癒されると事は無かった

 

『………大丈夫です。きっと、エドワードさんの弟は生きています……』

 

プレセアがその言葉を出すと、エドは怒りの表情でプレセアを睨みつけた

 

『…………アルはお前を庇った。このまま食べられても、アルは後悔は無い。それは許す……だけどな』

 

エドは立ち上がり、プレセアの方へと歩み寄る。

 

後ろで、大きな化物の動きがだんだんと鈍くなっている。

 

歩く音と共に、

 

エドはプレセアの頬に向かって思いっきりぶん殴った。

 

吹っ飛ばされたプレセアは、地にまず尻をついて、そして背中が地についた。

 

『何が起こってもその無表情のまま、ただ済ますようなてめぇがムカツク!!』

 

エドの顔は、怒りで染まる。

 

その様子に、ジーニアスはフォローに回った

 

『エ……エドワードさ』

 

『良いか!!俺はなぁ、てめぇのような機械みてぇな無愛想なガキは嫌いだ!!!二度と俺に声をかけるな!!!!!』

 

エドのその言葉に、プレセアの表情が、少しだけ動いた。

 

目が、少しだけ見開いたのだ。

 

エドの腕が振るえている。

 

後ろの化物は、鈍くなる行動が終わった。

 

多分、飲み込んだのだろうか。

 

『おい……芋虫のクソ野郎……』

 

エドは、何も思わぬ化物を睨みつける

 

『てめぇの墓場、ここで作ってやるよぉおおおおおおおおおお!!!!!!』

 

エドは、地を練成して大きなトゲを練成する。

 

そのトゲは、見事化物の腹を貫通し、背からトゲの先が現れる

 

『うらぁああああああああああああ!!!!』

 

エドは、さらに化物の所々にトゲを練成し、貫通させた。

 

ジーニアスとコレットは、プレセアを心配するように近づいた。

 

『プ……プレセア……』

 

ジーニアスは、一瞬言葉が引っかかったが、心配するように声を駆ける。

 

先ほどの言葉がショックだったのか、プレセアの表情は、いつもよりも暗くなっていた。

 

『………………』

 

声も、まるで失っているかのように何も語らなかった。

 

『……でも、エドも酷いよ……。あそこまで言う必要なんか……』

 

コレットがそう呟くと、ジーニアスは首を横に振った

 

『……弟を失ったんだ。感傷的になってもしょうがないよ。』

 

と、エドの気持ちを知った上で呟く。

 

そして、エドの方に振り向く

 

エドは、未だに一人で化物と闘っている。

 

叫びながら、狂ったように地から攻撃的突起物を練成し、確実にダメージを与えている。

 

『ちったぁ……弱りやがれってんだぁあああああああああ!!!』

 

エドがいくつもの練成をして化物を攻撃しても、どうしてもすぐに回復し、傷がなくなる。

 

その途方も無い攻撃に、エドはさらに怒りを露にした。

 

『エドワードさん!!』

 

後ろで、ジーニアスの声が響く

 

エドは振り向く暇が無く、そのまま闘ったが、

 

瞬間、後ろから多数の氷の槍が発射された

 

『フリーズランサー!!!』

 

『ううぇああ!!!』

 

エドは、その突然に驚き避けたおかげで、全ての攻撃は化物へと当たった。

 

その唐突さに、エドはジーニアスに切れかける

 

『何すんだてめぇコノヤロォオオオ!!!』

 

『その巨人は、おそらく打撃の技は効かないよ!!内からも響く攻撃を与える必要があるんだ!!』

 

ジーニアスの氷の弾を受けた化物は、受けた場所が凍って動けなくなっていた

 

『ほう……そう言うことか!!』

 

エドは、ある事を思いだす

 

そして、ジーニアスに指示を出す

 

『おい!!こいつを動けなくなるまで魔術で攻撃しろ!!』

 

エドがそう指示すると、ジーニアスは静かに頷き、返事をした

 

『動きを止めるなら、私にまかせて!』

 

コレットはそう言って、呪文を唱え、数秒後に光を発し、唱える

 

『ピコハン!!』

 

すると、ピコハンが上から落ちてきて、魔物の上に落ちる

 

ピン という可愛い音が響き、そのままピコハンは地に落ちる

 

化物に変化は無い。

 

10秒経っても化物に変化は無い

 

『もういいよコレット。ありがとう。』

 

『ゆっくり休め。むこうでな。』

 

エドとジーニアスは、温かい目でコレットを見つめて言葉をかけた。

 

そしてコレットはプレセアと一緒に体育すわりで落ち込んだ

 

『行くよ!!エドワードさん………!!』

 

ジーニアスは、溜めるように呪文を唱える。唱え続けていた。

 

その間に、エドは自分に気を向かせるために魔物に攻撃をする。

 

貫通したトゲは、化物の動く力によって粉砕された。

 

自由になった化物は、お構い無しにエドに向かって襲い掛かる

 

『動くなっての!!』

 

エドは、再び地からトゲを練成して、化物を貫通させた。

 

それで化物は再び自由を失った

 

『よっしゃぁ!これでも喰らえ!!』

 

エドは、さらに突起物を化物に向かって練成した。

 

その突起物は、見事に化物の皮膚を貫通して、身体の中に入ったが、おそらくこのままでは効力は無い。

 

瞬間、化物の体から長い手が飛び出す

 

『!!?』

 

エドは、その唐突さについていけず、すぐに手に捕まってしまった

 

『しま……!!』

 

このままでは、ジーニアスの術に巻き込まれるか、化物に食われてしまう

 

練成しようにも、手は体と一緒に包まれ、動けない

 

『くっ……そ!!!』

 

エドは恐ろしい形相で化物を見た。

 

化物の口からは、大量の涎が流れている。

 

瞬間、目の前に大きな斧が振り下ろされる。

 

『!!?』

 

そして、エドを掴んだ手は化物の体から分離される

 

離されたエドは自由になり、まずは地に落ち、尻餅をついてから手を振り回す。

 

目の前には、プレセアが斧を持っていた

 

『お前が……?』

 

エドが声をかけても、プレセアは声を発することは無かった。

 

どうやら、エドの言った”二度と俺に声をかけるな!!!”というのを忠実に守っているようだった。

 

エドは、そのプレセアに頭を掻く

 

『……お前のそういう所が機械らしくて嫌いだ』

 

エドはそう言うと、プレセアを歩いて通り過ぎ、通り過ぎる瞬間声をかけた

 

『助けてくれて、あんがとな。離れてろ』

 

エドがそう言った瞬間、プレセアはエドの方に振り返る。

 

エドは、プレセアの方を見ていなかった

 

『ジーニアス!!』

 

エドがそう声を駆けると、ジーニアスはニヤリと笑った

 

そして、大きく手をかかげた。

 

『インディグネイション!!!!!!!』

 

瞬間、大きな雷が化物の場所へと振り下ろされる。

 

化物の断末魔が、森全てに響くようだった。

 

その雷は、すぐに存在を消し、残ったのは焦げた化物だった

 

『今だ!!!』

 

エドは叫び、動かない化物の前に立った。

 

そして手を叩き、その化物を練成した。

 

分解の部分で止め、その場所には化け物のドロドロした液体しか残らなかった。

 

所々、赤黒い血が混ざっているが、

 

あれ程大きな化け物が、一瞬で消えた。

 

その大きな所業に、ジーニアスは呆然とした。

 

リフィルは、その技に興味を持つ

 

『………自業自得だ。ざまあみろってんだ』

 

エドがそう呟いた瞬間、声が響いた

 

―――兄さぁぁぁん………

 

一瞬、聞き間違いかと思ったが、確かに聞こえた。

 

エドにとって、一番近い存在の声が

 

『………アル?』

 

―――兄さぁぁん……助けてぇぇぇ……

 

『アルゥ――――!!!!』

 

エドの表情は明るくなり、そのドロドロの液体に近づいた

 

『アルフォンス……生きてるの!?』

 

コレットが、嬉しそうな声でドロドロした液体に近づく。

 

コレットとエドが二人でドロドロした液体を掻き分けていくと、鉄の感触がコレットを感じる

 

『……アルフォンス!』

 

コレットはその鎧の腕を掴み、引き上げる。

 

『ぷはぁ!!!死ぬかと思った!!!!』

 

アルフォンスは、大きく息を吐くように起き上がる。

 

『あーあー……汚いなぁー……』

 

すると、身の回りについたドロドロした物を手で払っていく。

 

その様子を見たエドは、笑顔でアルを蹴り飛ばす

 

『うわぁ!!』

 

『心配かけやがってよぉ……。よく無事でいたな!!!!』

 

エドの笑顔に、アルも少しだけ笑う声を出した。

 

そしてコレットを見る。コレットも笑顔になっていた。

 

コレットの笑顔で、アルはある事を思い出す

 

『あ、そうだ兄さんに話があるんだけどさ』

 

『ん?』

 

『この前、コレットに暴言吐いたよね?それを謝って欲しいんだけどさ……』

 

アルの言葉に、エドは首を傾げる?

 

『は?俺言ったっけか?』

 

『言ったよ!!もう………』

 

兄の記憶力の無さに呆れ、アルは溜息を吐く。

 

そして、エドはコレットに面を向く

 

『あ―――……なんだ。多分俺、知らねぇ内に傷つく言葉言ってたなら謝る……けどよぉ』

 

エドは、アルの背中を叩く

 

『気にするな!全部が本気で言ってるわけじゃねぇ。一時的の憤りを真に受けること無い!!アルが一番知ってるんじゃねえのか!?』

 

今のエドは機嫌が良いのだろう、寛容な言い方だった

 

『もう……兄さんたら。』

 

その気分屋に、アルは笑顔交じりの溜息を吐く

 

『うん!ありがとう…エド。私もこれからは、もう少し努力してみるよ。』

 

コレットが、満足した笑顔でエドに微笑をかける

 

エドも、もう許したらしく笑顔になった

 

『あぁ……謝ると言えば……』

 

今度はジーニアスが、エドの服を引っ張って呼ぶ

 

エドがジーニアスの方を見ると、プレセアの方に指を指して

 

『プレセアに言ったことも、謝って欲しいよね…。』

 

ジーニアスは、プレセアに暴言を吐いた事を一応気にかけているらしく、

 

エドにその話を持ちかける。

 

だが、エドは

 

『は?』

 

としか答えなかった。

 

その答えに、一番怒ったのはアルだった

 

『兄さん!!なんでも人を傷つける言葉を吐かないでよ!!吐いて一番困るのは……!!!』

 

『分かった!!分かったよ!!………わり!!勘弁な!!』

 

『もうちょっと深く謝ってよ!!』

 

その圧倒的な弟の怒りに、プレセアはただ単にじっと見つめる。

 

そして、微小ながらの微笑みをかけた。

 

『………それでは、これからはちゃんと声をかけます。エドワードさん。』

 

プレセアがそう言葉を発すると、兄弟喧嘩は終わり、プレセアの方を見た。

 

そして、二人は大人しく離れ、自信たっぷりに立ち上がる

 

『………よし。まぁこれで依頼も終わりだな。』

 

エドはそう言って、所々に散らばっているドロドロした液体を見つめる

 

『………それにしても、こいつは一体なんだったんだ?』

 

『さぁ、………何かの新らしい種類の生物なのかな…。』

 

コレットのその言葉に、リフィルは反応する

 

『だったら……私達はとんでもない事をした事になるわね』

 

『しょうがねぇじゃねーか!!こいつは俺達を襲おうとしたんだぜ!?人を襲うと言えば尚更だ!!』

 

エドがそう言うと、リフィルは溜息を吐き、諦めた表情をする。

 

その反応に気づいたエドは、安心した表情になり、帰り道の方角を見る

 

『………そういえば、あのチャラチャラ野朗はどこに言った?』

 

そのチャラチャラ野郎で瞬時に分かったのか、ジーニアスが真っ先に答えた

 

『やる気の無い人たちを置いていったから、そのやる気の無い人を置いていった場所に居ると思うよ』

 

『……何やってんだあの野郎は……。』

 

エドは呆れた表情をする。

 

『良い大人が、俺達子供に巨人を闘わせるなんざぁ、女口説きには使えねぇなぁ。』

 

『………そういえば、エドワードさんの年は幾つなんですか?』

 

プレセアがそう言った瞬間、エドは普通に答える

 

『15』

 

『15?』

 

ジーニアスが、疑問の声を出す

 

『15………ですか。しかし、身長からすると、平均年は約13歳程度で……』

 

『やっぱり俺………お前が嫌いだ!!!』


 
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