No.256636

Sisiter Horn(仮) 5

逆神喧云さん

全センテンスで随時視点スワップでも入れてみるかなあ。
テキストログにそれが反映され、プレイヤーがその組み合わせを作っていくように。
でもリズム壊れかねないから難しいところだし、ログの割り振りとか技術的な検証が必要か。
特定の視点誘導したルートのみ発生する分岐、ってのまで考えて拡張するとさらにめんどくさくなる。
そもそもそこでプロット上重要になる叙述トリックを仕込めるか、という前提がありそっちの方がめんどくさそう。

2011-08-03 02:58:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:491   閲覧ユーザー数:464

 

 

みんなは隠してるけど、本当は気付いてる。

わたしは、人間じゃないってこと。

お父さんもお母さんも、てるくんも隠しているから、知らない振りをしてるけど。

昔、家族で海に行った時のこと。

お父さんとお母さんの調査についていって、家族だけで南の海で過ごした。

わたしの角はどんどんと大きくなって、陸上での生活が辛くなってきたから。

その頃、わたしは不安定だった。

お父さんの隠してたわたしについてのレポートを見て、自分が人間じゃないことを知った。

そのあとからだった。水に入っていると、ざわざわする。

負担を考えて、水に浸かっていなくてはいけないのに水の中だとなにか……声にならない何かが、角の中に絶えず聞こえてくるのだ。

それは、なんだかわたしに話しかけてくるようで……落ち着かないと同時にとても気になる、不思議な感覚だった。

てるくんと二人、岩場で遊んでいた時も、それは聞こえていた。

子供だけで入ってはいけないと言われていた、鍾乳洞近くの岩場の探検。

普段ならそんなことはしないはずなのに、海の近くなら自分は大丈夫っていう変な自信があったのを憶えてる。

もしかしたら、あのざわざわにそそのかされたのかもしれない。

海は、わたしの味方だった。

海の水に浸かっていると、波の来るタイミング、流れの強さが手に取るように解った。

わたしたちは、誘われるように、海中を進んだ。

そして―――わたしはそのざわざわに気をとられてて、視界からてるくんが消えたことに気付けなかった。

わたしは自分の愚かさを呪った。

わたしにはよくても、てるくんにはそうでないことに気がつけなかった。

見える範囲にいないのであれば、水の中。

お父さんとお母さんとよんでくる余裕がないことくらい、その頃のわたしでもわかった。

微かな光しかない水の中へ闇雲に潜る。

奥に潜れば潜るほど、ざわざわは大きくなっていく。

「もう、やめて!!」

叫ぶように念じたのと、誰かに引っ張られるような感覚がきたのは同時だった。

その見下ろした先に、小さな手が見えた。

縦に開いた穴の中に落ちていたのだ。

必死に手を伸ばすが、小柄なてるくんはわたしの手の届かないとこまではまり込んでいた。

身を乗り出そうとして、鈍痛が走る。

岩に、角が引っかかっていた。

右角の、先っぽ。そこがじゃまで、わたしの手はてるくんに届かない。

わたしははじめて、自分の身体を呪った。

自分の角を呪った。

こんな角があるから……こんな角がなければ……

そんなことをしている間にてるくんのてはゆらゆらと揺れている。

他に方法はない。わたしは、その岩に角を打ち付けた。

ぞり、という音。

神経に直接響く鈍痛。

身体の中から、なにかが流れ出ていくような恐怖。

それでも、てるくんを失うことに比べたらなんてことはない。

わたしはもう一度おおきく角を振りかぶって―――

真っ赤な、音が聞こえた。

そこから先の記憶は途切れ途切れだ。

ぐったりしたテルくんを連れて、お父さんとお母さんのところに辿りついてから、わたしは何日か寝込んだ。

角の中に入った海水での炎症が治まるまでの間、わたしは夢を見ていた。

ほとんど内容は憶えていないけれど……多分、海の夢を。

目が覚めたわたしを、ベッドのとなりで泣きながらむかえてくれたてるくん。

その時はじめて、わたしにとってのてるくんと同じくらい、てるくんにとってわたしは大事なんだって気がついて、一緒になって泣いた。

だから、一生をかけて……てるくんのためになにかをしたいって誓ったのだ。

それから、水に入ってもざわざわは聞こえなくなった。

今にして思えばあれは、わたし自身がてるくんやお父さんお母さんへ作ってしまった壁だったのかもしれない。

 

 
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