No.253579

真・恋姫†無双~恋と共に~ 外伝:こんな勘違い

一郎太さん

いつの間にか投稿数が100の1歩手前まで来ていたので、一旦本編を止めて外伝を投稿させて頂きます。

祝☆100投稿!

という訳で、いつもの外伝。

続きを表示

2011-08-01 21:00:50 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:10457   閲覧ユーザー数:7365

 

こんな勘違い(あながち勘違いではないのかもしれない)

 

 

時間の区切りにはどこの学校でも流れるようなチャイムの音が、黒板の上に設置されたスピーカーから流れる。1学期最後のテストも終わり、あとは夏休みを待つだけという事で周りの生徒たちはそれぞれのグループで賑やかに話をしている。

 

そんななか、一人の少女は物憂げな表情で頬杖をついていた。片目にはモノクルがかけられ、頬を置いている手はサマーセーターの長く余った袖で覆われている。見た目とは異なり、それほど暑くはないようだ。

 

「………はぁ」

 

思わず溜息が漏れる。テスト中も何やら問題とは別の考え事をしてしまっていたが、それでも出来がいつも通りなのは、彼女の実力故だろう。もう一度溜息を吐こうとした時、背中を叩かれその溜息を呑みこむ。

 

「お疲れ様でした!亞莎は今回も1番ですか?」

「明命ですか…」

 

彼女―――亞莎に声をかけてきたのは同級生であり親友でもある明命だった。台詞とは逆に、その声色は厭味でもなんでもないものである。テストの重圧から解放されて、明命はいつも以上にニコニコとしていた。

 

「………あらら、元気がないですね。出来が悪かったのですか?珍しい」

「いえ、テストは大丈夫だったんですが………はぁ」

 

机の前に回り込んで心配そうにのぞき込む親友に、図らずも溜息を吐いてしまう。相当重傷のようだ。

 

「これは重傷ですね………そうだ!これからいつものお団子屋に行きましょう!悩みがあるならまずは腹拵えです。テスト勉強も手伝ってもらいましたし、今日は奢ります!」

「それは魅力的な提案ですが、その………」

「いいからいいから!さ、行きましょー!」

「え、えと…えぇぇっ!?」

 

勉強では勝っていても体力ではそうでもないらしい。明命に引き摺られる亞莎にできた唯一の抵抗は、自分の鞄を手に持つ事だけであった。

 

 

 

 

 

 

「ん~、やっぱりこのお店の胡麻団子は美味しいですねー」

「そうですね」

 

よく訪れる団子屋で、はむはむと幸せそうに胡麻団子を頬張る明命につられて、亞莎も思わず笑顔になる。揚げたての胡麻団子を口に運びながら、それでも亞莎はとある事を考えてしまう。そんな様子を見破ったのか、明命は冷たいお茶で団子を呑みこんでから亞莎に声をかけた。

 

「さて、それでは亞莎のお悩みを聞く時間がやって参りました!」

「えぇっ!?でも、その簡単に言えるような悩みではなくて………」

 

色々と言い訳をするが、ニコニコしっ放しの明命にとうとう亞莎は最近思い悩んでいる事を口にする。

 

 

初めてあの人と出会ったのは、1か月ほど前です。大学の図書館でした。…はい、明命も知ってるその大学です。棚の上にある本を取ろうとしてたら、その人が手伝ってくれたんです。その時は知らない男の人に話しかけられて逃げてしまいましたが………。

 

それで閉館時間まで勉強をして帰ろうと図書館を出たら、その人が入り口の所にいたんです。何してるんだろう、って不思議に思ったらどうやら傘がなかったようで。………その時の私はどうかしてたんだと思います。

 

『よかったら一緒に帰りませんか?』

 

気付いたらそう言ってしまっていました。それで、その一緒に帰る事になったんです………あ、はい…相合傘で………………ちょっと、明命!あまりからかわないでください!

 

………まぁいいです。で、途中まで一緒で、彼――― 一刀さんと色々と話しました。あの大学に通ってる事とか、家が実はご近所さんだった事とか。話を聞いていても楽しいし、それに、その…カッコよかったです、はい………。

 

そして、もうすぐ家に着こうという時でした。角から可愛らしい女の子と、綺麗な女の人が出てきたんです、彼に声をかけながら。そして、その2人はこう言ったんです。

 

『うちの旦那』 『おとうさん』

 

………私は頭が真っ白になって、自分では覚えてないのですが一刀さんに何やら失礼な事を叫びながら逃げてしまいました………………いえ、その『お父さん』とか『旦那』というのは誤解だったと後日わかったのですが、その、それからなかなか謝る機会がなくて。

 

………図書館ではよく見かけるんです。なんというか、目立っていて。でも、あの日の事を謝ろうと思って近づこうとすると、段々と彼が眩しく見えてきて………結局謝れずじまいで。それで、どうすればいいのかな、って………。

 

 

 

 

 

途中明命の質問に応えながらも、亞莎は一気に語り終えた。ふぅ、と一息ついてお茶を口に含む亞莎に、明命ははっきりと言い放った。

 

「なるほど、亞莎はその一刀さんという方が好きなのですね!」

「ぶばっ!?」

 

そして亞莎は茶を噴出した。

 

「ごほっ、ごほっ!………どうしてそういう結論になるのですか!?」

「えー?だって近づきたくても近づけないんでしょう?きっと好きすぎて緊張してるからだと思います!」

「確かに緊張はしますが、だからといって好きという訳では………」

「でも、他にも大学生はいっぱいいるのに、一刀さんだけが目につくのですよね?」

「それはそうですが………うぅぅ………………」

「それとも嫌いなのですか?」

「い、いえ、そういう訳では………でも、まだ一刀さんの事をそんなに知ってる訳ではないですし………」

 

その言葉に、明命は顎に手をあてて考え込む。

 

「み、明命………?」

 

亞莎の呼びかけにも応えずに無言のまま考えていたが、ぱっと顔を上げると、胸を張ってこう口にした。

 

「わかりました!では私がお手伝いします!これから一刀さんの事を調べに行きます。彼がどんな人なのかちゃんと見極めて、それから告白するか決めましょう!」

「へ?………えぇえぇぇええええっ!?」

 

彼女の思考回路を親友は理解できない。

 

 

 

 

 

 

会計を済ませて店を出た2人は街を歩く。目的地は彼女達もよく知る場所で、道を進む脚に迷いはない。いや、片方の少女の足取りは重い。

 

「でもでも、大学生の彼氏なんて素敵です!」

「はぁ……でも、最初に話した、女の子を連れてた人が彼女さんかもしれないんですよ?」

「この世には略奪愛という言葉があるのです!だから問題ありません!」

「はぁ………」

 

この日何度目になるかわからない溜息を吐きながら、亞莎は隣を歩く親友に想いを馳せる。彼女の行動力は長所でもあるが、たまにこうして暴走する事がある。しかし、正直なところを言えば彼の事はもっと知りたいと思っていた。ただ、明命に話したように、会ってしまえばそれはそれで緊張してしまうのもまた事実だ。相反する感情に悩まされながら歩き続ける亞莎は、視界に入ってきた人物に固まった。

 

「―――それでですね………って、亞莎?」

「………………」

 

その様子に気づいたのか、明命は喋る口を止めて彼女を見る。亞莎は視線を一点に注いだまま固まっていた。その視線の先を追えば、1組の男女。男性の方はジーンズにTシャツというラフな格好をし、桃色の髪の女性の方はデニムのハーフパンツに半袖の白いパーカを着ていた。2人とも気の置けない仲なのであろう。女性の方がひっきりなしに笑顔で話しかけ、男性はそのひとつひとつに笑みを浮かべながら受け答えをしている。

 

「もしかして、あの男の人ですか?」

「………」

 

明命の問いに応える代わりに、亞莎は親友の手を引いてすぐ傍の店の影に隠れる。

 

「ちょ、ちょっと亞莎!?」

「しっ!確かにあの人が一刀さんですけど、でも………」

「でも?」

「最初に会った人とは違います………」

「それって―――」

 

いったいどういう事なのだろう。亞莎も明命も女子高に通う生徒であり、世の恋愛事情には疎い。彼を指して『旦那』と言った女性が彼女だとしたら、いま彼の隣にいる女性とはどういう関係なのだろうか。彼女でもないのに、あんなに楽しそうに話が出来るのだろうか。そのような疑問が、2人の頭のなかをそれぞれ巡っていた。

 

「あの人が彼女なのかな………」

「それは…どうなんでしょう………?」

 

2人が小声で話す間も、2人は歩みを進め彼女らの前を通り過ぎる。当然だが2人には気づかない。そのまま歩き、姿も見えなくなろうかという頃、明命は思い切って言った。

 

「追いかけましょう!」

「えぇえええっ!?」

 

俗に言うストーキング行為である。

 

 

 

 

 

 

2人はカップル(暫定)を見失わない程度の距離を保って後をつける。視界の先では今まで通りに楽しそうに話しを続ける男女。雰囲気は、どこからどう見てもカップルのそれだった。5分くらい歩いたろうか――――――。

 

「あ、止まりました」

「………どうやら此処で別れるようですね」

 

見れば、丁度交差点の所で2人は向き合って何やら話している。そして、信号が変わると同時に女性は道路を横断し、男性はその背を見送ってビルの角を曲がって行った。

 

「亞莎、行きますよっ!」

「は、はひっ」

 

明命は友の手を取って小走りに進む。亞莎も転ばないようにと脚を速めた。

 

 

「あれ、立ち止まりましたね」

「そうですね………」

 

5分ほど歩いたろうか、商店街に入ったところで男は立ち止まった。携帯電話を見るでもなし、その視線は少し先に注がれているようだ。

 

「何を見ているのでしょう?」

「さぁ……あ、また進み始めましたよ」

 

しかしすぐにまた足を動かして進む。そして、10mも歩かない内に1人の女性の隣に並んだ。その手にはスーパーの袋を抱えている。彼の登場に少し驚いたようであったが、すぐに笑顔になると彼に手に持ったビニール袋を手渡した。彼も躊躇う事なくそれを受け取り、2人は並んで歩き出す。

 

「………どう見ても年上ですよね」

「というか熟女に域に達しているような………」

 

明命は見たままの感想を言った。その雰囲気は街を行き交う若い女性とは異なり、独特の落ち着いた雰囲気を醸している。しかしながらそのスタイルは年月に対抗するには十分な力があるようで、周囲の女性が霞んでしまうほどだ。

 

「奥さん、でしょうか………」

「えぇっ!?流石に齢が離れすぎているような気がしますけど」

「でもでも、一緒に買い物袋を持って歩くなんて夫婦オーラがびんびんです!」

「明命ぃ…」

 

親友の言葉に、亞莎は泣きそうな顔になる。それでも、視界の先を進む2人を見るとそれに対抗出来る言葉を思いつく事は出来ない。

 

「とりあえず、もう少し様子を見ましょう」

「はい…」

 

そんな彼女を励ます様に明命が促し、亞莎もそれに追随する。

 

 

しばらく歩いて商店街を抜け、2人はとある居酒屋の前で立ち止まった。女性は男性にもう1つの袋を預け、鞄を探って鍵を取り出す。そして、居酒屋の隣に並立する民家の扉を開けて中に入る。彼もまた、その後に続いた。

 

「あぁぅぅ……やっぱり夫婦です………あそこがお二人の愛の巣なのですね」

「そんな言い方しないでくださいよ、明命」

 

その自然な流れに、2人はついに確信してしまう――――――

 

「………って、あれ?」

 

――――――のは少し早いようだった。中に入ったと思われたが、男性の方はすぐに出てきて、女性に見送られてその家を離れる。

 

「………明命?」

「ど、どうやら荷物運びを手伝っただけのようですね………」

 

ジト目で睨む亞莎に、あたふたと返す明命であった。

 

 

 

 

 

 

さらにストーキングをする事10分。すでに住宅街に入っている為、2人は民家の塀に隠れながら尾行を続けていた。そして再三彼は立ち止まる。

 

「また止まりましたね」

「公園の方を見ているようですが………って、あぁっ!?」

「これはこれは、大胆ですね………」

 

公演の前で立ち止まったかと思うと、彼に向かって飛び出す2つの影があった。身長や顔つきから判断するに小学生だろうか。2人の少女は左右から男性に飛びつき、赤いTシャツを着た黒髪の少女は男の首に手を回してぶら下がり、白地に青い文字の書かれたTシャツを着た少女は、反対側の彼の腕に自身の腕を絡ませる。

 

「熟女好きかと思いましたが、まさか………………ロリコン?」

「や、やめてくださいっ!一刀さんのイメージがぁ…」

「でもでも、年下好きなら亞莎にもチャンスがあるのでは!?」

「へ?あの、その…あぅぁぅ………」

 

そんな会話は露知らず、男は2人の少女に左右の手を引かれ、公園の入口をくぐる。亞莎達も入口に設置してある石柱に身を隠して園内を覗き込んだ。そして、さらに驚く事となる。

 

「………なんかちっちゃい子が増えてますね」

「3倍になっちゃってますよっ!?」

 

そこにはさらに4人の少女がいた。先の2人より背の低い少女はベンチに座って読書をしていたようで、その膝には開きかけの分厚い本が置いてある。しかしその視線は彼を見上げ、笑顔だった。その隣のベンチには色白の少女と眼鏡を掛けた気の強そうな少女が座っている。眼鏡の娘は何やら彼に対して何やら突っ掛かっているようであり、その隣の娘はその光景を眺めてくすくすと笑っていた。

 

「何やらハーレムですね」

「確かにモテそうな方ではありますけど……これは流石に」

 

その光景を遠巻きに眺めて明命は何やら感心し、亞莎は溜息を吐いていた。

 

 

15分くらいだろうか。6人の少女達との会話を終えた男は軽く手を振って彼女達に別れの挨拶をすると、彼女達に背を向けた。

 

「拙いです!こっちに戻ってきますよ!」

「は、はやく隠れないと……」

 

間一髪であった。一刀が丁度公園を出て道路が視界に入ると同時に亞莎達は一つ前の隠れ場所に戻る事に成功する。

 

「………危なかったですね」

「ふぅ…」

 

2人はほっと安堵の息を吐くが、すぐに当初の目的を思い出すと、再び路地から顔を出す。

 

「あぁ!早く行かないと!」

 

見れば彼が丁度角を曲がるところだった。2人は走ってその後を追い、再び尾行を開始する。

 

 

 

 

 

「それにしても一刀さんという方は相当守備範囲が広いですね」

「あれが全員彼女なんですか!?」

「………だったらどうしましょう」

 

通常なら有り得ない推測だったが、亞莎は何故かそれを撥ね退ける事ができない。しばらくの沈黙の後、彼女は話題を変えた。

 

「………そろそろ陽も暮れてきましたね」

「お腹が空きました………はっ!?ウチのお猫様にご飯をあげなければっ!」

「ちょ、ちょっと!もう少しだけ付き合って下さいよぅ」

 

空は紅く染まりかけている。周囲の家々からは夕食の支度中だろうか、料理のいい匂いが漂ってきていた。だが、どうやらこの尾行劇も終わりが来たようである。男はとあるマンションのエントランスをくぐると、インターフォンのボタンを操作した。自宅であれば必要のない行為である。

 

「お知り合いの家でしょうか?」

「あれ…このマンションって………」

 

明命は疑問を口にし、亞莎はふと何かを思いついていた。すぐに目的の部屋の住人は対応に出たらしい。自動ドアが開いて男はその中へと入っていった。

 

「どうします?追う事は難しそうですが………」

「ちょっと待ってください」

 

明命の声を押しとどめ、亞莎は塀の影からじっとマンションを見上げる。マンションの部屋の玄関は道路に面している。1階でない限り、どの部屋に入るからはこの場所から観察できる。

 

「亞莎?」

「………………」

 

しばらくして、男は建物の端の階段から顔を出した。そして通路を進み、とある部屋のドアを開いてその中へと入る。

 

「あの部屋って、まさか………」

「亞莎?」

「………………帰りましょう」

「えぇっ?………って、亞莎、泣いているのですか?」

「………………」

 

親友が何を確信し、何を考えているのかはわからない。しかし、その目に光る粒に、明命はそっと彼女の手を握った。

 

 

 

 

 

 

2人はそのまま亞莎の自宅へと戻っていた。明命は彼女の幼馴染であり、勝手知ったる馴染の家である。亞莎の母親が用意してくれたジュースを飲みながら、部屋でぼうと過ごす。無言のなか、時計の針が進む音だけが耳に届く。しばらくそうした後、明命は思い切って切り出した。

 

「それで、何かわかったのですか?」

「………」

「こういうのは言ってしまった方がいいと思いますよ。私は亞莎のお手伝いがしたいのです」

「明命…」

 

いつもニコニコとしている親友の真面目な表情に、もう一度涙を流し、口を開いた。

 

「実は、最後に一刀さんが入っていったあの部屋………私、知ってるんです」

「そうなんですか?」

「はい。明命も私が家庭教師の先生に勉強を教えて貰ってる事は知ってますよね?」

「確か1度お会いしましたよね。冥琳さんでしたっけ?」

「そうです。あの部屋………先生のお部屋なんです。前に1度遊びに行かせて貰った事があって………」

「そうなんですか」

「はい。それで、先生も一刀さんと同じ大学ですし、学年も、たぶん一緒です」

「という事は…」

「きっとそうです。先生は凄く美人で頭が良くて、スタイルだって凄いですし、あんな美人を男の人が放っておくわけがありません………」

 

明命は思わず口を噤んでしまう。携帯の写メを見せて貰った事もあり、彼女の家庭教師の事は知っていたからだ。確かに超絶的な美人だったし、同性の自分ですら惚れてしまいそうだった。そんな明命の様子には気づかずに、亞莎は話を続ける。

 

「それに、授業の休憩の時によく話してくれるんです。大学での事や友達の事。1番話に出てくるのは先生の幼馴染さんでしたが、たまに男の人の話も出てきて………その人の話をする時、先生すごく優しい眼をしてるんです。それで、先生はきっとその男の人が好きなんだろうなぁって………まさか一刀さんだとは思いませんでしたが」

「そうですか………」

 

そして亞莎は静かに涙を流し始める。いまだ恋をした事のない明命には、それを慰めるだけの力はなかった。

 

 

 

 

 

 

――― 舞台裏 ―――

 

「でさぁ、恋ったらあれで調子に乗っちゃって、今度は焼肉食べ放題がいいって言うのよ?」

「雪蓮が変な事を教えるからだよ」

 

大学の授業も終わり、俺は雪蓮と街を歩いていた。恋は璃々ちゃんの迎えの為に先に帰り、冥琳はひとつ早く授業が終わっていた為、先に帰っていた。霞は確か部活の日だった筈だ。

 

「まぁ、おかげで一刀をまた借りれるんだけどね」

「勘弁してくれ………」

 

俺の知らないところでされている取引に、俺は苦笑する。恋も大胆になったよ、ったく。

 

「っと、あたしバイトがあるからこの辺でね」

「あぁ、頑張ってな」

「任せなさい!」

 

交差点で雪蓮と別れ、俺は家へと向かう。

 

 

「あれは………」

 

少し歩き、商店街に入ったところで見慣れた後ろ姿を見つけた。買い物帰りなのだろう。その手にはスーパーの袋を持っていた。けっこう中身が入っているようだ。俺は少し歩を速めて声をかけた。

 

「持つよ、祭さん」

「おぉ、一刀か。助かるぞ」

 

少し驚いた様子だったがすぐに俺とわかり、片方の買い物袋を渡してくる。こういう遠慮ないところが結構気に入ってたりする。

 

「なんじゃ。今日は独り身か?」

「さっきまで雪蓮と一緒だったんだけどね。バイトがあるって本屋の方に行ったよ」

「そうかそうか」

 

そんな事を話しながら彼女の店へと到着し、その隣にある別の入口に入る。玄関にビニール袋を置くと、祭さんに見送られながら俺は家を出た。

 

 

「かぁずとぉぉおおおおっ!」

「一刀さぁぁん!!」

 

公園に差し掛かったところで名前を呼ばれる。声の方を向けば、春秋姉妹が駆け寄ってくるところだった。

 

「おぉ、秋蘭に春蘭ぐぼぁっ!?」

 

声を掛けようとしたところで2人は俺に飛びついてくる。変な声が漏れてしまった。

 

「いてて…もう少し大人しくしてくれ………」

「一刀のくせにうるさいぞ!」

「いまね、月さんや朱里ちゃん達と遊んでたの」

「月たちもいるのか?」

 

春蘭を首にぶら下げ、秋蘭に腕を取られながら公園の中を眺めれば、ベンチに朱里と雛里、月と詠が座っていた。4人もこちらを見ている。秋蘭に引っ張られ、俺は苦笑しながら公園へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

「相変わらずのロリコンっぷりね」

「相変わらずのツン子ちゃんっぷりだな」

「うるさいわよっ!」

 

開口一番、詠が睨みながらそんな事を言ってきたので言い返す。おぉ、怖い怖い。

 

「ふふ、詠ちゃんもホントは春蘭ちゃん達みたいに抱き着きたいんだよね?」

「な、そんな訳あるかぁ!」

 

月がからかい、詠が顔を赤らめて否定する。いつも通りのようだ。

 

「朱里と雛里は相変わらず勉強か?」

「はい。今日は図書館に行ってたんです」

「それでその帰りに春蘭ちゃんたちと会って」

「なるほどな。無理矢理引っ張ってこられた訳か」

「あ、あわわ……そんな事ないでしゅ、ないですぅ………」

 

俺が冗談交じりに言うと、雛里は慌てたように否定する。噛んでいた。

 

「先生は今帰りなんですか?」

「あぁ。これから冥琳の家に行くところなんだよ」

 

朱里の質問に応える。今日は前々からの約束を実行する日だった。

 

「今夜は冥琳か。相変わらずの女たらしね」

「はわわっ!?」

「あ、あわわ………」

「こらこら。変な事言うから俺の生徒が何やら勘違いしているじゃないか」

「ふんっ、事実を言ったまでよ」

 

そっぽを向くが、その頬はわずかに赤い。恥ずかしいなら言わなければいいのに。と、今まで首にぶら下がりっ放しだった春蘭が口を開いた。

 

「そんな事より、一刀も一緒に遊ばないか?」

「うん、一緒に遊ぼ」

 

秋蘭も腕を引っ張って催促してくる。

 

「誘いはありがたいけど、冥琳との先約があるからな」

「残念。今度はちゃんと遊んでよ?」

「あぁ、夏休みに入ったらまた時間が出来るから、その時にな」

「うん」

 

少し残念そうな顔をする秋蘭の頭を撫でてやると、嬉しそうに返事をしてくれる。それから少し6人と話した後、俺は公演を後にした。

 

 

目的のマンションに到着した俺は、インターフォンのボタンを操作する。

 

「冥琳か、俺だ」

「あぁ、待っていたぞ」

 

すぐ隣の自動ドアが開き、階段を上る。いつもの部屋のチャイムを押して、俺は部屋の中へと入った。

俺を出迎えた冥琳の足下には、そこそこの大きさの段ボールが2箱。

 

「もしかして、これいっぱいに入ってるのか?」

「あぁ。大きさはまちまちだったから隙間なく詰めるのに苦労したよ」

「………素直に出張サービス利用しないか?」

「そしたら帰りの荷物持ちがいなくなるではないか」

「………さいですか」

 

俺は諦めの溜息を吐き、足元の段ボールを抱え上げる。本当に隙間はないようだ。少しも中身が揺れる感触がない。

 

「さ、行こうか」

「あいよ」

 

腰が心配だ。

 

 

 

 

 

 

「――――――円になりますが、こちらでよろしければサインをお願いします」

「あぁ」

「この段ボールはこちらで処分してよろしいですか?」

「いや、帰りも使うからそのままにしておいてくれ」

「マジで!?」

「畏まりました」

 

俺と冥琳はブック○フとやって来ていた。いつぞやの缶蹴りの時に冗談半分で口にした事を、彼女は律儀にも覚えていた。ここに来るまででも体力を使ったのに、さらに同じだけの荷物を抱えて帰るのだろうか。俺の腰への心配はさらに増す。

 

「さて、それでは私は色々物色してくるから一刀は適当に時間を潰しておいてくれ」

「………へーい」

「ふふ、男ならば一度言った事は守って貰わなければな」

 

そう微笑んで、冥琳は店の奥へと消えて行った。店員の同情の視線が痛い。

 

 

「疲れたぁあああっ!!」

 

なんとか段ボール1箱に納まったが、それでもやはり重たい。冥琳の部屋に戻った俺は床に段ボールを置くと同時に声を上げた。

 

「お疲れ様。やはり男手があると違うな。これからもまたよろしく頼むよ」

「断る!」

「冗談だ。夕食くらいは作ってやるから機嫌を直してくれ」

「………わかったよ」

 

べ、別に機嫌が悪いわけじゃないんだからね!………すまん、腰の痛みでテンションがおかしいようだ。

 

とまぁ、こんな感じで何気ない夏の1日が終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

「―――となるから……亞莎、聞いているのか?」

「は、はひっ!?」

「………少し休憩にしようか」

 

一刀に本を運ばせた日から最初の家庭教師の日、いつものように授業をしていた冥琳は生徒の様子がおかしい事に気づいた。先ほどからずっと考え事をしているようで、説明も耳に入っていない。いや、問題を解く事に支障が出る程の抜けっぷりではないが、それでも長い付き合いだ。授業に身が入っていない事くらいはわかる。

 

「それで、どうしたんだ?」

「………」

 

先ほど母親が持ってきてくれたアイスコーヒーを口に運びながら、冥琳は尋ねる。しかし、返事はない。

 

「何か悩みでもあるのか?」

「いえ、その……」

 

口籠る様子に冥琳は少し考える。期末テストの自己採点ではいつも通りの出来だったし、その線はない。では部活かとも思ったが、そもそも亞莎は帰宅部だ。では、この年頃の娘が悩む事と言えば――――――。

 

「………なるほど、男で悩んでいるのか」

「なっ、どうしてそれを!?」

「くっくっく、やはりな」

「うぅ…カマをかけるなんて狡いですぅ……」

 

からかわれた事を理解し、亞莎は服の袖で顔を隠す。その下は真っ赤になっているのだろう。

 

「そんなに恥ずかしがる事でもなかろう。亞莎のような年頃の娘にはよくある悩みだ。よかったら話くらいは聞けるが?」

「その、あの……」

 

宥めようとするが、亞莎はどうもはっきりとしない。

 

「告白されたのか?」

「………いえ」

「では告白したのか?」

「い、いえっ!そんな事できません!」

「なるほど、好きな男が出来たのか」

「はぅぅ……」

 

丸わかりだな。冥琳は心の中で呟く。

 

「亞莎ならば顔も可愛いし、性格だっていい。そこまで卑屈になる必要はないと思うが?」

「いえ、そういう訳では………でも、告白なんてできません!」

「恥ずかしいからか?」

「それもありますが、その………」

「………」

 

口籠る生徒を、冥琳はじっと見つめる。しばらく沈黙が続いたが、ついに亞莎が折れた。

 

「………あの、その男の人は年上なんです」

「学校の先輩か?」

 

問いかけて気づいたが、亞莎は女子高だ。

 

「いえ、大学生の人です」

「大学生と言っても色々いるが………亞莎が惚れたのなら相当の人物なのだろう。もしかして、うちの大学か?」

 

こく、と頷く。

 

「おおかた図書館で出会ったというところか」

「何故それを!?………あぅ」

「ふふっ、それで、どういうところに惚れたのだ?」

「………最初は手が届かない所にあった本を取ってくれたんです」

「ふむ、なかなか気が利く男だな」

「その時は緊張して逃げてしまったんですが、その後図書館を出る時に―――雨が降っていたんですが―――傘が無かったようで、それで、その時のお礼にと思ってその………」

「………驚いたな。亞莎もなかなか積極的ではないか」

「私もそんな自分に吃驚しました。それで、その後も何度か図書館で会って――――――」

 

亞莎は両手でコーヒーの入ったグラスを持ちながら、明命にあの日話した事を語る。そして、尾行の場面へと移った。

 

 

 

 

 

 

「………なんというか、最近の女子高生は行動的なのだな」

「いえ、それは明命が………」

 

尾行という言葉に冥琳は驚きを隠さない。だが、考えてみれば自分の幼馴染も面白そうだからという理由でそういう事をしそうだ。

 

「それで、偶然街でその人を見かけたんです。そしたら、その、雨の日とは別の女性と歩いていたんです。すごく親しそうでした」

「ふむ」

「その人と別れたかと思うと、今度は別の女性の荷物持ちを手伝ってました。だいぶ年上のようでしたが、とても仲が良さそうでした」

「その男も守備範囲が広いのだな」

「それで、その人の家まで荷物を運んで、今度は………」

「まだあるのか?」

 

亞莎の戸惑う様子に、冥琳も戸惑う。それほど女性関係に広い人物などそうはいない。………一人だけ心当たりがなくはないが。

 

「はい、今度は公園で、小学生くらいの女の子に抱き着かれていたんです」

「………犯罪者だな、もはや」

「公園を覗き込めば、他にも女の子がいて、全部で6人でした。皆その人と仲が良さそうでした。少しその子たちと話して、公園を出て、今度は別のマンションに入って行きました」

「なるほど、そいつの自宅を突き止めたのだな」

 

はっきりいってストーキングだが、冥琳にとっても面白い状況になっていた。

 

「そこも別の女性の部屋でした」

「その女性を見たのか?」

「いえ、でもわかるんです。きっと、その人があの人の彼女さんなんだろうな、って………」

「どうして?」

「その…それは………」

 

問いかけに、亞莎は再び口籠る。しかし、その様子は先ほどまでとは違い、ちらちらと顔を隠す袖の隙間から冥琳を覗き見ていた。その視線に、冥琳の中で何かが繋がり、彼女は何かを理解した。

 

 

「………亞莎よ、つかぬ事を聞くが」

「はい」

 

少しの沈黙を挟んで、冥琳は切り出した。

 

「最初に街で見かけたのは、桃色の髪の女ではなかったか?」

「はい…どうしてそれを?」

 

その問いには応えずに、次の質問をする。

 

「次に荷物を運んだ先の家の横に、居酒屋はなかったか?」

「ありました。居酒屋っぽい雰囲気のお店が………」

「公園で出会った6人のうち、双子はいなかったか?」

「確かによく似た少女がいましたね」

「さらに2人は本を持ってはいなかったか?」

「はい、けっこう分厚い本でした」

「残るうち、片方は眼鏡を掛けていて、もう片方は色白で髪も銀色っぽくはなかったか?」

「………その通りです」

 

問ううちに冥琳は頭を抱え出し、最後の質問をする。

 

「そして、最後に入って行ったマンションとは………」

「はい、先生の部屋でした」

 

激しい頭痛が冥琳を襲う。

 

 

 

 

 

 

「色々と言いたい事はあるが、まずは一つだけ」

「はぁ…?」

 

暫くの間頭を抱えてうんうん唸っていた冥琳だったがなんとか気を持ち直すと、真面目な顔をして亞莎に向き直った。

 

「私と一刀はそういう関係ではないよ」

「えぇっ!?そうなんですか!?」

「そうだ。まぁ…アイツに惚れている事は確かだが、それも叶わぬ恋さ」

「………」

「例えばの話だが……仮に私が裸で一刀に迫ったとしよう」

「ふへぇっ!?」

 

例え話なのに、まったく予想もしていなかった言葉に思わず変な声が出てしまう。

 

「例えば、だ。もしそうなった時、一刀はどんな反応を示すと思う?」

「………我慢できなくなって、襲ってしまう…とか?」

「まぁ、一般の男ならそうだろうな。だが一刀はきっと……そうだな、困ったような悲しそうな顔をして私を諭すだろうさ」

「………………」

「あいつはそういう男なのだよ。おそらく亞莎が雨の日に出会った女性が一刀の彼女だ。……あぁ、私とも友達だ」

 

一旦言葉を区切って、冥琳はほとんど空のグラスを口に運ぶ。

 

「彼女―――恋というのだがな―――恋と一刀は特別な絆で結ばれている。ただ恋人どうしというだけではない。それ以上の、もっと強い繋がりさ。だからこそ、2人の信頼は何があろうと揺るぎない。見ていてそれが分かるのだよ」

「………」

「難しいか?まぁ、実際に見てみなければそうだろうな。だが、そういうものだ」

 

何かを諦めたような笑顔の冥琳に、亞莎は顔を隠す袖を降ろして口を開く。

 

「でも……それって悲しすぎはしませんか?」

「難しい質問だな………そうとも言えるし、そうでないとも言える。一刀はな……心地良いのだよ。自分で言うのもアレだが、私自身がそこそこの容姿を持っている事は自覚している。街を歩いていて何度ナンパされた事か………。

まぁ、それはいい。結局、男とはそういうものだ。近づいてくる男は皆下心が見え見えで、心からの信用など出来るはずもない。だがな、一刀は違うのさ。一刀は私を私として認識してくれる。傍にいる事を許してくれる。それが、とても安心するのだよ」

「安心……」

「私だって勿論一刀とそういう関係になりたいと思っていた時期はあったさ」

 

嘘だ。亞莎は直感的にそう思った。冥琳はきっと今でも――――――。

 

「だが、一刀と恋を見ているうちにその想いは変わった。ただ、一緒にいてくれるだけでいい。私も、そしてきっと一刀もそう思っている。気の置けない仲………俗っぽい言い方をすると親友だな。少なくとも私はそう思っているし、このままでいいと思っている。そして、一刀はきっとそれを許してくれる。だからこそ甘えてしまうのだよ」

「………もしかして、他の方々も?」

「あぁ。多少の違いはあるだろうが、皆彼の底抜けな優しさに惹かれるのさ。まぁ、子どもたちは違うがな。例えば先の話に出てきた双子は、あれを兄のように慕っている。一刀も年の離れた妹のように思っている。だからこそ思い切り甘え、時には叱られ、それでも一緒にいたいのさ。

他には本を持っていたという2人の少女。彼女たちは一刀のバイト先である塾の生徒だ。尊敬が2人の好意のほとんどを占めているだろうが、あいつの導きでほんの少し生き方を変える事が出来た。憧れもあると思う。

残りの2人は中学生だから、既にそういう感情を持ってもおかしくはないが………普通に考えて、中学生が大学生の男に敬語も使わずに文句を言えると思うか?」

「それは………」

 

公園で見かけた気の強そうな少女を思い出す。会話は聞こえなかったが、一刀に何やら文句を言う事に些かの戸惑いを見せる事もない。

 

「彼女―――詠も何だかんだで一刀に甘えているのだよ。詠はどこか月―――最後の一人だ―――親友に依存している節がある。親友を大切に思うあまり過保護にしているきらいはあるが、そんな彼女が唯一甘えられる相手が一刀なのさ。そしてそんな親友の姿に、月は喜びを感じている。

………これらはすべて私の憶測だが、そう的を外してはいないと思っているよ」

 

グラスの最後のひと口を飲み干し、冥琳はそう締め括る。

 

「難しかったか?」

「かなり……」

「そうだな。だが、亞莎も一刀ともっと付き合ってみれば分かるさ。そうだな、今度ちゃんと紹介してやろう。図書館に来る時は連絡をしてくれ」

「はぃ……」

 

なんとも言えない表情で返事をする亞莎。冥琳の話に何か感じるところがあったのか、授業を再開するのはもう少し後だと冥琳は考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「………緊張します」

「何言ってるのよ。大丈夫、一刀なんだから」

「それでは何の保証にもなってないぞ、雪蓮」

 

大学内のカフェで会話をする3人。雪蓮と冥琳、そして冥琳の家庭教師先の生徒である亞莎だった。雪蓮と亞莎は先ほど自己紹介を終えた。フランクに話しかける雪蓮に亞莎は最初緊張の色を隠せなかったが、次第に慣れたようだ。だが、これからこの場所に来るであろう人物の事を考え、再び緊張に固まってしまう。

 

「あまり虐めてやるなよ、雪蓮?」

「わかってるわよ………っと、来たみたいね」

 

雪蓮の視線の先を追えば、少し向こうに1組の男女の姿があった。

 

「こっちよー、恋、一刀!」

「見えてるからあまり大きい声は出さないでくれ。けっこう恥ずかしいんだぞ」

「はいはい。恋もお疲れ様」

「ん…やっと、テスト終わった」

 

一刀と恋だった。一刀は冥琳にも挨拶をしながら椅子に腰を降ろし、そして最後の1人に注意を向ける。

 

「久しぶりだな、亞莎。テストはもう終わっているのか?」

「はっ、はい!2週間前に終わりました!」

 

いつも通りの声掛けに、亞莎の声は上擦る。

 

「それにしても最初はびっくりしたよ。亞莎の先生が此処の学生だとは聞いていたけど、まさか冥琳だったとはな」

「まぁな。だが、相当に優秀だぞ。私なんかよりも光るモノを持っている」

「また謙遜して………だってさ、亞莎。勉強得意なんだ?」

「あの、その……」

「ほら、一刀。あんまり苛めたらダメよ。折角こうして来てくれたんだから」

 

そんな会話をするなか、恋だけはじっと亞莎に視線を注いでいた。それに他の者も気づいたのだろう。皆恋に視線を注ぎ、亞莎は袖で顔を隠してしまう。そして――――――

 

「………いつもウチの旦那がお世話になってます………………ニヤリ」

 

――――――またも爆弾を投下した。彼女なりの冗談とわかるが、それを理解できるのは3人だけで、残る1人はまたまた固まってしまう。

 

「あの、その………」

「ちょ、恋!こないだ会っただろう?というかそれは禁止した筈だ」

「さっき……」

「さっき?」

 

咎める一刀に、恋は雪蓮に視線を移す。

 

「さっき……雪蓮からメールが来て、こう言え、って………………」

「………………雪蓮?」

 

ぎぎぎ、と音が聞こえそうな動きで一刀は雪蓮を見るが、彼女は視線を明後日の方向に向けながら口笛を吹いていた。と――――――。

 

「………ひっく、えぐっ…か、一刀さんの浮気者ぉぉぉおおおおおおっ!!!」

「してねーよっ!!?」

 

亞莎は泣きながら走り去ってしまった。周囲から好奇の視線が一刀を襲う。

 

「………………雪蓮」

「………なんでしょう?」

「 お 仕 置 き だ 」

 

顔を掴まれ、ひたすら締め付けられる雪蓮の絶叫がカフェに木霊した。

 

 

 

 

 

 

これまでのまとめ

 

100作品目で節目という事で、これまでの投稿作品のまとめを一応書いておきます。

 

・真・恋姫†無双~恋と共に~

 こちらが本編です。現在第54話まで投稿済み。

 タイトルから分かる通り、メインヒロインは恋ちゃんとなっております。

 でも最近浮気が激しゲフンゲフン!

 最近一郎太を知ったという方は、お時間のある時にでもお読みください。

 

・真・恋姫†無双~恋と共に~ 外伝:○○

 外伝とは言っても現代での話です。こちらもメインヒロインは恋ちゃんです。

 本編を読まなくても分かるし、ほとんどが1話完結なので、お時間がない時にでも。

 ちなみにこれまでの登場人物

 一刀 恋 雪蓮 冥琳 祭 亞莎 明命 月 詠 秋蘭 春蘭 霞 愛紗 流琉 紫苑 璃々

 

・真・恋姫†無双~春のように賑やかに、秋のように穏やかに~

 最初は外伝で春秋姉妹を出したのですが、予想外に反響があって2人をメインに。

 という事で最初だけ恋ちゃんが登場しますが、その後は恋ちゃんはいないという設定です。

 AC711様のイラストをインスパイア元としております。それを見てからお読みください。

 

・真・恋姫†無双 外伝:こんな夏の日シリーズ

 こちらもAC711様のイラストをインスパイア元に。

 ヒロインは稟ちゃんです。

 気が向いたら続きを書くかも。

 

・真・恋姫†無双 外伝:みんな大好き不動先輩(全5話)

 こちらは完結作品です。キャラ崩壊注意。

 10話毎に書いてましたが、その5を持って完結とさせていただきます。

 

・その他の外伝シリーズ。

 ちょこちょこと上げてるので、よかったら読んでください。

 素敵なイラストをインスパイア元とする許可を下さったMALI様に天空太一様に感謝です。

 

 

とまぁ、このような感じです。

『○○を出してくれ』という要望があれば、そのSSも書かせて頂くかもしれません。

ご希望があればコメント欄まで。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

という訳で、100回記念に外伝を投稿させて頂きました。

これまでの復習も兼ねて、亞莎と明命に色々探って頂きましたw

でも気づいたら冥琳√になってる気がしないでもない………

 

そんな事はおいといて。

 

いまだ本編は完結していないのにこんな話をするのも変ですが、

これまでやってこれたのは、いつもコメントして下さる方々、コメントをするお時間はなくとも読んで下さる方々のおかげだと思っております。

何度コメントに笑わせてもらったことかwww

 

………………変な動物が2匹と1羽いるが、それもまた一興。

 

というか、気づけば恋姫関連タグで検索すれば、お気に入り登録数が10番目になっていたというこの奇跡。

 

とまぁグダグダと書いて来ましたが、これからもよろしくお願いいたしますという事で。

今後とも、ご愛顧よろしくお願いいたします。

 

前のページにも書きましたが、外伝で〇〇が見たいというのがあれば、また書かせて頂きたいと思います。

あるいは、○○さんのイラストで何か書いて!という方がいれば、一郎太の方から連絡して、許可を頂けたら書かせて貰いたいと思います。

 

それでは、長くなりましたが、今回はこれにて。

また次回お会いしましょう。

 

バイバイ。

 

 

 

 

 


 

 
 
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