流星が落ちたと思われる周辺に着いた袁術。 しかし先程のまばゆい光はもうなく、月明かりのみでそこまで遠くまで見渡せない。
張勲「はぁ、はぁ……お嬢様、待ってくださ~い。 一人で先に行くのは危険です……」
遅れて張勲が少数の兵を連れて袁術の元にたどり着く。 しかしそんな事はお構い無しに張勲にたずねる。
袁術「七乃よ、流星が落ちたのはこのあたりで間違いないか?」
張勲「はぁ、はぁ……はい。 見張りの兵にも確認したので間違いないと思いますよ? お嬢様、私の傍から離れないでくださいね」
袁術「うむ…………む? 七乃、あそこに……」
袁術が指さす方を見ると誰かが倒れていた。
張勲「確認してきます……お嬢様はここでお待ちください」
袁術「うむ……気を付けるのじゃぞ七乃」
倒れている人物に近づき確認する張勲。 しばらくすると安全の確認が取れたのか袁術を呼ぶ。
袁術「大丈夫かの?」
張勲「えぇ、どうやら本当に気を失っているみたいです……それにしても見た事も無い格好をしていますね、どこかの貴族の方でしょうか?」
袁術「うぅむ……どちらにしても見つけてしまった以上放って置く事は出来んの……この者が誰であれ保護するぞ」
張勲「わかりました、衛兵さ~ん、この方を運んでくださ~い。 くれぐれも丁重にお願いしますね~」
少し離れた所に待機していた衛兵を呼び、倒れている青年を運ぶ様に指示を出す。
『願わくば……いや、皮算用は辞めた方がいいの……』
一刀「……………何処だここ?」
朝、目が覚めてみたら見知らぬ部屋で寝ていた。
一刀「う~ん……記憶があやふやだな…」
正直寝てる前の記憶が全く無い。 誘拐でもされたか? まぁ客間みたいな所にいるし、縛られてないから大丈夫かな?
ガチャ!!
張勲「失礼しま~す……あっ、起きられたんですね♪」
扉が開いて綺麗な女の人が入ってきた。 少なからず現状を打破する手掛かりにはなるだろうか。
一刀「あの…あなたは?」
張勲「私ですか? 私は張勲と申します。 ちょっと待っててくださいね~、あなたが起きたら呼ぶ様にお嬢様に言われてますので」
一刀「あ、ちょっと……」
俺が止めるのを聞かず張勲と名乗った女性はさっさと出て行ってしまう。 しかし気になったのは彼女の名前だ。 張勲と言えば三国志の武将の名前……偶然かなと思いながら戻ってくるのを待つ事にする。
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張勲「お嬢様~、昨日保護した人が目を覚ましましたよ?」
袁術「そうか……どんな様子じゃった?」
張勲「う~ん……やっぱり戸惑っている感じでしたね~、すぐに会われますか?」
袁術「うむ……妾はいつも通りに行くからの、頼むぞ?」
張勲「え? でも……」
袁術「彼の者がまだ天の御使いと決まった訳ではない、はっきりするまでは明かす事は出来ん」
張勲「はい……」
しばらくすると張勲さんが戻ってきた。 後ろに女の子がいるのが見える。 あの子がさっき言ってたお嬢様だろうか? 確かに豪華な服装をしている。
張勲「お待たせしました。 この方がこの城の主である、袁術様です」
袁術「うむ! 妾が袁術、字は公路じゃ!! 妾を褒め称えるが良いぞ!!」
張勲「さすがお嬢様、自己紹介と同時に賛辞を求めるなんて、いよっ!! この世間知らず~」
袁術「そうじゃろ、もっと褒めてたも!! ぬはは~♪」
一刀「………………」
なんかいきなり漫才が始まったが俺はそれどころじゃなかった。 女の子は自分の事を袁術と言った。 そろそろ頭の処理が追い付かなくなってきた。
袁術「それでお主は誰じゃ?」
一刀「え? あぁ…俺は北郷一刀」
張勲「えぇっと……姓が北で名が郷、字が一刀と言う感じですか?」
一刀「いや、姓が北郷で名が一刀だよ。 字と言うのは無い」
袁術「なんと!! それは珍しいの~」
一刀「あの……何で俺はここにいるんでしょうか?」
俺の質問に二人は答えてくれた。 昨日の夜、外が急に明るくなったので見たら流星が落ちてきたそうだ。 流星が落ちた付近に行ってみると俺が倒れていたそうだ。
袁術「それでお主を保護した訳じゃ」
一刀「そうか……ありがとう」
袁術「うむ!! 存分に感謝するが良いぞ♪」
しかし自分のその時の状況を言われてもさっぱりだ。 でも二人が嘘を言っている様には見えないし……アニメやゲームみたいな事が自分に起こるなんて考えても見なかった。
張勲「実はですね、最近民の間で噂になっている事がありましてそれが北郷さんの現れ方とよく似ているんですよ」
張勲さんはそう言って噂になっている天の御使いの話をしてくれた。 確かに噂とさっき説明された俺の状況は似ていると思った。
一刀「う~ん……同じ様な状況だけど、自分が天の御使いとは思えないな……自分がいた所が仮に二人が言っている天の国だとしてもそこでは俺はごく一般の学生だし……」
張勲「学生? 北郷さんは私塾に通っていたんですか?」
一刀「いや、私塾じゃなくて……公塾…ってのも違うな……解り易く言うと俺のいた国は一定期間勉強するのが義務なんだよ、そこから働くかさらに勉強するか選べるんだ」
張勲「国が教育を義務付けているなんて……では戦になったらどうするんですか? それでは徴兵もままならないんじゃないですか?」
一刀「戦争は少なからずあったけど他の国の話だね、俺の国は50年以上ないよ」
この俺の発言に二人は心底驚いているようだ。
一刀「後これは言おうか迷ったんだけど……俺は張勲さんと袁術ちゃんの名前を聞いた事があるんだ」
袁術「なんとっ、妾の名は天の国にも知られておるのか?」
一刀「まぁ、そんなところかな……でもそれは三国志って言う歴史書の中の登場人物の話で1800年も前の話なんだよ。 しかも二人は男として登場してるんだ」
張勲「男…ですか……長い年月のせいで歴史が曲解されてしまったのかもしれませんね……北郷さん、仮に1800年後の世界から来たとしてそれを証明できますか?」
そう言われて俺は困ってしまう。 気が付いたら身一つでこの世界にいたのだから何か持っている訳が無い。 慌てて何かないか制服のポケットを調べるとズボンの左ポケットに入っている物に気付いて安堵しながら取り出す。
袁術「なんじゃ、その箱は?」
一刀「これは携帯電話って言ってこれと同じ物を持ってる人とならどんなに遠く離れていても会話が出来る物だよ」
張勲「へ~……それはすごいですね……でも持ってる人は北郷さんしかいないんですから会話をする事は出来ないですよね?」
一刀「まぁね、でもこれには他にも機能があって例えば……」
そう言いながら携帯を二人に向ける。
『パシャッ!!』
袁術「な、なんじゃ今の音は!?」
張勲「その携帯電話と言うのからしましたね……北郷さん私達に向けていましたけど何したんですか?」
一刀「ごめんごめん、驚かせるつもりは無かったんだ。 別に危険があるわけじゃないから安心して。 はいこれ」
そう言いながら携帯の画面を二人に見せる。
袁術「おぉ!! 妾達がおるぞ!!」
張勲「とても正確な絵ですね……本物みたいです」
一刀「これはカメラって言って張勲さんが言った様に正確に人や物を写す事が出来る機能だよ」
それ以外にも機能を紹介したが、そのどれにも二人は驚いていた。 少なくとも俺がこの世界の人間じゃないと言う事は証明できただろう。
ひとしきり説明を終えて、一つずっと気になっていた事を聞いてみる。
一刀「あのさ、ちょっと質問してもいい?」
張勲「はい? まぁ答えられる事なら」
一刀「袁術ちゃんさ……」
袁術「妾か? なんじゃ?」
一刀「なんか違和感があるって言うか……普段からそんな性格? なんか演技している様に感じたんだけど……」
袁術「……………………」
張勲「……………………」
二人が呆けた顔で俺の事を見る。 う~ん、やっぱり違ったのかな。 まぁ当てずっぽうだったしそれはそうか……
一刀「ごめん、そんなわけないよね。 今言った事は忘れ……」
俺が言い終わる前に袁術ちゃんが跪く。
袁術「確かに偽っておりました。 世を生き抜く為とはいえ無礼をお許しください」
一刀「…………え?」
いきなり話し方が変わったものだから反応できずに今度はこちらが呆けてしまった。
袁術「あなた様は先程自分を天の御使いでは無いと仰いましたが妾の正体を見抜くその眼力……少なくとも妾はあなた様が天の御使いとしてこの地に降りべくして降りたと思います……」
顔を下に向けたまま袁術ちゃんは思いの丈を俺にぶつけてくる。
袁術「北郷一刀様!!」
俺の名前を叫びながら顔を上げた袁術ちゃんを見て俺はさらに言葉を失ってしまう。
袁術「天下が欲しい訳ではありません、どうか……どうか!! 民を助ける為、妾にお力をお貸しください!!」
悲痛な叫びをあげる彼女は涙を流しながら俺に懇願した。
どうも茶々零です。
覚醒美羽様 第1話いかがだったでしょうか?
サイトリニューアルして初投稿です。
感想としては小説は全部表示するんではなくページで区切ってほしかったです。
小説内の話としては一刀が美羽の演技を見破ったのは種馬の片鱗を見せたと言う事で;
でわまた第2話でお会いしましょう。
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おまたせしました。第1話でございます。