GROW3 第三章 体育祭一日目
1
ついに始まった体育祭。一日目の競技種目はあくまでもまともである。
二日目、三日目の武道大会?
何それおいしいの?
まあ冗談はさておき競技に入っていくわけなのだが、俺こと渡邊彰文は、三つほど種目に
参加する。
一つは例の二人三脚。
二つ目は綱引き。
三つ目は100m走だ。
至って平和な種目のようだがだが、違う。
なんせ一つ目は悪魔委員長との二人三脚。
二つ目は身体に綱をくくりつけての人間綱引き。
三つ目は・・・まあ普通に100mだな・・・
しかし一つ目の競技がまず問題といえよう。
委員長との二人三脚だ。
二つ目三つ目はごり押しで行けるとして、一つ目は二人で走る二人三脚だ。
なんも練習してねーーーーwww
とりあえず練習しないとな。
二人三脚は15個目だ。
時間的にも多少は余裕があるだろう。
俺は委員長を探しに行く。
この学園は全校生徒600人程度の高校としては小さな学校だろう。
すぐに見つかるな。
俺はとりあえずグラウンドを一周まわる。
別に変ったことはなく委員長もすぐに発見できた。
「おーい委員長ーーー」
俺に気づき振り向く委員長。
「なっ!?あ、彰文じゃない!あんたから話しかけてくるなんて積極的じゃない。ふふーん♪」
「いやいや・・・委員長。俺はただ二人三脚の練習に誘いに来ただけだぞ」
「誘いに来たっ!?ふぇっ。あ、あんたこんなばばば場所で告白なんて・・・
確かにわたしはあんたのこと、・・・だけど、ね。きゅ、急になんてそんな・・・」
「激しく勘違いしているようだが二人三脚だからな」
「そ、そんな。一つになろうって・・・
やさしく縛ってね(>_<)」
「ぶっ殺すぞ委員長!!」
「そんな激しくしないでぇぇぇーーー」
壊れた委員長の足に無理やりひもを結びつける。
委員長はもはや妄想から帰ってこない。
いやいや、二人三脚でそんなにテンション上がるか?
「すごかったよ彰文。テクニシャンだね。わたし思わず気を失っちゃってたよぉ」
「いろんな意味でな。しかしこれから走るわけだが掛け声は1、2、1、2でいいよな?」
「い〇い〇彰文ね。えへへ(*^_^*)」
「らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
いろんな意味でおわるううううううううううううううううううううう!!!
お前はもう何も言うな」
「ねぇ彰文ぃ・・・」
「なんだ委員長、上目づかいで気持ち悪い」
「昔みたいに薪南って呼んで。なんか委員長なんて、嫌だから・・・」
いやいやそんなにマジな顔で言うなよ。すっげえ可愛いなぁ畜生。
「ねぇ彰文ぃ。呼んでくれないとわたし・・・
いじわるしちゃうんだから・・・」
ひもが結ばれたまま抱きついてくる委員長。
案の定、そのままバランスを崩し、倒れて委員長が押し倒したような体勢になる。
「このまま彰文の大切なもの、奪っちゃおうか・・・」
「なっ・・・」
やめろ委員長。
目が怖い、笑ってる顔が怖い、怖い怖い怖い・・・・
すっ・・・
唇に当たる生温かい感触。
まさか・・・
「今度はその程度じゃ許さないんだからっ」
にっこり笑う委員長。
寝返りを打ち、ねっ転がったまま声を上げて笑い出す。
(とんだ悪女だよ委員長)
「ねぇっ、始めよっか」
・・
「ああ、薪南」
そのとき、久しぶりに俺に名前を呼ばれた委員長の笑顔は、
・・・・
まるであのときのような天使の笑顔だった・・・
2
いうまでもないが、競技の結果は散々だった。
とりあえず完走はできたものの、いわゆる体育祭特有の、
『がんばってーーー』
『あとすこしだよーーーー』
のコールを受けるような散々な結果だった。
なんか薪南はそれでも嬉しそうだったが・・・
その後俺は綱引きに出場。
圧倒的な力の差を見せつけ優勝。
まあ生徒会連中がいなかったから当然だろう。
次の百メートルも問題なく終了。
俺は午前中しか競技がないので午後は運営の仕事だ。
このまま何もなく一日目が終わって欲しかった。
てゆうか終わると思っていた。
この後俺はある男に会い、後日とんでもない事件に巻き込まれることになる・・・
3
昼休み。食事を済ませた後。
俺は裏生徒会四天王の一人。
二年生の籠山三尋さんと一緒に、学園の見回りをしていた。
「ごめんね会長、一緒に見回りなんかさせちゃって。本当はこの時間は松と二人なん
だけど、アリスちゃんとずっと遊んでたから・・・」
なにやら申し訳なさそうな三尋さん。男なのにすごく可愛いな。
「そんなことはないですよ。それに規則ですから」
笑って返す俺。三尋さんも笑って返す。
「本来こんな雑用を会長にやらせるなんて問題外なんだけどね。
会長がみんなに好かれる意味がわかったよ・・・
僕も女の子だったら会長のこと・・・」
「変なフラグ立てないでください」
「本気にしないでよww冗談なんだから。」
「冗談でも破壊力はありすぎです」
「ふふっ(^_^.)
それよりも会長も武道大会出るんだね?
ちょうど端っこだから決勝まで当たんなそうだね」
「ですねーーー。
あっ、前から気になってたんですけど、表生徒会メンバーって強いんですか?
全員シードだし」
「ああ。あの連中はなかなかだよ。
一年の天使ちゃんは分かんないけどね・・・
強さ順でゆうなら夢幻よりも織物双子のほうがかなり厄介だね」
「んなっ」
初めて知る事実に俺は驚く。
てゆうかあの双子(笑)強いのかよ・・・
「まああせらないでよ。二人は僕が片付けるからさ」
「はぁ・・・」
「なんか信用してないね会長(;一_一)
去年、予選は僕が一位だったんだよ。
本選ではあいつに当たってまさかの一回戦負けだったけどねww
夢幻も松もあっさりやられてたよ。
まっ、今年は僕が勝つけどね」
そんな会話をしている時だった。
「この僕に勝つ、ねぇ・・・」
奴が現れたのだ。
前大会覇者、“シグマー”が・・・
4
「楽しそうに話しているところ申し訳ないね」
「貴様はっ・・・」
急に現れたスーツ姿の男。見かけは15、6歳くらいで髪型は肩まであろうかと思うくらい
伸びた、きれいな黄緑色だ。
俺はその男に言った。
「あなたがかつてエイミーさんを支配していたというシグマーさんですか?」
「支配とはひどいな。支配していたのは腐れ神父さ。僕は彼女の友達だよ。
まあ置いといてだ。きみが渡邊彰文くんで間違いないかな?」
「ああ」
二人で話を進めていると、三尋さんが入ってくる。
「どーゆうこと?よく分かんないけど二人は知り合いなのかな?
話を聞くがぎりだと、かつてエイミーちゃんの上司みたいな関係に聞こえるが・・・」
さすがの洞察力だな三尋さん。たったあれだけの会話でだいたいのことを理解したようだ。
「だがなぜそんな奴がこんなところに現れたんだ?」
「まぁあせんなよ。話があるのは彰文くんにだよ。しかも極秘の話だ。できれば聞かれたくは
ないんだ。おとなしく下がってくれるかい?三尋くん・・・」
どうやら何かの話があってのようだが三尋さんは抵抗する。
「何が話だ!貴様は聞く話によると敵みたいじゃないか?
そんな奴を会長と二人っきりにはさせない!
ましてや極秘だと。危険な要件じゃないだろうな?」
「流石に察しがいいとほめてやる。だが今回の件、我が友人である渡邊齦聖と、治郎右衛門の
手引きだとしても、おまえはまだ何か言うことはあるのか?」
顔色が変わる三尋さん。
「お二方が手引きだと、あり得ない。ましてや貴様みたいな悪人などと」
「待ってください!!!」
「会長っ!?」
「っほう」
俺は軽く状況と流れを説明したあとに言った。
「二人きりで話をさせてください」
どうやら三尋さんは説明の甲斐あってか折れてくれたらしい。
半信半疑で答える。
「会長がそう言うなら僕がこれ以上言うことはもうないな。
でも会長。危険なことだけは決してしないでください。
またあとで・・・」
三尋さんはその場から立ち去った。申し訳ないが最善の手だろう。
俺たち二人は、人気のない場所に移動する。
その後シグマーさんは謝罪をしてきた。
「すまなかった彰文くん。君の大切な仲間を傷つけてしまって・・・
だが、今回の件、周りに知れては非常にまずいのだ。」
「はぁ」
「まぁ俺のことはシグマーと呼んでくれて構わない。俺のことはエイミーや齦さんから多少は
聞いてるはずだから置いといて、重要なのは今回の件だ。」
「その重要な件とは」
「執事戦争が二週間後に起こる。それを事前に防ぎたいのだ」
「執事戦争?」
「そう。だが戦争といっても奴らからの一方的な虐殺だ。
最強の執事四名と、それを統括するマスターゲルティマ。こいつら五名を事前に抑えればいい」
「五人?他にはいないのか?」
「ああ、五人だけだ。だがこの五人が強すぎるのだ。マスターゲルティマはあまり表に
出てこないのだがな、今回に限り出てくるらしい・・・」
「そ、そんな。そんな圧倒的な相手が五人もいたら、勝てるわけないじゃないか・・・」
「そう。そこで君の出番だ彰文くん。この封書をある人物に届けてもらいたいのだ。」
封書を受取る俺。これを一体誰に?
「その封書をマスター神父に渡してもらいたいのだ。彼は非常に変わり物でね。君みたいな
タイプの人間のお願いしか聞いてくれないんだよ。彼に気に入られるように頑張ってくれ。
行くのは体育祭本選が終了した次の日、9日後だな・・・
こんなこと頼むのは非常に申し訳ないと思っている。僕も微力ながら協力するよ。」
「そんな。ここまで気を使ってもらってそんなことまで・・・」
シグマーさんいい人すぎる。しかしこの人でさえ恐れる相手がいたなんて・・・
いったいどれほどの使い手なんだ・・・
「彰文くん。君一人では心もとないだろう。
その神父の友人の一人を仲間に連れてってもらいたい。きっと話もスムーズにいくだろう。
そうそう。神父様の見かけだが、三種類あるから注意してほしい・・・
普段は身長180くらいの老人で恰好は黒い修道服を着ている。それか、130前後でシスター
かゴシックロリータを好んで着用している。姿を自由に変えられるが声は同じだからすぐに分かると思う。
まぁめったにないが、神モードの場合があるが、そのときは見ればすぐに分かるだろう。
へたくそな説明ですまないな。それと・・・」
「どうしたんですか?」
「絶対に戦うな。君の役目はあくまで密書を渡して神父様を説得するところまでだ。
それ以上は絶対にいけない。」
俺は真剣そうなシグマーさんに言ってみた。
本当はこんなことを言ってはいけないだろう。
でも俺はここ数日の修行で実力を上げたことで自信がついていた。
ばかみたいに思いあがっていたのだ・・・
「もし。もし、俺がそいつらと戦うって言ったらシグマーさんはどうしますか?」
激怒するかと思った。
殴られるかと思った。
へたをすると、殺されるかと思った。
しかし、シグマーさんは優しい声でこう言った。
「君が戦いたいと言うならそれでもいいさ。そのときは僕の説明の仕方が悪かったと
いうことだ。
もしそれで君が殺された時、その時は僕は君の父親にどう謝罪をすればいいんだろうな・・・」
「・・・・」
「君は自分のことを大切に思っているかい?
僕はね、少なくとも思っているよ・・・
もちろん最初は、君の父親の友人として来た。だがね、こうして君と話して僕は思った・・・
君は少なくとも僕と知り合うに値する人間だと。
一言一言に力があり、やさしさがありそして、思いやりがある・・・
そんな君を僕は失いたくはない。
戦うな彰文くん。
これだけ言っても聞かない場合は僕は、僕は・・・
君への誠意をもって全力で止める!!」
「シグマーさん・・・」
「この提案を持ってきたのは僕。間接的であれ僕にも責任がある。
だから君には無事に帰ってきてほしい。」
真剣なシグマーさんのセリフに思わず目が熱くなる。
「分かってくれたようだな・・・
こんなことを頼んで申し訳ない。君の貴重な時間を奪ってしまって悪かった。
謝罪というのも変だが、本選で君と戦えるのを楽しみにしてるよ。
もちろん上がってくるんだろ?
じゃあ、5日後本選で・・・」
「本選で!」
ニッと笑い、何かを安心したような表情をした後、シグマーさんは帰って行った。
「本選に行く理由が増えたな・・・」
5
その後のことを少し話そう。
あの後、三尋さんには特に何も聞かれなかった。
空気を呼んだのだろうか?
いつも通りに話しかけてくれた。
競技も順調に進み、無事一日目は終了した。
俺はこの一日で思った。
俺のことを大切に思ってくれている人がいる。
三尋さんだってそうだ。
俺はそんな人たちに何をして答えてやれる?
力だけではない。
行動一つ一つに示していけばいい。
俺は大切に思ってくれている人たちに答えてやりたい。
そんな思いが、ずっと心の中を回っていた。
次回予告
体育祭二日目
武道大会一日目
長くなりそうなときは区切ります
ではでは
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ついに始まった体育祭一日目
現時点ではほとんどないよう考えていませんww
やばいなこれは・・・