無音。
この言葉の通り、山賊達が根城にしている洞窟の前には、"音"が存在していなかった。
風、木々、小鳥の囀(さえ)ずり…………。
"音"が死んだ瞬間とはまさにこれが似合うのかも知れない。
ただ、そこには、洞窟前には、ある物が二本、地面に突き刺さり"何か"を磔(はりつけ)にしていた。
ある物が二本ーーー十字架の様な歪な形状をしたそれはまるで地面から生えているかの様に"何か"を磔にしていた。
十字架の真下は紅い液体によって黒ずんで地面を侵食している。
更に視線を上げれば、そこには何があるか………。
原型を無くした肉塊…………。
四肢は辛うじて皮膚で繋ぎ止められてるかの様にブラリと垂れ下がり、両手、両足の腹部分は肉厚な楔で深く、突き刺さっている。
肝心の身体はまるで重火器で撃ち抜かれたかの様に穴が何ヵ所も開き、そこから血と言う血が垂れ流されている、それだけではない。全身は鉄パイプの様な杭でうち刺され、パイプの穴からまるで噴水の様に血液が吹きてでいる。
まるで拷問にでもあったかの様な………そんな死体が二つ、洞窟前に左右に連なっていた。
「……………………………」
そんな惨状を作り上げた張本人は、足音一つ発てずに洞窟の奥へ奥へと歩を進めていた。
そのマントは先程の戦闘………否、一方的な拷問の片鱗が確かに合った。
へばりついた脊髄、皮膚、頭髪、そして大量の血………。
その様は、まるで死体を解剖した後の様な、そんな姿だ。
「……………………もうすぐ、か」
声色からして、それは男だと判断出来る。
男はまるで何かを探しているかの様に洞窟の中を散策していた。
松明の明かりで何とか照らされているが、やはり薄暗い事には変わらない。
だが、その明かりで僅かだが頭から被せたマントの奥が見えた。
何とも説明しずらい形をした、口元に吸収菅を着け、顔面を完全に覆われたゴム質な物、両目は大きく、まるで違う生物を彷彿させる大きな眼鏡。
ほんの少し、口元の吸収菅からは不気味な呼吸音をならしていた。
暫く探索していると、曲がり角から足跡が聞こえる。
更に腕からは"反応"がある、賊だ。
男は松明の明かりによって影が出来ないように気を付け、気配を完全に消して身を隠す。
"反応"からして、どうやら一人の様だ。
「…………」
男は、そこでギリギリまで待ち、その時を待った。
「ったく、何で俺が見回りなんて……」
声色はまだ若い、17、8歳位か………だが、男にとってはそんな事はどうでも良いこと……なぜなら。
「あん? 何だて…………めクキャ」
まだ若い賊が男に声を掛ける前に、男は勢いよく賊の頭を鷲掴みにして、一瞬で捻った。
その時に生じる生々しい骨の快音が洞窟内で響いた。
「…………近いな」
男は賊"だった"物を放り投げ、更に奥へと進める。
その奥は賊達が宴会を開いている空洞の広場がある。
さて、賊達は予想出来るだろうか?
これから起こる、"血と硝煙の大宴会"を………。
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続けて第二話です。
文才なくてすみません。