No.228612

遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第二章・五話

月千一夜さん

どうも、お久しぶりですw
今回は現在主力連載作品である、遥か彼方をお送りいたします
二章もまだまだ序盤
故に、進展はあまりありませぬが

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2011-07-18 02:55:44 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8984   閲覧ユーザー数:7194

不思議だった

 

会ったときから

今、こうしてともに行動している時だって

 

ずっと、気になっていた

 

彼が

この青年が放つ、この心地の良い雰囲気を

この、温かな空気を

 

私は、知っている

 

そんな気がしたのだ

 

 

“鄧艾士載”

この青年と、会ったことがある

 

そう思ったのだ

 

 

・・・思い出せ

 

いったい、何処で出会ったのだ?

何故、このような“既視感”を感じているのだ?

 

思い出せ・・・思い出せ

 

何度も、何度も繰り返し呟く

やがて、浮かんできた景色は・・・荒れ果てた大地

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

“地面に座り込む、一人の少年の姿だった”

 

 

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第二章 五話【深い森、深い闇】

 

 

 

 

「ん・・・」

 

 

目が覚めて、最初に感じたのは軽い眩暈だった

それに伴い、体にあまり力が入らない

“一体なぜ?”

そう思い彼女が見つめたのは自身の腹部

そこに巻かれているのは、赤く血の滲んだ包帯

 

 

「はっ・・・そういえば、怪我をしたのだったな」

 

 

呟き、彼女・・・“星”は苦笑する

昨日のことを思いだしていたのだ

 

宙に浮かぶ、幾つもの剣や槍

それにより、自分が負傷してしまったこと

森の中、見知らぬ男たちと対峙したこと

そして・・・

 

 

 

『俺が・・・守るから』

 

 

 

 

その時に出会った、白き青年のことを

 

 

「鄧艾士載・・・か」

 

 

その青年の名を呟き、彼女は苦笑する

不思議だった

“会ったことがある”

そう思ったのだ

 

 

「気のせい、か」

 

 

“きっとそうだ”

そう言い聞かせ、彼女が見つめた先

 

 

 

 

「おはよ・・・趙雲」

 

 

眠たそうに目をこすり、自分に向い挨拶をする青年の姿があったのだ

その、彼・・・一刀は弓を抱えたまま座り欠伸をする

そんな彼のすがたを見つめたまま、彼女は驚いたように口を開いた

 

 

「もしや、寝ていないのか?」

 

「ん・・・見張り」

 

 

“見張り”

そう言って、一刀は持っていた弓を軽く掲げる

星はというと、しばし呆然とした後にフッと笑みを浮かべた

 

 

「すまない・・・助かる」

 

「気に、しないで

俺が言ったことだから・・・君を、守るって」

 

「あぁ・・・そうだったな」

 

 

“守る”

言われ、彼女は微かに頬を赤く染め頷いた

それから彼女のすぐ傍で眠る少女・・・雛里を見つめ、ソッと呟やく

 

 

「さて・・・そろそろ、今後の予定を話し合わなくてはな

一刻も早く成都へと帰らねば、皆も心配しよう」

 

「ん・・・」

 

「そういうわけで、雛里を起こさんとな」

 

「任せて・・・」

 

 

星の言葉

一刀は、微かに笑みを浮かべながら頷く

そして懐から取り出したものに、星は僅かに頬をヒクつかせた

 

 

「鄧艾殿・・・それは?」

 

「“ハリセン”・・・これで、起こす」

 

「い、いや、ちょっとま・・・」

 

「ふっ・・・!」

 

 

 

制止しようとする星

だがそんな彼女の言葉も空しく、彼が手に持ったそれは勢いよく振るわれた

 

やがて“スッパァァァァアアアアン!!!!”という凄まじい音と、“あっわわわぁん!!!!!??”という悲鳴が響き渡った

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

一刀、、星、雛里

三人は座り込み、それぞれ真剣な表情を浮かべていた

唯一人・・・雛里は、“何故か”頭をおさえ半べそをかいていたが・・・

 

 

 

 

「さて・・・雛里よ

当面の目標は成都への帰還、それでよいのだな?」

 

「はい、あの“謎の軍団”や“宙に浮かぶ剣”など成都へと急ぎ報告しなくてはなりません

愛紗さんたちのことも気になりますし

それに何より、星さんの怪我のこともあります

できるだけ早く帰りたいところですけど・・・」

 

 

言い掛けて、少女・・・雛里は辺りをキョロキョロと見渡す

それから、深くため息を吐き出した

 

 

「申し訳ありません・・・無我夢中で逃げていたので、実は成都までの道のりがわからなくなってしまいました」

 

 

“シュン”と、項垂れる雛里

そんな彼女に対し、星は笑顔を浮かべる

 

 

「気にするな

この森が成都までつながっているのは確かなのだろう?

上手くいけば、帰ることができよう

仮に成都へつかずとも、ひとまずこの森さえ出てしまえば何とかなるはずだ」

 

 

言いながら、星はふと視線をうつす

その瞳に、一人の青年の姿を映した

 

 

「また妙な連中が襲ってきた場合、私はまだ戦えそうもない

その時は・・・鄧艾殿が、守ってくれるのだろう?」

 

 

その一言に、彼は背負っていた弓にソッと触れる

それから、静かに頷いたのだ

 

 

「守る

2人とも、俺が・・・絶対に」

 

 

“守る”

言われて、星は“頼りにしている”と微笑を浮かべた

彼女はそのまま立ち上がり、空を見上げた

日はもうすっかりと昇っていた

 

 

「では、さっそく行くとしよう

いつまでもこの森にいるわけにもいかないからな」

 

「はい!」

 

「ん・・・」

 

 

それぞれ頷き、そして歩き出した

この深い森の中

目的の場所へと向かう為に・・・

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

あれから、どれくらいの時間がたっただろうか?

そう思い、雛里は空を見上げる

木々の隙間から見える太陽は、自分たちの真上にまできていた

 

 

「ぅっ・・・」

 

「星さん、大丈夫ですか?」

 

「問題ない・・・これくらい、わけないさ」

 

 

振り向いた先、苦しそうに表情を歪める星の姿に彼女は不安になった

馬はなるべく静かに進ませているつもりだ

それでも、微かな揺れでも傷に響いてしまうのだろう

かといって、馬から下ろすなどできるはずもなく

現状では、これが一番だった

 

 

「趙雲、辛そう」

 

 

そんな彼女の姿を見つめ、小さくそう呟いたのは一刀だった

彼は僅かに表情を曇らせたまま、黙々と足を進めていく

だがしかし、その足取りは微かに早かった

一刻も早く成都へと着かなければ、彼女が危ないと・・・そう思ったのだ

そんな皆の考えをあざ笑うかのように、深い森はいつまでも続いていく

それがまた、彼の表情を曇らせていった

 

 

 

「ぁ・・・」

 

 

 

やがて、見あげた空

気付けばもう、その大半が朱に染まっていたのだ

間もなく日が落ちる

 

“はやい・・・”

 

そう思い、彼は悔しそうに溜め息を吐き出し・・・そして、趙雲たちを見つめ呟く

 

 

「もう、日が落ちる」

 

「うむ、そのようだな

悔しいが、今日はここまでのようだ」

 

「そうですね」

 

 

言うと、雛里はキョロキョロと辺りを見渡した

そして見つめた先に馬を進めると、静かに馬を下りる

 

 

「今日はここで野宿をしましょう

幸いにも、まだ水は残っています・・・星さんには、申し訳ありませんが」

 

「構わないさ

それよりも、お主の方が心配だ

ほれ、お主は体力がないからな」

 

 

そう言って、星はクスリと笑みを漏らした

が、その笑みもすぐに苦しそうな表情に変わってしまう

 

 

「星さんっ!?」

 

「大丈夫だ・・・ちょっと、疲れたのかもしれんな」

 

 

“はは”と笑い、星は静かに馬を下りる

それから木の根元に背を預け座り込んだのだ

 

 

「すまない、な・・・何だか、眠くなってきた」

 

「星さん・・・」

 

 

呟き、すぐに小さな寝息が聴こえてくる

此処に来るまで、相当つらかったのかもしれない

一刻も早く、彼女を医者に見せなければ

そう思い、雛里はコクンと一人頷いていた

 

 

「じゃぁ・・・俺は、また、おきてるから」

 

 

そんな中、背負っていた弓を持ち言ったのは一刀だ

彼はその場に座り、キッと視線を強めるが・・・すぐに、小さく欠伸を漏らした

 

 

「ふぁ・・・」

 

「あ、あの・・・鄧艾さん?」

 

「・・・?」

 

 

そんな彼の様子を見つめ、雛里は恐る恐るといった様子で声をかける

心なしか、緊張で体が震えている

 

 

「星さん・・・趙雲さんから聞きました

昨晩は寝ずに見張りをしていてくれたんですよね?」

 

「ん・・・守るって、そう言ったから」

 

「あの、ありがとうございました

それで、その、今日は私が起きていますから・・・どうか、鄧艾さんはお休みになってください」

 

 

この言葉に、一刀は一瞬眉を顰める

それから、彼女のことを見つめながら小さく息を漏らした

 

 

「でも・・・危ない

鳳統、戦えない」

 

「何か心配になったりおかしなことがあったら、すぐに皆さんを起こしますから・・・だから、大丈夫です」

 

 

雛里は、そう言ってぎこちなく微笑んだ

その笑みを見つめ、彼はしばらく黙っていた後に・・・溜め息を吐きだす

それから欠伸を一つすると、そのまま両目を瞑ったのだった

 

 

「何かあったら、すぐに、起こして・・・」

 

「はい、任せてください」

 

 

彼女が笑顔のまま返事をする、それと同時に聞こえてきた

規則正しい寝息

よほど疲れていたのだろうか・・・言うと同時に、彼は眠りについてしまったのだ

そんな彼のことを見つめ、彼女はフッと息を吐き出した

 

 

「やっぱり・・・疲れていたんだ」

 

 

呟き、見つめた先

彼は弓を抱きかかえるようにして、深い眠りについている

 

 

 

「鄧艾・・・士載、かぁ」

 

 

同じように座り込み、彼女は呟く

眠る青年の名前を

 

“鄧艾士載”

 

この名を、彼女は聞いたことがない

だがしかし、知っている

“鄧艾士載”ではない

この“青年”を、彼女は知っている気がしたのだ

 

しかし・・・

 

 

 

(どこで、会ったんだろう・・・?)

 

 

“思い出せない”

しばし考え込むが、やがて・・・彼女は、苦笑と共に諦めた

 

 

「鄧艾さんは、私たちを助けてくれた

今は・・・それで、いいよね」

 

 

“うん”と、彼女は頷き笑う

良く知らない、正体の掴めない人だけど

不思議と、“信じられる”

彼はきっと、自分たちを助けてくれる

そう思ったのだ

 

 

「不思議な人、だなぁ」

 

 

だから、彼女は呟いていたのだ

クスリと、小さく笑いを零しながら・・・

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「あれが天の御遣いか・・・?」

 

 

暗い森の中

一人の白髪の男が、静かにそう呟いた

その言葉に、隣にいたもう一人の男はニヤリと笑みを浮かべる

 

 

「ああ、そうだ」

 

「そうか・・・あの青年が、か」

 

 

言って、男は“ふむ”と腕を組み声を漏らした

それからしばし考え込むような素振りを見せた後、フッと笑みを浮かべ歩き出す

 

 

「お、やるのかい?」

 

 

そんな男の姿を見つめ、もう一人の男・・・呉蘭は、愉快そうに表情を歪めた

その呉蘭の一言に、男は歩みを止め不気味に嗤う

 

 

「ふっ・・・まぁな」

 

 

言うやいなや、彼の周りには多くの兵が集まっていた

その兵は皆、瞳に輝きが見られない

黒く、濁った不気味な雰囲気を漂わせていたのだ

 

 

「元々、この森は我らの担当だ

誰も文句は言うまい」

 

 

“我ら”

そう言って、彼らは歩いていく

不気味なほどに暗く深い森の中を・・・

 

 

 

 

 

 

 

「この“黄権”に全て任せるがいい

奴らは皆、生きてこの森を出ることはできないだろう」

 

 

 

 

 

 

やがて、その男は

森の中、闇の向こうへと

 

融ける様、消えていったのだった・・・

 

 

 

 

★あとがき★

 

二章・五話公開しましたw

 

行動を開始した一刀組

そして、彼らを狙う謎の軍団

一刀達は無事、成都へと辿り着くことが出来るのか・・・?

 

まぁ、あれです

マンガやら他のSSやら自動車学校やらテイルズウィーバーやらで更新がかなり遅れましたww

マジでごめんなさいww

この後、徹夜して書きますからww

 

冗談抜きで、“キミオト”と“真紅の君”は書く予定ですが

どこまで書けるやら・・・ねぇ

今日中には、投稿はできそうですが

 

ま、HPが続く限り書きまくりますwwwww

 

 

それでは、またお会いしましょう


 
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