ある日のこと
「なんかうまいもんでも食いてぇ~な~」
昼ご飯を食べる少し前、自分の家で智樹がそんなことをぼやき、それを聞く、そはら、イカロス、ニンフ、アストレア、カオス。
「おいしいものって……」
「こうさ……いつも食ってるものだとなんか飽きてくるんだよな~」
智樹がそんなわがままみたいなことを言っているが、人間だれしもが通る道。
智樹のぼやきは自然と言えば自然である。
「お兄ちゃんは何が食べたいの?」
「そう言われても、何食いたいとか思いつかねえんだよな~」
「じゃあ、我慢しなさいよ」
「でもさ~」
「「でもじゃない!!」」
ニンフとそはらが声を合わせて、智樹を怒鳴る。
「あの~」
アストレアが手を挙げる。
「私も智樹の意見に賛成……」
アストレアも同じようなことを考えていた。
「アストレア……」
「イカロス先輩のご飯がおいしくないってわけじゃないんですけど~」
アストレアは指をもじもじしながら喋る。
「もう少し、おいしいもの……食べたいかな~って……」
「じゃあこれからアマゾンに行って……」
イカロスが戦闘服になって翼を広げようとする。
「イカロス! ストップ! ストップ!」
出て行こうとするイカロスを智樹が静止させようとする。
「何してんだ、お前ら」
そこに秋山がやって来る。
「あ、秋山さん。こんにちは~」
そはらが丁寧にあいさつする。
「こんにちは。それでイカロスはどこ行こうとしてるんだ?」
秋山は皆から事情を聞いた。
「なるほど…うまいものか……」
秋山は考える。そして考えた末、ある答えを導き出す。
「異世界に行ってみるか?」
『へ?』
ジャングルに迷い込む智樹とそはら。
そこで獣の叫び声が聞こえ、おびえる二人。
すると別の獣の叫び声とともにタイトルが飛んでくる。
「求めよ! その美味(グルメ)!!」
イカロス達エンジェロイド達が飛んできて、ジャングルに向かって突撃する。
すると木々が激しく揺れ、その木々から獣が大量に現れ、再び驚く智樹とそはら。
場面は突然ジャングル。
「ふぃ~」
智樹達はジャングルに生い茂る葉を払いのけながら、進んでいく。
「まさかいきなり異世界に連れてこられるなんて思わなかったぜ~」
「智ちゃん、ここなんか不気味だよ~」
智樹の後ろでおびえながら進むそはら。
「ぎゃ~」
「ぐわぁ~」
智樹達が聞いたことない獣達の鳴き声が聞こえてくる。
「きゃっ!」
そはらが体を智樹の背中に押し付ける。
「ちょ、そはらさん……少し苦しい……」
そはらがものすごく力を入れてるため、智樹は少し苦しがる。
「あ、ごめん智ちゃん」
そはらは思わず離れる。
「はあ……はあ……。そういえばイカロス達、どうしたんだ?」
「イカロスさん達、空を飛んでるはずなんだけど……」
飛んでいるはずのイカロス達が見当たらない。
「どうしたんだろう? ここからじゃよく見えないな」
智樹達の現在いる場所は木の枝とでかい葉が邪魔して空がよく見えない。
「とりあえずもう少し辺りが見渡せる場所まで行こう」
智樹達は何とか辺りが見渡せる場所へと出てくる。
そこにはなんと大きい狼に押さえつけられていたアストレアと、アストレアの上にいる狼を追い払おうとしているイカロス、ニンフ、カオスの姿があった。
イカロス達はArtemisやパラダイス=ソングを使うも、狼は巧みにその弾道などを見極め、完全に回避し、アストレアが逃げられないように注意を向けている。
「この犬……」
「狼だよ、ニンフお姉様」
「そんなの分かってる!」
「イカロスせんぱ~い、ニンフせんぱ~い、カオス~。早く助けて~」
アストレアは自分の羽を使えばいいのに、あまりにパニックに陥っているので羽を使う意識がない。
「ならこれで……」
イカロスは終いには、APOLLONを持ち出す。
「イカロス先輩~、それはさすがに私も死んじゃいますよ~」
アストレアは泣き顔でイカロスにやめるように言うが、イカロスは聞こうとしない。
そんな時であった。
「テリー、獲物は捕まえたか?」
そこに青い髪をした大男とその大男と比べると小さな男が智樹達が出てきたのとは別の茂みから出てくる。
『へ?』
狼をテリーと呼んだ大男に反応する智樹達。
「なんだこりゃ?」
大男はその狼と今ある状況が分かってなかった。
「! ト、ト、ト、トリコさん……」
「どうした、小松?」
トリコと呼ばれた大男と小松と呼ばれた小さい男。その小松があることに気づく。
「この人達、背中から…羽生えてます……」
小松はイカロス達に羽があることに気づく。
「あ? 言われてみれば……」
トリコはあまり関心がなかった。
「なんだ? お前ら?」
トリコがイカロス達に尋ねる。
「私達は……」
「そこのバトルウルフが抑えてるやつ、俺達の連れだから放してやってくんないか? トリコ」
そこに秋山がやって来る。秋山の髪は異世界に移動したため、最初に智樹達と会った時のように黒色の短髪であった。
「秋山さん」
「ほぅ、俺を知ってるみたいだな」
「そりゃあ、美食屋四天王でもカリスマと呼ばれてるほどだ。簡単に分かるさ。
それで放してやってくんねえ?」
「分かった。テリー」
テリーと呼ばれた狼はアストレアを解放する。
「うわぁ~ん、先輩~、怖かったですよ~」
アストレアが涙顔でイカロス達に駆け寄る。
「それで、お前ら何もんだ? 美食會じゃなさそうだが……」
「まあそうだな。異世界から来た人間とエンジェロイド達ってところだな」
「はぁ?」
秋山達は事情をトリコ達に説明した。
「なんか信じられない話ですね」
「信じてくれとは言わねえよ。ただ言ってることは事実だけどな」
「ま、別にいいさ。それでお前ら、この島に何の用なんだ?」
トリコが秋山達に尋ねる。
「基本的にうまいものを探しに来ただけだ。これと言った獲物は決めてないな。
そんでもってお前達と会ったのは偶然」
「そうなんですか」
「それでトリコ達は何を狙ってるの?」
ニンフがトリコに尋ねる。
「俺か? 俺はこの島……『パロキメア島』の主、『パロキメアザウルス』を狩りに来た」
「『パロキメアザウルス』?」
「この『パロキメア島』に住んでいる、主であり、この島最強の恐竜ですよ。知らないんですか?」
「いや、異世界から来てるから……」
「そうでしたね。とにかくその『パロキメアザウルス』の肉は常に熟成されてて、肉の中にチーズも入ってるって話なんですよ」
「恐竜の肉の中に……チーズ?」
小松の説明を聞いても、智樹達はちんぷんかんぷんで分からない。
「まあそれがこの世界に住んでるグルメな生き物たちなのさ」
そんな時であった。
「ぎゃー、ぎゃー!!」
何かわからない獣の鳴き声が聞こえてくる。
「ひいいい!」
「何? この鳴き声……」
「この鳴き声……『レガンダ』だな」
「『レガンダ』?」
すると突然、巨大な象クラスのサイが10頭くらい出てきて、智樹達の方に向かって突進してくる!
しかもそのサイは角がカブトムシのような形をしていた。
「ひぃいいい」
「何だあのサイーーーーー!?」
そはらや智樹が怯える。
「マスター、危ない!」
イカロスがArtemisでレガンダを攻撃する。Artemisを受けたレガンダのうち何体かは倒れるも、受けてもなお突進を続けるレガンダがいる。
「!」
「イカロス先輩!」
「3連、釘パンチ!」
いつの間にか一番近く突撃してきていたレガンダの傍に移動していたトリコが必殺技の釘パンチでレガンダを倒す。
残ったレガンダはトリコ達に突撃をしていこうとするが……。
「!」
レガンダ達は突然怯えだし、後ろへと引き返した。
「何? どうしたの?」
chrysaorを構えていたアストレア達は相手が突然逃げて行ったので何が起こったのか分かっていない。
「そんなことより食おうぜ」
トリコがいつの間にか焚火の準備をして、倒れているレガンダを焼こうとする。
「うんめ~~~~~!!」
焼かれたレガンダの肉は智樹が今まで食べたことのない至高のものであった。
「本当に……おいしい……」
「やっぱりこういうの食ったことないんだな」
「なにこれ、おいしい」
智樹達異世界メンバーは食べたことないおいしい味にただただ感激する。
「けど、俺が狙ってる『パロメキアザウルス』はもっとうまいらしいぜ」
「マジで!?」
「まあ、俺も食ったことねえからはっきりは言えないけどな。しかし、イカロスだったか」
「はい」
「さっきのあれ……なんだったか?」
「Artemisです」
「そうそう。なかなかうまかったぜ。レガンダは刃物類で殺しちまったら、刃物に含まれてる金属を吸収して肉が食えなくなっちまうからな」
「それにあのレガンダを一撃で仕留められるなんて……。捕獲レベル14ですよ」
「捕獲レベル?」
「なにその捕獲レベルって?」
ニンフとアストレアが尋ねる。
「捕獲レベルと言うのはIGOが選定したその獲物を仕留める難度です。
捕獲レベル1は猟銃を持ったプロのハンターが10人がかりでようやく仕留められるレベルなんです」
「プロのハンターが10人……」
「ただレベルが5になると戦車を使っても仕留められるかどうか……」
「なにそれ。単純な計算じゃないの」
「はい……」
「まあアルファーのArtemisなら戦車も壊せるわよね」
「…うん」
「あれ? じゃあもし私がchrysaorとかカオスの羽とかで倒そうとしてたら……」
「そうしないように俺がさっき威嚇しただろ」
「え?」
「じゃあさっきのサイ達が逃げたのって…」
「俺が威嚇したからだ」
先ほどレガンダ達が逃げたのは実はトリコが威嚇して、相手を怯えさせたのだ。
「しかし、テリーが俺以外になつくとは思わなかったぜ」
トリコが見る先、そこにはテリーとカオスが戯れていた。
「あんなに他人と遊んでるテリー、初めて見たぜ」
「歳が変わらないからじゃないのか」
「歳が変わらない?」
「テリーは生まれてまだ1年経ってないだろ」
「え? そうなんですか、トリコさん」
そはらがトリコに尋ねる。
「ああ、生まれたのは数か月前だ」
「たった数か月で、あんなに大きくなるのかよ。そのバトルウルフってのは……」
「……ちょっと待て、あのちっこいの…」
「カオスです」
「カオスって5歳じゃないのか?」
「あと少しで生まれて1年だぞ」
「何だそりゃ」
「エンジェロイドって言う、簡単に言えばアンドロイドだな。だから見た目通りの年齢じゃないぞ。決してGTロボじゃないぞ」
「いや、そりゃGTロボと違うのは分かるさ。GT特有のチタンの匂いがしねえ」
「何ですか? そのGTロボって…」
「まあ、これ以上は俺はともかく、異世界人のお前達があまり首突っ込む話じゃないな。しいて言うなら遠隔操作ロボだ」
「遠隔操作……」
「さてと、行くか」
トリコ達はレガンダを食べ終えてしばらくしてようやく一番の獲物のパロメキアザウルスを探しに行く。
「どこにいるのか分かってるんですか?」
「ああ。この島の一番高い山……あそこにいる」
トリコがその山を指差す。
「あそこなら私達が飛んでいけば…」
「やめとけ」
飛んで行こうとするニンフをトリコが止める。
「何でよ?」
「よく見てみろ」
トリコがよく見てみるようにいい、ニンフ達はよく見てみる。
するとその山の付近にはプテラノドン+天ぷらのような鳥が飛んでいた。
「何よ、あれ」
「『テラプノテン』。見た目はあれだが、かなり獰猛だ。捕獲レベルはレガンダよりも高い捕獲レベル40だ」
「4、40……」
「一気に高くなっちゃってますね……」
「て、わけだ。歩いていくぞ」
こうしてトリコ達は歩いて山へと向かった。
その山道の中……。
「なんだありゃ?」
自分達の進む道に熊と猪とワニを複合させたような生き物が何体も待ち構えていた。
「今度は何?」
「あれは『ベワシシ』ですよーーーー!」
小松がとても怯える。
「仕方ないわね~」
アストレアがchrysaorを取り出し、構えようとするが……。
「やめとけ」
トリコがアストレアを抑える。
「なんで止めるの?」
「こいつらの肉は食えたもんじゃねえ」
「そういう問題?」
「俺は食う目的以外で獲物は殺さねぇ!! 食わねーなら殺さないし、殺したならば食う!! それが俺のルールだ」
トリコの信条、それは不用意に獲物は殺さないもの。
「じゃあ、どうするのよ? あっちは私達を襲う気よ」
「こういう場合はノッキングだ」
「ノッキング?」
聞きなれない言葉にそはらが秋山に尋ねる。
「簡単に言うと一時的に麻痺にする技だ。ノッキングは本来、道具を使うものが主流だ」
そう言いつつも秋山は何も出さずにベワシシの群れの前に出ていく。
「おい、お前、そいつらのノッキング……」
「素手で十分できる」
秋山はそう言ってベワシシ達に突撃していく。
ベワシシも突撃していく、秋山に向かって襲い掛かってくる。
しかし秋山はその攻撃を巧みにかわすと同時にベワシシの体に軽く指をつつく。
するとつつかれたベワシシは突然動きが止まり、その場に倒れる。
「まだまだ」
秋山はそのままベワシシの群れに突撃していき、目の前にいたベワシシ全員にノッキングをした。
「指だけでよくできるな」
「俺、普通じゃないからな」
秋山はそのまま歩き出す。
「普通じゃない?」
「俺は闇の魂っていう特殊な魂持ちでな、対になる魂持ってるやつじゃない限り俺は殺せないし、不老不死なんだよな。そんで闇の魂のおかげかせいかで普通じゃできないこともできるからな」
「殺せないって……死なないってことなんですか?」
「そういうことだ」
「つらくないんですか?」
小松に心配される秋山。
「別につらいと思ったことはない。それに俺、まだそんなに長く生きてないしな。
この力のおかげで色んな奴に出会えて楽しいからな。それに俺はまだ死ににいく気もねえし」
秋山達は再び歩き出す。
一行は頂上へとたどり着く。
しかし島の主であるパロメキアザウルスが見当たらない。
「何もいませんね」
「いや、足跡がある」
トリコと秋山が足跡にあることを気づく。
「これはついさっきまでのだ」
「なんでわかるの?」
「踏み具合と周りにある古い足跡と比べると深く残ってるからだ。
しかし、この足跡………」
秋山は少し口ごもる。
「どうしたの?」
「強くジャンプした後だ」
「? それってどういうこと?」
アストレアが皆を代表して質問する。
「簡単に言うと……」
秋山が説明しようとしたが、その必要がなくなった。なぜなら一行の頭上が突然暗くなったのだから……。
『え?』
「こういうことだ」
一行のところに何かが落ちてくる。
その落ちてきたものは探していたパロメキアザウルスであった。
パロメキアザウルスは一行が来るのを感知し、ジャンプで一気に踏みつぶそうとしたのだ。
しかしそれにいち早く気づいていたトリコと秋山のおかげで全員無事であった。
「どおりで匂いが上から来たわけだ」
「感知できるとは恐れ入ったぜ」
「な、なんなのよ。あれ?」
ニンフがそのパロメキアザウルスの姿を見て驚く。
頭はティラノザウルスなのにライオンの鬣のようなものをはやしており、手はなんと4本も生えており、下半身はトリケラトプスのようなものであった。
「あれ本当に生き物なの~?」
そはらが泣き顔で尋ねる。
「間違いねえ。こいつからはチーズの匂いがしてやがるぜ」
トリコの嗅覚は常人をはるかに超えている。そのためパロメキアザウルスの体内に熟成されているチーズの匂いを探知出来るのだ。
「パロメキアザウルス……捕獲レベルはっと……」
秋山が世界に検索して、捕獲レベルを調べる。
「高いな。捕獲レベル76だと」
「7、76!?」
「それってどのくらい強いの?」
「よくわからんが、とにかくお前達も本気でやらないと死ぬって思え」
秋山がイカロス達に注意を促す。
「さてと、まずは小手調べ……」
そう言って、秋山がパロメキアザウルスの腹部を殴る。
しかしパロメキアザウルスは堪えていない。
「固いか」
「どっせええええええい!!」
今度はアストレアがchrysaorでパロメキアザウルスの腕を切ろうとするが、切れない。
「え!?」
「ナイフ!!」
アストレアの狙ったところと同じ部分をトリコのナイフのような鋭い右手で切ろうとするが、同じく切れない。
「くっ! なんて固さだ」
「あんたたち、どいてないさい!」
ニンフが秋山達にどくように指示。
ニンフの口からはパラダイス=ソングの発射準備がされていた。
「パラダイス=ソング!」
パラダイス=ソングが発射されるも、パロメキアザウルスはそれをジャンプすることで回避する。
「Artemis、フルファイヤッ!」
イカロスがArtemisでパロメキアザウルスを攻撃するも、パロメキアザウルスは1つの手でArtemisを防ぐ。
その手は少し焦げた跡はあっても無傷と言ってもいいくらい傷がない。
パロメキアザウルスは後ろを振り向き、尻尾で空中にいたイカロスを叩き落とす。
「アルファー!」
『イカロス(先輩)さん!!』
「私が……」
次にカオスが炎をためて、それをパロメキアザウルスに向けて放つ!
パロメキアザウルスはその炎を先ほどArtemisを受けた手で防ぎ、尻尾でカオスの体を縛り上げる。
「っ……っ……!!!」
『カオス(さん)!!』
カオスは苦しむ。
「ううううう、わぁあん!!」
テリーがパロメキアザウルスの尻尾にかみつく。
「テリー…」
パロメキアザウルスはものすごい力でテリーを振りほどく。
「10連……釘パンチ!」
テリーに気を取られてる隙に、パロメキアザウルスの尻尾の根元にいたトリコが10連釘パンチを尻尾の根元に当てる。
パロメキアザウルスは思わず尻尾の力を緩め、カオスは緩まった隙に脱出する。
パロメキアザウルスは4本の腕のうちの2本で尻尾付近にいるトリコを払い飛ばす。
「トリコさん!」
「打撃掌!」
秋山がパロメキアザウルスの腹部に向かって先ほどのパンチとは比べものにならない攻撃をパロメキアザウルスに与えるも、あまり堪えていない。
「ちっ」
「ぐぉあああああ!!」
パロメキアザウルスの腕は秋山に襲い掛かるも、秋山は紙一重でそれを回避、後ろに下がる。
「くそ……思ったより固い奴だ。10連釘パンチを受けてもビクともしねえ」
「だが今ので弱点がはっきり分かった」
「何?」
秋山の言葉にトリコが驚く。
「あいつをよく見てみろ」
トリコ達がパロメキアザウルスの方を見る。
「見てみろって……ぴんぴんしてるんじゃ……」
「ぴんぴんはしていても手と腹をよく見てみれば分かる」
秋山がもっと具体的なアドバイスをする。
「そういうことか」
「え? どういうこと?」
「さっきイカロスとカオスの攻撃をこいつは腕で防いだ。
だが俺や秋山、テリーにアストレアの攻撃は防ごうとしなかった」
「……分かりました」
「そういうことね」
「そう、それが答え」
「だからなんなの~?」
皆が答えを導き出す中、アストレアだけが分かっていない。
「あいつは火の攻撃に弱いってことだ」
「火?」
「イカロスのArtemisには少なからず火薬物があるし、カオスの先の技なんかもろに火だ」
「おそらく、パロメキアザウルスは今まで打撃とか切られる攻撃は受けたことはあるけど……火の攻撃を受けたことがないんだ」
小松が解説する。
そもそもこの島に来る人間自体がほとんどのいないうえに、火を使った攻撃をする獣などいないに近い。
「多分な。だけど、時間をかけたら耐性がつくかもしれない。だったら耐性をつけられる前に決着をつけるしかない」
「それに見たところ、焦げた部分は微妙にだが耐久力が弱まってる」
「だったらそこを中心に攻撃すればいいんだね」
「そのためにはあいつを一度ものすごく燃やす必要があるな。イカロスはaegisの準備、カオスは炎の準備、ニンフはイカロスのArtemisのコントロールを頼む」
「「「分かった(分かりました)」」」
「あの、私は?」
「そこらへんでくつろいでろ」
「ひっど~い」
「じゃあ俺と時間稼ぎだ。トリコはとどめよろしく」
「ああ」
トリコはそういわれると両手をすり合わせる。
そのトリコの手からは金属音が鳴り響く。
「金属音?」
「でも、あいつそんな金属みたいなもの、持ってないぞ」
智樹達がどう見ても素手で武器を持っていない。それなのに金属音が聞こえてくるのだ。
「あれやる気か」
「あれ?」
「まあ、そんなことより行くぞ」
秋山が先に突撃していく。
「あ、待ってよ~」
アストレアが秋山の後を追うようにパロメキアザウルスに向かって突撃していく。
アストレアは自身の羽の加速性を利用して、パロメキアザウルスを翻弄する。
「それじゃあまずは肉叩きでもして、防御を少しでも弱めてやるか」
秋山はそう言ってパロメキアザウルスの懐に入る。
「がおおおおおおお!!」
パロメキアザウルスは腕を振るうも、秋山は紙一重で完全回避する。
「二撃」
秋山は目にもとまらぬ速さで振るってきた腕と腹部に打撃を与える。
打撃を与えてすぐにいつの間にか後ろに回り込み、ジャンプする
「追連撃」
秋山はそのまま尻尾、背中、後ろ首を攻撃する。
そして秋山はパロメキアザウルスの頭部分に移動する。
「残同連撃」
秋山がそういうとパロメキアザウルスの頭部と残りの腕にまったく同時に打撃攻撃を与える。
「あらょっと」
秋山はパロメキアザウルスの真正面に立つ。
「ねえ、あんた一人でいいんじゃない?」
パロメキアザウルスを翻弄していたアストレアが秋山に言った。
「いやいや、俺一人じゃ……。で、そっちの準備は?」
「OKよ」
秋山が後ろを向くとイカロスとニンフとカオスの攻撃準備が完了していた。
「Artemis、フルファイヤッ!」
イカロスの羽からArtemisが発射され、それらはニンフのハッキング能力で完全誘導弾となり、均等にパロメキアザウルスの体全体に命中する。
「しゃあああああ」
「それじゃあ今度は完全燃焼だ。カオス!」
「うん!」
カオスは手に大きくためた炎を動きが鈍っているパロメキアザウルスに向かって放つ!
パロメキアザウルスは腕で防ごうにもArtemisや秋山の攻撃が効いているため、腕がまともに動かせないでいた。
パロメキアザウルスはカオスの炎を防ぎきれず、体全体に焼かれる。
「さてと、それじゃあフィナーレだな」
秋山がトリコの方を向くと、トリコは手を合わせて、目をつぶっていた。
「え? 何? お祈り?」
「違いますよ。トリコさんのマナーみたいなものです」
「マナー?」
小松に言われてもしっくりこない智樹とそはら。
「この世のすべての食材に感謝をこめて……いただきます」
そう言ってトリコがパロメキアザウルスの懐に行く。
「ぐぁあああああああ!!」
パロメキアザウルスはまだ何とか動かせる尻尾でトリコを攻撃する。
トリコはそれをカウンターするかのように左手をとがらせる。
「フォーーーーーク!!」
トリコのフォークが迫りくる尻尾を突き刺す!
「ナイーーーーーーフ!!」
トリコのナイフと呼ばれた右手はパロメキアザウルスの体をぶった切る!
『!!!』
トリコは先ほどのいただきますを言う時と同じポーズをとる。
「ごちそうでまでした」
智樹達異世界メンバー一同(秋山は除く)はトリコのその力を見て驚愕した。
「あいつ……人間よね?」
ニンフが尋ねる。
「人間だよ。この世界の人間で強い奴はあれくらいできるさ」
「そ、そうなの……」
ニンフはそれ以上聞こうとしなかった。
そして夜になり、一行は狩ったパロメキアザウルスを焼いて食べた。
「おお、本当に熟成されたチーズが肉の中に入ってるぜ」
「まるでチーズハンバーグみたい」
「よだれが止まらねえぜ……」
「それじゃあ……」
『いただきまーーーーーす!!!!』
一行はパロメキアザウルスの肉を食べる。
『うっまーーーーーーい(おいしーーーーーい)!!!』
全員が食べた感想がそれだった。
「なに、これ! さっき食べたのよりおいしい!?」
「うますぎる! 本当にうますぎる!」
「おいしすぎるあまり涙が出ちゃいます~」
「まあ本当にうまいと思うもんは涙が出ると思うぜ」
感激するアストレアに賛同するトリコ。
それから………。
「結局全部食べちゃった~~~~!」
結局全員がパロメキアザウルスを残さず食べた。(パロメキアザウルスの60%はトリコが食べた)
「ど、ど、ど、どうしよう。せっかく持って帰ろうと思ってたのに……」
「何、まだ残ってるぞ。ほら」
トリコが指差す。
「骨だけだよーーーーーー!!」
智樹がツッコミを入れる。
「まあ代わりにこの島にいる生き物、何匹か捕まえて連れ帰るしかないな」
「そんな~」
「とりあえず、皆にうまかったと伝えよう」
「それって嫌味じゃ……」
それから異世界メンバー一同はレガンダや他の生き物を捕獲し、トリコ達と別れ、帰った。
「そんなことがあったのか」
帰ってきてそうそう、守形と美香子に何をしていたのかを尋ねられたので、答えた。
「異世界にもそんな世界があるのね~」
二人は智樹の家の庭でバーベキューとして秋山達が持って帰ったグルメ食材を食べながら、聞いていた。
「それにしてもうまいな、この肉」
「本当はもっとうまい肉があったんすけど……」
「その……」
「皆で食べちゃったんですよね~」
智樹とそはらとアストレアが申し訳なさそうに謝る。
「そんなにうまいのなら食べてしまってもおかしくないだろ」
「まあ、あの肉の大半はトリコって言う男が食べたんだけどね」
「はい…」
皆がバーベキューを楽しむ。
「ねえねえ、秋山お兄ちゃん」
「なんだ、カオス?」
「またどこかに連れてってね♪」
「機会があったらな」
「もう勘弁してくれ~」
異世界に行くのはこりごりだと思う智樹であった。
おまけ
作者「今回のおまけだ!」
一刀「しかしまさか『トリコ』とコラボするとは思わなかったぜ」
作者「おいしいもの食べたいとかたまにぼやくからな。それでネタを考えた結果トリコとコラボした方が楽かなとなった。まあ話的にはアニメの第1話でワンピースとコラボした時のものを参考にしたかな」
一刀「やっぱりオリジナルで考えるのは難しいか」
作者「今回もそれなりに難しかったぞ。どんな生き物を出そうとか、どうすれば話の流れがうまくいくかとかさ」
一刀「まあ楽なものはないということだな」
作者「そういえばこの間、『戦国BASARA』の映画を見に行った」
一刀「行ったのか」
作者「その時の予告が『けいおん!』、『鋼の錬金術師』、『スーパー戦隊』、『テニスの王子様』だったな」
一刀「『そらのおとしもの』はなかったのか」
作者「なかった。しかしBASARAの映画を見て思ったことはある」
一刀「なんだ?」
作者「映画のポスターとかのキャスト欄に書いてないだけで、名前があるキャラで出てくる奴はいるんだなと思った」
一刀「誰がいたんだ?」
作者「それは言えないな。ただキャスト欄に書いてないだけで名前がきちんとあって出てきたキャラは……5人だな」
一刀「5人か」
作者「まあキャラが少し多いのもあるけどな」
一刀「そういえばキャスト欄にないだけであの空のマスター(某掲示板での通称ガタッさん)は出るんだよな。スクリーンショットでいたから」
作者「うん。となるとやはりカオスも出るのかな……」
一刀「どうだろうな。回想だけも知れないぞ」
作者「それは嫌だな~。その某掲示板で聞いたんだが、どうやら戦う相手はカオスよりも強いらしい。ツイッターで言ってたそうだ」
一刀「カオスもよりも強い…。原作だとそんな感じじゃ…」
作者「アニメだとカオスの仲間化が早まったからな。それに合わせて敵も強くしたんだろ。PVだと登場方法が原作と全然違うからな。もしかしたら能力も変わってる」
一刀「一体どうなるんだ」
作者「わからんが、楽しみだと言っておこう」
一刀「そういえば『仮面ライダーディケイド×新・恋姫†無双 feat 戦国乙女』の調子はどうだ?」
作者「いや、まだ第10話見てないから…。だが第11話以降のあらすじはひとまず見てみたがおおよそ予想通りのものになったかな。ただ第11話での展開が少し早かったかなと言ったところだ。てか全12話だと思ったら全13話だったのは驚きだった。
しかしやりやすいと言えばやりやすい。そんでもってそのあらすじを見て究極完結編の冒頭部分を書いたぜ。
それでは!」
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この作品はアニメ「そらのおとしものf」の最終回後を二次創作で考えたものです。
そのため映画に出てくるであろう要素は一切入りません。
原作キャラクターの性格や口調が一部変わっていたりするかもしれませんが、その事はご了承下さい。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。
今回の話は別作品とのクロスオーバー的なものとなっています。