~祭り4日目~
「いたっ!ちょッ!?もっと優しく」
「ふふっ・・・情けないぞ、一刀」
「気合が足りん!!」
朝から一刀の部屋では大騒ぎ
その原因は・・・
「くそぉぉ!!鍛えてたはずなのに・・んぎゃっ!?」
「自業自得だ」
昨日行われた天下一品武道大会でなかなかの傷を負った一刀
そして、その一刀の世話をしている春蘭と秋蘭・・・
「だ、だいたいだな!安静にしてろと言われたくせに・・・その・・・なんだ昨晩はあんなに・・・・・・」
「い、いや・・・でもね?その・・・男の子は疲れてる時に逆に元気になるというか・・・」
「し、知るか!!」
「ほら、姉者も一刀もあまり騒ぐな・・・一刀、腕少しだけ上げるぞ?」
「んっ」
まさに今の一刀は秋蘭にされるがまま・・・
ちょうど着替えを手伝ってもらっているところだ
そして、その間に春蘭に足のマッサージを受けている
まさに至れり尽くせりなのだが・・・
「ッッッッ!!!!し、しし春蘭!!つよ、強すぎ!!」
「こら、一刀!」
「ま、待て!暴れるな!!加減が分からん!!」
春蘭のテンションとマッサージの強弱が比例しているため、一刀はだいぶグッタリしていた・・・
「・・・っと・・・・・・よし、一刀もういいぞ」
「・・・・・・うん・・・ありがとう秋蘭」
「ふふっ、気にするな」
「むっ!・・・・・・か、一刀!これくらいならどうだ?」
「!?・・・おっおぉぉ!うん、それくらいがちょうど良いかも。ありがとう春蘭」
「う、うむ////」
ちょうど、秋蘭が一刀にいつもの制服の代わり(武道大会でボロボロになったため)を着せ終え、春蘭も加減が分かり始めた頃・・・
コン、コン
「どうぞ~~」
「失礼します、兄様」
ガチャ
「兄ちゃん、元気~?」
「おっ、流琉に季衣、おはよう」
お盆に料理をのせた流琉と、その後に続いて季衣が部屋に入ってきた
「兄様・・・もうお昼ですよ?」
「・・・・・・マジで?」
流琉の返事に驚き、思わず季衣の方を見る
「ホントだよ。ボク、さっきお昼ご飯食べたもん」
昨日とは違い、いつもの元気を取り戻した季衣が元気よく答える
「うわぁ・・・・・・そんなに寝てたのか・・・・・・って、春蘭と秋蘭は食べたの?」
「いや、これからだ」
そう言って、腰を上げる秋蘭
「姉者はどうする?」
「むっ・・・確かに腹は減ったが・・・・・・」
チラッと一刀の方を見る
「うん、俺ならもう大丈夫だから。食べてきなよ」
「そ、そうか・・・ならば」
一刀にそう言われ、春蘭も少し名残惜しげに腰を上げた
「では、季衣、流琉。一刀のことは頼んだぞ?」
「はい、秋蘭様」
「は~い」
「2人とも、ありがとうね」
笑顔で、気にするなといった風に、ヒラヒラと手を振り秋蘭が
そして、続いて春蘭が部屋を出て行った・・・・・・
「兄様、まだ痛みますか?」
2人が出て行ってすぐに、流琉と季衣が一刀の容態を気遣って近寄ってくる
「あんまり体は動かせないけど大丈夫だよ。心配してくれてありがとうな、流琉(なでなで)」
「い、いえ当然ですから////」
流琉の気遣いが嬉しくて頭を撫でてあげると・・・
「むーー!!流琉ばっかりずるいよ、兄ちゃん!ボクだって心配してたんだから!」
隣にいた季衣が興奮して、グイッと体を乗り出してきたが
「ごめん、ごめん。うん、季衣もありがとうな(なでなで)」
「うん!・・・えへへ」
流琉と同じように撫でてあげると、大人しくなって甘えるように擦り寄ってきた
「それでさ、流琉・・・・・・その手に持ってる料理って、もしかして・・・」
季衣と一緒に一刀から頭を撫でられ、すっかり顔を赤くして俯いていた流琉だったが、
「はっ!?そ、そうでした!これ、兄様に・・・」
自分が部屋に来た目的を思い出し、手に持っていたお盆ごと、一刀に差し出した
「そっか、良かった!実は気になってしょうがなかったんだよ」
「うっ!・・・す、すみません。・・・もう冷めてるかもしれません」
お盆の上にのせられた料理は、山菜がたくさん入った”おじや”・・・
確かに、料理からは湯気が消えていて、少し冷めているようだった・・・
「あ、あの!兄様!やっぱり、温めなおして・・・」
「いや、いいよ。十分、十分!いただきま~す!」
余程お腹が減っていたのか、腕の痛みも気にせずかき込んで行く
「あはははは、兄ちゃん慌てすぎだよ」
「そうですよ、兄様。ほら、こぼれちゃってます」
「美味い!!そして、流琉ありがとう!」
「わ、分かりましたから。とりあえず食べ終わってから喋って下さいね?行儀が悪いですよ」
「モグモグ(コク)」
子供のように表情豊かに食べながら頷いて答えた
しばらくして・・・
「ぷはーーー。ご馳走様!!」
「はい、お粗末さまです」
「兄ちゃん、おいしかった?」
一刀は結構な量の”おじや”を平らげた
「あぁ、美味かった!特にあの山菜はおいしかったな!」
「ホント?えへへ」
「兄様」
「ん?何?」
「あの山菜、今朝、季衣が早起きして取ってきてくれたんですよ」
「えっ!マジで?」
えへへ~、と照れ笑いを浮かべる季衣を見る
「そっか・・・。季衣、改めてありがとうな」
「ううん、いいよ。兄ちゃんがおいしかったって言ってくれたから」
少し大人っぽくなったものの、笑顔は変わらない
一刀の大好きな笑顔
「流琉も腕があがったのかな?3年前よりもおいしく感じた気がするよ」
「ほ、本当ですか、兄様!?」
こちらも嬉しそうな笑顔
「嘘なんか言わないよ。・・・そうだ!今度暇ができたら、天の国の料理を教えるよ。またいくつか覚えてきたからさ」
「本当ですか?楽しみです!!」
「じゃあ、ボクが味見してあげる」
「季衣はダメ」
「な、何でさ?」
「だって、季衣は味見って言いながら全部食べちゃうじゃない」
「そ、そんなことないよ。流琉のケチ!」
「な!?き、季衣!!」
「はい、二人ともそこまでな」
もう少しで武器が出てきそうだったため、慌てて一刀が止めに入る
「流琉、いいじゃないか。季衣が味見をしても・・・。春蘭よりマシだよ」
「そ、それは・・・」
少しおどけた一刀の言葉に何も言えなくなる流琉
「季衣も。ちゃんと我慢できるよな?」
「う、うん。もちろんだよ」
季衣も納得したようなので、改めて二人の頭を撫でてあげる
「///」
「えへへ」
3年経っても・・・
どんなに大人に近づいても・・・
一刀は二人の”兄”なのだから・・・
コン、コン
「はい?」
流琉と季衣のケンカを未遂で済ませ、3人で話していると再びノックの音が響いた
「一刀殿?入ってよろしいですか?」
「稟?いいよ。どうぞ~」
ガチャ
「失礼します」
「お兄さ~ん、生きてますか~?」
「・・・・・・チッ」
「おっ!稟、風も・・・それと、桂花!今、お前舌打ちしただろ?」
「ふん!そんなの私の勝手でしょ!それに・・・なんで、あんた生きてんのよ!」
「うぉ!!こ、こいつは・・・「お兄さ~ん」っとと・・・風」
風が一刀の寝台の右側・・・流琉の隣に腰をおろす
「桂花ちゃんだけではないのですよ~。分かっているんですか~?」
「わ、分かってるよ・・・それで、3人ともどうしたの?」
「もちろん一刀殿のお見舞いですよ。体の方は大丈夫ですか?」
「まぁ、なんとか。あんまり動かせないけど、痛みはそこまでないよ」
「そうですか・・・なら、大丈夫みたいですね」
「?・・・何が?」
稟が廊下の方を見ながら、意味深な言葉を吐く
「あの~~郭嘉様、これはどうすれば・・・」
そして、その廊下から兵士が顔を出した
「中に運び込んでください・・・場所は、そうですね・・・」
部屋の中を何かを確認するように見回す
「無難に机で良いでしょう。乗らなくなったら、机の周りにでも置いておいて下さい」
「はっ!」
兵士のハキハキとした返事とともに、とんでもない量の書簡や竹簡が部屋に運び込まれた
「・・・うわぁ」
「・・・凄いね」
流琉と季衣も唖然としている
「・・・これ・・・何?」
隣にいる風に話しかける
「・・・・・・ぐぅ」
「寝るな!」
ペシッ
「おぉ!お兄さんからは久しぶりですね~」
「そうだね。俺も何か懐かしかった・・・って、それはいいんだけど・・・これは何?」
風との懐かしいやり取りも終わり、改めて目の前で行われていることの説明を求める
「それはですね~お兄さんがいない間に風たちがやってきた記録ですよ~」
「・・・記録」
「そうですよ。一刀殿が託してくれたものを私たちなりに考えてきた結果です」
「あんたのせいでね、私たちがどんだけ大変だったと思ってるの?」
三軍師それぞれの答え・・・
そしてそれは・・・
自分の”想い”に応えようとしてくれた”想い”・・・
「・・・分かった。・・・全部に目を通せばいいの?」
その答えに稟が頷く
「察しが良いですね。えぇ、その通り。私たちなりの解釈が多いですから、出来れば一刀殿本人の意見も聞いておきたいので」
「分かった。なるべく早くするよ」
「お願いします」
「頑張ってくださいね~」
「さっさとしなさいよ!」
3人の声を聞き、頷く
その一刀の顔には・・・
3人の想いに応えようとする・・・
深い決意が込められていた・・・
コン、コン
「は~い」
稟たちを加え、皆で話していると、再び誰かがやってきた
「一刀?入るわよ」
ガチャ
「どうぞ~・・・って言う前からかよ・・・」
「あら?何か問題があったかしら?」
「いいや、別に。おはよう、華琳」
「おはよう・・・という時間でもないのだけれど」
「そこは勘弁してくれって」
「ふふ、思ったより元気そうね」
「まぁね」
一刀の周りに皆が集まってる様子を見ながら、華琳も安心したように笑った
「華琳様!」
「あら、桂花?こんなところにいたの?さっき文官たちが探し回ってたわよ」
「・・・ッ!!」
何かを思い出したのか、顔には焦りが浮かぶ
「早く行ってあげなさい・・・。風、稟もお願いできるかしら?」
「はい」
「了解なのですよ~」
3人そろって部屋を出て行こうとしたが
「3人とも頑張れよ~」
一刀はその背中に激励の言葉を掛けた
「一刀殿もお大事に・・・」
「お兄さんこそ安静にしてなきゃダメですよ~」
「あ、あんたなんかに言われなくてもちゃんとやるわよ!」
3人それぞれの言葉を残し、今度こそ出て行った・・・
「・・・で、華琳は何か用?」
「用がないと来てはいけないのかしら?」
少し意地の悪い笑みを浮かべて華琳が答える
「まさか。大歓迎」
「ふふ、そう・・・」
一刀もおどけた調子で答える
「でも、今回は用があるのよ・・・まぁ、厳密に言うと私じゃないんだけど・・・」
「へ~、誰なの?」
「蓮華・・・呉の孫権よ。あなたと話がしたい、って言ってきたの」
「・・・・・・はい?」
一刀自身、全く予想していなかった人物
もちろん話したことなんてない
初対面である
「今、来てるの?」
「えぇ」
「あ・・・・・・そ、そっか」
「どうするの?」
少しの戸惑いはあるが・・・
「・・・・・・うん、会うよ」
結局、いつものように笑顔で答えた・・・
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気合の投稿です!!
と言っても前編なんですけど・・・
まずは勘違いさせてしまった方がおりましたら、申し訳ないです!!今回、前編・後編には愛紗は登場しません・・・
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