波間を漂う海の月。
ゆらゆら、ゆらゆら。
まるで私を誘うようで。
拒む理由などない。
サンダルを脱ぎ、一歩踏みだす。
決して冷たくはないその水は、私を許すように、右足を温めた。
右足に置き去りにされないよう、左足も温もりを求める。
裸の足をなぞる砂粒たちも、離れたくないと叫んでいる。
けれど、彼の水は許してくれない。
小さな叫びさえも飲み込み、浜辺に打ち寄せる。
今、海は私だけを欲している。
私も貴方だけが欲しい。
長い髪は海藻のように。
細い手足は魚のように。
貴方に食べられ、飲まれ、私の体は貴方と一つになる。
私は貴方と永遠に生きる。
後に残る、私の心は海の月になる。
水面にたゆたう海の月になる。
ゆらゆら、ゆらゆら。
誰にも掴ませない。
誰にも触れさせやしない。
誰からも冒されない、海の月になる。
尊く気高い、あの海の月に。
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これまでと、ちょっと雰囲気を変えてみました。
イロイロ書けたらいいんですけどねぇ……