「陽のやつ学校やすんでどないしたんやろ・・・」
学校の帰り道ぶつぶつ独り言を言っている高校生の少女の名は 佐野道。
陽と言うのは道の彼 山田陽介 である。
「心配やし家に行ってみよかな・・」なんて考えながらぼーと歩いていた時
ちゅうううううううううううううううううう!!!!!!!と言う断末魔が
ぬるっとした感触と共に足の下でした。
「な・・・なんかふんでる・・!!!!!」
道は恐る恐る足を上げて足の下の物を見た。
足の下に踏まれて今まさに息を引き取ったであろう生物は、沢山の足が生えており 足
一本にリボンを着ていた。
その生物は恐ろしい形相で道を睨んでいた・・。
「うわああああああ何やこれ・・・た・・たこ??たこ・・・?なんでたこが
こんなとこに・・に・・にらんでる・・ぎゃあああああああ!!!怖っ!!!
きもちわるうううううううううううっ」
道がたった今踏み殺してしまったその生き物は蛸だった。
道は恐ろしさのあまり後ろを振り返ることもなく、彼のこともすっかり忘れ、頭が真っ
白になって急いで家に帰った。
家についた道は靴を乱雑に脱ぎ散らかし 階段を駆け上がり自分の部屋まで走った。
あの恐ろしい蛸の形相を思い出し布団を頭からかぶり震えていた。
「なんであんな所に蛸がおんねん・・・あの・・・蛸の顔・・・うわあああ
あああああああああああああああ どうしよう・・あの蛸が怨霊になって仕返し
に着たら・・どうしたらええねん・・・ううう」と泣いていた。
そんなとき携帯が鳴った。道はびくっとした・・
携帯を取ろうかと思ったけれど この間友達に聞いたリリーちゃんの話を思い出し
「もしかして蛸が・・私あなたに殺された蛸よ今あなたの後ろにいるの・・・なんて掛
けて着たりして・・」と変な想像をしてしまい 絶対でないと思った。
鳴り止まないでずーと携帯が鳴っていた。
絶対に出ないと思った道だが携帯から流れるバラードをきいてハッとした。
「陽!!」といって布団からとび起きた。その音は陽からの着信音に設定された
曲であった。
いそいで携帯を鞄から取り出しボタンを押した。
「道・・・今近くにいるんやけど今からから道んちにいってええ?」今日はじめ
て聞く陽の声に何もかも忘れたように元気をとりもどした道は
「陽!!今日どしたん?風邪でもひいたん?」といつもの元気な声で言った。
「病気じゃないんや。10分ぐらいで着くから、まぁいってから話すわ」と言う
元気のない陽の声にどしたんやろ・・・と思いながら
「わかった まってるー」と言って携帯を切った。
陽がくると思うと、とたんに嬉しい気持ちで一杯になり
「あ・・まだ制服のままやん 10分ゆうてたなあ・・」と呟いてクローゼットに
向かった。
どれにしようかなあ・・と鼻歌を歌いながら キャミワンピとカーデをクロー
ゼットからだすと等身大の鏡の前に立って着替えた。
「髪がぼさぼさになってるやん・・」と言うとブラシで髪をといてコテで前髪と
サイドの髪をくるっと巻いた。少し色のつくリップクリームを塗ったとき
ぴんぽーん と玄関でチャイムが鳴った。
「陽や!」と言うと、道は自分の部屋から走って出ると階段を急いで下りて玄
関へ向かった。玄関の扉を開ける前に玄関の横にある鏡で髪を手で直し
玄関の扉を開けた。
そこには、頬がこけ 目は窪み 髪はぼさぼさ、服はどろどろの浮浪者の様な男が立っ
っていた。
「え・・どなたですか?」と道が驚いて言った。
するとその男は声を絞り出すように「俺や・・陽介や・・」と言った。
その声は道が良く知っている、道の彼の山田陽介の声に間違いなかった。
陽介はがっちりした体格で背が高くサラサラの髪になかなかの男前で学校の女子
にも人気が高かった。その陽介が全く見る影もない姿になっていた。
「陽・・!!!?どないしたん??その姿・・・」と道が言った。
すると陽介は肩を震わせ
「ペットが・・ペットが・・おらんようになった・・うわああああああああっ」
と泣いたのだ。
陽がないてる・・! その姿にもらい泣きをしてしてしまいそうになりながら
「ペット?ペットなんて飼ってたん?いなくなったって・・もしかして今日学校
休んでさがしてたん?」と道が聴いた。
「実は昨日の夕方散歩さしてたら首輪が抜けてしもて・・いろいろ探したけど
どこにもおらへんねん・・どうしてええかもうわからん・・道助けて・・くれ」
と泣きながら陽介が言った。
「まぁとにかく家に上がって話そう」と道が言ってリビングへ陽介を連れて
行った。陽介をソファーに座わらせてコーヒーを出した。 コーヒーを飲んで陽介が少
し落ち着いたので話を続けた。
「昨日の夕方から探してたん?」と道が聞いた 「うんぜんぜんおらんねんやどこさが
しても」と悲しい顔の陽介。そんな陽介を見た道は「二人で探したら絶対見つかるよ
!!」と励ました。
その言葉に陽介は目を輝かせ
「道ありがとう俺めちゃなんか元気出てきた 絶対見つかるって信じる」と言った。
そんな陽介を見て少しほっとした気持ちで道が尋ねた。
「陽そういえばどんな犬なん?」
「ちゃうで」陽介が続けて「犬とちゃう」と答えた。
「え じゃあ猫?」と聴くと 陽介が首を振って言った。
「ちゅーこってなまえのな蛸や」
「たっ・・蛸・・?」 道にすっかり忘れていた記憶がよみがえってきた。
「足にピンクのリボンつけた蛸・・・?」うっかり言葉に出してしまった。
道はハッとした。
「え・・道もしかして見かけたんか!!?そうやピンクのリボンつけた蛸や!!」
興奮した声で陽介が言った。
やっぱりや・・こまった・・まさか踏み殺したなんて言えやん・・
ごまかそう・・うんそれがいい・・と決めた道は
「えっと・・・見た気がしたねん テレビでやったかな?そうそうテレビで!」
と嘘をついた。
道の顔を見た陽介が「嘘やろ。 道は嘘ついたら鼻が動くからすごわか
るねん どこでみたんや?俺真剣に探してるのに教えてや・・」
と言われ、道はおどろいた。自分にそんな癖があってとは知らなかった。
どうしたらいいのか。本当のこと言うしかないのか。でも・・道は考えた。
言っていい本当の事を言うんだ。知られてはいけない事は言わなければいいと
「陽 実は、今日学校の帰りみかけてん・・」と本当の事を言った。
「どこで見たんや!!もしかしたらまだおるかもしれん!!案内してくれ」
と興奮して陽介が立った。陽介にうながされ道も立って玄関へ向かった。
とりあえず蛸の死んでる所に連れて行こう。
私が見かけた後に車か何かに引かれたと思わせればいいと考えながら
「陽こっち~」と一歩歩いた時だった。
後ろで靴を履いていた陽介が声をかけた
「道・・・」
「どしたん?」と止まった。
「ちょっとその上がっている靴の裏こっちに見えるようにしてくれ」と言ったので
何だろうと思いながら陽介の言う通りにした。
「これでいい?」と言った直後
陽介がわなわなと震える声で
「お前・・・まさかお前が・・・ちゅーこを・・殺したんか!!!」と言った。
その言葉を聞いてギクッとした・・なんでばれたん?と思ったけど
「え?なに言ってるん そんなことするわけないやん!!」と怒ったような口調で言っ
た。
「・・・お前っ!靴の裏みてみろや!!」って陽介が怒って言った。
驚いて「え?靴の裏?」と言いながら靴を脱いで脱いで靴をひっくり返した。
そこには墨で「おくとぱすきらー」とはっきり書かれてあった。
言葉がでなかった。でもなんか言わなあかん・・このままじゃあかん・・と思って
「嘘やああああああああああっ 蛸が蛸が字を描く訳がない・・罠や・・罠
に決まってる!!!!」と自分を取り繕うと必死で叫んだ。
しーんとした。
重い空気がながれた。
その空気を割るように陽介は言った。
「ちゅーこは俺が教えて字がかけるんや・・・」
「う・・うそ・・そんなあほな・・・蛸が・・字が書けるやなんて・・」と言うと
「蛸は3歳児の知能があるんや 字ぐらいかけるんや」と答えた
そういえば道の母が親戚の3歳の子がもう字が書けるって言っていたのを思い出した。
下を向いて道は思った。もうあかん・・もう取り繕っても無駄や・・陽の大事な蛸を殺
してしまった事を陽に詫びよう。 素直に謝ったらきっと許してくれる。
道は謝る決心をして顔を上げた
ガツン・・と鈍い音がした。「イタッ」と声を上げて頭を抑えた。
生暖かいものが手に触れた。
「血?陽・・なんで・・」と言って陽を見た。
「ちゅーこの恨みは俺が晴らす・・・ちゅーこおおお」と陽介が叫んでる
遠ざかる意識の中で道は陽介が自分を殴った物が何なのか見た。
最後の力を振り絞って言った
「た・・こ・・つ・・ぼ・・・」
おわり
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学校の帰り道ぴんくのりぼんをつけた蛸を踏み殺してしまった事で大変なことに・・