かつて、孫呉を支え、大陸を平穏へと導いた一人の青年がいた。
その青年は『天の御使い』と呼ばれ、民に愛されていたという。
天寿、というには若過ぎる死ではあったが、大陸全土に住まう民達のほぼ全てが、彼の死に涙し、また、これからの時代を担っていくことを決意した。
人として。
なにより民を導く者として、民の涙と決意に見送られたその死は、時代を導いた者としては最高の栄誉と言っても過言ではなかっただろう。
しかし、その青年は死の間際に思った。
彼が救えなかった、愛する二人の人物のこと。
一人は心無き者が放つ矢の毒に倒れ、もう一人は病に伏した。
後から考えれば、予兆はあった筈だったのだ。
だが、今更考えてもどうにかなるわけでもない。
走馬灯と共に流れる彼女達の思い出に苦笑を浮かべ、青年は意識を手放した。
やれるだけのことはやった。
民を思い、妻達のことを思い、子等を思い。
自分が残せると思ったことは全てやった。
あぁ―――長かった。
やっと、そちらに行けるよ。
きっと、俺の早すぎる到着に、君達は困った顔で笑みを浮かべるだろうけれど。
それでも、やるべきことはやり尽くした。
だから―――そちらに行ったら、酒を飲もう。
君達に比べたら、まだ全然弱いけれど。
それでも多少は飲めるようになったから。
沢山話したいことがあるんだ。
君達が去ってからのこと。
君達が遺してくれた、民や彼女達のこと。
その彼女達との間にも、子供が出来て。
頼りなかったかもしれないけれど、父親として精一杯やれたと思う。
ずっと見守っていてくれていたと思うけれど―――。
やっぱりこういうのは自分の言葉で伝えたいんだ。
願わくば、永久の平穏を。
願わくば、恒久の愛を。
これからは三人で、共に愛した大地を見守ろう。
【あとがき】
はじめまして、大樹來(だいきらい)と申します。
この度は私の初の投稿、そして、お目汚しの駄文を最後まで見ていただき、誠にありがとうございます。
呉√後、大陸に平穏をもたらし天寿を迎える一刀のお話でした。
本来ならば、この様な稚拙な文を投稿するのは気が引けるのですが、これを読んで下さる皆様からの意見をいただき、それを自身の糧とし日々精進出来るのならば、今はこの程度の作品でも、やがては大切な一作になると思い投稿させていただきました。
人生初の字書きとしての活動で、筆が思うように進まなかったり、不安を抱えたりと、細々になるとは思いますが、趣味の域を出ないとはいえ、自分で始めたことを納得いくまでやり切りたいと思いますので、本作を第一歩として、これからもよろしくお願いいたします。
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真・恋姫無双の呉√後、天寿を全うした一刀のお話です。
短いですが、ちょっとした息抜きにでも読んでいただければ幸いと思います。