No.203311

-真・恋姫無双 魏After-残された者 前編

獅子丸さん

4話じゃなかった幕間前編です。
残された彼女達にスポットを当てています。
長い人もあれば短い人もあるのでご容赦を。

2011-02-23 16:48:24 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6216   閲覧ユーザー数:5218

―???Side―

 

満月の綺麗な夜。

何度目だろうこの光景を見るのは・・・・・。

私は川縁の大岩に座り一人の少年がこの外史から消える瞬間を見ている。

彼は光の粒子となり、天に鎮座する月から放たれる光の粒子と溶け合うように消えていく。

 

「・・・・・」

 

あの少年は、たった一つの過ちを犯した。

たった一つだけ。

その一つだけでこの世界から自身を消してしまった。

もう少し深く考えていれば・・・・。

 

「・・・・・仕方がないこと。・・・・・考えが浅はかだったのだから」

 

過ちを犯した少年が、自らの消滅と引き換えにしてまで守りたかったのであろう彼女達そして魏の国を、少し見に行くとしよう。

私は傍観者。

すべてを見届ける者。

 

 

―――――――。

 

 

 

 

 

-霞Side-

 

「・・・・っなんで!」

「・・・・・ウチにっ!」

「・・・・・っ一言もなしなんや!!」

 

一刀はうちになんの一言もなしに行ってしまいよった。

あの夜の、たった一つの約束。

 

「・・・・・・約束・・・・・・したやないかっ!・・・・・・・戦いが終わったら一緒に新しい道を・・・・・歩いていってくれるんやなかったんか・・・・」

 

なんであんな約束したん?

こうなるってわかっっとたんやろ?

なのになんで?

 

「ウチ、楽しみにしとったんや!!ここにウチの居場所がなくなっても一刀が一緒に旅してくれるなら寂しゅうないって思っとったのに!!」

 

違う、旅なんてせんでもよかったんや・・・・・。

一刀が傍にいて。

一緒に笑ろうたり。

酒飲んだり。

あの小川でしてくれたように雰囲気を大切にしながら二人で寄り添えれば・・・・・。

唯それだけでよかったんや・・・・・・。

 

 

「なのに・・・・・・なのになんでや!!なんで何も言わずに勝手に逝ってしまうんや・・・・・・」

 

うちはいつの間にか自慢の円月刀を手放していた。

自分の眼から流れ出る何かをこらえきれずに地面に染み込ませながら。

 

 

 

 

 

 

―春蘭Side―

 

 

「秋蘭、いつまでそんなに落ち込んでいるのだ・・・・」

「姉者・・・・」

 

あのばか者がいなくなってから妹の秋蘭の元気がない。

秋蘭が何を考えているのかわからなくもない。

でも私達は華琳様にお仕えする身なのだ!

うじうじしてても・・・・・。

 

「落ち込んでも北郷が帰ってくるわけじゃないのだぞ!」

「・・・・・わかっている姉者」

 

わかっているなら何でそんな顔するのだ!

 

「わかっていないではないか!華琳様が秋蘭のそんな顔を見て喜ぶとでも思うのか?」

 

喜ぶはずがない!!

あのばか者がいなくたって何も問題ない・・・・・ではないか。

 

「・・・・・・」

 

私たちが華琳様を支えなくて誰が支えていくのだというのだ!

 

「私達は華琳様をこれからも守っていかなければいけないのだぞ!」

「・・・・・姉者はどうしてそんなに平気なフリをできるのだ?私は平気で居られない・・・・・・」

 

フリ?

平気なのだ。

私は・・・・平気なんだ!!

 

「振りではない!私は平気なんだ!」

「嘘をつくな姉者!!」

 

秋蘭!?

嘘をつくなだと?

私は・・・・

嘘をついている?

いや、そんなことは断じて・・・・・・・・ない・・・・。

 

「っう、嘘など・・・・ついておらぬ!」

「私が何も知らないとお思いか!? 夜中に忍んで北郷の部屋に行っているであろう!!」

「っな!」

 

言葉が出ない。

何で秋蘭がそのことを!?

 

「一人で街に出ては本郷の行きつけの屋台を覗いているであろう!!」

「・・・・・・っ!」

 

私は唯あのばか者がいたら叩ききって・・・・・。

あれ?

ならば何でこんなに胸が締め付けられるのだ?

・・・・・。

 

「それなのに、なのに姉者は何故そんな嘘をつくのだ!!何故平気な振りをしていられるのだ!!」

 

・・・・。

平気な振り・・・・・。

そうか、私はこのもやもやの正体がわかってなかっただけか。

そうか・・・・。

これが・・・・。

自覚したとたん私の中の何かが弾けた気がした。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅう・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

「っあ、・・姉者!?」

「わたしだって!わたしだってぇぇ!!!あやつがいなくなって・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

「・・・・・・・・・・姉者」

 

私は自分の中にぽっかりと開いた大きな穴を今頃になって気づいた。

 

 

 

 

 

―秋蘭Side―

 

目の前で姉者が泣いている。

私は自分の感情が抑えられないままに姉者にあたってしまった。

いつ以来だろう。

こんなにも自分の感情が抑えられなくなったのは。

胸の奥でぽっかりと穴が開いている気がする。

 

「っうぐ、・・・・・・ひっく、ぅぇぇぇん」

 

姉者は隠すことなくその悲しみを表に出した。

姉者のことなら何でもわかるつもりだ。

わかっていたのに・・・・・。

あの男は我等姉妹の胸にこんなにも大きな喪失感を残していった。

我等だけではないのだろう。

いつの間にか気がつけばあの男を気にかけるようになった。

いつの間にかあの男が傍にいると心が安らぐようになった。

いつの間にかあの男が我等の傍にいることが当たり前になった。

 

「・・・・・・しゅうらぁぁぁぁん」

 

姉者と目が合う。

蝶の眼帯の隙間からも姉者の涙が流れ落ちていた。

今はもう失われた目からも姉者の悲しみがあふれている気がした。

 

「姉者!!」

 

もう止まらなかった。

私の両の目から留まる事を知らないかのようにあふれ出した何かが。

それを見た姉者は一瞬驚いたような顔をしてすぐに顔をゆがませた。

その顔を見て両の目からあふれる何かが勢いを増した気がした。

そして我慢できずに私は姉者に抱き寄せる。

二人で泣いた。

私は、叫ぶ様に泣く姉者が少しうらやましかった。

私も姉者のように泣けばあの男にこの悲しみが届く気がした。

だけどそう出来なかった。

自分で思っているよりも弱かったのかもしれないな私は・・・・。

ふと思う。

 

(この胸に開いた大きな穴はいつ埋まるのだろうか?・・・・いや、あの男意外には無理だろうな)

 

姉者を胸に抱きながら空に鎮座する月を見上げ、零れ落ちてくる涙をこらえながらそんなことを考えていた。

 

 

 

 

―風Side―

 

「はぁ・・・・・」

「華琳様、お疲れであればお休みになられては?」

「・・・・・・・・・・ぐぅ」

「風、あなたが寝てどうするのです!」

「おぉ?、うっかりうっかり」

 

華琳様もまだ気持ちの切り替えができてないようですねぇ。

稟ちゃんは相変わらずな気もしますが心の奥ではそんなことないのでしょうね。

 

「うっかり、ではありません!」

「あなた達は相変わらずね・・・・」

 

丁度いいので稟ちゃんに探りを入れてみましょ~。

 

「そうでもありませんよ~。稟ちゃんは一人が寂しく夜な夜な枕を濡らしているでのすよ~。時々何か思いに耽っては鼻を押さえてしくしく涙を流しているのですよ~」

「っな!っふ、風!」

 

図星だったようですね。

お兄さんも罪な男です。

 

「あら、稟。寂しいのであれば私の閨に来なさい。可愛がってあげるわよ?」

「っか、華琳様!!・・・・・・申し訳ないですが今は丁重にお断りさせていただきます」

「変ね、いつものように盛大に吹かないのね。・・・・私の誘いを何事もなく断るなんて、重症・・・・・・ね。」

 

これは風向きが危なくなりそうです。

 

「風こそ城壁の上に行っては空を見上げて泣い・・・・」

 

やっぱりそうきましたか~。

 

「おいおい、そりゃ言わぬが仏だぜお嬢さん。世の中には言っていいことと悪いことがあるんだぜ?」

「宝譿の言うとおりですよ~稟ちゃん」

 

すかさず口止めしておきました。

 

「風!?貴方だって言ったではないですか!?」

「二人とも、いい加減忘れなさい。私たちの仕事はまだ終わっていないのだから」

「華琳様・・・・・」

 

華琳様、その表情でそう言われても説得力はありませんよ~?

さて、雲行きが怪しくなる前に早々に脱出しましょう。

 

「風は、ちょっと書物庫に行ってきますねぇ~」

 

そう言って華琳さまの部屋を後にしたのです。

みんな表面上は何事もなかったようにしてますがやはり悲しみの色は隠せていません。

数日前の夜に秋蘭さまの涙を見てしまったときは流石に驚いてしまいました。

お兄さんは罪な人です。

 

「おや?」

「桂花ちゃん、なにをしているのですかぁ?」

 

書庫へと続く廊下から見える中庭で座り込んで何かしている桂花ちゃんを見つけてしまいました。

何をやっているのかと言うとおそらくは~。

 

「風!? ベ、べつにあなたには関係ないわ」

「ふぅ~む、また華琳様にしかられますよぉ?」

 

やっぱりでした。

そこにあるのはまだ小さな穴。

いつぞやのお兄さんを落とし入れようとしたあれですねぇ。

やっぱりお兄さんは罪な人です。

 

「そんな罠にひっかかるほどお兄さんはばかではないのですよー」

「っば、ばかよ!あいつはばかなの!絶対引っかかるように、この魏随一の軍師の私が仕掛けてるんだから掛かるに決まってるじゃない!!」

 

あの桂花ちゃんまでとは・・・・

ふふふ、お兄さん流石ですね。

 

「華琳様が掛かったらどうするのですかぁ?また怒られますよ~?」

「っか、華琳さまは、・・・・私が付いていれば問題ないわ!!」

「急にいなくなっ・・・・・いえ、華琳さまを煩わせたあのばかに一泡吹かせないと気がすまないのよ!!私が唯一目を掛けてやっていたのに!挨拶もなしに勝手にいなくなって!・・・勝手に!・・・・勝手に!!」

 

少し驚きました。

あの桂花ちゃんが目を掛けていたと自ら口にしたのですから。

なんて言ってましたっけ?

ほら、あの天の国の言葉ですよ~。

う~む。

そうそう『ツンデレ』だった気がします。

いつぞや、お兄さんは桂花ちゃんにデレがないから『ツンツン』とか言ってましたっけ?

デレという意味はあまりわからないのですが今のは多分お兄さんの言ってた

 

『デレ』

 

だったんじゃないのでしょうか?

お兄さんはほんとに間が悪いですねぇ。

 

「・・・・・・桂花ちゃん」

 

お兄さん。

早く帰ってくれば桂花ちゃんの『デレ』が見られるかもしれませんよ?

風も寂しいですから。

お兄さん・・・・・・早く帰ってきてください。

 

 

 

あとがきっぽいもの

 

4度目まして獅子丸です。

早速コメントいただきありがたく思います。

誤字指摘ありがとうございます・・・修正しておきますorz

1、2、3話はまとめるとややこしくなりそうなのであえて分けています。

漢女は当初登場する予定ではありませんでした。

なぜか某投稿掲示板で登場を期待する人がそれなりにいたため急遽物語りに関わっていただきました。

表立って漢女が出ることでぶち壊しルートと通常ルートのシナリオ?が一応ありますのでその内のせますw

 

今回は各将たちにスポットを当てた物となっています。

本当は1話分で短めになおかつ別の人間の視点から書いていたのですが彼女達自身に気持ちを語らせてみようと思い加筆&修正することになりました。

なので魏将のそれぞれの視点で書いています。

今回は完成した分だけ・・・・・。

三羽烏はまだ全員分分けて書けると思うのですが役満姉妹は・・・・・。

とりあえず・・・。

 

生暖かい目で読んでいただけると幸いです。


 
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