No.200364 ある日の戦線メンバー上月弦夜さん 2011-02-08 06:10:38 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:1070 閲覧ユーザー数:990 |
ゆりっぺによる『死んだ世界戦線』なるものができてから数日が経った。
「みんな昨日はお疲れ様。これで無事、この校長室は我が戦線のモノとなったわ」
校長椅子に座って脚を組むゆりっぺ。
もちろん働いたのは俺たちで、ゆりっぺは何もやってない。
そんなことより、机の上に足乗せたら角度的に見えちまわないか?
「ところで日向くん」
「お、おう。なんだ?」
もしかしてのぞこうとしたのがバレたか?
「さっきから大山くんの姿が見えないんだけど」
「大山?」
俺と大山は相部屋だ。
今朝も元気な姿を見てる。
俺が寮を出るときに、準備があるから先に行ってて欲しいとは言ってたが……それにしても遅すぎる。
「彼も大事な仲間だもの。一応探してきてもらえる?」
「あいよ」
「よし、大山。ここの文章読んでみろ」
英語の時間。
先生に指され、僕はその場で立ち上がる。
「"He has no features, but that's his feature."」
英文を読む。
「意味は?」
「えーと……『彼は特徴がない。しかしそれが彼の特徴だ』ですか?」
「正解だ。じゃあ大山」
座ろうとしたところでまた指される。
「今度はその文章、主語をIに代えて読んでみろ」
「え? どうしてですか?」
「どうしてもだ」
何か理不尽なものを感じた。
でも先生の指示だから仕方ないか。
「えーと……"I have no──"」
ガララララッ!
「大山ぁぁぁっ!!」
突然日向くんがドアを開けて現れた。
「お前、こんなところで何やってんだよ!」
「日向くんこそどうしたのさ、まだ授業中だよ?」
「昨日ゆりっぺが授業に出るのも危険だって言ってただろ!? お前は聞いてなかったのかよ!!」
「しまった! 忘れてたよ!」
つい今までの習慣で普通に授業を受けていた。
「ったく、お前ってやつは……みんな待ってんだ、ほら行くぞ」
日向くんは入ってきた時と同じように、ドアを開けて出ていった。
「あ、待ってよ日向くん!」
僕は教室を出る直前、先生に一礼をしてから日向くんを追いかけるのだった。
再び、校長室。
ゆりっぺは机に肘を乗せて手を組んでいた。
おお、これはなかなかに司令っぽい!
「……日向くん」
「なんだ、ゆりっぺ?」
「……大山くんはどこ?」
「大山ならさっきトイレに行くって出てったぞ」
「それ30分も前のことよ?」
あれからもうそんなに経ったのか。
「ならそれだけ大変な事態なんだろうよ」
「…………」
ゆりっぺからの視線が痛い。
「わかったよ、探してくればいいんだろ!」
「わかってるならさっさといけー!!」
「ほら走れー! ゆっくり走ってると時間伸ばすぞー!」
体育の時間。
今日は校庭で長距離だった。
「よし、今日はここまでー!」
先生の号令で、みんなが走るのを止める。
「急に止まるなー! 体育委員は用具の片付けを頼む!」
授業も終わりなので、みんなそれぞれ教室へ戻っていく。
「それと大山!」
帰ろうとしたところで呼び止められる。
「お前はあと10分走ってろ」
「え? どうしてですか?」
「どうしてもだ」
何か理不尽なものを感じた。
でも先生の指示だから仕方ないか。
僕は再び校庭のトラックへと走っていき──
「大山ぁぁぁっ!!」
日向くんが全力で追いかけてきた。
「お前、こんなところで何やってんだよ!」
「日向くんこそどうしたのさ、まだ授業中だよ?」
「お前はトイレに行ってたんじゃないのか!? なんで校庭で長距離なんてやってる!? しかも罰ゲームみたいなことまで!!」
「しまった! 忘れてたよ!」
つい今までの習慣でトイレの後に教室へ帰っていた。
「ったく、お前ってやつは……ゆりっぺも怒ってる、ほら行くぞ」
日向くんは来た時と同じように、全力で校舎の方へ走っていった。
「あ、待ってよ日向くん!」
僕はまだ体育着だったので、どこで着替えようか考えながら日向くんを追いかけるのだった。
再び、校長室。
ゆりっぺはチャーの作った拳銃をいじっていた。
どうやらバラして組み直すくらいはお手の物らしい。
「……日向くん」
「なんだ、ゆりっぺ?」
「……大山くんはどこ?」
「大山なら教室に着替えを取りに行くって出てったぞ」
「それ何分前のことか、覚えてる?」
「……さあ?」
「…………私もよ。それくらいならすぐだろうと思って時計を見てなかったわ」
ゆりっぺから言葉にない圧力を感じる。
「……着替えに時間がかかってるとか?」
ぱんっ!
「悪かった、大至急探してくる」
校長室から出るとき、俺がいた場所の後ろの壁を確認した。
壁には小さな風穴が空いていた。
「いいですか、一文字一文字に魂を込めて書いてください」
書道の時間。
今日の文字は『個性』だった。
「あら、貴方……」
先生が僕のところで足を止める。
「……これは難しいわね」
僕の書いた『個性』の字を見て悩む。
「普通の目で見れば個性ではないけれど、書道の目で見ると個性的ね……」
なぜか僕が個性的と褒められた!
「ねえ、貴方……大山くん」
「は、はい!」
「なんで書道の文字をゴシック体で書こうとしたの?」
「え? いや、普通に書いたらこうなりました」
「そう、じゃあ0点ね」
何か理不尽なものを感じた。
でも先生の指示だから仕方ないか。
ガララララッ!
「大山ぁぁぁっ!!」
突然日向くんがドアを開けて現れた。
「お前、こんなところで何やってんだよ!」
「日向くんこそどうしたのさ、まだ授業中だよ?」
「お前は制服を取りにいってたんじゃないのか!? なんでこんなところで……ゴシック体? なんか書いてるんだ!!」
「しまった! 忘れてたよ!」
つい今までの習慣でそのまま授業を受けていた。
「急げ! ゆりっぺはもうキレる寸前だ!!」
日向くんは入ってきた時よりも激しくドアを開け、そのまま走っていった。
「あ、待ってよ日向くん!」
僕は教室を出る前に、墨汁だけは片付けてから日向くんを追いかけるのだった。
再び、校長室。
ゆりっぺはなぜか札束の枚数を数えていた。
どこから手に入れたのか、きっと聞かない方が身のためだ。
「やっぱ諭吉はいいわー」
全部一万円札かよ……。
机に積まれた束だけでも数百万はあるんじゃないだろうか。
「なによ、ジロジロ見て。あげないわよ」
「別にいらねえよ」
……怪しい、怪しすぎる。何なんだあの金は。
「ねえ、日向くん」
「なんだ、ゆりっぺ?」
「今度からその時いないメンバーのことは無視しようかと思うの」
「……いいんじゃないか? そっちの方が円滑に進みそうだ」
校長室の中に大山の姿はない。
さすがの俺も、もう大山を探すのに疲れた。
「そう、じゃあ次のミッションね。これは大山くんと日向くんの2人でやってもらいたかったんだけど仕方ないわ。日向くん1人でよろしく」
「ちょっと待て、2人分の仕事を1人でやらなきゃならないのかよ!?」
「無視した方が円滑に進むって言ったのは貴方でしょ? がんばりなさい」
まったく、なんて顔してやがる。
まるで悪戯が成功して喜ぶ子供の顔だ。
今日も変わらず、事はゆりっぺの思い通りに進む。
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とりあえず簡単に書いたのを1つ上げてみました。Angel Beats!のパロディとなります。時間軸としては-Track Zero-のちょっと後ですね。麻枝准お得意の天丼ネタをどこまで再現できたか……自信ない。