――はだかの王様――
新しい服が大好きな王様の元に、布織職人ランドット(詐欺師)がやって来る。
ランドットは何と、馬鹿には見えない不思議な布地を織る事が出来るという。
王様は大喜びで注文する。仕事場に出来栄えを見に行った時、目の前にあるはずの布地が王様の目には見えない。
王様はうろたえるが、家来たちの手前、本当の事は言えず、見えもしない布地を褒めるしかない。
家来は家来で、自分には見えないもののそうとは言い出せず、同じように衣装を褒める。
王様は見えもしない衣装を身にまといパレードに臨む。
見物人も馬鹿と思われてはいけないと同じように衣装を誉めそやすが、
その中の小さな子供の一人が、「王様は裸だよ!」と叫んだ。
ついにみなが「王様は裸だ」と叫ぶなか王様一行はただただパレードを続けた。
1年前、奇妙な話が世界各国に広がった《はだかの王様》。
欲と好奇心につけこまれ文字どおり丸裸にされてしまった王。
最初は俺も根も葉もない噂だと笑い飛ばしたものだが・・・・・・。
「今俺は噂の"裸"王国の待合室にいる訳だ。他国でならともかくこの国の国民からも"噂"を聞いてしまうとは、
まさかまさかの信憑度も期待度も急上昇ってやつかね?」
ついつい誰にも聞き取れないほどの大きさとはいえ呟きがこぼれてしまう。
身支度も万全、尿意も解消、成功するシュミレーションも108回は繰り返した、あとは・・・・・・。
「決戦の時を待つのみ・・・ってな。あーさっさと時が経たないもんかね」
待合室に招き入れられて(待たされ続けて)少なくとも一時間は経過しただろうか、
謁見の間とは反対側の扉が開き青年が入ってきた。身なりからして商人だろう。
青年もこちらに気づき人の良さそうな笑顔をこちらへ向けてきた。
「あんた誰だい?」
男「私ですか?マクレーンと申します。マックとでも呼んで下さい。」
「なるほど、愛称で呼ばせることで親近感をもたせるってとこかい?ま、話しやすそうな奴でよかった。
もう大分待たされて暇してるんだ、どうせまだ待たされるだろうし何か話さないか?」
マ「ふふ、お見通しって訳ですか、同業者さん。あなたも"噂"を聞いてやって来られたようですし、
"噂"について話しましょうか」
俺はマックへ触れるか否かまで近づき、声音を落とす。
「おいおい。こんな敵地のど真ん中で"噂"について話すなんて、どんな命知らずだよ」
マ「大丈夫です。この待合室は戦争が頻発していたとき会議室としても使われてましたからね。
部屋のでは大声を出したり、暴れたりしない限り音は漏れませんから。試します?」
マックは声音を落とすことなく部屋の中央まで歩いていき備え付けられた椅子へ腰掛けた。
「だから声を・・・・・・、まぁいいか。因みにどうやって試すんだ?」
マ「そうですね、とりあえず大声で「王様の耳はロバの耳」とか叫んでみましょうか?」
「いや、大声で叫んだら聞こえるだろう・・・・・・」
俺は溜息をついてマックのすぐ傍の椅子へ腰掛けた。聞こえないとしても出来る限り警戒しておくべきだろう。
マ「確かにそうですね、それで"噂"をどの程度ご存知なのですか?」
「まったく、変な奴だなお前は。おーけー話そうか、話しかけたのは俺のほうだしな」
俺はマックに自分が調べた"噂"を話した。
「そんな王がいるのなら格好のカモってやつだ、もちろん警戒心も高くなっているだろうが、
俺なら一度騙された人間をハメるのは得意分野なんでな」
マ「相当商売の腕がおありなのですね。それに度胸も」
「ま、無理そうなら諦めるがね。会ってみるだけでも一興、というより今回は商売よりもそっちが目的なのさ」
マ「好奇心ですか、情報は、もっとも猫のようになることもありますが」
「俺は犬派だからな、危険そうだと判断したら尻尾を巻いて逃げ出すさ」
マ「"噂"についてですが、私が知っているものとほぼ同じですね。欠けている部分があるとすれば――」
マックは立ち上がり窓へ向かって歩いていき、こちらに背を向けた状態で
マ「その男が最後にどうなったか知ってますか?」
と、質問を投げかけた。
「さぁな、興味ないから調べたこともなかったが、捕まって王を辱めた罪とかで処刑されたんじゃないのか」
その時、ドアが開き兵士がこちらへやってきた。
兵「ランドット様、国王がお呼びです。どうぞこちらへ」
マ「わかりました、すぐに」
「・・・・・・ランドット?」
記憶に何か引っかかりを感じた。
マ「あぁ私の名前は、マクレーン・ランドット。例の詐欺師です。まだ新参の参謀役ですが以後お見知りおきを」
マックはニヤリと笑みを浮かべ、王室のドアの向こうへ姿を消した。
俺は待合室にまた待たされることになったが、今度は時間が止まればいいのに、と切に願った。
――完――
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初投稿作品で妄想を始めて書き表しました。
最初に妄想した時点ではもっと長かったのですが、飽きっぽい性格のせいか、書いていくうちにどんどん短く・・・・・・。
元ネタは、「はだかの王様」から。