真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-
第百話 ~ 舞い降る雪の想いに涙する魂 ~
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)
習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、
神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、
(今後順次公開)
蓮華視点:
劉備の使者である董卓と賈駆に導かれて、春寿の北側准南州と徐州の国境沿いに付いた頃には、既に夜が明け天高く日が昇りきろうとしていた。
まだ春とは言え暑くなりつつある日差しが照りつける荒野で遭遇した風景に、私は自然と馬の足を緩めて行き、やがてその足を止めてしまう。
おそらく私は呆然としているのだろう。
旨く頭が回らない……。
目の前で起きている事が何なのか理解しているのに……。
感情がそれを認める事を拒んでいる。
「……そうだ。俺はこれを知っていたはずだ…くっ」
歯を軋ませる音と共に隣に立つ一刀から、そんな呟きが零れ落ちる。
軋んだ歯の音は、彼の物だったのか、私の物だ他のかは分からなかったけど、そんな事はどうでも良い事。
呆然とする私の頭の中をどうでも良い考えが浮かんでは消えて行く。
それでも一刀の声を発端に、ゆっくりとだけど私の思考は少しずつ廻り出し、心が目の前の光景を受け入れて行く。
慣れぬ旅に疲れるも、置いて行かれれば死が待ち受けていると本能が訴えているのか、只ひたすらに足を進める女。
もうついて行けるだけの力をなくし、置いて行けと言う老婆の懇願を無視して母を背負う息子。
泣いても誰も手を貸してくれないと知ったのか、目を腫らしながら更に小さなこの手を引っ張る子供。
家財道具を荷車で必死に運ぶ者、着の身着のままで飛び出てきたのか、具足すら磨り減らし素足で足を運ぶ者。
目の前を何処まで続くかと思うかと言う程の長い列が、そんな人々で埋まっている。
それは劉備の兵士達ではない。
老弱男女関係無しの只の市井の人々。
戦とは何の関係もない。 いいや巻き込んではならない存在。
それが目の前を埋め尽くさんばかりに、只黙々と必死に前に進んでいる。
その異常な光景に私は、抑えきれない程の激高を理性で無理矢理押さえ込むが、零れ出る言葉まで止める事が出来なかった。
「……何なんだ。 これは……」
「袁家の支配下に落ちる事を嫌った民が、劉備を慕うあまり一緒について来てしまったのでしょう」
冥琳の冷静で静かな言葉に、激発しそうになるのを何とか抑えそうになるも、それでも感情は抑えきれなかったのか。
「そんな事は分かっているっ」
声だけは何とか抑えたものの、それでも声は荒げてしまう。
冥琳の言う事は頭では理解している。
支配階級に近い家の者ほど、新たな支配者の迫害を強く受けてしまうし、忠義故に一族揃ってと言う話が無い訳では無い。
だが目の前の数は異常だ。身の回りに係わる一族だけではない。 数百処か、四、五万をくだらない民が劉備の一行と共に、徐州を追われてきたと言うのだ。 街そのものが移動してきたと言っても良い程の人数。 それが目の前に在るのだ。
「これが劉備です。 民の心を此処まで掴み。死と隣り合わせになる事も厭わず供に在りたいと思わせる。
彼女の徳がなせる技なのか、それとも類まれない高貴な血が成せる技なのかは分かりませんが、判断の是非をさておけば、これも王としての一つの形です」
私の心情を察した冥琳が、そう忠告して来る。
感情に流されぬように…、目を曇らせぬように…、姉様と同じ様に王の形は一つではないと…。
その忠告は頭に血が上った私を少しだけ冷まさせてくれる。
そしてそれでも、これだけは言える。
こんな事許されるべきでは無い。
そして許してはいけない事。
何故、劉備にはそれが分からないっ!
そう心の中で激昂する。
「蓮華、気持ちは理解できる。 でも今はそれより目を向けなければいけない事があるはずだ」
「今は、劉備と共にこの一行を追い。 我等が領土までも侵そうとする者達を追い払うべき時です。
話など、その後で幾らでも出来ましょう」
一刀と冥琳。二人の師に促され、孫呉を守護する王としての行動を求められては冷静に成らざる得ない。
私は感情を吐き出すかのように深くゆっくりと息を吐きだし、遥か前方を見る。
「……わかった。 明命、袁紹軍までの距離と規模は、あの者達の報告通りと見て良いのか?」
「はい、難民の数が多すぎてはっきり分かりませんが、地面から聞こえる音からおよそ一里程先だと思われます。 規模に関しては流石に先に出した者が戻ってこなければ何とも…」
明命の報告に、私は状況を見詰め直す。
思春もそうだけど、相変わらず呆れるばかりの彼女の能力に、どうすればこの状況下で其処まで分かるのだろうと不思議に思ってしまう。
今回の件で一番恐れていたのは、劉備が袁紹と組んで我等を騙し討ちする事だったけど、目の前の難民の件で、その線は完全に消えた。
ならば、劉備には言いたい事は幾らでもあるが、今は我が領土を侵そうとする愚昧な輩に、その代価がどれだけ高いかを教えてやらねばならない時。
……なのだが、報告通りなら袁紹軍はおよそ八万に対して、我等が連れて来れたのは手勢の僅か二万余り。
今の状況下では、他国の援軍と言う名目では、これ以上連れて出る訳には行かなかったのもあるのだけど、いったいどうすれば?
そんな私の考えを察してくれたのか、冥琳と一刀が。
「寡兵で大軍を破るのは英雄として誉る処ですが、このような局面でその様な事は蛮勇でしかありませぬ。
此処は真面に戦う必要はないかと」
「相手は徐州が目的なんだ。 そう言う意味では目的は既に果たしている。
袁紹が孫呉に戦争を仕掛けて来たにしては兵数が少ないし、なにより時期が悪い」
「つまり、本気で私達と戦う気は無いと言う事?」
私なりに二人の言葉を解釈して、それが正しいかをつい出てしまった地の口調で確認すると、一刀は頷きながら微笑みかけてくれる。
まるで良く言出来ましたと言わんばかりのその仕草に、他の者がやれば馬鹿にされた気がするのがけど。一刀に限ってそんな事は無いと分かっているので、素直にそれを受け入れ褒められたようで、つい心が緩んでしまいそうになるのを、今はそんな時ではないと心を引き締める。
……まったく、姉様と翡翠の言う通りね。 あの笑顔は反則だと思うわ。
「だとしても、此方の力を見せて見せねば相手も引かぬだろうし、今後甞められかねない」
「うん、相手は幸い袁紹軍だから、霞の隊に突っ込んで行ってもらおうと思う」
「でぇぇぇっ、ちょい待ちぃっ! 幾らなんでもそれは無茶やでっ!」
霞が一刀の言葉に悲鳴の声を上げる。
確かに霞の言う通り無茶だわ。兵二万の内霞の隊は約五千。 後は私と冥琳と明命の隊が五千づつ、一刀の隊は四百しかないわ。 ただでさえ四倍近くの戦力差があると言うのに霞の隊だけとなると彼我兵力は十六倍。それでは威嚇にならない所か霞に玉砕して来いと言っているも同じ事。
悲鳴を上げたくなる気持ちは分からないでも無いわ。
もっとも、霞も本気で一刀がそんな玉砕策を言う訳ないと信じているため、その鋭い瞳には一刀が次にどんな事を言い出すか楽しみで仕方ないと言う、ある種子供染みた光が灯っていた。
まったく、こう言う所は、姉様や祭と同じね。
私はこっそりと武の師の一人である霞の思いに、こっそりと溜息を吐きながら、一刀に視線で話の先を促す様に言うと。
一刀はそんな霞に合わせて、とっておきの悪戯を言う様にその策の全容を説明してくれる。
その何処までも清んだ瞳の奥に、辛いのを必死に隠して霞の足枷にならない様に……。
「なんやむちゃ面白そうな策やな。 ウチなんか燃えてきたでー」
「くれぐれも調子に乗って、突っ込み過ぎないでくれよ」
「分かってるって。 心配せんでもその辺りは心得てるって」
一刀の突拍子の無い策に、霞は言葉の通り意気揚々として部隊の準備にこの場から去って行く。
私達を安心させるためなのか、失敗した時のための策を幾つか出す用意周到さは、翡翠の教育の賜物なのかもしれないわね。
冥琳も一刀の策に小さく笑みを浮かべると何も言わずに指示を飛ばしている所から、策が上手く行くと算段が付いているのでしょうね。
でもその笑みに私は不安を覚えてしまう。
貴女のその笑みは、一刀の策を霞と同じ様に面白いと、軍師として知的好奇心が指摘されたから?
それとも、一刀が目論見通り軍師として成長してきているから?
湧き上がる疑問に、想いに胸が痛くなる。
一刀は平気な振りをしているけど、それは表だけ。
心の中では此れから行う行為に、…人を殺す事に心を痛めている。
味方ならまだしも敵兵の死にまで、純粋にあそこまで心を痛める心は私には無い。
天では人を殺す事は何が在ろうと、許されるべき事では無いと教えられてきたらしい。
でも逆にこの地では、そう言う物だと教えられて来ている。
そうしなければ、生き残れないと言うのもあるのだろうけど。
なにより王家の者として、戦に係わる者として持ってはいけないと教えられてきた感情。
それでも、それが尊いもので大切なものだって事が分かる。
だから、その思いが私の心を必要以上に高ぶらせまいと抑えてくれる。
私達が心を持つ人間だってことを思い出させてくれる。 …人で居させてくれる。
そう言う意味でも、姉様の一刀を取り込むと言う策は的を得ていると感じられる。
……でも、だからこそ想ってしまう。
こんな優しい人を、私達は自分達の都合で巻き込んでしまったのだと。
姉様。 姉様もこんな痛みを抱えていたの?
こんな痛みを抱えたまま、想いを寄せてしまったの?
想いを寄せたまま、彼を地獄に叩き落さなければならなかったの?
……なんて報われない想いを、天は姉様に課したのだろう。
一刀の声なき苦しみの声に…。
姉様の身の裂けそうな悲しい想いに…。
私は胸が痛くなる。
分かっている。
その二人の想いが分かるなら、その想いを無駄にする訳には行かないと言う事が…。
だからこそ、姉様はいつも心を奮い立たせていたのだと。
陽気な笑顔で…。
平気な振りをした声で…。
多くの想いを秘めた気高き魂で…。
「聞けっ、孫呉の勇敢なる兵士よ。
我等は義によって、劉備軍に加勢する。
だが、敵は無法にも調子に乗って、我等の領土まで侵そうとしている。
勇猛なる孫呉の兵達よ。 我は問う。 先祖が守りしこの土地を薄汚れた者共に侵させて良いのかっ」
「「「「 否っ! 」」」」
「そうだっ。
決して赦されるべき事では無い!
この土地は、皆の親が、そして兄弟が、子供が必死に守って得た土地。
多くの英霊達が我等の平穏のために、死と引き換えに得た掛け替えのない宝。
私はそれを決して忘れない。 それは皆も同じだと思っている。 違うかっ」
「「「「 応っ!! 」」」」
「ならば、その想いを天に向かって叫べっ!
魂の叫びを地に向かって叩きつけろっ!
浅はかな奴等に我等の怒りと悲しみを、その魂に刻み込めっ!」
「「「「 おぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!! 」」」」
つづく
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第百話 ~ 舞い降る雪の想いに涙する魂 ~ を此処にお送りしました。
久しぶりの明命が登場したと思ったら、たった数行。 ……そのうち明命ファンの怨嗟の声が聞こえてきそうです(汗
でも、明命√を謳っているにも拘らずそんな不遇な扱いもあと僅かです。 おっと、これ以上はネタバレになってしまうので本編にて(w
もっとも大分予想されている方も居るとは思いますが、此処は話の展開を見守って下さればと思います。
今話は、王として成長し続ける蓮華の視点を描きましたが、如何でしたでしょうか?
王として姉である雪蓮と違った心境で、一刀を見守る蓮華の想いは伝わったでしょうか?
当初は、そう態と見せていたとは言え。カスだ。最低だ。と言われまた蓮華の成長が伺えたでしょうか?
そして、一刀が示した策とはどんなものなのか、多分半分くらいは皆様当てれるとは思います。
何せ相手が、袁紹軍ですからね♪
そう言えば、最近蓮華を日本語では(れんげ)と読む事を初めて知りました。
てっきり、蓮(ハス)の華とばかり思っていましたので、恥ずかしい限りです。言われてみれば記憶にはあったので思い込みと言うのは怖いものですね。
そして『手に取るなやはり野におけ蓮華草』の句から、思わず想像してしまったのが野に一面咲き乱れる蓮華(レンファ)(w
一輪一輪咲く蓮華(れんげ)の華の中心に浮かぶ蓮華(レンファ)に(………顔だけですよ。 全裸身じゃないですよ)思わず微笑ましくなってしまいました。
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
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『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。
袁紹軍に追われる劉備の一行を、同盟国と言う名の義によって出陣する事を決めた蓮華。
だけど救援要請を請われるままに向かった先で蓮華が見たものは……。
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