一刀視点
牢屋で荀彧の事を考えていたら、突然于禁隊長がやって来て、そのまま玉座の間に連れていかれた。そして、曹操さまが俺にこう言った。
「北郷。あなたにかけられていた、赤壁敗戦の責は、桂花によって晴らされたわ」
一瞬頭が真っ白になった。
(赤壁での責が晴らされた? 桂花によって? 桂花ってたしか荀彧の……っ!)
少ししてから、ようやくその言葉の意味が解った。
(荀彧が本当のことを言ったのか? それによって俺の罪が晴れた。……それじゃあ荀彧はどうなるんだ!?)
曹操さまと荀彧の顔を交互に見ながら、俺はどうにか言葉を絞りだそうとした。
(何か言わないと! 荀彧はどうなるのか。俺に罪がある。……何でもいいから何か言わないと……)
そうやって言葉を出せないまま、話しは進んでいった。
途中、荀彧にそっぽを向かれてしまったりして、結局、今荀彧はどんな状況なのか、赤壁での責は誰のものになるのかを、聞くことができないまま、五胡への対応の話しになってしまった。
(話しの内容的に、荀彧の事を聞ける状況じゃない。どうしよう……)
そんなことを考えながら、曹操さまからの質問に答え、荀彧と今後の作戦を考えるようにと指示を受けた。
(とりあえず、これで荀彧に色々聞ける!)
そう思いながら、俺は会議室へと移動する途中で、荀彧に話しかけた。
桂花視点
「ちょ、荀彧!?」
華琳さまから、明日の朝までに魏に侵攻中の五胡への対策をまとめるようにと言われ、一刀と二人で会議室へと移動している途中、一刀がそう呼んだ。
「……」
私はその呼びかけに答えないまま、ズンズンと歩いた。
「荀彧!」
私が何も答えないまま進んでいくので、一刀は先ほどより大きな声で私を呼んだ。
(うるさいわね! 私だってあんたに言ってやりたいことが、山ほどあるのよ! でも、こんなところでそれを言い始めたら、誰に聞かれるか解らないから、会議室までは我慢しようと思ってるのに!)
私がそう思っているのが解らない一刀は、さっきから不安そうな顔で私の方をのぞきこんでいた。
「……黙ってついてきなさい」
色々な感情を噛み殺した声で、私はそう言った。ふとしたことで、感情が爆発してしまいそうな気がしていたから、私はあえてそう言ったのだけど、一刀としては、私が尋常じゃなく怒っているととらえたらしかった。
一刀はシュンとして頷くと、黙って私の横をついて歩いた。
(そうよ。はじめからそうやって私について来ればいいのよ。まったく、あんたが自分勝手に動くから、私がどれだけ心配したと思ってるの!?)
一刀の様子を横目でチラリと見ながら、私はそう思っていた。
――ガチャンッ
「……荀、彧?」
会議室の扉を閉めると、一刀はさっきと同じ不安そうな顔で私を呼んだ。
「……」
私はその顔を睨み着けながら、スッと一刀に近づいた。一刀は不安そうな顔のままだけど、視線を私から外すことはせずに、じっと私の方を見つめていた。
(なによ。自分がしたことで、どれだけ私に迷惑をかけたか解ってるって言うの? それなら、……それなら)
「なんで、あんなことしたのよ」
口から出て来た声が小さかったせいか、一刀にはその言葉が聞き取れなかったようだった。
「え?」
一刀はどうすればいいのか困っているようだったけれど、私はそれにかまわず、堰を切ったように感情を吐き出した。
「なんで自分が悪いとか言ったのよ! なんで一人で背負いこもうとしたのよ! なんで私に何も言わないのよ! なんで……」
私がそう叫ぶのを、一刀はずっと黙って聞いていた。
「……なんで死のうとなんてしたのよ。それで私が喜ぶとでも思ったの?」
涙は流さないように、必死にこらえていた。ここで泣いてしまったら、言いたいことを全部言えない気がしたから。けれど、いくら堪えても、瞳の中に涙が溜まるのは抑えられなくて、それが一刀に見えないように、私は下を向いた。
「自分が死ねば、私が喜ぶとでも思ったの? 自分を犠牲にすれば、それで相手が喜ぶとでも? これだから、男は……」
そう漏らす声に、一刀がどんな顔をしていたのかは、解らない。下を向いていたのだから、見える訳がなかった。
(あぁ、もっと色々言ってやりたいのに、これ以上声を出したら、涙を隠せそうにない…… まだ、真名のこととか、私を泣かせたこととか、全然言えてないのに)
そう思いながら、瞳に溜まっている涙が流れ出さない様に、私は必死で耐えていた。そうして居ると、私の周りを、ふっと温かいものが包んだ。
「……っ!」
ふと顔を上げると、そこには一刀が来ている服が見えて、今私が一刀に抱きしめられているのだと言うことが解った。
「…………ごめん。荀彧が喜ぶなんて思ってなかった。赤壁で荀彧が取った行動の意味も解ってたし、こんなことしたら、きっと荀彧に怒られるんだろうなって解ってた」
私を抱きしめたまま、一刀はそう静かに言った。
「でも、たとえ荀彧が望んでなくても、もしかしたら荀彧を救えるかも知れないって思ったんだ。だから、俺は曹操さまに嘘を言った。だってさ……」
一刀は少し息をついて、これから言うべき言葉の準備をしているようだった。
「だって、俺は荀彧のことが好きだから。この世界で一番。……違うな、俺がもともといた世界も合わせた全部のなかで、荀彧のことが、一番好きだからさ」
「っ!」
私は思わず顔を上げた。顔を上げてようやく見れた一刀の顔は、少し申し訳なさそうな、でも決して迷いのない表情だった。
(なんでそんな顔が出来んのよ。……なんでそんなバカみたいな理由で、自分の命を投げ出そうとしてんのよ)
私自身もしようとしていたことだけど、自分の大切な人のために、自分を犠牲にするって行為は、どうしてこんなに綺麗に見えるんだろう。
(そんなことして、私が喜ばないってわかってたのに。なんで……、なんで……)
決して正しいことじゃないって解っていても、その行為が綺麗で、一刀の思いが綺麗で、私を好きだって言ってくれたことが嬉しくて、自分を犠牲にしたいと思うほど、私の事を好きでいてくれたことが嬉しかった。
「……バカじゃないの? これだから、男はダメなのよ……」
下を向いてそう言う私の目からは、先ほどまで必死でこらえていた涙が、一筋の流れとなって、静かに流れ落ちて行った。
「だから、ごめんな。荀彧」
私が泣いているのが解ったのか、一刀は優しい声でそう言った。
一刀の声に答えずに、私はただ涙を流していた。
「……」
そうして少しの間、二人とも無言だったけど、ふっと一刀が呟いた。
「……初めて荀彧に会ったとき以来だけど、やっぱり、荀彧って柔らかいんだな」
(まったく何言ってるのよ。どこぞの脳筋春蘭じゃないんだから、抱き心地がいいのは当たり前でしょ。華琳さまも閨で良く、“桂花の抱き心地は最高ね”って言ってくださるんだから……)
一刀の言葉に、私はそんなことを思っていたけど、良く考えてみれば、私を抱きしめたことがあるのは、母親や姉妹を除けば華琳さまぐらいだし、第一男に抱きしめられるのなんて、初めてだったことに気が付いた。
(お、男に抱きしめられてる……。け、けど、これは一刀だし……)
そんなことを思っていたけど、“男”だと意識し始めてしまうと、どうしても体が勝手に動いてしまう。
「……うん? 荀彧どうした?」
様子が変だと思ったのか、一刀がそう声をかけて来たけど、その時には既に、拳が握られていた。
「調子に……」
「え? 趙氏?」
「調子に乗るんじゃなぁーい!」
そう叫ぶのと同時に突き出された拳は、一刀のお腹にしっかりと当たった。
「グフゥッ」
そう声をもらしながら、一刀は膝をついた。
「ふ、ふん! 調子に乗ってだ、抱きしめたり、するからいけないのよ。こ、これだから男は……」
膝をついて苦しそうにする一刀を見て、少し心が痛みながらも、さっき言えなかったことが、すんなりと口から出て来た。
「大体、私を泣かせておいて、ごめんで済むと思ってるの!? それに、あんた、私の真名、勝手に呼んだでしょう? この私にバレてないとでも思ったの!?」
私がそう言い放つと、お腹を押さえていた一刀が顔を上げた。その顔は先ほどまでの心配そうな顔ではなく、少し引きつったような青ざめた顔をしていた。
「えっ……い、いや、それは……」
答えに困っている一刀を見て、少し楽しくなってきた私は、軽く口元をゆるめながら、一刀に言った
「ねぇ、一刀。許されてもいない真名を、勝手に呼んだらどうなるか。……あなた知ってる?」
私がそう聞くと、一刀は顔を引きつらせながら答えた。
「えぇっと…………、すごく怒られる、とか?」
「殺されても文句を言えない、よ」
「…………」
私の言葉を聞いた一刀は、何も言えないまま、口をパクパクとさせていた。
(ふふっ。そうやって怖がってなさい。私を泣かせた罰なんだから)
そう思いながら一刀を見ていたけど、どうすればいいのか困っている一刀が段々とかわいそうに思えてきて、私は一刀に声をかけた。
「で、でもまぁ、せっかく助けた命なんだし、今回だけは見逃してあげるわ」
私がそう言うと、一刀が顔を上げて、表情がパァっと明るくなった。
「ほ、ホントか?」
そんな様子の一刀が、なんだがとても可愛らしく思えて、私は軽く頬を染めていた。決して、真名の事を許したのが恥ずかしかったからじゃない。
「まぁ、あんたはバカだし、男だし、ダメダメなやつだけど、それでも……」
(それでも、一刀は私のために、自分の命を差し出そうとしてくれる。他の男たちみたいに、下衆な考えしか持ってない訳じゃない。一刀になら、私の真名を許しても……)
そう思った私は、一刀に真名を許そうと思った。
「か、一刀……」
「な、なんだ?」
私が急に名前を呼んだから、一刀は少し動揺しているようだった。
「その、もしあんたがどうしても、どうしても真名を呼びたいって言うんなら……」
男に真名を許したことなんてなかったし、一刀に真名を許すと思うと、なんだか急に鼓動が速くなったりしたけれど、一刀には真名を許してもいいと思っていたし、私から言うのは少し癪だけど、それでも、一刀に真名を許すのは悪くないと思っていた。
けれど、一刀に真名を許そうとしたまさにその時、会議室の扉が開いた。
一刀視点
――ガチャン
「あぁ、ここに居たのね」
そう言いながら会議室に入って来たのは、曹操さまだった。
「つい先ほど、呉と蜀に放っていた間諜が戻って来てね。その情報によれば、呉から蜀に向かった援軍は20万。また蜀に侵攻してきている五胡の数はおよそ80万だったそうよ」
何かを言いかけたまま口を開いていた荀彧だったけど、曹操さまを見て慌てて口を閉じた。
もしあのまま曹操さまが入って来なかったら、荀彧は真名を許してくれたんじゃないだろうかとも思ったけど、今は真名よりも、荀彧がどうやって俺を助けて、その結果荀彧は何をしなければいけなくなったのかを、知りたかった。
「……何をしているの?」
要件を伝え終えてから、会議室の様子を確認した曹操さまが、荀彧の目の前で膝をついている俺を見て、そう尋ねた。
「華琳さま! これは、その……」
荀彧がそう少し慌てながら答えようとしているのを見て、俺は自分の聞きたかったことが、今なら聞けると思った。
「あの。曹操さま!」
俺がそう声をあえげると、曹操さまは俺の方を向いた。
「何かしら?」
威圧感を感じながらも、俺は自分の聞きたかったことを聞いた。
「荀彧によって俺の罪が晴らされたとお聞きしましたが、では……荀彧はどうなるのでしょうか?」
俺がそう聞いたことに、荀彧は少し動揺したようだったけど、曹操さまはそんな様子も見せずに、ゆっくりと答えた。
「桂花は、私の願いを叶えることで罪を償うと言ったわ」
曹操さまは俺から視線を外すことなく、じっと見つめたままそう言った。
(曹操さまの願い。それは五胡の撃退か? いや、五胡の撃退は願いなんかじゃなくて、やらなければならないことだ。だとすれば……)
「曹操さまの願いとは、大陸の統一、ですか?」
そう問いかける俺に、曹操さまは答えなかった。けれど、否定をしなかったということは、きっと間違ってはいないのだろう。
「……桂花」
少し間をおいてから、曹操さまが荀彧を呼んだ。
さっきは真名よりも荀彧の事を聞きたいと思ったけど、荀彧が真名で呼ばれているのを聞くと、どうも悔しくなるのは、きっと俺自身がまだ真名を許されてないからだろう。ついさっき曹操さまが会議室に入って来なければ、真名を許されていたのではないかと思うと、余計に悔しく思えた。
「は、はい」
曹操さまの呼びかけに、荀彧がすこし慌てながら答えた。
「蜀方面の五胡が80万である以上、こちらも、相当の兵力を動員しなければならなくなったわ。しかも、その後の呉蜀への対応も含めると、かなり厳しい戦いになることが予想される。……あなたの策、期待しているわよ?」
曹操さまがそう言うと、荀彧は臣下の礼を取りながら、深く頷いた。
「はっ」
荀彧がそうしたのを見てから、曹操さまは会議室を出て行った。
――ガチャン
桂花視点
華琳さまが会議室から出て行かれたあと、私も一刀もしばらくの間、無言だった。
「……え、えぇっと」
先に口を開いたのは一刀の方だった。
「じゅ、荀彧。さっき、何か言いかけていたような気がしたんだけど……」
「べ、別に何でもないわ!」
おずおずと聞いて来た一刀に、私は思わずそう答えてしまっていた。精一杯の勇気で真名を許そうとしたところに、華琳さまが来たから、先ほどまであった気概と言うか、やる気と言うか、勢いのようなものを削がれてしまっていたから。
(き、気になるなら、あんたから真名を教えてほしいって言いなさいよ!)
そんなことも思ったけれど、私が“何でもない”と否定したのを聞いた一刀は、少し悲しそうな顔になった後、真名に関して何も言わなかった。
(好きだとかは言えるのに、なんでそう言う肝心なことは言えないのかしら……)
自分から言うことができなくて、私は心の中でそう一刀を責めた。
「と、とにかく、蜀方面に来てる五胡の数が80万だって解ったんだから、それに対応した策を考えなきゃいけないわ」
少し落ち込んだ気持ちをどうにか立ち直らせて、椅子に座りながら私は、一刀に話しかけた。
「……うん。そうだな」
一刀の方も気持ちを立て直したようで、そう答えた後は、長机を挟んで私と向かい合いように、椅子に座った。
「現状での最優先事項は、魏に侵攻中の五胡の排除よ。今日出て行った10万の援軍を合わせても、20万対13万。あと3日後に私たちも出るとして、その後どうやって動くかが重要になってくるわね」
私がそう言うのを聞いていた一刀は、少し考え込んだ後に、口を開いた。
「とりあえず、20万の五胡を倒さないといけないのは当たり前だけど、その後に蜀に入ることを考えると、やっぱり全兵力で倒すって言うのは難しい気がするんだ。警備隊の時も事件とかが立て続けに起こると、すごく疲れたし。それを戦闘と移動の連続でやったら、きっと脱落者がたくさんでると思う」
一刀はゆっくりとそう話した。
「兵力の維持と移動速度の維持は確かに重要。まぁ、その辺のことは、知識のないあんたが考えても仕方ないだろうから、詳しくは私が考えるとして、一刀には、こちらから蜀に行く時の物資の輸送方法を任せるわ」
私がそういうと、一刀は首をかしげた。
「輸送方法?」
「そう。漢中から入蜀するにしても、他の経路で入蜀するにしても、道は険しくて、大きな馬車とかを使って、兵站を輸送するのが難しいのよ。だから、馬車とかを使わずに、出来るだけ多くの兵站を輸送する方法が必要なの」
一刀は私の言葉を聞いてから、少し考え込むような仕草をした。
「前にあんたが書いた政策案の中に、人力でものを運ぶ荷台みたいなものがあったでしょ? たしか“一輪車”とか言うやつ。それを誰でも作れるように、解りやすい図面を描いて。あと、他に何か使えそうなものがあったら、それも描きなさい。今日中に」
私がそう言うと、一刀が困ったような顔で笑った。
「日付が変わるまでは、今日中だよな?」
「それじゃあ遅すぎるわよ。夕方までには描いて」
私がそう答えると、一刀はまた困ったような顔をしたけれど、すぐに図面を描き始めた。
(さて、輸送に関してはこれでいいとして、具体的な策を考えなけないと)
一刀が横で図面を描いているのを見ながら、私は策を考え始めた。
(五胡への対応で、今一番重要なのは速度。いかに早く魏に侵攻している部隊を倒して、本隊がいる戦場に行けるか)
さっき一刀が兵の疲労の事を言っていたけど、そこが今回の策の中でも重要な部分だ。いかにして兵の疲労を抑え、そして行軍の速度を上げ、戦闘の時間を短縮するか。
(まず魏に侵攻している五胡、たぶんこれは別働隊だろうけど、これを倒すために最低25万は必要ね。だけどその人数だと、こちらの被害も大きくなるから、出来るならもう少し多く、だけど移動の事を考えて多すぎない数じゃなきゃいけないわ)
注意しなければならないのは、今回の戦闘では別働隊に勝つだけではだめだということ。迅速に移動し、短い戦闘時間で敵を倒し、蜀に侵攻中の五胡本隊との戦場に向かわなければならない。
(20万の五胡に対しては、25万の軍を当てたまま、残りの15万の兵を率いて蜀に入るという策もあるけど、五胡本隊が80万であるなら、兵力分散は避けなければならない。五胡に勝った後に、呉蜀と一戦交える可能性も考慮すれば、それはなおさらね)
それらの諸条件も加味しつつ、私は次のような作戦を考えた。
・現在洛陽に居る全兵力、27万が漢中に到着した後、部隊を2つに分ける。
・片方は曹魏に侵攻中の、五胡20万と戦う部隊。これが17万。
・もう一方は、漢中に留まり輸送用の備品づくりや、蜀に対して前もってこちらの意図を伝えるなど、入蜀する際の下準備をする部隊。これが残りの10万。
・なお、漢中に留まる10万は、五胡本体との戦いにおける先発隊とする。
・別働隊に対する部隊は、先に戦っている夏侯惇の部隊3万、援軍に駆け付けた10万と合流し、別働隊を撃破。
・その後、3万の兵を残し、漢中へと移動。(この際の3万は、先に援軍に向かった10万の中から出す)
・将達は、兵に先んじて漢中に戻り、残してあった部隊を率いて入蜀。漢中から剣閣、成都を通り、五胡との戦場であろう蜀西部に移動。
・夏侯惇以下、程昱、許緒は、将達とともに行かず、兵たちとともに漢中へ。大休止の後、残りの部隊を率いて入蜀。
・以降は、状況に応じて対応。呉蜀との戦闘になる可能性も考え、糧食などの物資は、移動速度を阻害しない最大量を持っていく。
「……こんなところね」
大まかな作戦案を書き終えた私は、そう声を漏らした。実際の戦闘における作戦案などもあるけれど、それは稟の意見も聞かなければならない。
作戦案を書き終えた私は、華琳さまのところに確認に行こうと思い、書簡を丸めた。ふと横を見ると、一刀が、自分で書きあげただろう複数の図面を睨みつけていた。
「うーん……これで解るかな? やっぱり、実際のものを作っておいて……」
図面を睨みつけながらぶつぶつと言っている一刀に、私は少しほっとしていた。
(なんとかだけど、一刀が助かってよかった……わね)
そんなことを思いながら、私は立ち上がった。
「うん? どうした?」
立ち上がった私に、一刀がそう聞いてきた。
「作戦案を華琳さまに見せてくるわ。あんたは図面が書き上がったら、工兵隊のところに顔を出しておきなさい。あと、警備隊の……なんて言ったかしら、からくり同好会? それに所属してる人間を集めて、工兵隊と一緒に、一輪車とかの作り方を教えておいて」
同好会の話しが出たせいか、一刀は少し驚いた顔で私を見た。
「なんで、荀彧が同好会のこと知ってるんだ?」
そう聞いてくる一刀に、私は答えた。
「誰が警備隊の予算出していると思ってるの? 凪、いえ楽進から相談を受けて、その同好会に予算をつけたのは私よ」
私がそう言うと、一刀は納得したように頷いた。
「同好会の人間には、今回の遠征に同行してもらうわ。ものを作れる人間、と言うか構造とかが解る人間は、少しでも多い方がいいから。その旨も伝えておいてね」
「わかった!」
一刀は、そう言うと図面を持って会議室を出て行った。
(あんたが生きていけるためにも、あんたと生きていけるためにも、私もやれることをしないといけないわね)
出て行った一刀の後ろ姿を見ながら、私はそう思った。
「私も行きましょ」
華琳さまの執務室へと向かうために、私も会議室を出た。
あとがき
どうもkomanariです。
前回の21話から、かなり長い間があいてしまい、本当にすみませんでした。
バイトやら勉強やら、サークルの活動やら、怠けやらで、なかなか投稿できませんでした。
お待ち頂いていた方々には、深くお詫びいたします。
さて、クライマックスに近づいて来た22話でしたが、いかがだったでしょうか?
とりあえず今回は、真名を教えてもらえそうで、華琳さまに邪魔される当たりが書きたかった感じですw
こんなにも長い間、お待ち頂いたのに、内容がお待ち頂いたに足るものになったかは、すごく心配です。
何か違和感を感じた方、あるいは疑問を持たれた方がいらっしゃいましたら、ショトメなどを頂ければ、出来る限りの説明をいたしますので、よろしくお願いいたします。
次回の更新は、9月に入ってからになってしまうと思うのですが、出来る限りいいものが書けるように、頑張っていきたいと思います。
それでは、失礼いたします。
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すっっっっごく、お久しぶりです。
と言うか、間が空きすぎてしまい、申し訳ありませんでした。
なんとか、22話が出来ました。
とりあえず、今回は軽い拠点回?みたいな感じです。
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