「ようやく着いたわね」
華琳は呉の本拠地、健業の門の前でそう呟いた。
一人旅であるから、普通の行軍と比べて断然早く着くことが出来たが、それでも距離は遠い。
とりあえず、華琳は門をくぐり、取りあえず馬小屋に馬を預け、必要な物だけを荷物に入れて、蓮華のいる城へと向かおうとした。ちなみに、ホウケイは華琳の左手に手袋のように入れている。
「『ほぅ。なかなか活気があるじゃねーか』」
「そうね。魏とも並ぶほどの良い街じゃない」
市場は人々に溢れ、客寄せの言葉が行き買う。当然、旅人の身形をしている華琳にも、多くの声が掛けられた。
「お、そこのお譲ちゃん。記念にどうだい?」
「あら。何かしら。呉に記念品なんてあった?」
「いやぁ、それが最近出来たんですわ。ほら、市場がとっても活気にあふれているでしょ?それも、仮面さまのお陰ですわ」
「仮面さま・・・・?もしかして、蝶の形をした眼を隠す仮面のこと?」
「??何ですか、それ。俺が言っているのは仮面ライダー レンですわ。人が困っていると、さっそうと現れる、格好いい国のヒーローですよ。しかも、顔は覆われているのですが、スタイルが良くて、男子からも評判も高く、そして性格がクールで女子からの人気も高い、まさに国のヒーローですよ」
「へぇ。ずいぶんと凄いのね。その仮面ライダー」
「それで記念品として、仮面ライダーレンのカラクリ人形、肉まん、お面など、さまざまあります。どうです?記念に一つ」
「そうねぇ・・・それじゃあ、肉まんを2つ頼むわ。あ、袋に入れないで。食べ歩きするから」
「へい・・・・よし、どうぞ。まいどありー」
華琳は饅頭を受け取ると、それをまじまじと見てみる。形がどうも人型になっているようで、初見ではどんなものなのかは分からない。
とりあえず、一つは自分で咥え、もう一つはホウケイに渡す。
「『ありがとよ。(もぐもぐ)お、なかなかじゃねーか』」
「そうね。意外にも美味しいわ」
「『ほぅ、食通の華琳さまのお眼鏡にかなうとはな』」
「旅をしてよく分かったわ。疲れた時の水、空腹時の肉まん。それは、どんな料理にも勝るということを!」
「『へぇ』」
「私ね、国に帰ったら簡単でお腹いっぱいになる、お手軽な料理を開発するわ。きっと旅人に大人気になるに違いないわ」
「『いいねぇ。その時は、俺も呼んでくれよ』」
「えぇ、もちろんよ。まぁ、その前に一刀を見つけましょ」
もぐもぐ、と華琳は食べ歩きをしながら、様々な店を覗き込んでは、あーだこーだと批判したり、また褒めたりと、それなりに呉の市場を楽しんでいた。
もし、戦時中の華琳であれば、きっと食べ歩きなど行儀のない行為はしなかっただろうが、これもそれも、全部一刀と過ごす過程で、じょじょに王としてではなく、女の子としての一面を持ち始めたからだ。
ホウケイはそんな華琳を見ながら、口に手を当てて嬉しそうに笑った。
そして華琳たちはしばらく歩き、そしてようやく城に着いた。門番に事情を話して通して貰い、蓮華を呼ぶように言伝を頼もうとした。
ちょうどその時、
「あら、華琳じゃない」
と、偶然にも街から返ってきた蓮華に出会った。手には様々な物が握られており、すべて仮面ライダーレンのグッズだった。
「どうしたの?それに、その格好・・・・それに春蘭たちもいないみたいだから・・・・そう。分かったわ。先に玉座の間に行ってて。そこで話を聞くわ」
「あら、分かったの?」
「うふふ、私だって王だもの。大丈夫、玉座の間には誰も入れさせないから」
そう言って、蓮華は華琳に別れを告げると、自室へと戻って行った。
一目、華琳の格好を見ただけでただ事でないことを察知した蓮華に感心を持ちながらも、どうしてあんなに仮面ライダーグッズを持っていたのかと、色々と考えていたが、結局は分からず、言われた通りに玉座の間へと向かい、そこでホウケイと話をしながら待っていた。
華琳が玉座の間に招かれてから、少し時間が過ぎた頃にようやく
「ごめんなさい華琳。少し遅れてしまったわ」
蓮華が登場した。そして何故か、蓮華の手には人形が握られていた。
「ちょっと・・・・その人形は何かしら?」
「えっ?華琳も人形を持ってるじゃない。てっきり、お互いのお気に入りの人形の見せあいっこだと・・・・」
「一国の王が集まってお人形遊びするはずないじゃない!!」
華琳のさきほど感心した気持ちが一瞬にして消えた。そして逆に蓮華の頭が不安になった。
「そ、そうなの?ごめんなさい華琳。華琳が訪ねてくれたのが嬉しくて、舞い上がってしまったわ」
「うっ・・・・そ、そう」
「一刀もごめんね?」
と言って、蓮華は人形の頭を優しく撫でた。
「ちょっとまてーい!何!?人形に名前をつけてるの!?」
「あら、知らないの?これ、大陸で流行りのカラクリ一刀よ。さすが大陸一のカラクリ師。一刀の格好いいところを余すことなく表現してるわ。一刀たんはぁはぁ」
「・・・・いいなぁ」
「『おい華琳さまよ。今、俺を捨ててあっちにしようって思ってねーだろうな?』」
「そんなわけないじゃない。あ、蓮華。あとでそれの売り場に連れてってちょうだい」
「『せめてそのやり取りは、俺のいないところでしてくれよ・・・・』」
ホウケイの眼に涙が見えた・・・・気がしたした。
華琳は、さすがに可哀そうに思ったのか、あとで飴でも買ってあげて機嫌を取ろうと思った。
「それで、大事な話があるんだけど」
「あ、ちょっと待って。今、一刀と話してるから」
「会話!?会話出来るの!?」
「当然よ。人形とは、会話するものじゃない」
「何それ怖い」
「・・・・・うふ、一刀もそう思うの?」
「ほ、本当に会話してるわ。私は・・・・違うわよね。だって、ホウケイは本当に喋るもの」
「・・・・えっ!?だって、あの事件はもう終わったじゃない!」
「一体、人形とどんな話を!?」
「・・・・確かに、あの事件での犠牲は無駄に出来ないわ・・・・そうね、華琳に聞いてみるわ。ねぇ、華琳」
「な、何かしら」
「今晩はお城で宴をしましょう。好きな料理あるかしら」
「事件関係ないの!?それより、ちゃんと私の話を聞きなさい!」
「もちろん、聞いているわ。どうやって胸を大きくするかよね?」
「そんなこと一言も話していないわ!っていうか、まだ私は何を話してないわ!」
「そうねぇ・・・・生まれ変わってみるのはどうかしら?」
「平然と酷いこと言われた!?」
「でも気持ちは分かるわ・・・・私も、あなたぐらいの胸なら、来世に期待したくなるもの」
「蓮華に決闘を申し込むわ!」
あーだこーだ、とやり取りが続き、そしてようやく華琳は一刀が誘拐されたこと、呉に怪しい集団が向かったこと、自分はそれを手がかりに一刀を探して旅をしていることを話した。
「・・・そうなの。分かったわ。呉でも調査をしてみるわ」
「あら、思ったより落ち着いてるわね」
「当然よ。王たるもの、いかなる時も落ち着かないと・・・・ねぇ?一刀?」
「人形に話掛けてる時点で、落ち着いてないようだけれども・・・・・それより、調査って何をしてくれるの?」
「・・・・一刀・・・・」
「ちょっと聞いてるのかしら!?」
「え!?も、もちろんよ!どうやって胸を大きくするかよね?」
「またその話か!そこまで悲惨か私の胸は!」
「うーん。妖術に手を出してみればどうかしら」
「そんな怪しげな物に手を出さなければならないほど、私の胸は悲惨!?」
「悲惨ではないわ。残念ではあるけど」
「どっちも同じよ!」
「そう言えばまな板・・・・じゃなかった、華琳はどう思う?」
「まな板!?魏の王である私をまな板と呼んだわ呉の王は!」
「ちょっとふざけないでよまな板!一刀が大変なんでしょ!?」
「もはや訂正する気もない!?」
「そう言えば、子供が出来れば、胸は大きくなるわよ。私も、お陰で大きくなったし」
「子供かぁ・・・・でも、胸はともかく、やっぱ、気持ちに余裕あるわね。すでに子供がいる蓮華は」
「うふふ、まぁね。もちろん、一刀のことは心配よ?どこぞの知らない女と子供が出来るって言うのも、嫉妬するわ。でもね?少し嬉しくないかしら。だって、自分の愛した男が、誘拐されるほど人気があるのよ。ちょっと優越感よ」
「そ、それは・・・・でも、やっぱり不安の方が多いわ」
「もちろん、協力する以上、呉も全力でするわ。情報が入り次第、華琳にも報告する。だから、それまでは呉でゆっくりしておきなさい」
「ゆっくりかぁ・・・・そうね。そうさせて貰うわ」
「あ、そうだ。私の子供も見る?将来の勉強になるかもしれないわよ」
「そうね・・・・でも、子供を産むのは怖いわ」
「あら、魏の王である華琳も出産が怖いのね」
「怖いわ・・・・だって、子供を産んだら、蓮華みたいに巨尻になってしまうのでしょ?」
「さっきの決闘受けて立つわ!」
その夜、呉では華琳を歓迎する宴が開かれた。
その際に酒に混じって一刀が誘拐されたことを告げたが、まともに聞いていたのは明命と軍師では亞莎と冥琳ぐらいで、他は酒に酔って支離滅裂だった。
しかし、そこは隠密の明命と軍師の亞莎と冥琳。次の日には一刀の情報集めのために様々に手をまわしていた。
これで一安心・・・・と華琳は胸をなでおろしていた。
しかし、華琳は忘れていた。
この呉には、華蝶仮面と並ぶ強者、仮面ライダーレンがいることを・・・・。
(桂花視点)
一方その頃の魏では
華琳さまが北郷を探す旅に出て、数日が過ぎた。
もう、呉にはついただろうか?
私は月を見上げて、そう思った。
華琳さまがいなくなってから私は、いつも夜になると月を見ながらお酒を飲んでいた。この月を何処かで華琳さまが見ていらっしゃる・・・・そう思うことで、この押しつぶされそうな不安から逃れていたのだ。
「まったく・・・・北郷のせいだわ。はやく帰ってきなさいよ。そうじゃないと、華琳さまが旅に出たまんまなのよ」
そう愚痴をボヤいでも、誰も何も言ってくれない。
「・・・・北郷のばか・・・・」
もし、私が華琳さまのように強かったら、私も北郷探しの旅にご一緒出来たのかしら。そうしたら、一緒に北郷を探せて・・・・・
「って、どうして北郷のことばかり考えてるのよ。私が心配なのは華琳さまで・・・・・」
でも・・・・やっぱり、私は北郷が心配。
華琳さまは強くて聡明な人だ。どんな苦難でも乗り越えられるだろう。でも、北郷は違う。力も弱いし、頭も軍師ほどよくはない。だから、どこかで泣いてはいないだろうか。
「私に・・・・・力があれば・・・・・・助けてあげれるのに・・・」
そう、思わず呟いてしまった。
その時
「・・・・力が欲しいですか?」
突然聞こえた声に驚き、私は振りかえった。
そこには、いつの間にか風が立っていた。
なんだ、風なの・・・・と安心して、私は続けた。
「そうね。力が欲しいわ」
「ならば差し上げましょうか?」
「うふふ・・・・良いわね。欲しいわ」
「ですが、代わりに桂花ちゃんの大事な物を貰いますよ?」
「あら、私にとって大事な物なんて、華琳さま以外にないもの。だから、華琳さま以外に失って困るものはないわ」
「それでは、契約終了なのです」
風がそう呟いた瞬間、私に月の光が差し込んだ。
「な、何!?これは一体!?」
眩しすぎるほどの月光が私を包み、そしてじょじょに私の服が変っていく。
「ちょっと風!これはどういうこと!?」
「心配なさらずにー。桂花ちゃんの言う通り、力を与えただけなのですぅ」
風のいつも通りの声を聞きながら、そして私は・・・・・・
「一体・・・・この服は何?」
私の服は見たことのない物だった。スカートに白いシャツに大きな襟・・・・確か、天界の服でこう言うのがあると聞いたことがある。それにいつの間にか手に持っていた月の形の宝石のようなものが付いている、小さな杖があった。
その質問に答えるように、風は呟いた。
「これで桂花ちゃんは強くなれました」
風は言った。そして最後に、まるで宣言するかのように大きく叫んだ。
「美少女軍師 セーラー桂花たんとして!!」
次回に続く
おまけシリーズ
『さぁーて、来週の華琳たんは?』
桃香でーす!!
この前、ご主人様が紫苑さんの歳を知りたがっていたので、私が教えてあげて、ご主人様の好感度をUPしようと思って、紫苑さんに聞いたんです。
「ねーねー、紫苑さんって歳いくつ?」
・・・・・・・・何故か、ベッドで寝ていました。
でも、愛するご主人様のため、諦めません。
「ねーねー、紫苑さんって歳いくつ?」
・・・・・・・・また目覚めたらベッドでした。
それでもめげず、挫けず、頑張って何十回も聞いたら、ようやく紫苑さんが観念したのか教えてくれました。
「17歳と○○○○日です」
ごめん、ご主人様。
私・・・・・・・くじけちゃった♪(ノ´∀`*)
次回 魔法少女華琳たんPART5
来週も見てくださいね♪じゃん、けん、ぽん!うふふ♪
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PART4です。今回は華琳とホウケイが呉についたというお話です。
みなさん、毎度コメントありがとうございます。新しいヒーローを期待している人がいるようですが、もう少ししたら、新ヒーローが出ますので、それまでご辛抱くださいね(* ^ー゚)ノ
でも、その新ヒーローもキャラ崩壊してますが(´▽`*)