No.164008

全てはこの瞬間の為に

shirouさん

まだまだ見習いの作者ですが、この「作品」を見たときにこれにストーリーがついたものを見てみたい・・・そして書いてみたい。と、思いジョブチェンジしました。インスパイア元の「作品」のイメージを損ねていなければ幸いですが、誤字脱字駄文等は生温かい視線とコメントでよろしくお願いします。2010/10/06 行間及び改ページ改善を行いました。

2010-08-07 17:50:57 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5465   閲覧ユーザー数:4489

 

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁ」

 

苦悶の表情を浮かべながら長い黒髪の女性が叫んでいた。

 

本来であればつやつやとした手入れの行き届いた黒髪が汗ばんだ顔に何筋かへばりついてる。

 

「・・・さましっかりといきんでください」

 

と、産婆は黒髪の女性に促す。そして

 

産婆「頭が出てまいりました、後少しですよ。「ほぎゃぁぁぁぁ」おめでとうございます、ご息女でございますよ。周瑜さま」

 

と、寝台で疲労困憊の黒髪の女性に話しかける。

 

冥琳「そうか、無事産まれてくれたか。ありがとう”周循”」

 

と、産まれたばかりの我が子に呟いてその意識を手放した。

 

目の前が明るくなり何やら人のしゃべっている声が聞こえてきた。

 

???「冥琳さま、それじゃ・・・を篭絡してきますね。本当は冥琳さま以外は触りたくも触らせたくもないけど」

 

と幼い風貌の美少女が小悪魔な笑顔でそう言うと、

 

???「もうっ小僑ちゃんたら、それでは冥琳さま行ってまいりますね」

 

と全く顔形は同じだが少し大人しい感じの美少女がはにかみながら頭を下げて出て行った。

 

冥琳「あぁよろしく頼むぞ。成功した暁にはまた可愛がってあげるから」

 

と、その背中に声をかけた。

 

・・・・・・これは小僑と大僑?

 

あぁこれは”ありし日の私”が過ごした日々か、あの時は”北郷”という存在は敵だったんだなぁ。私は懐かしむようにそして苦笑いをしていた。

 

そして場面が変わり現代風の建物の中で

 

???「冥琳先生、俺は本当に先生の事が好きなんだよ」

 

フランチェスカ学園の制服を着た若い男子学生は興奮しながらしかし真剣な眼差しでこう続けた。

 

???「何故ダメなんだよ?俺が先生の生徒だから?それとも”北郷一刀”だから?」

 

と、冥琳の肩を掴みながら問いかけると、

 

冥琳「バカッあなたが”北郷一刀”だからって拘っているわけじゃないわ、ただあなたは私の可愛

 

い教え子でもあるのよ。それにあなたにはもっと私よりも若くてお似合いな蓮華様もいるじゃな

 

い」

 

と、目に涙を浮かべながら言い返す白衣姿の私。

 

そんな私を抱きしめるように引き寄せ”彼”はこう言い放った、

 

一刀「卒業したら結婚してください、冥琳先生・・いや 周冥琳さん。そして、孫呉に対しての忠

 

誠心や罪悪感があなたの心を縛るのなら周の名を捨てて北郷冥琳として一緒に生きてくれません

 

か?」

 

この言葉を聞いた”そこに居た私”は大粒の涙を零しながら抱きしめられるままでいた、

 

冥琳「私はあなたより年上ですよ」

 

消え入りそうな声で返す。

 

一刀「姉さん女房は金のわらじを履いてでも探せって言うしね」

 

”彼”ははにかみながらそう返してきた。

 

冥琳「私はあなたより先に白髪だらけになりますよ」

 

先程より少し力を込めた声で、こう言うと

 

一刀「俺の家系は若白髪が多いから俺もすぐに白髪だらけになるよ」

 

悪戯っぽく笑いながら”彼”はそう返してきた。

 

冥琳「私はあなたより先に逝きますよ」

 

毅然とした態度で真っ直ぐ”彼”の瞳を見つめ返しながらこう言った。

 

一刀「先に逝ったら、待っててよ。俺がそっちに行く頃には白髪だらけで皺くちゃのおじぃさんに

 

なってるかもしれないけど。あぁそしたら冥琳は俺の事なんかわからないかもなぁ」

 

と、少しおどけながら”彼”は返してきた・・・だけど最後はもう聞き取っていなかった。

 

冥琳「バカッ私が”カズト”をわからないはずがないじゃない。どんだけ姿形が変わっても、こん

 

なにもこんなにも好きなんだからあなたの魂を見つけ出すわ」

 

先程とは違う涙声であった。そして

 

冥琳「好き。好きよ”カズト”私を”北郷冥琳”にしてあなただけの為の冥琳でいさせて」

 

そして私から唇を重ねていった。

 

こんな記憶あったかしらね・・・私は眉間に指を添えながら思い返していた。でも今の私ならこ

 

の”記憶の中にいる私”を肯定できる。

 

そして画面は紅い炎が川面に映るあの場面に

 

一刀「俺が呉と蓮華を支えていくから安心して逝ってくれ」

 

”彼”の涙と手の温もりを感じながら私は

 

冥琳「あぁその言葉を聞きたかった。これで安心して・・・・・・」

 

と言っている”その記憶の中の私”に向かって(嘘だ・・本当は悔しかった、やっと北郷と心と体

 

を重ねる事が出来て子を成して育ててみたいと思ってた頃だった。

 

だがそれまでの無理がそれを許さなかった。そして呉の柱石として無様な最期を晒すわけにもいか

 

ないと感じていた・・・・・・それがこの言葉を紡ぎ出させていた。)若かったわね。と、”記憶

 

の中の私”に笑いかけてた。

 

???「可愛いなぁ流石俺と冥琳の子だなぁ」

 

と、愛しいあの人の声が聴こえてきたので目を開けると、我が子を高価なガラス細工を扱うように

 

おっかなびっくり触れようとしてる”愛しい人”

 

冥琳「そんなに恐る恐る触らなくても大丈夫よ北郷」

 

と、話しかけると

 

一刀「あちゃ~、起こしちゃったか、ごめんな冥琳」

 

そう言いながら寝台にいる私の側に歩いてきて、

 

一刀「ありがとね、俺の”周循”を無事産んでくれて、そして無事でいてくれて。」

 

そう言いながら唇を重ねる、そして重ねた上で私はそう言えば皆は?と疑問に思いながら周囲を見

 

てると、

 

一刀「あぁ侍女や蓮華達は気を利かせてくれて二人きりにしてくれたんだよ、いや違うか親子三人水いらずにしてくれたんだよ」

 

と、何時までも変わらない心が温かくなる笑顔でそう言った。

 

一刀「いやぁ穏とか大変だったんだよ~、私も一刀さんの子供が欲しいです~とか言い出したりと

 

かして、周循見て知的探究心がわいたのか知らないけどさw祭さんなんかも年齢的に次はワシの番

 

じゃなとか言い出したり」

 

思い出しながら苦笑してる”愛しい人”。

 

そしてやおら向き直り

 

一刀「いい真名を考えて上げなきゃね」

 

と、”あなた”が言ってくれたので私はそれを受けて微笑む。

 

冥琳「あなたが考えてくれる名前ですもの心配してないわ、私の教え子なんだし」

 

と、返してまた眠りについた。

 

-数ヵ月後-

 

一刀「ほーらパパですよ~、”向日葵”ちゃん~」

 

と、満面な笑みで娘に話しかける我等が呉の大都督北郷一刀。その姿を呆れながらも嬉しそうに我

 

が子を抱きながら見つめる冥琳、

 

冥琳「しかしこの子は本当にアナタが好きなのだなぁ、どこにいてもアナタの方を見ている」

 

それこそがこの子の真名を決定づけた。

 

一刀「確か魏の程昱(いく)さんが日輪を支える夢を見たから程立さんから変名したって聞いたこ

 

とあったんでね。それでおこがましいけど俺(日輪)を常に見ているって事と将来は呉の日輪

 

(王)を見て欲しいと意味でね”向日葵”と。だからキミの名前は向日葵なんだよ~」

 

と、ほっぺをプニプニしようと伸ばした指をキュムっと握り、

 

向日葵「あだーっ」と、返した。

 

一刀「ははっ、流石冥琳の子だ、もう自分の名前が”向日葵”とわかってる」

 

そんな”アナタ”を見ながら私は

 

『例えこの記憶が一瞬のモノだとしても何度でもこの瞬間の為に私は抗うだろうし足掻くだろうな

 

ぜならここには愛しい夫と娘がいるのだから』

 

と心に誓いながら

 

冥琳「当たり前よ。私と”カズト”の子なんだから」

 

と、満面の笑みで答えた。そして願わくば一分一秒でもこの時間が続きますようにと祈りながら。

 

-完-

 


 
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