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~祭り3日目~
「じゃあ真桜、”天華”は預けるから頼んだぞ」
「任せとき。どんくらい掛かるは分からんけど、なんとかやってみるわ」
日が変わり早朝・・・
一刀は自分の部屋に帰った凪と沙和の2人と別れ、真桜の工房を訪れていた
理由は、天華に代わる武器を受け取るため・・・
そして・・・
天華をモデルにした”刀”を作ってもらうため・・・
「へぇー、確かに刀みたいだな」
真桜に天華を預け、工房をあとにしてから、一刀は真桜から代わりにもらった武器を手にとっていた
「・・・たしか・・・明命の武器を元にしてるって言ってたな・・・」
真桜からもらった武器は明命の武器・・・『魂切』を元に、刃引きをすませているもの
「ちょっと長いけど・・・新しい武器が出来るまでだし・・・別にいっか」
一刀はそう言って、『魂切(レプリカ)』を背負い、朝食を摂りに行くことにした
~厨房・食堂~
「ん~♪良い匂いだな~」
「あっ、兄様!おはようございます」
「ん~?・・・兄ちゃんかぁ・・・おはよ~」
朝食を摂りに訪れた厨房で元気に料理をする流琉と、何やら落ち込んだ様子の季衣と遭遇した
「うん、おはよう!・・・・・・おっ!おいしそうだな~。流琉、俺の分ってもらえるかな?」
「は、はい!もちろんです!少し待ってて下さいね」
流琉の元気な返事を聞いて、季衣の対面に腰を下ろす
「よいしょっ・・・と。・・・で、季衣はどうかしたのか?」
「うぅ~・・・」
質問に答えずに、ただただ唸る季衣・・・
そこへ・・・
「もう!季衣ったら、いつまでもいじけないの!」
一刀の朝食をもった流琉が戻ってきた
「だって~~」
「?流琉、季衣はどうかしたの?」
その質問に、流琉が少し困った顔で答えた
「・・・季衣・・・昨日の予選、負けちゃったんですよ」
「えっ!?」
バッ、と季衣の方を振り返ると机に顔を押し付けて唸っていた
「誰が相手だったの?」
再び流琉の方に向き直る
「鈴々ちゃん・・・蜀の張飛将軍です」
「張飛か~・・・・・・なるほどね・・・」
季衣と張飛の仲の悪さは一刀も分かっていたことなので妙な納得を覚える・・・・・・
「季衣」
「ん~」
一刀からの呼びかけに、しぶしぶ季衣は顔を上げた
「・・・季衣は昨日は頑張ったんだよね?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
季衣からの返事が返ってきて、一刀も嬉しくなる
「じゃあ、ほら、よく頑張ったね季衣(なでなで)」
「に、兄ちゃん////」
季衣は一刀からいきなり頭を撫でられ、少しだけ驚いてしまったが、やがて大人しくなる
「・・・ごめんな、ちゃんと会場で応援しなくて」
「・・・ううん、ボクこそごめんね・・・兄ちゃんにちゃんと見せたかったのに・・・」
「・・・季衣」
後悔を口にする妹のために、せめてもの労いとして頭を撫で続ける
と、そこへ・・・
「おぉ、季衣に流琉ではないか!・・・っと、北郷もか」
「一刀ではないか・・・どうかしたのか?」
「おぉ~一刀、おはよーさん!・・・って、なんや暗いなぁ~。どうかしたんか?」
秋蘭を先頭に、霞と春蘭が入ってきた
「おはよう、3人とも。いや、季衣が・・・さ」
そう答えつつ、季衣の頭を撫でる一刀の姿を見て、3人は何か納得したような表情を浮かべる
「・・・なるほどな。・・・季衣、昨日のことは仕方あるまい。お前が鈴々より弱かった・・・そうだろう?」
「うっ!?」
「ちょっ、しゅんr・・「・・・一刀」・・秋蘭・・」
春蘭のいつにない厳しい言葉に一刀は驚き、何か言おうとは思ったが、秋蘭から制されてしまう
「季衣、お前は負けたのだ。お前が弱かったからだ。・・・なのに、いつまでいじけているつもりだ?そうやっていれば、今度は勝てるのか?」
「うっ・・・・・・」
「・・・春蘭」
一刀は机から乗り出していた体から力を抜いた・・・
それは何故か?
------春蘭の厳しい言葉から・・・
------季衣への・・・妹への確かな”愛情”を感じたから・・・
「季衣・・・お前がその悔しさを晴らすためにどうすればいいか分かるか?」
「・・・はい」
季衣にも春蘭の想いが通じたのか、俯かせていた顔を上げた
その顔を見て満足したのか、春蘭も表情を緩める
「ならば良い。季衣・・・次は負けるなよ」
「はい!!」
春蘭の言葉に元気よく答え、季衣は机の上にあった食べ物をかきこみ始めた
「って、季衣!それ俺の!」
「えっ?あっ・・・ごめん、兄ちゃん」
舌をぺロッと出し、いたずらっ娘のような表情を見て、一刀も仕方ないなぁ、と肩をすくませた
~天下一品武道大会本選会場~
「うわぁー、思った以上に人がいるな~」
「こんなもんやないで!試合が始まったら、会場に入りきれんぐらいの客が来るねんから」
季衣と流琉が本選の応援に行く前に少しでも鍛錬しておきたいからと先に食堂を出て行った後、
一刀は春蘭、秋蘭、霞の3人と共に朝食を食べ終え、一足先に会場に来ていた
「そういえば、昨日3人はどうだったの?」
「「もちろん勝った(で)!!」」
「・・・季衣と同じさ」
「えっ!?」
何気なくした質問に予想外の答えが混じっていたため、一刀は瞬間的に驚いてしまった
「秋蘭が負けって・・・・・・相手はだれだったの?」
「呉の祭殿だ・・・。ふっ、私も祭殿と比べれば、まだまだのようだな」
一瞬俯き、悲しそうな表情を見せる秋蘭だったが、すぐに顔を上げた秋蘭から、一刀にはちゃんと前を向いていることが分かった
「・・・そっか。じゃあ、今日は春蘭と霞のこと、一緒に応援しような!」
「ふふ、あぁ。今日は”一刀の隣”に”ずっと”いることにしよう」
「「なっ!?」」
秋蘭の意地の悪い笑みを見て、本選出場の2人から一刀に強い視線が向けられる
「な、なに?」
「北郷!貴様、秋蘭に何かあったら只じゃすまさんからな!」
「一刀!秋蘭にデレデレしとってウチの試合見逃したら後でひどいからな!」
「ひぃっ!?」
100%脅しの言葉を掛けられながらも
「わ、わかった・・・」
とだけ返した
「あら?あなたたち」
「げっ!」
「4人とも、おはようございます」
「ぐぅ~」
対戦表が張り出されている掲示板の前には、すでに華琳と軍師3人がいた
「か、華琳さま~~」
「華琳、桂花、稟、風、おはようさん!」
「おはようございます、華琳様」
「おはよー」
それぞれに挨拶を交し合う
「えぇ、おはよう。春蘭、霞、調子はどうかしら?」
「はい!完璧です!絶対に優勝してみせます!」
「ウチも大丈夫や!任せとき!」
頼もしい2人の答えに、華琳も微笑む
「で、対戦表は?」
「それならもう貼られているわ」
華琳が指差すほうを見ると、一枚の紙が
「おっ!どれどれ・・・」
「・・・有名どころだな~」
本選出場者の名前を見て、一刀が苦笑いを浮かべる
「ふふん、私は愛紗とか」
「ウチは星やな」
一刀とは対照的に楽しそうな表情を浮かべる春蘭と霞
「ふふふっ、嬉しそうだな姉者、霞・・」
「あぁ!去年までで、愛紗とは1勝1敗だからな。今年は完膚無きまでに叩きのめしてやる!」
「星とは”速さ”勝負したことあらへんからな~。ここらで白黒つけとくんも面白いやろ?」
そして、そんな2人の顔を見て、ついには一刀も顔を引きつらせるのだった・・・
対戦表を見てからしばらく談笑し、応援席に着くと、舞台上で何人かの人が慌しく動くのが見えた
「・・・もう他は集まって来てるみたいね」
華琳が他の陣営の応援席を見回して呟く
「あら?そういえば一刀、凪や季衣たちは来ないのかしら?」
「いや、季衣と流琉は少し鍛錬するって言ってたし、凪たちは警備隊の仕事が片付き次第来るはずだよ」
「そう、ならば良いわ」
そう短く答え、華琳は再び前を向いた
「舞台で何か始まるの?」
状況が分からない一刀は隣に座っていた秋蘭に話しかけた
「例年通りでいけば規則の確認だ」
「へぇー、開会式みたいなものか・・・」
そうこうして内に、舞台上に1人だけ服装の違う男が上がっていく
「あ~・・・あ~・・・」
「あの人は?」
「あー、あれは武道大会の審判よ。この時の為に魏の親衛隊から選んで、三国で教育してあるわ」
華琳からすぐに答えが返ってくる
「・・・三国で、って・・・・・・あいつ苦労したんだろうな・・・・・・」
少しだけ同情してしまう・・・
「えぇ。だからこそ信頼はしているわ。この大会のことは一任してあるの」
「・・・・・・そりゃ凄い・・・」
華琳が認める程ということは、かなり優秀な人物ということになる
「・・・って、あれ?あの人が持ってるのって・・・」
「あー、あれは張3姉妹が”らいぶ”で使っている”まいく”ですね」
今度は稟が答える
「だよな・・・。ってか、そうじゃないと声は届かないか・・・・・・」
一刀がちょうど納得し終えた時、ついに審判の声が高らかにあがった
「えーーー、開会の前に大会規則の確認を行いたいと思います!!!!」
「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」
観客席が爆発したような声があがる
それを見回しながら審判が続ける
「今回も例年と比べても変更はありません!!ですので、次のようになります!!!!」
一, 得物が手元を離れた場合、破損された場合、本人が倒れてから10数えるうちに立てなかった場合、負けと認める
二, 武器は矢じりをつぶしたもの、刃びきをすませているものを使用する
三, 試合中の武器変更は認めない
四, 試合中、いかなる場合においても外部からの試合への介入は許されない
五, その他、大会についての意見は審判の判断に任せることとする
「・・・以上となります!!!!」
「「「「「「「「「「「うおぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」
「うわぁ・・・霞の言ったとおり、さっきより凄いな・・・」
あまりの盛り上がりように、初参加の一刀は呆気にとられてしまう
「せやろ?これ終わったら1回戦もすぐやから、もっといくで?」
「へぇー、なんか俺も盛り上がってきたなぁ!って、もうすぐ試合だったら春蘭は準備した方がいいんじゃない?」
「北郷なんぞに言われなくても分かっている!」
「あはは・・・そう?」
春蘭は気合十分といったような表情で鎧を身に着けると、華琳の方に向き直った
「それでは華琳様・・・行って参ります!」
「えぇ、しっかりね」
「はい!」
華琳に続いて秋蘭たちも・・・
「うむ。信じているぞ、姉者」
「愛紗ともやりたいけど、惇ちゃんとも最近やっとらんしな・・・まぁ頑張り!」
「いい、春蘭?あんた、このくらいしか存在している価値ないんだから、せいぜい華琳様の為に頑張りなさい」
「春蘭様なら問題はありませんね。頑張ってください」
「ぐぅ~」
そして、最後に一刀が・・・・・・
「春蘭、頑張れ!」
「むっ//////」
一刀からの言葉を受けた途端、顔を真っ赤にして顔をそらしてしまう
「?どうかした?」
「な、なんでもない!・・・・・・行ってくる・・・」
大剣を担ぎ、入場口に向かう
顔が熱くなるのを感じる・・・
しかし・・・・・・
それは決して嫌なことではなく・・・
内に秘めた何かが昂ぶるようなもので・・・
絶対に負けたくない!という思いをさらに強くした・・・
三国一の栄冠は誰の手に渡るのか・・・・・・
熱き戦いが今、始まる・・・・・・
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遅くなりました!続編がやっとできました。
文字数の制限に引っかかったので、分割します。
後半も編集が終わり次第、投稿しますね。