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真・恋姫†無双 異説
~真夏の胡蝶の夢~
夏の暑い夜・・・その日、曹魏の王であり三国同盟盟主である曹孟徳・・・・・華琳は一人頭をかかえていた。
かつて、この大陸は三国が覇権を争っていた。
互いの信念をぶつけ戦った。
最後には“天の御遣い”を有した曹魏が勝利し、三国で手を取り合い共に歩むと誓った。
最終決戦・・・・・そして“あの夜”から・・・・・・・・・・はや2年。
各国共に戦の傷は癒え、正に“平和”そのものであった。
が・・・・・それは外見上の話である。
ただし、大陸の内に傷があるわけではなかった。
大陸の遥か外。
大陸の人間にとって、その傷は古くからの敵であり災害でもあった。
五胡。
古き時代から互いに血を流し合ってきた仇敵。
だが、その仇敵とすら手を取り合おうと華琳は話し合いの席を設ける。
五胡の各有力な族長を呼び、各部族の文化でもてなし、また押し付けではない大陸の文化で族長をもてなした。
文化の溝は余りにも大きく深いが、決して埋められない溝ではない。
埋めなくとも、橋を架けることは出来る。
どこかの誰かに習った、変に前向きで差別なき“優しさ”を五胡に示したのである。
その“優しさ”のおかげか、多くの族長は好意を示してくれた。
武で話すのではなく、心で話し合う。
初めての五胡との話し合いから幾度の話し合いを経て、好意を持ってくれた族長とは手を取り合い、三国同盟に参加するという最高の形までこぎつけた。
だが、問題は残りの反対派の族長である。
元々、力の上下関係が強い五胡の世界。
反対的な族長は「我らに勝て」「力を示せ」など、武に純な意見が多かった。
しかし、武に純な意見ならば一騎打ちなど正式な決闘で白黒をつけるなどの道を見出すことができる。
ただ・・・・・・・・・・
反対派の意見に頭の痛い問題があった。
「曹操殿に、文句は無い。手を取り合えば血を流すことも無く、和平の道を歩めよう。また、曹操殿のような方なら我らの溝も埋められよう・・・・・・・・だが、それはあくまで曹操殿の“代”まで。次代はどうなる?和平の道に肝要なのは“その後”をどうするか。目先の宝を取り、次代の者達に迷惑がかかるなら・・・・・我は宝はいらぬ。」
次世代・・・・・華琳の“後継者”についてである。
華琳は若い・・・・・しかし、それもあと20年、30年たてばどうなるか?
そして、“後継者”にいたっては華琳の魏だけではなく“蜀、呉”の両国にも言える問題であった。
各国の代表に伴侶はいなく、若い力も種を良い土壌に植え、芽を出すように水を与えているにすぎない。
決まり手が無いのだ。
決まり手を示す・・・・・・・・その手段が思い浮かばない。
「らしくないわね・・・・・・・・。」
蝋燭の光を見つめ、ポツリとぼやく。
“らしくない”
その言葉は今の自分の現状を指しているにほかならない。
虫の音が静かに響く。
窓から見えるのは満天の星空・・・・・琥珀の月。
「そういえば・・・・・・・・もう2年もたつのね。」
ポツリ・・・・・
「あなたがいれば・・・・・何てね。・・・・・・・・・・・・・今の私を見てどういう答えが返ってくるのかしら。」
またポツリ・・・・・
「本当にらしくないわ・・・・・。」
「うむ。」
「まったくね♪」
「っ!!」
ふいに後ろから不気味な声が聞こえる。
部屋には私しか・・・・・いないはず。
「だれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
自ら武器・絶を取り、なおかつ人を呼ぼうとした瞬間だった。
声の主の姿が視界にはいる。
その瞬間、華琳の中で時が止まった。
それもそうだろう。
女物の下着を身に着けた大柄の筋肉ムキムキのおっさんが二人。
何かを誇るようにそこに立っていたのだから。
「いやあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
一人の少女の叫び声が夜空にむなしく響いた。
「人をみるなり叫ぶなんて失礼しちゃうわん♪」
「うむ、まったくじゃ。漢女にむかって何たる無礼。」
オヨヨヨ・・・・・と悲しげな仕草をする二人。
「乙女!?乙女ですって!?変態が馬鹿なこと言っているんじゃないわよ!!!!!」
この世のものとは思えないものを見て、華琳は半ば半泣きの半狂乱状態。
「だぁれが、変な露出癖のついて気味悪いおっさんでぇすってぇ!?」
「まんまじゃない!!!!!」
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
「これ、貂蝉。気持はわかるが、時間も無い。はやく話をすすめようではないか。」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・はぁ・・・・・・・仕方ないわね。わかったわよ、卑弥呼。」
貂蝉と呼ばれた者は一息つくと華琳と真面目に向き合う。
と言っても華琳は、絶を持ち完全に殺気をむき出しにしている。
「そう、怖い顔しないでちょうだい。確かに私達を警戒するのはわかるけれども、叫んでも何をしても誰もこないわよ。」
「なんですって!?」
「それが証拠に、あなたが叫んだって言うのに誰もこないでしょ?」
「五胡の妖術使い!?」
「残念ながら違うわ。あと、信じてと言っても無理でしょうけど、私達はあなたを助けにきたのよ。」
「助けに?・・・・・・馬鹿にしないでちょうだい。あなた達なんかに助けられるほど落ちぶれたつもりは無いわ。」
「えぇ、そのとおりよ。でも、それもある意味でははずれ。」
「・・・・・・・・・・?」
「曹孟徳よ、お主先ほどまで悩んでおったな。」
「それが何だって言うの。言っておくけれども、その事であなた達の助けをもらうことなんて微塵も無いわ。」
「だから、そんな怖い顔しないでちょうだいよ。」
「うむ・・・・・・・・・・だが、はたしてそうかな。」
貂蝉と卑弥呼がそう言った瞬間だった。
一閃。
華琳が卑弥呼の頸めがけ、絶を振るう。
しかし
「うむ、すじは悪くは無い。じゃが、その程度の一撃では儂の頸はとれんぞ。」
「何!?」
「だぁかぁらぁ~、まずは私達の話を聞きなさい。それでも遅くは無いわよ?」
「何がどう遅いか知らないけれど、何度も同じ事を言わせないで。助けをもうらうこと何て微塵もないわ。」
「それが、“北郷一刀”についてでも?」
「何ですって?」
絶をおろす華琳。
「そのとおりよん♪」
「曹孟徳。貴殿は儂の顔に見覚えはあるか?」
「・・・・・・・・・あるわけないわ。」
「まぁ、そうよねん♪」
「うむ。・・・・・・・・・じゃが、北郷一刀が消えた原因は貴殿と儂にある。」
「!!!!!」
「貴殿を“外史”の礎にしたのは何を隠そうこの儂じゃからな。」
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
貂蝉、卑弥呼と名乗るこの二人が言うには、この世界の私は呉を中心とした外史で、赤壁の戦いで敗れた私を礎にした世界の外史らしい。
正史は一刀がいた世界で、外史は様々な人の想いが重なって生まれる別世界。
つまり、私が大陸を統一し覇道と完成させるという想いで作られた外史。
だから、役目を終えた一刀が消えた。
そしてこの二人は外史の管理者。
「気に入らないわ。」
「何がかしら?」
「全てよ。私達が今までやってきたことは全て最初から決まっていたこと・・・・・そう言いたい訳?」
「それは、違うわよん。あくまで、この大陸に平和を作り出したのは、あなた達の類まれなる信念があったから。決して、最初から決まっていたわけじゃないわ。」
「うむ。礎にこそしたが、儂らは他には何もしておらぬ。」
「・・・・・・・・・じゃあ、何で一刀を私のもとに呼んだの?」
「・・・・・・・・隠しても仕方が無いわね。北郷一刀に会う前のあなたなら同じことの繰り返しだったからよ。」
「・・・・・・・・そう、やはりそういうこと。」
「怒らないのね?」
「今の私なら判るわ。昔の私なら覇道をなしとげることは無理だったでしょう。」
「そのとおりよ。だから、北郷一刀を外史に呼ぶことであなたに・・・・・いえ、あなた達に変わってもらった。」
「そう・・・・・確かに、“変わった”わね・・・・・・・・・・それで、それが助けになるとことと何が関係あるの?」
「北郷一刀に会うことが出来ると、そしてもう二度と離れることはないと言ったらどうする?
「・・・・・・・・・・・・・・え?」
「じゃが、それには貴殿には全てを失ってもらう事になる。」
「・・・・・・・全て?」
「言葉で言うより、見てもらったほうが説明しやすい・・・・・では、貂蝉。やるか!!
「えぇ!!」
「ふんぬぅぅぅぅぅ!!」 「ぬうぅぅぅぅぅ!!」
二人が手を握り合い、気色悪い気合をだした瞬間・・・・・・・・・・
部屋は消え、何も無い白い空間に場所が変わる。
「っな!!何これ!?」
「ふぅ~、これは皆の願望の中・・・・・いえ、正確には“夢”かしらね。」
「・・・・・・・・・?」
「まぁ、これを見てみるのだ。」
卑弥呼が手をかざす。
そこにはうっすらと何かが映し出される。
映し出された光景は・・・・・
「ちょっと、華琳。」
「待つ気は無いわよ。ほら、ちゃっちゃとついてきなさい。」
おそらく買い物中・・・・・
そこには、もう一人の私と・・・・・
私の後で必死に荷物を運んでいる・・・・・・・笑顔の北郷一刀が映っていた。
「何これ?」
「貴殿の願望・・・・・夢じゃな。」
「・・・・・・・・・・私の・・・・・・・・・・」
「そうよ。この夢の世界に行けば、また北郷一刀と会うことができるわ。二度と離れることも無い。」
「・・・・・・そんなことが出来るの?」
「えぇ。私と卑弥呼が力を合わせればね。」
「じゃが、こちらの世界に行けば、今までの記憶は無くなる。文字どおり、全てを失うここになる。」
「・・・・・・・・全て・・・・・そういうことなのね。」
「だから、行くときは覚悟してちょうだい。」
「・・・・・・・・この夢の世界の私はどうなるの?」
「「・・・・・・・・・・。」」
「答えなさい。」
「ふむ・・・・・目が覚める。」
「目が覚める?」
「つまり、あの世界の貴殿がこちらに来ることになる。夢からさめるようにの。」
「・・・・・・・・・・・・・・・胡蝶の夢・・・・・・・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・。」」
「・・・・・・・・・・っふ」
「「?」」
「ふふふふふふふふふふ・・・・・・あははははははははははははははははははは!!!!!」
「「!?」」
「一刀に会える?だから何?」
「私達が築いたものを何だと思っているの?」
「確かに一刀にまた会えたら最高ね。そこだけは認めてあげるわ。」
「だけどね、だからといって天秤にかける程、私は愚かではない。」
「あなた達が私をどう思ってこんな茶番に付き合わせたかは知らないけど・・・・・・・・・・今の大陸の平和を一番に望んだのは誰でもない一刀よ・・・・・・・・・・それを捨てる?一刀に会うために?・・・・・・・・・・・・・・・・そんなことをしたら、本当に消えた一刀に笑われてしまうわ。」
「・・・・・・・・・・馬鹿にするな!!!!!!!!!!」
一喝。
「それが答え?」
「くどいわね。」
「これを見てもまだそれが言えるかしら?・・・・・卑弥呼。」
「うむ。・・・・・・ふん!!」
卑弥呼が気合をいれる。
・・・・・その瞬間
いくつもの光景が映し出される。
「・・・・・・・!!・・・・こ、これは・・・・・・・・。」
そこに映し出されたのは・・・・・・・・・・
「遅いぞ、北郷!!」
「そんな急がなくても大丈夫だって。」
「そんなことを言っているのはどの口だ!!華琳様の服だぞ!!無くなったらどうする!!!!」
「だから、俺たちが発注して作らしたものだから、俺たち以外に買わないって。」
「うるさい!そんな難しいことがわかるか!!はやく付いて来い!!」
「・・・・・・・・はいはい。」
「はいは、一度だ!!!!」
「・・・・・・・・すまんな、北郷。」
「ん?いやいつもの事だからね。それに、あれでこそ春蘭だ」
「そう言ってもらうと助かる。」
「それに、二人とこうして買い物にいくのは楽しいしね。」
「・・・・・・・・そうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう。」
「何か言った?」
「いや、それより急ごう。姉者が怒っているからな。」
「あぁ、そうしよう・・・・・・・・待てってば、春蘭!!」
春蘭・・・・・秋蘭・・・・・
「だから違うって言っているでしょ!?これだから馬鹿は嫌いなのよ!!」
「まぁまぁ、確かに的はすれではありますが、私達とは違う新しい視野です。」
「そうですね~、今のままでは駄目ですが、風達には思いつかない考えですので、貴重ですよ~。」
「ほ、ほんと?」
「調子に乗るんじゃないわよ!」
「いえ、こちらこそありがとうございます。一刀殿の案を柱としていけば、この問題は解決するでしょう。」
「さすが、お兄さん。天の種馬の名は伊達じゃないですね~。」
「褒められるのは嬉しいけど、その呼び名だけは否定させてくれ。」
「ぐぅ~。」
「「寝るな!!」」
「おぉ~息がぴったりですね~、羨ましいかぎりです。」
「えぇ!?」
「あんた達は私を無視するんじゃないわよ!!!!」
桂花・・・・・風・・・・・稟・・・・・
「美味しい~~~~!!」
「やっぱり、手料理は流琉のにかぎるな。」
「に、兄様!?」
「ん?」
「そ、そんな恥ずかしいこと言わないでくださいよ!」
「だって本当にそうだもんな?季衣。」
「うん!流琉の手料理は天下一だよ!」
「もう・・・・・季衣まで。」
「だからさ流琉、おかわり良いかな?」
「僕も!」
「・・・・・まったくもぅ・・・・・兄様も季衣も少し待ってください!」
「おう!」
「うん!」
流琉・・・・・季衣・・・・・
「そっちに言ったぞ!」
「待ちいや!」
「待つの!」
「逃がさん!」
「今回も三人のおかげで怪我人もださずにすんだよ。ありがとう。」
「い、いえ!」
「そんなこと言わんといて。何か恥ずかしい。」
「沙和もなの~。」
「そんな事言うなって・・・・・・そうだ今日は久しぶりに四人で飯でも食いにいくか。」
「ええの!?」
「いいの?」
「こ、こら真桜、沙和。隊長もこれが私達の仕事ですので二人を甘やかすことは無いですよ。」
「「ぶーぶー。」」
「別に甘やかしじゃないさ。俺からのささやかな贈り物だからさ、受け取ってもらえない?」
「・・・・・・・・・・・隊長がそこまで言うなら。」
「やった~!」
「ね、ね!沙和、この間新しく出来た定食屋に行きたいの!!」
「うちも賛成!あそこ美味いって評判やし。」
「そう言うことならそこに行こうか。」
「はい!」 「楽しみやな~。」 「わくわくどきどきなの~。」
凪・・・・・真桜・・・・・沙和・・・・・
「えへへへ~、か~ずと。」
「何?」
「な~んでもな~い。」
「霞が酔うなんて珍しいな。」
「え~、うち酔ってへんも~ん。」
「酔っている方は、そう答えます。」
「ぶ~、かずとの意地悪~。もぅしらへん。」
「・・・・・・・・悪かったよ、ごめん。」
「・・・・・・ゆるさへん。」
「霞・・・・・・。」
「どうしてもって、いうならぁ~~膝枕してぇ~。」
「えぇ!?」
「いやなんかぁ~?」
「そんなことないけど。」
「な~ら~膝枕~。」
「・・・・・・・・・・わかったよ。」
「よっしゃ~!・・・・・・・・・・・・・・きもちえぇ。」
「そうかな?逆に堅くて寝にくくない?」
「そんなことあらへん・・・・・・・・柔らかいよ・・・・・それに温かい。」
霞・・・・・
「ねぇ、今日の歌はどうだった?」
「凄いの一言だね。」
「当たり前じゃない。なんたって天下の歌姫だよ、ちい達は。」
「けど、それもこれも一刀さんがここまでの舞台を準備してくれたおかげ。本当にありがとう。」
「俺だって三人の歌のファンだからね。三人のためなら何だってするさ。」
「じゃあ~、今度の舞台はもっと大きいのがいいなぁ~。」
「ちいも~。大陸中の人が集まるぐらいの大きい舞台がいい!」
「姉さん、そんな無茶なこと言わないで。」
「・・・・・・・・・・。」
「一刀さん?」
「うん・・・・・・次はもっと大きい舞台にしよう。」
「本当!?」
「いいの!?」
「え?でも・・・・・予算とか。」
「気にしないとは言えないけど・・・・・今回の公演を見て確信したよ。大陸中とはいかないけど、こんどの舞台は今回より大きくして、もっと三人の歌をふやして、大陸の皆に三人の歌をひろめるんだ。・・・・・・・・・んで、最後には大陸中のファンを喜ばせる大きな舞台をしよう。」
「うん!いいね、それ!!」
「お姉ちゃん、賛成~!」
「もぅ・・・・・・でも、次の事を考えるとそうなるのかな。」
「あぁ、だからこれかも四人でもっともっと頑張ろう!」
「うん♪」 「任せなさい♪」 「えぇ。」
天和・・・・・地和・・・・・人和・・・・・・
それに民の笑顔と、それと同じように・・・・・・まるで太陽のように笑う一刀。
「そう、誰も特別なことなんて望んでなんかいないわ。ただ、北郷一刀と共にいる日常を望んでいるのよん。」
「民までもが・・・・・・・。」
「そのとおり。そして貴殿一人がよしとするだけで、皆が幸せになれる。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「返答やいかに。」
「私がよしとした場合・・・・・あちらの世界の皆も夢から覚めるの?」
「それはないわ。」
「夢から覚めるのは礎となった、貴殿の夢のみ。」
「・・・・・・・・・。」
「そうね・・・・・それでも、私はこのままでいい。」
「それは何故かしら?」
「例え、民が望んでいるとしても・・・・・一刀に会うことで全てを失うなら、二度と一刀と会えなくなろうともかまわない。」
「皆の幸せを捨てることになるわよ?」
「かまわないわ。」
「それは、消えた北郷一刀のためかしら。」
「・・・・・・嘘をついても意味が無いわね。そのとおりよ。」
夢の一刀は消えた一刀ではない。
それ故に皆が望んでいる本当の“幸せ”ではない。
何より一刀はそれを絶対に望まない。
そう考えた華琳の答え。
「うむ・・・・・その答えや見事。」
「そうね、ここまで一途に思い続ける何て普通なら出来ないわ。」
「あいにく、私達は普通ではないわ。」
「ぐふふふ~ごめんなさいね。あなたを試すような真似をしてしまって。」
「気にしないで。あなた達のおかげで違う意味で“覚める”ことができた。」
「そう言ってもらうとこちらとしても頑張ったかいがあるというもの。」
「まぁ、今回は頸を跳ねないでいてあげる。」
「ぬふふふ~、じゃあそんなあなたのために私達からささやかな贈り物をしてあげるわぁ~♪」
「贈り物?」
「うむ、ではまずは夢から覚めてもらおう。」
「っは!?」
急に意識が自分の部屋にいることを確認する。
そして・・・・・
「寝ていたのかしら?」
寝床から体を起こす。
「・・・・・・・いつの間に?」
私は仕事をしていた。
現に机には仕事の残りがある。
それに、先ほどまで貂蝉、卑弥呼と一緒にいたことは夢では片付けられないほど現実的なもの。
「・・・・・・これが本当に胡蝶の夢なのかしらね。」
考えたところで答えは出るわけがない。
「ふぅ~、それにしても汗が酷いわね・・・・・・・・・お風呂にでも入ろうかしら。」
幸いにも今日は、お風呂の日。
部屋を出ると、華琳は真っ直ぐお風呂場へと向かう。
「ふぅ~。」
湯船につかり、今までのことが何だったのか考える。
「夢か・・・・・夏の暑さが見せた幻か・・・・それとも・・・・・・・・・・・贈り物ね。」
何故か、最後の言葉がひっかかる。
「できるなら、物よりも者のほうが良いわ・・・・・・・なんてね。」
一人、満点の星空と琥珀の月に語りかける。
「偽りとはいえ、皆から幸せを・・・・日常を奪った私は・・・・・・・・・本当に正しかったのかしらね?一刀。」
今にも崩れ落ちそうな星空にむかって静かに手をかざす。
手をかざし、夜天を見つめる。
「いつか、いつか・・・・・あなたには絶対に今まで何をしていたか話してもらうから、覚悟しなさい。そしてそれまでに私はあなたに誇れる世に、皆が心の底から笑える世にしてみせ・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
かざした手、指の隙間から見えるわずかな流れ星。
その星の光はだんだんと強くなり・・・・・・・・・・・・・・・
「っな!?」
こちらに落ちてくる!?不味い、間に合わない!!」
真っ直ぐに華琳の真上に落ちてくる光。
だが、その光はどこか変で・・・・・・・・・・・・・・・
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうああああああああああああああああああああ!!!????」
叫び声とともに風呂に落ちた。
ドゴオオオオオォォォォォォォォン!!!!!
もの凄い轟音と、水柱を立てて。
「何事だ!?」
さきほどの轟音に出来事に驚き、皆が風呂場に集まってくる。
蒸気が酷い中、微かに見えるのはかろうじて直撃を避けた華琳と、湯船に浮かぶ何かの塊。
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
そんな、間の抜けた声を第一に発したのは誰でもない・・・・・・華琳だった。
その塊は湯とは違う白さで・・・・・・
見覚えのある髪色をして・・・・・・
聞き覚えのある声をだした。
「ああぁぁ!!死ぬかと思った!!まったく、貂蝉と卑弥呼のやつこんな方法しなくたって・・・・・・・・・・・・・・・。」
その塊は立ち上がると、濡れた髪をかきあげる。
「って、ここはどこだ?湯気?温かい・・・・・温泉に落としたのか。まったく、せめて華琳の傍に落としてくれればいいのに。」
「ははは、でもやっと戻ってこれたんだな・・・・・・・・・華琳・・・・・皆に会ったら何て言おう。」
「でも、華琳とかは俺の事忘れてそうだな・・・・・春蘭は会ったとたん斬られるだろうし。そう意味じゃ華琳は俺の頸を跳ねるとか言いそうだけど・・・・・・・・・。」
「秋蘭はそんな俺を見て笑うんだろうな~。んで、季衣や流琉は俺に思いっきり体当たりしてきて・・・・・・・・・。」
「凪、真桜、沙和・・・・・・三人には泣かれて怒られて、霞には殴られそうだ。」
「桂花は最上級の嫌味だろな。んで、風はそれを見て茶化して・・・・・稟はため息つきながらもそれにのかって・・・・・・・・・・。」
「天和、地和、人和にはこっぴどく叱られそうだ。んで、そのあとに何かを奢らされる・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・許してくれるかな・・・・皆。」
「会ったら・・・・・・・まず・・・・・・・―――「かずと!!」―――ん?」
夢じゃない。
目の前に確かに“いる”。
消えたはずの・・・・・・・・・・・・・・・北郷一刀がそこにいる。
「かずと!!」
「ん?」
振り向くその顔は正に北郷一刀。
華琳が最も愛し、華琳が手にすることができなかった二人目の人物。
不意に声をかけられたと思うと、そこにいたのは俺が最も会いたいと思っていた最愛の人。
俺が泣かしてしまった寂しがり屋の女の子。
「かずと・・・・・一刀なの?」
「・・・・・・あぁ。」
「本物なの?」
「あぁ、俺は“正真正銘”の北郷一刀だよ。夢でもなんでもない。」
「っ!!」
出会いの瞬間から別れの瞬間まで記憶。
言い表せない感情。
だが、それらは大粒の涙となって瞳から溢れ出た。
「ばか!!」
そして、静かに一刀に触れる。
夢か幻かもしれないと思ったけど、この温もりは確かにここに“いる”証。
何よりも求めた証。
「・・・・・・・・・・ごめん。」
一刀が私を優しく包んでくれる・・・・・・・でも。
「久しぶりに会った一言がそれなの?」
それは私が聞きたい言葉ではない。
「いや・・・・・・でも・・・・・・・・・・・・。」
「謝るのは悪いことをした時に言うべきよ。」
「俺は悪いことをしたよ・・・・・・・。」
「あなたは何も悪いことはしていない。役目を果たしただけ・・・・・それはあなた自身が一番わかっているはずよ。一刀・・・・・・・あなたは“帰って”きたのよ?」
「・・・・・・・・・・・なぁ、華琳。」
「何?」
「ただいま。」
「・・・・・・・・・・・・・おかえりなさい。」
華琳、そして一刀・・・・・ふたりの頬に涙が伝った。
「ほおんごおおおおおお!!」
「北郷!!」
「一刀!!」
「兄ちゃん!!」
「兄様!!」
「「「隊長!!」」」
「お兄さん。」
「一刀殿。」
「馬鹿・・・・・。」
「一刀♪」
「一刀!!」
「一刀さん・・・・・。」
声の方向に顔を向ける。
俺が会いたくて会いたくて仕方がなかった最愛の人たち。
だから、皆にもこの言葉を贈ろう。
「ただいま!!」
「「「おかえりなさい!!」」」
「って、勝手に何を言っているかぁ~~~~~!!!!!」
・・・・・・・あれ?
「貴様~~~~~!!!!久しぶりに帰ってきたと思えば~、華琳様と何をしているかぁ~~~~~!!!!」
「え!?」
確かに風呂場だから、華琳は裸だけどさ!!!!!
桂花だって何も言ってこないよ!?
まぁ今はざまあ見ろって感じだけどさ!!!!!
そこは空気読もうよ!!!!!
「いや、ちょっとその手にある武器・・・・・・って何で光ってるの!?」
「ごたごた言わず・・・・・・・・・・・・・・・しねえぇぇぇぇぇい!!!!!」
「ちょっと、華琳!?」
「離さないわよ?」
「い、いや・・・・・・・そういう問題じゃ!?」
「でりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「いやあああああああああああ!?」
貂蝉、卑弥呼は遠くからお風呂場での騒ぎを見守っていた。
「それにしても想いの強さとは凄い。」
「あら、卑弥呼がそんな事いうなんて珍しいわね。」
「それもそうだろう。あの二人の互いを想う心、正に天下無双。」
「本当にね。妬いちゃうわ・・・・・ご主人様ってば。」
「妬くのぉ。夢の世界で同じ想い、同じ答えを出せば願いが叶う・・・・・・それを見事にやってのけたのだ。」
「まぁ、私としては遅めの七夕を叶えることができたら、良しとするわ。」
「何、それを言うならこれから始まる祭り・・・・・その手助けだろう。」
「それも、そうかしらね。」
「ふむ、では儂らは別の外史へ行くとするか。」
「えぇ、この外史はもう大丈夫だものね。これから新しい物語を書くのはあの子達の仕事♪」
「だから、話を聞けええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「問答無用!!!!!」
完
Tweet |
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こんな時間に投稿です。あと、一つしか投稿できなかったOLZ。思ったよりも制限が大変でした。・・・・・それにこれは夏なのか?とまぁ疑問ですが、自分的には夏のつもりです。あとそれにネタがもう王道というか・・・・・色々とツッコミどころが多いと思いますが温かい目で、読んでもらえた幸いです。
この作品は真・恋姫†無双の魏√の二次創作です。キャラ崩壊・オリジナル要素が苦手な方は申し訳ありません。大丈夫な方だけ読んでください。感想をお待ちしております。