~祭り2日目~
「よいしょっ・・・と」
華琳たちと朝の挨拶を交わし、後で大広間に来るようにと言われ別れた後、一刀はフランチェスカの制服に着替えていた
「って、どうでもいいんだけど、何でこの服なんだよ?・・・」
そう・・・。あちらの世界で一刀は3年の時を過ごした。もちろん、聖フランチェスカ学園は卒業してるし、大学にさえ通っていたのだ。しかし・・・なぜか、こちらの世界に戻ってきた時にはフランチェスカの制服に変わっていたのだ
「・・・うわぁ・・・なんか、すげぇ違和感・・・」
久しぶりの自分の制服姿を見て、複雑な思いになる
「でも、こっちの人からしたら、これが自然なんだもんなぁ・・・しょうがないか」
どこか諦めたように肩を落とし、一刀は部屋を出た・・・
~一刀~
チュン、チュン、チュン・・・
「ん~~~~!」
部屋から出ると、朝の陽気と鳥の鳴き声が一刀を迎えた
「すぅ~~~~~・・・はぁ~~~~~」
体を伸ばし、深呼吸をしてみる
「この空気も久しぶりだなぁ~~~」
体全体で”世界”を感じる・・・・・・
が・・・・・・
「・・・っと、そうだった。広間に行かないと!」
すぐに華琳から言われたことを思い出し、とりあえず広間に向かうことにした
「えっと~こっちだよな?」
城の中をしばらくうろうろしてると、見覚えのある扉とその前にいる2人の兵たちの姿が見えた
「おはよ~~」
「えっ?あっ、おはようございます、北郷様!」
「おはようございます、北郷様!曹操様たちはもう中にいらっしゃいますよ?」
「あ~だろうね。朝、広間に来いって起こされたんだよ・・・」
「そうでしたか・・・ということは昨夜h・・「違う!」・・そ、そうですか」
俺って、そんなイメージしかないのかなぁ・・・・・・
「まぁ、いいや。じゃあ、入るね」
「はい、どうぞ!」
ギィーーー
重い扉が兵によって開かれた
「あら、一刀遅かったわね?」
中に入ると、すぐに玉座に座った華琳が話しかけてきた
周りにいた皆もこちらを見てくる
ただ、天和たちの姿が見えないが・・・おそらく事務所に帰ったのだろう
「いや~久しぶりだったから迷ってさ。それで、何かやるの?」
「えぇ、あなたのこれからについて話そうと思うのだけど・・・」
「これから?」
「えぇ、そうよ。簡単にいえば、警備隊長に復帰するか、どうかね」
「えっ?・・も、もちろん俺は復帰できるならしたいけど・・・いいの?」
さすがに不思議に思う。3年もこの世界から離れていた俺を、こうもあっさりと警備隊の隊長に復帰させるなんて・・・
「・・・不思議そうね、一刀?」
「あ、あぁ・・・まぁ・・」
「・・・これはね、警備隊隊長”代理”である凪からの提案なのよ」
「凪が?」
華琳の言葉を聞き、凪たちの方を見ると、凪たちもこちらを見据えて答えてくれる
「・・・はい・・・勝手なこと・・余計なお世話と思われるかもしれませんが、私も真桜も沙和も・・・そして警備隊の者も・・・皆、隊長の復帰を心より願っております・・・」
「せやせや。隊長になってくれんのやったら、凪が代理やった意味がなくなるやんけ!」
「そうなの~。隊長は今も昔も、沙和たちの隊長なの~」
「凪・・・真桜・・・沙和・・・」
笑顔で凪、真桜、沙和に語りかける
「・・・ありがとう・・・」
と・・・
「・・・華琳」
華琳の方に向き直り、答えを示す
「何かしら?」
「俺に警備隊をもう一度任せてもらえないかな?・・・もう二度と、自分の責任を途中で放り投げるまねなんてしないから」
「・・・・・・二言はないわよ?」
「・・・あぁ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
華琳が無言で見据えてきたが、やがて
「・・・そう。ならば、もう一度だけ信じましょう」
そう言って、笑顔だった顔を引き締め、王として続ける
「北郷一刀!あなたにこの洛陽の町の警備隊を任せる!民の生活が脅かされることのないよう、しっかりと警備に励め!」
一刀は華琳のその態度に一瞬驚きはしたものの
瞬間的に礼をとり、
「はっ!北郷一刀、警備隊の任、しかと拝命いたします!」
と答えた・・・
「・・・それで、一刀、あなた今日はどうするの?」
王と臣下としての一応のやりとりが終わり頭を上げると、華琳が王の顔を崩し、話しかけてきた
「ん~、とりあえず警備隊の隊舎に一度顔を出すよ・・・ってか、祭りっていうぐらいだし・・・なんかイベンt・・・じゃなくて、催し物とかあるの?」
「そうね・・・桂花、今日は何があったかしら?」
「今日の大きい催し物は天下一品武道大会の予選だけです、華琳様」
「・・・何?その天下一品なんたらって・・・」
キッ、と桂花がにらんでくる
「話しかけないでよ!この全身精液孕ませ装置ッ!!」
「人ですらないのかよっ!?・・・で、結局何なんだよ?」
「私に聞かないでよ!春蘭にでも聞けばいいじゃないッ!!」
そう言って、プイッ、と顔をそむけてしまう桂花にため息をつきながら、疲れたように春蘭に話しかける
「・・・春蘭、結局何なの?・・・」
「うむ、簡単に言えば、三国一の武人を決める大会だ!まさに私の為にあるようなものだ!はっはっはっはっ!!!!」
なるほど・・・確かに春蘭向けのイベントだなぁ
「へ~、じゃあ今までも春蘭が優勝したんだ?凄いじゃん、春蘭!!」
そう言った瞬間・・・春蘭の高笑いがピタッ、と止んだ
「一刀~そらキツイで~」
「ふふふ、まったくだな・・・」
「・・・へっ?」
霞と秋蘭が笑いをこらえながら、話し出す
「えっ?何が?」
周りを見ると、ほとんどの将が苦笑いを浮かべていた
「兄ちゃん、兄ちゃん」
くいっ、くいっと季衣に袖を引かれ、そちらの方を向く
「えっ?季衣、どういうこと?」
「春蘭様・・・まだ優勝したことないんだよ~」
「・・・・・・はい?」
少し意味が分からない・・・
あれだけ自信たっぷりに笑っておいて・・・
優勝してない?
「・・・兄様、ちなみに昨年も一昨年も優勝は恋様・・・蜀の呂布将軍です・・・」
横にいた流琉が一瞬で問題を解決してくれる
「あ~そういえばいたなぁ・・・呂布かぁ」
納得・・・
確かに呂布なら・・・・・・って、んっ?
「・・・・・・(ギリッ)」
「(・・・・・・春蘭・・・)」
・・・俺は見た
・・・皆が苦笑したり、どうしようかと戸惑っている時に
・・・悔しそうに歯を噛み締める春蘭の姿を・・・
「(・・・そう・・・だよな・・・あれだけ武に誇りを持ってる春蘭が、その武で頂点に立つことができなくて悔しくないはず・・・ないよな・・・)」
・・・・・・よしっ!!
「・・・でもさ・・・」
俺の方に、春蘭以外の視線が集まる
「・・・今年は・・・まだ分からないだろ?」
「・・・北郷・・・」
春蘭もこちらを見てくれた
「去年や一昨年は呂布さんにゆずっちゃったかもしれないけど・・・春蘭は、それで諦めるような奴じゃないだろ?」
少し挑発的な笑みを浮かべ、春蘭に言うと・・・
「あ、当たり前だ!!恋なんぞに3度も優勝をやるつもりなど毛頭ない!!」
強い決意をその眼差しに込め、答えてくれた
「ははははっ、うん!それでこそ、春蘭だよな」
「はっ!・・・むむむむっ//////」
うまく乗せられたことに気づいたのだろう・・・
春蘭は顔を赤く染めてしまった
「よく言ったわ、春蘭」
今まで、黙っていた華琳から声が掛かる
「華琳様?」
「あなたの決意・・・この曹孟徳がしかと聞いたわ。今年こそは魏に”三国一の武”の栄冠をもたらしなさい」
「・・はいっ!!華琳様!」
華琳からのゲキが効いたのだろう・・・
春蘭は尻尾を振る犬のように華琳に視線を向けている・・・
「ふふ、いい娘ね」
華琳も視線だけで愛でている(凄ッ!!!!)
「ちょっと待ったぁーーーー!!!!」
「「「「「「「「(ビクッ!!)」」」」」」」」
突然の叫びにその場にいるほとんどの者が体を震わせた
「一刀も華琳も勘違いしとるで!魏からはウチらもおるんやで!」
「うむ」
「そうですよーー」
声の主は霞・・・
そして傍らには秋蘭と季衣が・・・
「えっ!?霞たちも出るの!?」
「なんだ、一刀?私たちが出ると何か不都合でもあるのか?」
「いやいや、別にないって!単純に驚いただけ!」
こめかみをピクッとさせた秋蘭に慌てて弁明をする
「あら、ごめんなさい。いじけている春蘭が可愛かったから、つい・・・ね」
華琳も続けて弁明(?)した
「そっかぁ~。じゃあ、春蘭だけを応援するのもダメだね。みんな頑張ってね!」
「えぇ、私からも改めてお願いするわ。春蘭、秋蘭、霞、季衣・・・今年こそは魏武こそが最強だと証明してちょうだい」
俺の応援と華琳の挑戦的な笑みを受け・・・
「「はっ!!」」
「任せといてや!!」
「はい!!」
と、4人はやる気をみなぎらせ答えた
「一刀殿・・・ということは本日は隊舎に向かった後は、4人の応援に行くのですか?」
突然発した稟の一言に
「いや、行かないよ」
一刀は即答・・・
「「「「!?」」」」
その一刀の一言に4人は言葉を失う・・・
が・・・
「だって・・・この4人だよ?予選じゃ負けないって信じてる。それにどうせなら本選で応援したいしね!」
そう言って、最高の笑みを浮かべる一刀を見て、すぐに笑顔を取り戻す
「ふ、ふん!当たり前だ!予選なんぞ、2割の力で十分だ!」
「・・・いや・・・それはさすがにまずいだろ・・・」
「ふふふ、期待に応えれるよう、やってみようではないか」
「うん、秋蘭なら予選ぐらい平気だよ」
「よっしゃーー!一刀にウチの強さを見せる為にもキバるでーー!!」
「霞は心配いらないと思うよ。でも、油断せずに頑張ってね!」
「えへへ、兄ちゃん!本選に出たら、絶対応援に来てね!」
「当たり前だろ~?みんなが死ぬ気で戦うなら、俺も死ぬ気で応援するさ!」
最後に4人に笑顔を向けて、改めて”頑張って!!”と伝えた・・・
「なら、一刀。隊舎に行ってからは何をするの?」
「あぁ、そのまま凪たちと町でも見て回ろうかなぁ~って思うんだけど・・・って、どうかした?」
「・・・・・・・・・別に・・・何でもないわよ」
一刀が発した”凪たち”という言葉に反応して、華琳は不機嫌になってしまった
重くなった空気を打ち破るかのように一刀は話しかける
「えっと~~~、そう言う華琳は?今日は何か予定あるの?」
「・・・えぇ。今日は雪蓮や桃香が魏の最新の”ふぁっしょん”が見たいと言ったから服を見に・・・ね」
・・・そう。例え、一刀の予定が空いていようとも、華琳は一刀と2人っきりにはなれなかったのだ
一緒にいれたとしても・・・とんでもないオマケが2つほどついてくる・・・
(はぁ~~・・・ままならないものね・・・)
心の中でため息をつく華琳
「あ~、そっか。じゃ、じゃあ俺はこの辺で・・・「待ちなさい、一刀」・・・はい」
早く、隊舎に向かおうとしたが華琳に呼び止められたので歩みを止めた
「あの~何でしょう?」
「あなたに聞きたいことがあるのよ。風・・・あれを・・・」
「ぐぅ」
「寝るな!」
ベシッ
「おぉ!稟ちゃんどうしたのですか~?」
「華琳様がアレをと・・・」
「おぉ!はいは~い。少々お待ちくださ~い」
そう言って、風は近くにいた親衛隊の兵士に何かを言いつけた
少しすると・・・
兵士が何かを持ってきた
「程昱様、こちらになります」
「ありがとうございます~下がっていいですよ~」
「はッ!」
風に持ってきたものを渡し、兵士は元の位置に戻っていった
「華琳様~こちらになります」
「ありがとう、風」
そして、それを華琳に渡した
「一刀、これなのだけど」
「んっ?・・って、それ!!」
さすがに驚いた
なぜなら・・・
華琳から差し出されたものが
「天華!!」
俺が向こうの世界でじいちゃんからもらった・・・大切なものだったから・・・
「やっぱり、あなたのだったのね」
「あ、あぁ・・・そうだけど・・・。これ、どうしたんだ?」
「呉の明命・・・周泰が届けてくれたのよ。なんでも、あなたがいた川辺に落ちていたらしいわよ」
「呉の周泰さんが・・・・・・。そっか~、お礼言わなくちゃな」
華琳から天華を受け取り、”天華”の重みを改めて感じる・・・
「少し見せてもらったのだけど・・・武器にしてはなかなか綺麗なものね」
「あぁ、これは俺の国の歴史で400年ぐらい前には普通に使われていた武器だったんだけど、今じゃあ美術品として重宝されているからね」
「えぇ、美術品としてはなかなかのものだと思うわ・・・。それがあなたの得物なの?」
「いや。この刀自体は使わないよ」
「あら、なぜかしら?」
「この刀はさ・・・俺がどこに行っても大丈夫なように・・・って、剣術を教えてもらったじいちゃんからもらったものなんだ・・・。だから・・・この刀はじいちゃんと俺の絆なんだ・・・。そんなに軽々しく使うものじゃないと思うんだよね・・・」
「「「「「「「「「「・・・・・・ッ」」」」」」」」」」
昔の彼とは違う何かを感じたのだろう・・・
自分の決意を噛み締める一刀を見て、周りのものは、すっ、と息を呑んだ
ただ、華琳だけが・・・
「・・・そう・・・。ならば、その刀に・・・お祖父さまに恥じないように生きないとね・・・」
とだけ言って、暖かな笑みを浮かべた・・・
朝議を解散した後、町に行くということで華琳から結構な小遣いをもらい、一刀は凪、真桜、沙和と共に隊舎を訪れていた
「うわぁ、久しぶりだなぁ」
「ウチもや!最近は蜀に行っとったからな!」
「沙和もなの~。書類とかちゃんと片付いてるの~」
1人にとっては3年ぶりの、2人にとっては1ヶ月ぶりの隊舎だった
「さすが凪だな~(なでなで)」
「あぅ//////た、隊長・・・・・・は、恥ずかしい・・・です//////」
しっかりとした隊舎の様子を見て、一刀は凪の頭を撫でてあげた
凪も恥ずかしいとは言いながらも、満更ではない様子でそれを受け入れる
「隊長、そらずるいでー。ウチも自分の仕事はちゃんとやっとるしやな・・・」
「沙和だって、最近はお仕事でどの国からも引っ張りだこなの~」
抗議をあげる真桜と沙和・・・
「ははは、分かってるって。ほら、2人もよく頑張ったな(なでなで)」
「//////」
「へへへ~」
「わーい、なの~」
しかし、一刀に頭を撫でられた途端、不機嫌な表情から一転、ほにゃっと崩れた笑顔になった
しばらく3人の頭を撫でていた一刀だったが・・・
「そうだ!隊員の名簿とか日誌ないかな?今まで何があったのか、どういう人が入ってるのか見たいし」
と、言い出し、頭撫では一時中断となった・・・
「あっ、今持ってきます」
そう言って、凪は席を立ち、本棚からいくつかの本を持ってくる
「一応、こっちが名簿で・・・これが報告書になります・・・」
「おっ、ありがとう、凪」
「い、いえ//////」
そして、それを一刀の前に差し出した
「・・・どれどれ・・・・・・って!?」
「?どうかしたんか、隊長?」
名簿張を開いた一刀は吃驚した・・・
なぜなら・・・
「警備隊・・・すごく増えてるじゃん」
そう。一刀がいた時よりも、かなりの数が名簿に載っていたのだ・・・
「これ・・・なんで?」
「隊長は~なんでだと思うの~?」
一刀は聞いたつもりが逆に沙和から聞き返されてしまった
「・・・いや、想像もつかない・・・」
驚く一刀を見ながら、真桜と沙和は意地悪そうな笑みを浮かべている
「・・・隊長、それはですね・・」
しかし、優等生である凪は困り顔の一刀を放っておけないらしく、律儀に答えてくれる
「それは・・・隊長の影響なんです」
「・・・俺の?」
「はい・・・。隊長がいなくなった時に民は悲しみましたが・・・もちろんそれだけではない者たちが出てきました。・・・その者たちは隊長がいなくなった時だからこそ、自分たちの町は自分たちで守りたい・・・隊長のように、洛陽の為に何かしたい・・・その一心で、軍部を縮小している時期にも関わらず、兵として志願してきました・・・」
「・・・・・・」
一刀は黙って聞く・・・
自分では自身が周りからどのような評価を受けてきたか、ほとんど分からなかった・・・
一刀自身・・・自分を受け入れてくれた恩返しのつもりで町のために何かできないか、と考えて行動してきた
その結果・・・・・・
そんな自分の姿を見て・・・
わざわざ正規兵よりも給金が少ない警備隊を選んでくれた人たちがいたことが・・・
単純に・・・・・・嬉しい・・・
「ある意味では彼らの方が・・・・・・私たち魏の将よりも立派に・・・前を向いていました・・・」
「・・・・・・そっか・・・」
凪の言葉に・・・さらに嬉しくなる
------“この町はまだまだ良くなる”------
そう・・・確信できたから・・・
「でもな・・・」
真桜の突然の一言によって、一刀は思考を停止する
「そん次から大変だったんやで・・・」
「・・・大変?」
「そや・・・。凪が言うたやつらを採用したやろ?それだけでも結構な数になってん。」
「へぇ~、そんなにいたんだ?」
「それ自体は沙和たちも嬉しかったの~。でもね、その次の年もまた同じくらいの人たちが志願してきたの~」
「・・・・・・はい?」
さすがの一刀も聞き返す。最初に採用した人たちだけで十分な数になったのなら、もし次が同じくらい来ても・・・・・・
「さすがに全員は採用するわけにはいかず、警備隊志願の者は新しく試験を追加・・・・・・最後は面接というカタチでどうにか人数を絞りました・・・」
「・・・・・・はぁ」
しかし、それだけでは終わらなかった
「・・・さらに去年も・・・かなりの人数が志願してきました・・・」
「えぇっ!?」
「でも、さすがに毎年毎年、採用はできんからな~。去年のやつらは見送ってん」
「まぁ・・・そうだろうな」
いくら大国”魏”であろうとも、軍部を縮小した今、警備隊だけにそんなに費用をかけるわけにはいかない・・・
そのため、去年の採用は・・・というか、試験自体行わず、一時見送りとなったのだ・・・
「(でも、そんなにこの町を大切に思ってくれる人がいるのか~。・・・やっぱり嬉しいな)」
と、一刀が思いにふけっている時に3人は集まって、小声で話し合っていた・・・
「(凪・・・今年はやばいんちゃうかぁ?)」
「(そうなの~。なんていったって、隊長が帰ってきたから・・・)」
「(あぁ・・・間違いなく・・・今まで以上の数が志願してくる・・・)」
今年は予定として1、2人の採用が軍師たちから認められている・・・
間違いなく”激戦”となる・・・
「「「・・・・・・」」」
そんなことを考えつつ、3人は視線を合わせ・・・
「「「はぁ~~」」」
と、ため息をついた・・・
4人はしばらく隊舎にこもり話していたが、隊員たちが集まってきたため話を中断した・・・
初めて一刀と話す兵はカチコチになりながら・・・・・・
3年前からいる隊員たちは、上司ではなく友人との再会を喜ぶように・・・
北郷一刀”隊長”を迎え入れた
「隊長、今日はどうされますか?」
兵たちが全員集合したので、整列させた後、凪は一刀に指示を仰いだ
「いや、隊長っていってもまだ全然分かってないからさ。祭りの間は凪に任せたいんだけど・・・いいかな?」
「もちろんです!隊長の信頼・・・・・・必ず応えて見せます!」
「いや、信頼て・・・」
「うん・・・当たり前のこと言ってるだけなの~」
一刀の言葉を信頼の証と受け取り、はりきる凪に真桜と沙和の2人は突っ込むが、凪にはまったく聞こえてないようだ
「あは・・・はは・・」
一刀もおもわず苦笑いである
その後、いつも以上にはりきる凪から兵たちに本日の予定が話され、兵たちはそれぞれの持ち場に散っていった
「んっ?凪たちは大丈夫なの?」
「はい。各隊にも私たちがそれぞれ指名した副官たちがいますから・・・。それに最近では隊の皆も優秀で、私たちに頼らなくても解決できているようですから・・・」
「せやな。あいつらも隊長がおらんかった間に成長したってこっちゃ!」
「ウジ虫からハエくらいにはなったの~」
少し寂しそうに・・・しかし嬉しそうに話す凪たちを見て、一刀も嬉しくなる
「じゃあさ!せっかくだし、4人で町に行こうぜ!」
テンションの上がった一刀の言葉に
「はい!」
「おっしゃ!」
「行くの~!」
と、3人も元気良く答えた
「賑わってるなぁー」
「・・・凄いです・・・」
「去年より露店多いんちゃうか?」
「人も凄く多いの~」
というわけで、一刀は凪たち3人と共に祭りで賑わう町に出てきていた
「あら、隊長さんじゃないか!」
「んっ?」
4人で人ごみの中を縫うように歩いていると、饅頭屋から声が掛かった
「おっ!おばちゃん、昨日ぶり!どう?繁盛してる?」
「あぁ、おかげさんでね!隊長さんが帰ってきてくれたから、町中大騒ぎでもう大盛り上がりだよ!!」
「ははは、良かったよ。・・って、あれ?おっちゃんは?」
「あの馬鹿のことかい?知らないよ。大方どっかで呑み散らかしてるんだろ?」
「・・・おっちゃんも昔から変わんないなぁ・・。見かけたら戻るように伝えとくよ」
「そんな、隊長さんの手をわずらわせるわけにはいかないよ!?」
「いいって、いいって。俺も凪たちと町を見て回るから、丁度いいんだって」
何も気にしていない、といったような一刀の表情を見て、ついに饅頭屋の女将も折れた
「はぁ~。そういえば隊長さんは、そういう人だったね~。・・・うん・・じゃあ、お願いしようかね?」
「あぁ!任せて、任せて」
「あっ!じゃあ、代わりといっちゃあなんだけど、これ持っていっておくれよ」
そう言って、女将はいくつかの饅頭を包んで、一刀に渡した
「えっ?こんなにいいの!?ありがとね、おばちゃん!」
「うちの馬鹿亭主を探してもらえるんだ。これくらいたいしたものじゃないよ。でも・・・今度からはちゃんとお金はもらうからね?」
饅頭屋の女将が冗談めかして、一刀に言う
「あははっ、分かってるよ。今度はちゃんと”お客”で来るから・・・またね!」
「あいよ!隊長さんも楽しみなよ!」
そう言って、一刀は後ろを振り向き・・・・・・不思議な光景を見た
「「「・・・・・・」」」
「・・・何してんの、お前ら?」
凪たち3人が何やらボーッとした顔をしていたので、一刀もおもわず声を掛けた
「えっ!?い、いや、別に・・・なぁ?」
「そ、そうなの。気にしちゃだめなの!」
「き、気にしないで下さい」
凪たち3人がボーッとしていた理由・・・
それは・・・
民と話す一刀の姿に・・・
懐かしさを覚えていたから・・・
そして、それが何気ないやり取りで・・・
3年という時間を・・・
まるで感じさせないものだったから・・・
嬉しかった・・・
長い時間が経っても・・・
変わらない彼がいたことが・・・
「へへへ~隊長」
ギュッ
「えへへ~」
ギュッ
「な、なんだ?急にどうしたんだよ?」
ボーッとしていたと思ったら、急ににやけて腕に抱きついてきた真桜と沙和に戸惑う一刀・・・
凪は小さく”ぅぅ・・”とうなり、我慢している模様
「何でもあらへん。さぁ行こうや、隊長♪」
「そうなの~。お店はまだまだあるの~」
「うぅ////(キュッ)」
凪も精一杯の勇気を振り絞り、どうにか服の端を掴んだ
「(歩きづらいけど・・・)」
一刀は自分の周りを見る
真桜と沙和が笑い・・・
凪も恥ずかしがりながらも傍にいようとしてくれている・・・
「(まぁ・・・いっか)」
そんな3人が微笑ましくて、結局3人とも振り払うことなく歩くことにした
そのまま4人で呉や蜀から来ている露店などをのぞいたりして、結構な時間が経ち、時刻は昼過ぎ・・・
4人が昼食を終え、大通りを歩いていた時のことだった
「・・・命・・・さい・・・」
「んっ?」
一刀の耳に気になる言葉が飛び込んできた
「?どうかしたのですか、隊長?」
朝とは違い、しっかりと横に並んだ凪が一刀に気を配る
「いや、今何か・・・」
「明命・・・待ってくださーい!(ドカッ)・・あぅ!す、すすすすみません!」
「「「あっ」」」
「えっ?」
一刀以外の3人は何かに気がついたようで、ある方向を見ている
「ん~~~・・・・あっ」
一刀も3人が見ている方を見て、何かに気づく
そこには・・・
「(ドカッ)・・あぅ!す、すいません!(ドカッ)・・ご、ごごごめんなさーい!」
「・・・・・・」
何やら・・・人にぶつかっては謝ることを繰り返す女の子が1人・・・
「確か・・・あの娘は・・・」
「「「亞莎(ちゃん)(様)」」」
「・・・うぅ・・・・えっ?」
凪たちも知っているらしく声を掛けた
「ど、どうしたんや亞莎?」
真桜が声を掛けると・・・
「んーーー?」
と、亞莎とよばれた女の子は目を細めてこっちを見た
「(怖ッ!)」
まるで睨んでいる様にも見えるので、一刀だけは、ビクッ、と体を震わせた
「亞莎ちゃん、沙和たちなの~」
その沙和の一言に反応して、ハッ、と何かに気づいたようにこちらに駆け寄ってくる・・・人にぶつかりながら・・・
「す、すすすすみません!き、きき気づけませんでした!私ったらなんて失礼なことを・・・」
「いえ、それは気にすることはありませんが・・・・・・どうかしましたか?」
落ち込む亞莎に凪が話しかける
「そ、それが・・・・・・明命と町に色々と見に来たのですが・・・その途中で、明命が猫を見かけて・・・はぐれてしまって・・・」
「「「あ~~」」」
「?」
凪たち3人は納得したようだが、一刀だけは話について行けなかった
「?凪、どういうこと?」
「・・・そうでしたね・・・。隊長は知りませんでしたね・・・。明命様・・・隊長に武器を届けてくれた周泰様のことですが・・・かなりの猫好きで知られていて、猫を見かけると周りが見えなくなってしまうのです・・・」
「・・・・・・はぁ」
理解したようなできないような、そんな表情を浮かべる一刀・・・
「ま、まぁ周泰さんのことは一旦置いといて・・・この娘は?」
目の前にいる亞莎に視線を向け、凪に問いかける
亞莎は急に視線を向けられたことに驚き、ひいっ!、と言って縮こまってしまった
「この方は呂蒙様・・・呉で軍師をしておられるお方です」
「へぇ~、この娘が・・・」
呂蒙という名を聞き、興味深そうに亜莎を見る一刀
「あ、あの~・・・な、何か?」
びくびくしながら、亞莎は一刀に問いかけた
「あ、すみません・・・じっと見てしまって。えっと・・・呂蒙さん・・・で大丈夫ですか?」
「は、ははははい!・・・わ、わわわ私はかまいませんが・・・あ、あのーあなたは?」
「・・・ありゃ?・・・まぁいっか・・・。俺は姓は北郷、名は一刀。一応”天の御遣い”ってことになってるよ。よろしくね、呂蒙さん」
「・・・天の・・・御遣い・・・・・・はっ!」
亞莎は一刀から名を聞き、一気に顔を青ざめさせた
「も、ももも申し訳ありません!て、ててて天の御遣い様になんて失礼なことを・・・・・・」
「いや、全然気にしないでいいよ。・・・それよりまずは落ち着こうか?」
「あっ!・・・・は、はい//////」
そう一刀に返して、胸に手をあて、亞莎は呼吸を整え始めた
「「「「・・・・・・」」」」
一刀たちも、先程から色々あったので混乱しているであろう亞莎が落ち着くのを待つことにした
「・・・落ち着いた?」
しばらくして、亞莎が大分落ち着いてきたので、一刀は話を戻すことにした
「は、はい・・・あの・・・すみませんでした・・・」
「いいよ、別に。それより周泰さんのことだけど・・・」
「はっ!?そうでした!明命は・・・・・・」
一刀に言われ、改めて明命を探すために亞莎はきょろきょろと周りを見渡すが、当然、明命の姿はない
「はぁー、見失ってしまいました・・・・・・」
落ち込む亞莎・・・・・・
「・・・あのさ、呂蒙さん。良ければ、俺たちも周泰さん探すよ?」
「・・・へっ?で、ででででも・・・」
しかし、一刀の一言によって、間の抜けた返事をしながらも顔を上げた
「そやな~。ウチらも今日は結構遊んだし・・・そんぐらい別にええで?」
「亞莎ちゃんのためなら、全然いいの~」
「そうですね。亞莎様も明命様も私たちの友ですから」
「・・・皆さん・・・」
一刀に続いて、3羽烏も明命を探すことに同意する
「この娘たちもこう言ってるしさ・・・ね?」
最後に一刀の駄目押しの笑顔
「・・・は、はい//////ご、ご迷惑でないのなら//////」
一刀は亞莎の言葉に満足そうに頷き、”よしっ!”、と気合を入れた
「それじゃあ、早速探そうか・・・。呂蒙さん、だいたいの見当ってついてる?」
「い、いえ・・・た、ただ・・・南の通りに向かっては行きました・・・」
「南通りか・・・・・・ん~」
一刀は南通りについて、考えてはみるが、3年間もいなかった自分の知識が役に立たないことに気がついた
「南通りか~。あそこは昼間は人多いから、探すのも苦労すんで」
「う~ん・・・ウジ虫共にも手伝わせた方がいいかもしれないの~」
「い、いえいえいえいえ!そんなに大事にしなくても大丈夫ですから!」
南通りは城門の側ということもあり、人通りは激しい
主に並んでいる店は、装飾品や服を扱っている所が多い
真桜も沙和も、広い大通りの中からどうやって探し出すか考えている・・・そんな中・・・
「南通り・・・・・・もしかしたら・・・・・・隊長!」
凪だけが何か意見があるようで、一刀に提案を申し出た
「んっ?どうかしたか、凪?」
「あの・・・もしかしたら・・・明命様がいる場所が分かるかもしれません」
「「「「えっ!?」」」」
凪の発言に、他の4人は驚きの声をあげる
「えっ!?ど、どういうこと、凪?」
「はい。以前、警邏中の時に南通りにある酒屋横の路地裏で、風様と会ったことがあるのですが・・・」
「風と?」
コクリ、と頷く凪
「その時、風様はたくさんの猫に囲まれていました・・・。風様がおっしゃるには、昼になるとその場所にたくさんの猫たちが集まってくるらしいのです・・・。ですから・・・猫を追っていった明命様も、もしかしたら・・・」
「へぇ~そんな場所が・・・。そっか・・・・・・うん、調べてみる価値はあるね」
「南通りの酒屋ちゅうと・・・一軒しかないなぁ」
「なら、早速行ってみるの~」
「は、はい!」
ということで・・・
一刀、真桜、沙和、凪、亞莎の5人は凪からの情報を元に、南通りに向かうことにした
にゃー、にゃー、にゃー
みー、みー、みー
フーッ、フーッ
「「「「・・・・・・」」」」
凪からの情報を元に、南通りの酒屋横の路地裏に来た5人は、とても奇妙な光景を目にしていた
それは・・・
「はぅあ~~お猫様がこんなに~もふもふがこんなに~幸せです~~~」
もふもふ・・・もふもふ・・・もふもふ
20匹はいそうな猫たちの中心で、1人の女の子・・・明命が猫たちを抱きかかえ、顔を緩ませ、次々に頬擦りをしたり猫と共にゴロゴロしているといった珍妙な光景・・・
「・・・あれが・・・周泰さん?・・・」
「「「(・・コクリ)」」」
一刀が顔を引きつらせながら、3羽烏に聞いたところ、こちらの3人も顔を引きつらせながら頷いた・・・
そんな中・・・
「・・・・・・(プルプル)」
亞莎は肩を震わせ、俯いていた
が・・・次の瞬間・・・
「明命!!」
「もふもh・・はぅあ!?あ、亞莎!?」
顔を上げた亞莎の大声に明命が飛び上がる程に驚いていた
「こんな所にいたのですか、明命!」
「あ、亞莎・・・・・・これは・・・・・・ひっ!・・・ご、ごめんなさい・・・」
明命も言い訳をしようとはしたが、亞莎の表情を見た途端・・・諦めた
「人ごみが苦手な私に買い物に付き合ってくれると言っていたのに・・・急にいなくなって!」
「・・・はぅあ・・・」
うなだれる明命・・・
「明命!聞いt・・「・・呂蒙さん」・・み、御遣い様!?」
そんな明命を見かねて、一刀が割って入った
「・・・ほら、周泰さんももの凄く反省してるみたいだし・・・許してあげてもいいんじゃないかな?」
「し、しかし・・・」
「まぁ、なんちゅうか明命も悪気があったわけやないねんから・・・」
「猫を見かけたときの明命ちゃんなら、正直、仕方ないかなって思うの~」
「・・・そうですね。確かに、亞莎様との約束をやぶったことには違いありませんが、こうして早い段階で見つけられたことですし・・・」
「うぅ~」
亞莎も一刀たちにそう言われるものの、なかなか納得はいかないようだった
「周泰さん」
「はぅあ!?み、み御遣い様!?」
一刀は前を向き、今までうなだれていた明命に声をかける
「うん、まぁそうだね。ところで、周泰さん?周泰さんも悪気はなかったんでしょ?」
明命は一瞬だけ亜莎の方を見て答えた
「・・・・・・はい。私・・・お猫様を見かけると・・・どうも自分を律することができなくなってしまって・・・・・・。気がついたときには亜莎は近くにおらず、ただお猫様たちが・・・」
「・・・・・・」
亞莎も分かってはいた・・・
しかし・・・
約束をやぶられたことに対する怒りは・・・
抑えることはできなかった・・・
「・・・亞莎・・・本当にごめんなさいです・・・」
「・・・・・・」
明命の心からの謝罪・・・
亞莎にも伝わる・・・
「・・・はぁ~。・・・明命・・・もういいです・・顔を上げてください」
「・・・・・・はいです」
明命が顔を上げる・・・
「今回はいいですけど・・・もう約束・・・破らないで下さいね?」
「!?」
亞莎の許しに驚きながらも
「も、もちろんです!もう絶対に約束は破りません!だから・・・これも”約束”です!」
と、元気良く答えた・・・
「2人とも握手でもすれば?」
「「へっ?」」
一刀からの一言に間抜けな返事をしてしまう明命と亞莎
「ほら、仲直りしたんだし・・・ね?」
そう言って、一刀は明命と亞莎の手を取って、握手するように促す
「ひぁっ////」
「はぅあ////」
しかし、当の2人は握手どころではない・・・
なぜなら、この2人・・・
異性からまともに手を握られたことなどない・・・
さらに一刀の凶悪的な笑顔をまともに見てしまった・・・
2人の反応を見て、3羽烏は確信した・・・
「「「(これは堕ちた・・)・」」」
と・・・
明命と合流してから、再び町の中を歩く6人・・・
しかし、一刀には1つ気がかりなことがあった・・・
「ねぇ・・・呂蒙さん?」
「ひゃ、ひゃい!?」
それは、一刀の少し後ろを明命と共に並んで歩いている亞莎のことで・・・
「呂蒙さんって・・・もしかして・・・その眼鏡、度数が合ってないんじゃないかな?」
「えっ!?な、何故ですか?」
「いや、さっきもだったけど、結構すれちがう人にぶつかってるよね?・・・だから、もしかしたらあんまり見えてないんじゃないか、ってね」
確かに、亞莎の挙動はおかしかった・・・
だいたいの人が人ごみをよけるようにして歩いているのに、亞莎だけはまるで吸い寄せられるかのように人ごみの中に身を投じている・・・
亞莎は一刀の正確な指摘に素直に答えた
「・・・は、はい・・・そ、その通りです・・・実は・・あんまり・・」
亞莎からの答えを聞き、考え込む一刀・・・
「やっぱりか・・・ん~・・・・・・凪、真桜、沙和、ちょっと寄り道してもいいかな?」
「沙和は何でもいいの~」
「はい、構いませんけど・・・」
「何かやることあるんか?」
「うん、このままじゃ呂蒙さんが危ないからね。眼鏡を買いに行こうかなって」
「「「あ~」」」
「「えっ!?」」
明命と亞莎は驚きの声をあげ・・・
3羽烏は、ある程度は予想していたのか、納得、といったような声を出す
「そ、そそそそそんな!い、いいいいくらなんでも悪いです!」
「でも、怪我してからじゃ遅いしね。祭りの間に町に来ないってことはないと思うし、普段の生活も大変なんじゃないかな?」
「で、でも・・・「亞莎ちゃん」・・えっ?」
「隊長って普段は弱弱だけど、こういう時はすっごく頑固なの。だから気にしなくてもいいの」
「せやな~。隊長、女のこととなると性格変わるからな~」
「亞莎様、私もこの機会にしっかりとした眼鏡に換えられた方がいいと思います」
「・・・うぅ」
「あ、亞莎・・・」
悩む亞莎・・・そして、その横でオロオロしている明命・・・
そんな2人を見て、一刀は何かを切り替えるように、パンッ、と手を打った
「よしっ!とにかく行こう!凪、真桜、沙和、呂蒙さんと周泰さんを頼んだ!」
「はい、了解です」
「了解や!」
「わかったの~」
ギュッ
「「へっ?」」
亞莎と明命はいきなり両側から、腕をつかまれ戸惑ってしまう
「さぁ、行きましょう」
「急ぐでー」
「さぁさぁ、なの~」
「「へっ?・・・えええぇぇぇぇぇ!?」」
こうして・・・
わけも分からないうちに、亞莎と明命は半ば強引に引きずられながら、眼鏡屋に向かうことになってしまった・・・
「いや~この世界にも結構眼鏡ってあるんだな~」
眼鏡屋からの帰り道、一刀は眼鏡屋での興奮がまだ冷め切っていなかった
「隊長、興奮しすぎやで・・・」
「危ない人だと思われるの~」
「・・・隊長・・・」
「な、なんだよ?本当に驚いただけなんだって!」
そんな一刀を少し後ずさりながら見ている3人・・・
一刀はそんな3人の態度に諦めたのか、はぁ~、とため息をつき、さらに後ろにいる2人に話しかける
「それにしても同じような型があって良かったね」
「は、はい!一応、色々と細かい調整があるみたいなので取りに行くのは明日以降なのですが・・・あの・・・本当に良かったんですか?」
「えっ?何が?」
「その・・・代金・・・出してもらって・・」
そうなのだ。一刀は何を思ったか、亞莎の眼鏡代を全部支払ったのだ
「うん、別にいいよ」
「で、でも・・・」
さすがに額が額なだけに戸惑う亞莎・・・
「ん~・・・・・・あっ!じゃあさ、ゴマ団子作ってくれないかな?」
「えっ?」
「凪たちに聞いたんだけど、呂蒙さんってゴマ団子作るの上手いんだってね?俺、あれ好きなんだよね~。昨日、こっちに帰ってきたばっかで、食べてないからさ。良かったら、いつでもいいから作ってくれないかな?」
「・・・えっと・・・その・・・」
「だめ・・・かな?」
「!?」
亞莎は恥ずかしげに俯かせていた顔を上げたときに再び見てしまった・・・
そう・・・
あの凶悪的な笑顔を・・・
「・・・・・・・・・たら」
「んっ?」
亞莎が呟いた言葉に反応する一刀・・・
「わ、私なんかが・・・・作ったもので・・・良かったら//////」
顔を赤くさせながらもどうにか、亞莎も言葉を搾り出した
「うん、楽しみにしてるよ」
そして、そんな亞莎からの返事を聞き、一刀も満足げに言葉を返した
「あっ、そうだ!周泰さん」
「はぅあ!?な、何でしょう?」
亞莎との一連のやり取りが終わった直後、一刀は何かを思いついたようで、亞莎の横にいた明命に突然声をかけた
「あっ・・・と・・・驚かせてごめん。あの・・・お礼言わなくちゃと思って・・・」
「お礼・・・ですか?」
「うん。刀・・・届けてくれたでしょ?・・・本当にありがとう・・・あれ・・・本当に大切なものだから・・・」
そう言って、一刀は深々と頭を下げた
「い、いえ、どうかお顔を上げてください・・・。そうですか・・・やっぱり御遣い様のだったのですね・・・良かったです・・・」
明命の言葉に一刀は頭を上げた
「うん。あれは、大切な人からもらった刀なんだ・・・。だから、凄く感謝してる・・・。それでさ、お礼といっちゃなんだけど・・・・・・これ」
「?」
そう言って、手に持っていた袋を明命に差し出した
「これ・・・開けてみても良いですか?」
「うん、気に入ってもらえたらいいんだけど・・・」
一刀からの確認ををとり、袋の中をのぞくとそこには・・・
「はぅあ!お、お猫様!!」
本物の猫サイズの人形が入っていた
「みんなで眼鏡を選んでた時に、隣の店で見つけたんだけど・・・。周泰さん、猫が好きみたいだから・・・どうかな?」
一刀も明命の反応を伺うと・・・
「だ、大事にします!!もう周家の家宝にします!!」
「いや、そこまでしなくても・・・」
目をキラキラとさせ、抱きしめながら、喜びを表していた
「ありゃ?北郷様じゃねぇか?」
「えっ?って、おっちゃん!やっぱり酒呑んでたのかよ!」
ちょうど明命に人形を渡し終えた時、一刀は呑み屋の中から聞き覚えのある声を聞いた
何だろうと思い、中をのぞくと饅頭屋の主人がいた
「へっへっへー、なぁーに今年は北郷様が帰ってきてくれたんだ!これが祝えなくて何を祝うってんだよ!」
そう言って、注がれていた酒を一息で煽った
「そう言ってもらえるのは嬉しいけどさ・・・・・・おばちゃん・・・怒ってたぞ?」
ピタッ、と動くを止める饅頭屋の主人・・・
「か、かあちゃん・・・が・・・?」
「うん」
今度は一気に顔を青ざめさせた・・・
「ひぇぇぇぇ!!お、親父俺はもう帰るからな!金はここに置いとくぞ!」
結局、そう言って呑み代を置いて、饅頭屋へと帰っていった・・・
「なんでぇ!慌しいやろーd・・・って、北郷様じゃねぇか!?こんなところにどうしたんだい?」
奥から出てきた呑み屋の主人が、一刀に気づき声を掛けた
「よっ!おっちゃん!いや~饅頭屋のおばちゃんに旦那さんを見かけたら、声掛けとくって約束したからさ。ほら、さっきの・・・」
「あ~、それでかい。どおりで慌ててると思ったよ・・・。まぁそんなことは置いといて・・・北郷様。アッシのおごりで一杯呑んでくれねぇか?」
そう言って、酒を注ぎだす呑み屋の主人
「いや、でも俺さ、今はこの娘たち連れてるから・・・」
そう言って、後ろにいた凪たち3人+明命・亞莎たちを指差す
「・・・北郷様・・・楽進様たちは分かりますが・・・また新しいおんn「違うよ!?」・・・本当ですかい?」
冗談交じりに言う呑み屋の主人・・・
一刀も即座に反応する
「あ~、もう分かったよ!・・んぐ・・んぐ・・んぐ・・・・ぷはー!これでどうだ!」
そして、話を誤魔化すかのように注がれた酒を一気に煽った
「「「「おぉーーーー(パチパチパチパチ)」」」」
あまりに良い呑みっぷりだったため、他にいたお客からも拍手が送られた
「はっはっはっ、さすが北郷様。良い呑みっぷりだ。でも、今度はちゃんと金払ってくれよ?」
一刀は呑み屋の主人から、そう言われて、朝の饅頭屋のおばちゃんとのやりとりを思い出して、噴出してしまった
「ぷっ・・・本当にこの町の人は逞しいよ。・・・今度は隊の皆と来るから、その時はよろしくな!」
「おうよ!」
そう言って、一刀は呑み屋を出て、またもや不思議な光景を見た・・・
それは・・・
「「//////」」
顔を赤くしながら、一刀を見ている明命と亞莎の姿だった・・・
「「・・・・・・」」
一刀が呑み屋で民たちと話している光景を信じられないといった表情で、明命と亞莎は見ていた
なぜなら・・・
天の御遣いと呼ばれる程の人物であるにも関わらず・・・
民と話すその姿勢は・・・
失礼な話だが、とても将とは思えない・・・
しかし、どうだろう・・・
一刀と話す民の顔は・・・
まるで十年来の友人と話しているかのごとく・・・
自然な表情をしている・・・
「驚き・・・ましたか?」
「「えっ?」」
横にいた凪が声を掛ける
「隊長の・・・あの姿に・・・」
「「・・・・・・」」
無言の肯定・・・
「あれが・・・北郷一刀様・・・です」
「「・・・・・・」」
「確かに隊長は・・・何も知らない者からしたら、ただの雲の上の存在でしょう・・・。しかし・・・実際は違います。例え、存在が雲の上であろうと・・・民が相手なら、隊長は常に同じ目線でいようとします・・・。民がどんなに小さなことで悩んでいても・・・決して面倒がらずに・・・一生懸命に悩んでいます・・・」
「「!?」」
明命と亞莎は呉ではどうであろう・・・と考える
自分たちなら・・・と・・・
いや、自分たちでは無理だ・・・
あれ程、民たちと打ち解けあうなんてことは・・・できない
呉でできるとしたら・・・
呉王”孫伯符”か宿将”黄公覆”ぐらいのものだろう・・・
しかし、その2人でも・・・
王と宿将という立場が否が応でも”壁”を作ってしまう・・・
目の前の光景はどうだろう・・・
壁なんか感じさせない・・・
冗談すら言い合える関係・・・
改めて感じる・・・
北郷一刀の名の重さを・・・
民たちの想いを・・・
そして・・・
自分たちの胸の高鳴りを・・・
「「//////」」
2人の顔が赤くなる
そして、その時・・・
一刀が呑み屋から出てきた
「「っ!?」」
まともに顔を見ることができずに俯く・・・
2人はまだ気づけない・・・
その感情が・・・
“恋”であることを・・・
「あ、あの!」
「んっ?」
呑み屋から離れ、しばらく6人で町を歩いていると亞莎から声が掛かった
「どうかした、呂蒙さん?」
結局、呑み屋での2人のことを聞けずに来たので、心配になりながらも声を掛ける
「わ、私たちは、一度宿舎に戻りますので・・・ここで・・・」
一刀も周りを見渡して、そこが城の近くだということに気がつく
「あ~そっか。俺たちはもう少し見て回るし・・・・・・うん、じゃあここで」
そう言って、2人と別れようとした時・・・
「あ、あの!」
「えっ?」
今度は明命から声が掛かった
「えっと~どうかした、周泰さん?」
「あ、あの・・・わ、わたしのことは明命とお呼びください!」
「えっ?」
そして、そんな明命に続くように亞莎も・・・
「わ、わたしのことも、どうか亞莎と呼んでください!」
「えっと・・・」
突然のことで一瞬驚いたが・・・
「・・・うん、分かったよ、明命、亞莎。俺のことは北郷でも一刀でも好きな方で呼んでよ」
と、すぐに笑顔で答えた
「「は、はい//////」」
明命と亞莎も顔を赤くさせながら答え・・・
「「ありがとうございました、北郷様!//////」」
と言って、2人は走り去っていった
「明命と・・・亞莎・・・か・・・・・・・んっ?」
2人が走っていった方向を見つめながら、2人のことを思い返していると・・・
「「「(じーーーー)」」」
という視線を感じた
「えっと~・・・何?」
そう言った瞬間、3人から言葉が返ってくる
「何?・・やあらへんやろ!隊長、明命たちに甘すぎやろ!」
「そうなの~。沙和だって、何か買ってほしいの~」
「あ、あの・・・隊長・・・できれば・・・その・・・」
当然の抗議だった・・・
「わ、分かってるよ!華琳からもらったお金もまだあるし・・・。よしっ!もうこうなったら好きなものおごってやる!ついて来い!!」
「よっしゃー」
「わーい、なの~」
「お供します!」
半ば自棄になった一刀によって、4人は再び町に繰り出し、財布が必要なくなる程にめいいっぱい楽しんだ・・・
朝からずっと駆け回った・・
4人で過ごすとても騒がしい1日・・・
しかし、これが・・・
3羽の烏が求めた・・・
------あるべき日常の姿------
時刻は現代でいう午後11時ごろ・・・
一刀は町から帰ってきて早々、華琳から部屋に呼ばれ、床に正座をしていた
「・・・一刀・・・」
「・・・はい」
「・・・なぜ・・・こうなっているか分かっているかしら?」
チャキ
「ひぃっ!?さ、さぁ・・・な、なんでだろ?」
首にあたる感触に怯えながらも、どうにか言葉を発する
「そう・・・・・・ならば、そんな無能なあなたに教えてあげましょう・・・」
「・・・お願いします」
「・・・それはね・・・一刀・・・」
優しい口調から一変、少しの怒りを込めながら・・・
「あなたが私が与えたお金を”たった1日”で、全て使い果たしたからよ!!」
「ひぃぃっ!!」
耳に響く怒声・・・
「私は祭りの間の分として渡したのだけれど・・・いったい何をしたらこんなに使うことがあるのかしら?」
「いや、うん・・・色々と・・・ね・・・」
「色々・・・ね・・・。まぁいいわ・・・それは後でしっかりと報告書として提出しなさい。・・・いいわね?」
「うぅ~・・・はい・・・」
報告書ということで、うなだれる一刀・・・
しかし、華琳の用件はこれだけではなかった・・・
「それと、聞くところによると、明命や亞莎とかなり仲良くなったらしいじゃない?」
「えっ?うん・・まぁ、真名は許してもらったけど・・・・・ッ!!」
一刀の言葉を聞き、さらに不機嫌になる覇王・・・
「一刀・・・あなたって男は!!」
「えぇっ!これ怒られることっ!?」
「うるさい!!ばか、ばか!!」
ゲシッ、ゲシッ!!
「痛い、痛い!・・・って・・・あれ?」
華琳から蹴られていた一刀だったが、一瞬華琳からの攻撃が止んだので顔を上げた・・・
瞬間・・・
「んっ!!」
「・・・んはっ・・・んっ」
華琳の唇と一刀の唇が交わった・・・
「・・・んはっ・・・か、華琳?・・・」
「んっ・・・一刀」
お互いに顔を離し、見詰め合う
「一刀・・・改めて問うわ・・・」
「えっ?・・・あ、あぁ・・・」
「一刀・・・あなたは・・・誰のもの?」
「!?」
それは3年前にされた質問・・・
一刀と華琳が想いを交し合った時の質問・・・
一刀にとって、その答えが変わることなどありえない・・・
だから言う・・・
もちろん・・・
「俺は・・・華琳のものだよ・・」
・・・と
「そう」
一刀の答えを聞き、満足げに微笑む
「分かっているなら・・・いいわ」
そして、体を離した
「・・・あれ?・・華琳?」
「何かしら?」
「えっと・・・続き・・・は?」
「・・・はぁ~・・・あなたね~」
一刀の言葉に呆れたように答える
「あなたは私のものよ。それは間違いないわ。でも・・・・・・今日は”あの娘”たちがいるでしょ?」
「あの娘たち・・・・・・あっ!?」
一刀も気づく・・・
今日一日・・・共に過ごした女の子たちを・・・
「早く行ってあげなさいな・・・。きっと・・・待ってるわよ・・・」
「あ、あぁ!そ、それじゃあ!」
一刀はすぐに立ち上がり、自分の部屋へと急いだ・・・
そのため・・・
一刀が部屋を出る直前に華琳が呟いた”ばか”は聞こえなかった・・・
「・・・・・・」
ガチャ
部屋の前に立ち、ドアを開けた
「・・・お前たち・・・」
「「「隊長」」」
部屋の中には予想通り、凪、真桜、沙和の3人が・・・
「待っててくれたんだ?」
一刀の言葉に顔を赤くする3人
「大将のところに行ったからどうなるか分からんかったけど・・・一応・・・な」
「「(コクコク)」」
真桜が口を開き、凪と沙和がそれに頷く・・・
「そっか・・・ありがとな・・・」
ギュッ
「「「!?」」」
そんな3人のことが愛しく思えて、まとめて抱きしめる
「「「//////」」」
3人も抱かれるがまま、目を閉じて、温もりを感じる・・・
「隊長・・・ウチらずっと待ってたんやで・・・今日みたいに・・・隊長がいる日常ってもんを・・・。せやからな・・・」
「沙和たち、ご褒美が欲しいの。3年間、頑張ってきたから・・・」
「隊長・・・抱いて・・・ほしいです・・・」
3人の願い・・・
「・・・・・・あぁ」
断る理由なんてない・・・
なぜならそれは・・・
一刀自身も・・・
求めていた日々・・・
そして・・・
求めていた愛しい女の子たちだったから・・・
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遅くなりました!申し訳ないです!
書いてるうちに結構長くなっちゃって・・・。
今回は祭り2日目!(ちなみに1日目は一刀君帰還の日です)
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