「週末、遊びに行くですヨ!」
脈絡もなく葉留佳さんに誘われた。
脈絡のないことは、いつものことなので気にするだけ
無駄だ。
待ち合わせ場所の校門に着いて、僕は目を疑った。
なぜか、そこには二木さんがいたのだ。
しかも、たまたま居合わせたのではなく、明らかに人
を待っているようだ。
とりあえず、声をかけてみよう。なんてかけようか。
「おにぎりをパンに挟みます」
「はっ?」
なぜ、こんな言葉をかけたのか自分でも意味がわから
ない。
「何で、直枝がいるのよ……」
ひどい言われようだ。
僕が、「葉留佳さんに誘われたから」と答えると、二
木さんはただ短く「そう」とだけ答えた。
それから少したって首謀者?の葉留佳さんが現れた。
「やーやー、お二人ともそろってますネー」とのんきに声をかけてくる。
間髪いれずに「何で、直枝がいるのよ……」と僕に言ったことを葉留佳さんにも言った。
「私が誘ったからですヨ」とあっけらかんと葉留佳さんは答えた。
二木さんはため息をついた。
「私は帰るわ、直枝と二人でいきなさい」
「えー行こうよ、お姉ちゃん」
「僕のことが気に入らないなら、僕が帰るよ」
「なっ、誰もそんなこと言ってないじゃない!」
あまりに大きな声だったので、僕と葉留佳さんは驚いた。
少しの沈黙の後、二木さんは小さな声で「わかったわ」と短く答えた。
それを聞いた、葉留佳さんはとてもうれしそうだった。
葉留佳さんを先頭に、僕たちは商店街に向かった。
着いてすぐに「ここで、何をするのよ……」と二木さんはため息混じりに呟いた。
突然「はるちん、お手洗いに行ってくるー」と言って、消えてしまった。
二人で気まずいながら待っていると、不意に携帯が鳴った。
葉留佳さんからのメールだった。『お姉ちゃんをよろしくね!』とただ簡潔に書かれてい
た。(どうしろと……)返事は出さずに、恐る恐る二木さんに聞いてみた。
「このまま、待っててもアレだし移動しない? 葉留佳さんも携帯持ってるわけだし、連
絡は取れるよ」
「アレって何よ、でも、そうねここで待ってても葉留佳はこないような気がするわ」
二木さんはさっさと行ってしまった。僕はあっけに取られて出遅れてしまい、あわわて後
を追いかけることになった。
特に会話もなく、店を転々としていたら、突然僕のおなかがなった。
それを聞いた、二木さんがため息をついた。
特に希望がなかったので、近場のファーストフード店に入った。
二木さんは慣れていないらしく、少し手間取っていた。
会話もなく無言で食べていた。二木さんの方を見ると、トレイにピクルスが乗っていた。
食べ終わって、店を出たあと、すぐに疑問に思ったことを聞いた。
「ピクルス苦手なの?」
「っ、悪かったわね、味覚が子供っぽくて!」
別にそんなことは言ってない。
顔を赤くして言った事に僕は「かわいいね」と本心をそのまま口に出していた。
「なっ!直枝なんかしらない!」と踵を返して二木さんは歩き出そうとしたが、バランス
を崩した。
とっさに助けようとして、腕をつかんだが支えきれず、二人とも倒れてしまった。
状況を理解して、僕はあわてて立ち上がりすぐに「ごめん」と謝ったが返事はなかった。
二木さんがため息をついた後「助けようとしてくれたことには感謝するわ、ありがと」と
言った。しかし「でも、女の子一人支えられないなんて情けないわね」とも言われてしま
ったけれど……。
帰ろうとしたときに葉留佳さんが現れた。嬉しそうに携帯を掲げている。
二人で意味がわからず呆然としていたが、不意に葉留佳さんの携帯に写真が表示された。
そこには先ほどの倒れたときの写真が表示されていた。
「なっ!」二木さんは絶句した。
二木さんに「消しなさい!」と言われたが、葉留佳さんは走っていってしまい、二木さん
も「待ちなさい!葉留佳!」と叫びながら後を追いかけていってしまった。
僕は二人を微笑ましく思いながら、「まってよー」と二人の後を追いかけた。
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