真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-
第53話 ~ 舞い募る想いは、美しくとも、時に悲劇を生みださん ~
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋
得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)
神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術
最近の悩み:某日、某屋敷にて
甘く、心休まる匂いに、 下から感じる暖かい柔らかな感触に、 左手を引っ張ら
れるも、掌にちょうど良い大きさの、柔らかな感触に、 そして、頭と下半身を包み
込むように固定された感覚に、 俺は、母親に抱かれた赤子のような心地良さを感じな
がら、意識が深い眠りから、浮上するのを感じる。
そうだ、昨日は、また翡翠に見っとも無くも、泣きついて、喚いてしまったんだ。 そ
うか、そのまま俺寝てしまったのか、そう思い出し、目を開けると、
「・・・・・・・・・・っ!」 とんでもない事態になっていた。 俺の顔を包む柔らかなものの
正体は、翡翠の胸とお腹で、左手は何故か明命の胸に手を当てていた。 ・・・・なんで?
と思う反面、その感触と、彼女達の匂いに、頭が沸騰しそうになる。 とにかく二人が
目を覚ます前に抜け出さねば、 と思ったのだが、びくともしない。 頭は翡翠の両手
で抑えられ、 左手は、明命の手によって、胸に押し付けられていた。 そして絶望的
なのが、下半身を、明命に何時かの抱き枕のように、足を絡ませられ固定されていた。
・・・・ど、どうしよう?(汗
そ、そうだ、開いている右手で、なんとか気づかれないように、抜け出すだけの隙間を
作ってやれば、 まずは翡翠の腕を、力の支点を逸らすように、良し、この調子なら、
グイッ 「へ?」 何とか、隙間を広げて頭を抜け出すだけの空間を作った所に、突然
翡翠の腕が、俺の頭を引き寄せ、その慎ましい胸に俺の頭を押し付ける。 俺の頬に、
翡翠のそれの感触が、確かに伝わる。 そして、その柔らかさの中に、かすかに感じる
堅い突起物の正体は、・・・・・・・・・・駄目だ考えるなっ、 思考を虫のようにするんだっ。
考えたら敗北するぞっ
慌てるな、落ち着け、状況は悪化したけど、まだ幸い右手はまだ自由が利く、 なら、
同じ事をして、もう一度抜け出す隙を作れば良いだけだ。 こう、膝を下から上げる様
に グイッ 引っ張られる感覚と共に、左手の掌に感じていた、危険な感触が無く
なったと思ったら、左手が、暖かくてスベスベで、吸い付くような感触に、包まれる。
『ごくりっ』 その感触に生唾を飲みながら、その正体が分かっていながら、確認する
ために、翡翠に固定された頭のまま、何とか覗き込む。
・・・・・・・・『ごくりっ』 明命のむき出しの太腿に、俺の手が埋もれるのを確認し、もう
一度、無意識に生唾を飲み込んでしまうが、そこで我に返る。 って、明命其処は駄目、
女の娘が、そんな所に他人の手を導いちゃいけません。 て言うか近いっ、何処に近い
かは、考えたくないけど、小指に触れる生暖かい布の感触って、まさかっ!?
ねぇ二人とも起きてないよねっ!? 俺をからかっていないよねっ!?
ぬぉぉぉぉおぉぉっ! 耐えろ北郷一刀っ そして早くこの事態を何とかするんだっ!
って息子よ! 朝だからって、そんな元気になっちゃいけませんっ! 別の意味でも
かつて無い程、危険な状態に陥っている俺は、益々焦るばかり。
そうだっ、二人を起こせば怒られたとしても、この事態から・・・・駄目だ翡翠の寝起きの
悪さは天下一品、寝惚けて更に最悪な事態になりかねない。 なら、悟りを開けばって、
今まで開けなかったものが、急に開けるわけ無いだろっ! 誰かこの事態を何とか出
来る奴は居ないのかっ!? 『さぁ漢女の道を共に極めようぞ』と、何故か脳裏に怪し
げな姿の男の声が聞こえたが、それは人間を捨てるのと同義と、これまた何故か俺の本
能が告げる。 ふっ、ふふふふふっ、そうだよな、耐えるから苦しいんだ。 この苦し
みから解放されたいのなら、我慢したら駄目なんだ。 二人には後で幾らでも謝ろう。
許してくれないかもしれないけど、謝り続けよう。
俺は、唯一自由になる右手を使い、脳が告げる命令を実行する覚悟を決める。
「任務、了解」 トスッ
俺は自らを点穴し、意識を手放す。 そう、二人が目を覚ますまで、気絶してしまえば、
良いだけなんだ。 二人が目が覚めた時、俺の姿に傷つくかもしれないけど、俺に意識
が無ければ、今の事態に傷ついたとしても、最小限に抑えられる・・は・・ず・・・・・・ガクッ
(今後順序公開)
翡翠視点:
りーーん
りぃーーん
鈴の音が、私の記憶を呼び起こします。
一刀君の舞が、あの時の情景を今だけ、取り戻させます。
両親が生きていた頃の、あの日々、
何にでも興味を持つ妹、
引っ込み思案で、気がつくと、すぐに一人になってしまう末妹、
そんな二人を、忙しい両親の変わりに面倒を見るのが私でした。
別にそれを不満思った事は在りません。
偶に連れて行ってもらった川辺で、
三人で戯れるのを、両親が優しい笑みを浮かべて、見守っていてくれましたから。
街の雑踏の中、家族でお祭りに出て、気がつくと、居なくなっている末妹を、皆で探し回る。
そんな、何処にでもあるような家族と日常、
それが幸せで、楽しかった日々、
もうあの日に帰る事は出来なくなってしまった。
今は今で楽しい家族が居ます。
それでも、やはりあの日の光景を、想いを忘れる事なんて、出来はしません。
やがて、鈴の音が鳴り止み、一刀君の舞が静かに終わりを迎えます。
久しぶりの一刀君の舞は、相変わらず、人の心に訴え、魂を揺さぶる様は、
比較的見慣れている私でも、涙が溢れる事を止める事が出来ませんでした。
それでも、何とか、涙を流す事だけは押し止め、舞の余韻を、強引に息と共に吐き出します。
まったく、これで本気では無いだなんて、信じられない話です
とにかく、私の仕事は、袁術や袁家の老人の腹を探る事、
舞の余韻に浸っている場合ではありません。
周りを見渡せば、袁家の老人達は、素晴らしい舞を見せた一刀君を、
多少は感動はしているようですが、それ以上に、嫌らしい下衆な目で眺めていました。
・・・・・・此処は、本当に相変わらずですね。
そして何故か、この城に来ていた曹操は、平静さを装っては居ますが、
その瞳が濡れている事は、隠しきれていませんでした。
乱世の奸雄、
そういう風評がありましたが、とてもそれだけのように見えませんね。
人並み外れた高い自尊心と誇りと能力、そして確たる信念に基づく行動の結果が、彼女をそう評させてしまうのでしょう。
やがて一刀君が、今度は袁術と張勲と共に、舞を始めます。
張勲の二胡に、
袁術の歌声に、
合わせるように一刀君は舞って行きます。
二人の影響でしょうか、今度の舞は、先程ほど、影響を与えるようなものではなく、
見る者が、普通に楽しめる程度のものでした。
しかし、袁術にしろ張勲にしろ、こんな趣味を持ち合わせている等、正直意外でしたね。
まぁ意外であろうと都合がいいです。 これなら、先程とは違い、普通に探りを入れられますから、
下卑た目で、私の身体を執拗に見詰め、
気持ち悪い手の動きで、私に触れようとしてくる袁家の老人を、適当にあしらいながら、
情報を聞き出して来ましたが、(・・・・・・・・・・この人、本当にしつこいですね。 うんざりします)
確か、老人達の代表の息子さんですが、この執拗さから、そう言う趣味の人間のようです。
もしかすると、袁家の老人と言う立場を利用して、本当に年端もいかない娘に、手を出しているかもしれませんね。
「話、いいかしら」
いい加減うんざりしていた時、私に声を掛けて来たのは、意外にも曹操でした。
彼女とは特に接点は無かったはずですが、こんな席です。
下種な袁家の老人達とは、話す気になれなかったのでしょう。
それに、囲まれて話すもの嫌なようです。
視線で、離れた壁を指して来ましたので、折角ですので、一度話してみる事にします。
ちなみに、先程の老人は曹操に睨まれ、逃げるように離れていきました。
所詮、一方的な立場でなければ、まともに話せないような、下らない人間です。
あんなのが、一刀君と同じ男だなんて、考えたくもありません。
「邪魔して悪かったわね」
「いいえ、たいした話は出来ませんでしたから、むしろ良い機会でした」
やはり、この人は油断なら無い人です。
言葉の額面を見れば、話を邪魔した事への謝罪、ですがその目が語っている言葉の意味は別物です。
私達の目的を見抜き、短い言葉で、謝罪という形で、それを伝えてきます。
もっとも私の方も、すでに老人達が、私達をさほど警戒していない事が分かったので、
その謝罪を受けると言うのも変なので、私も曹操を試すつもりで答えましたが、
曹操は、そんな私を面白そうな瞳を浮かべて、見詰め返してきます。
そして、
「彼女の舞は見事なものね。
彼女、たしか大喬と名乗ったかしら、・・・・・・なら、小柄な貴女は、さしずめ小喬と言った所かしら」
そう言ってきました。
『名乗ったかしら』『貴女は、さしずめ小喬』と、
曹操は一刀君、大喬ちゃんの正体を疑っている・・・・・・いいえ、少なくとも曹操の言い方は、大喬ちゃんが私達の息の掛かった人間だと確信しています。
おそらく状況から、そう判断したのでしょう。
それ自体は、ある程度頭の回るものなら、そう考えるはずです。
もっとも、それは、一刀君の能力を知らなければです。
一刀君の、いいえ、大喬ちゃんの料理やお茶の腕、信じられないような舞、そして美貌と礼儀作法、
これが、隠れ蓑になって、普通はその答えに辿り着きません。
それ程の者を抱えていたなら、噂にならないはずが無いからです。
それでも、其処に辿り着いた。
・・・・・・・・固定概念に囚われない頭の柔らかさを、持ち合わせていなけば出ない答えです。
曹操・・・・・・都で身分を問わず、罪人を捕らえていたと聞いていたので、
もっと頭の固い人だと思っていましたが、・・・・・・どうやら、考えを改めた方が良いですね。
「ふふっ、お褒め頂くのは嬉しいのですが、私は、あんなに美人ではありません。
それに、これでも、彼女より年上ですから」
とりあえず、曹操の慧眼に驚きはしましたが、私は白を切って見せます。
こんな事で、一々動揺を正直に見せていたら、雪蓮様たちの足を引っ張ってしまうだけです。
それに、一刀君が傍に居る以上、そんな失態は見せられません。
そもそも曹操にとって、それは事を本当に知りたい訳では無いでしょう。
私達の目的を袁術達にばらして、得が無いとは言いませんが、曹操の誇り高さからして、それは有り得ません。
彼女の目的は、たぶん私、・・・・・・どの程度の器なのかを見ようと言うのでしょうね。
なら、孫呉の悲願を果たした後の事を考えれば、舐められるような事はできません。
次はどんな一手を打って来ます?
曹操の評判からして、これ以上小手先の一手等打たず、懐深くに斬り込んで来る筈、
そんな一手、・・・・・・・・・・・・駄目ですね情報が少なすぎます。
なら、どんな事態にも対応できるように、心構えるしかありませんね。
「私が今日此処にいるのは、袁術と取引をしに来たの。
神速の張遼を、兵二万と糧食三ヵ月分を代価に取引したわ」
曹操の見せた札は、私は驚かせ、声を挙げそうになるものでした。
ですが、これはただの揺さぶりに過ぎ無いはずです。
此処で揺らいでしまえば、隙を見せれば、曹操はつんまらない者と判断し、
遠慮無しに、此方を喰い千切って来るでしょう。
だから、
「それは、袁術様にとって、良いお話だったと思います」
微笑みながら、そう言ってあげます。
その程度では私達は揺らがないと、強がって見せます。
戦場では、穏ちゃん程軍才が無いため、私は軍師と言っても、そう出撃事はありません。
戦場で剣を持って、策を持って斬り込めない代わりに、
私は、政で斬り込みます。
言葉で、
心で、
礼節で、
信念で、
相手に斬り込みます。
そう、政の場が、私にとっての戦場、
朱里や一刀君のように、何処でも揮える才は、私には無いけど、
政では、私は二人にだって負けたりしません。
これが、私が雪蓮様達のために、 私の夢のために、
磨き続けてきた『 力 』なのですからっ、
だから曹操、貴女に私の底なんて見せてあげません。
例え上げ底でも、
例え底なんて無かろうと、
それを貴女に、教えてなんて上げません。
そんな私を、曹操は少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべると、
「先程の料理と舞のお礼に、もう一つ良い事を教えてあげるわ。
袁術に足元を見られてね、取引には成功したけど、張遼は三ヶ月は、袁術の臣下のまま、
この意味、分かるわよね」
・・・・・・・・驚きました。
曹孟徳、この人は、本当に誇り高い人なのですね。
そして『 乱世の奸雄 』そう評される訳です。
私を試すため、 試した詫び、 言葉通りのお礼、 王としての器を見せるため、 そして牽制と忠告、
それら全てを同時に、私に示して来ました。
なら、私もそれなりの礼を持って返さねばなりません。
そうでなければ、私だけではなく、雪蓮様の名に傷をつける事になります。
「何のことか分かりませぬが、興味深いお話、お礼申し上げます」
そう、小さく頭を下げます。
この場で振える、相応しい言葉と態度で、
曹操が此方を気遣っての、言葉と態度で示して来た以上。
その心遣いに反する真似は出来ません。
ですが、大切な情報と忠告を頂いただけの誠意を籠めて、曹操に頭を下げます。
曹操と話している間に、一刀君達の舞は終え、
一刀君自身は、いいえ、大喬ちゃんは、下種な考えの袁家の老人達に、囲まれています。
・・・・・・・・・・さすがに、ああ言う対応は出来ないようですね。
大喬ちゃんの老人達の対応に困った様子は、私を少しだけ、ほっとさせました。
まぁ、値踏みする様な好色な視線 と 嫌らしく伸ばされる手を、慣れた様子で対応されたら、それはそれで複雑です。
それにしても、あんなに艶のある雰囲気で、困った表情をしても、あの人達は喜ぶだけと言うのに、
・・・・・・仕方ありませんね。
もう調べるべき事は調べました。
なら、ここに長居をしても危険なだけです。
一刀君を老人達から助けて、引き上げる事にしましょう。
そう思った時、すでに彼女は動いていました。
夕霧に霞む銅雀台、
美しき塔の主は、夢を見る。
其処に住まいし姉妹は、美しき美貌の持ち主。
その美貌の前には、月も光を消してしまい、花も恥じらってしまう。
其処に住まうは、素晴らしき舞姫、その舞は荒ぶる者をすら、その心を酔わす。
其処に住まうは、素晴らしき詩姫、その詩は、道に迷う者達を、救い導く、
二喬を侍らせし主、その詩に、その舞に、多くの民を平穏に導いて行く。
二喬を穢せしもの、生まれた事を後悔する事になる。
塔の主は、其処で目を覚ます。
塔の主は、思う。
今のは夢なのか、
それとも、近しき己が運命なのかと、
塔の主は、思う
夢ならば、運命ならば、
己が手で引き寄せて見せると、想いを天に捧げん
彼女の詩の後、私は一刀君を連れて早々に場を後にします。
・・・・・・・・・・宣戦布告、いいえ予告
詩の内容からして、どうやら一刀君の正体も、私が思っていた以上に、見破られているようですね。
そして、いずれ孫呉が魏と戦うのは運命だと、
その時は、一刀君も、そして私も手に入れると、
曹操は、そう告げたのです。
今回の謁見、・・・・・・・・有益な情報を得た代わりに、より厄介な事態を、招き寄せたかも知れませんね。
なんにせよ、帰ってから、雪蓮様達と相談しなければいけません。
ですが曹操、覚えて置いて下さい。
私は、多くの兵を、取引の材料にするような人に仕える気はありません。
それに、孫呉は貴女に負けません。
一刀君も、私が守って見せます。
借り切った宿に戻り、私と一刀君は、そこで一息入れます。
今日は、流石に疲れました。
朝から、一刀君のかなり高い技術と、神経を要求するような料理の手伝いに始まり、
袁家の老人達の相手に、曹操との会話、・・・・・・・雪蓮様の溜めに溜めた、数日分の仕事の山を処理する方が、何倍も楽ですね。
ぽちゃん
湯船の中に、天井の水滴が滴り落ち、
その音で、私は気持ちを切り替えます。
こうして、まともにお風呂に入れるのは、昨日と今日だけ、
後は南陽の街に帰るまでの数日は、水を染みこませた布で拭くか、
大たらいに入れたお湯で行水をするだけです。
此処までの旅程では、一刀君と同じ部屋や天幕で寝ていました。
最初は別々を要求して来ましたが、一刀君の女装を隠す為には、徹底しなければ行けない、と説得しました。
以前、丹陽からの旅程でも、似たような事をしていましたから、抵抗されるとは思いもしていませんでしたので、問い詰めた所、
理由は、明命ちゃんの寝相に在りました。
あの娘は、気を抜いて寝ていると、抱き癖が出てしまうのですよね。
前回の行軍中、一刀君と明命ちゃんが同じ天幕で寝ていた事は、明命ちゃん自身から聞いています。
もちろん男女のそれが、何もなかった事も、
一刀君の勘違いした決意と忍耐力も呆れるばかりですが、
そのおかげで、罪悪感に囚われすぎる事が無かったと思えば、そう悪い事ばかりではありません。
私は寝起きは悪いかもしれませんが、寝癖は悪くありませんので、そういう心配は無いと、一刀君に納得させました。
そもそも、今までに、私の膝やお腹の上で、何度朝を迎えたと思っているんですか、失礼です。
そんな訳で、一刀君とは何にもありませんでしたが、一緒に寝て来ました。
時折、一刀君が顔を赤くしている辺りは、
一刀君の私に対する見方が、以前の旅程の時と比べて、大きく変わって来ている現われなのでしょうね。
ふふっ♪
なんにせよ、今回は、それなりの収穫がありましたが、あれ以上は不審がられますし、危険も増します。
とにかく任務を無事に終え、一刀君も気が少し抜けている時です。
私と同じ部屋で寝る緊張も、今までの旅程で大分無くなっているはずです。
今夜が絶好の機会です。
今回の話を、雪蓮様から聞いた時から、今夜を狙っていました。
隣の部屋は、今回必要だった荷物を一時的に、仕舞っておく部屋にしてありますが、今は殆どが馬車に詰まれて居ます。
つまり護衛の兵達に、気兼ねする必要もありません。
それでも一応、労いのお酒と一緒に、言い含めておきましたから、万が一の心配も無いでしょう。
私達の部屋にも、少しだけ用意してありますから、雰囲気を作るための準備も万全です。
私の方も、身体を何時も以上に、磨きあげました。
問題は、一刀君の私達を穢したくないと言う想いと、
自分の気持ちに気がつかずに耐えている、忍耐力ですが、
そのために、アレを手に入れたんです。
媚薬入りの香油
これを、各所に塗って同じ部屋に居れば、
私の汗と体臭の混ざり合い、次第にその効果を高めて行く遅効型のものですが、
その効果は男性に対しては絶大と評されています。
悟りを開いた僧や、そういう趣味の無い男性同士の方でも、最後には獣の様に求めてしまうという代物です。
その危険な効果故に、御禁制の品となり、もともと材料や製法の問題もあって、希少価値は更に高くなり、早々手に入る代物では在りません。
でも、それを私は手に入れる事が出来ました。
効果は、ほんの少し雌猫で試した所、盛の時期でも無いのに、多くの雄猫が奪い合いの喧嘩をする程でした。
これと私の魅力で一刀君の、忍耐力を崩してあげます。
私から押し倒す訳には行きませんが、一刀君からなら、そうは問題はありません。
問題があるとしたら、一刀君が罪悪感に襲わる心配ですが、頃合を見て私の気持ちを伝えれば、
心置きなく行為に入れるはずです。
どくんっ
どくんっ
全ての準備を終え、扉の前まで来ると、やはり緊張します。
はやる胸の鼓動を背景に、両の手が汗ばむのが分かります。
今夜こそ、私は一刀君と・・・・・・・・・・・・、
あぅあぅぁぅぁぅぁぅ・・・・・・・・
明命ちゃんには悪いですが、勝負だと言ったはずです。
もちろん、明命ちゃんの気持ちは知っていますし、
手段が手段ですから、独り占めする気はありません。
そのために、私も協力を厭わないつもりです。
でも、
ぁぅぁぅ・・・・・・、一刀君の初めては私が貰います。
「すーはー、すーはー」
一度深呼吸をして、少しだけ気持ちを落ち着かせ、
私は年上なのですから、一刀君を導いて上げ無ければいけません。
無論私だって初めてですから、自信はありませんけど、知識だけならあります。
一刀君・・・・・・、こんな手段ですけど、
私は、本当に一刀君と、
心の底から、結ばれたいと思っているんです。
一刀君が、私達のために、心を削っているのを見るのは辛いです。
一刀君の力になれるなら、どんな事でもしてあげたいです。
だから、自分の気持ちを誤魔化さないでください。
一刀君の中にある想いは、
気づかない振りをしている想いは、
私達を穢す様な物では無いんです。
だから、私を、私達を受け入れて下さい。
一刀君、貴方を心から愛しています。
「部屋、入りますね」
チュン
チュン
朝靄の掛かる中、
私は、気だるい疲労が残る身体を、
隣で眠る、愛しい人に委ねながら、目を覚まします。
まだ、鈍痛のように響く痛みと痺れ、
身体の中に残る異物感、
私はお腹に手をやり、
彼との愛し合った事を
結ばれた事を確認する。
何度も求められ、それを受け入れた。
隣では、まだ夕べの疲れが残っているのか、
子供のような顔で、眠る彼、
手段はどうあれ、確かに結ばれた私と彼、
その事に、私は涙しながら、幸せに浸る。
彼の温もりに、浸っていく。
「ふっ、ふふふふふっ」
そうなると思っていました。
私は、暗い笑い声を漏らしながら、朝をたった一人で、一睡もせずに迎えます。
夕べ部屋に戻った私を迎えたのは、甘い雰囲気に包まれた一刀君との一時ではなく、
『 ちょっと探って来ます 』
と木片に短く書かれた、書置きでした。
「・・・・・・やっ・・・・・やられました」
一刀君の、思いもかけない行動に、私は言葉を漏らしてしまいます。
何処に行ったかなんてのは、決まっています。
一刀君に、隠密の真似事が出来るなんて知りませんが、出来たとしても、今更驚きません。
どちらにしろ、一刀君を連れ戻す手段が、私にはありません。
一刀君が無事に戻って来る事を、信じて待つしか、手段はありませんでした。
待つしか・・・・・・・・・・、
それが、私にはとても長い時間でした。
あの後、香油の効果が、次第に私にも及びだし、
何時一刀君が帰ってくるか分からない中、
私は疼く身体を、奥歯を噛み締めながら、必死に我慢し続けました。
今は、もうあの悶える様な疼きも、身体の中に熱湯が入れられたような火照りも在りません。
ですが、それが本当に、とても長い時間のように感じられました。
そして今は、それに耐えた疲労感が、心身共に重く圧し掛かっています。
「ふふふっ」
一刀君は、私が今日の日のために、
どれだけ心を砕いて、準備をして来たと思っているんでしょうね。
あの薬を手に入れるために、どれだけ裏で手を回したか、
そして、どれだけ出費したと思っているんしょうね・・・・・・・・・・・・・・、
バキッ!
音に気がつき、視線をやると、据え置きの机が、私の置かれた手の圧力に、耐え切れず割れてしまいました。
いけません、また出費が増えてしまいましたね。
まぁ、いいです。
良くは在りませんが、いい事にします。
問題は、一刀君がこの間散々叱って上げたにも拘らずに、
あんな短い書置き一つ残して、私に黙って、独断専行をした事です。
「た・ただいま、 あっ、もう起きてたんだ」
そんな、少し罰の悪そうな声と顔で、私の気持も考えずに、一刀君が闇色の服を纏って帰って来ました。
「ふっふふふっ、一刀君、遅いお帰りですね」
「ひ・翡翠っ!? 漏れてる、なんか黒いのが漏れてるっ!?」
一刀君が、私の言葉に、何やら訳の分からない事を言って、部屋の壁際に後退します。
その顔は、何故か私を見るなり蒼白になり、小さく震えています。
さぁ、楽しみです。
一刀君が、一体今まで何をしてきたのか、
もちろん、それは、私に心配をかけ、私の苦労を無駄にし、
私と結ばれる以上に、大切な事なのでしょう。
「一刀君、どんな言い訳を聞かせてくれるか、とても楽しみです」
逃しはしませんよ。 一刀君、
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第53話 ~ 舞い募る想いは、美しくとも、時に悲劇を生みださん ~ を此処にお送りしました。
今回は、少しカオスに、黒朱里もとい、黒翡翠のお話でした。
脳の赴くまま書いていて、想いの余り暴走する辺りと耳年増辺りは、さすが姉妹、よく似ていると感じらせられました。
香油に関しては、無印の翠のイベントにあったものを参考に、少し変更して書いてみましたが、女の娘に茸生えたりする茸がある世界です。 こう言うのも在りかなぁと思いつつ、翡翠に持たせてみましたが、脳内の翡翠は、ごらんのとおり暴走してくれました(w
前半のシリアスさと翡翠の真面目な想いは、何だったのだろうと言う結果に、・・・・・・つくづくシリアスが似合わない自分を再認識しました
さて、冒頭のおまけの答えは、限りなく2に近い、7の自爆装置の作動でした(卑劣w
なんとなく、書いていて、頭の中にヒ●ロ・ユイの姿が浮かんだんですよねぇ。
次回は、一度だけならともかく、二度も放置プレイをかまして、温厚な人を怒らせてしまった、我等が主人公、一刀の視点のお話になります。
一刀が、翡翠の想いを無自覚にスルーにしてまで、行った先とは・・・・・・・、そして其処で見たものとは・・・・・・、
そして一刀は、暗く怒りに笑う翡翠の機嫌を取り戻す事が出来るのか(w
(・・・・・・・・・・と言うか、次回まで一刀復活できるだろうか・・・・・・・(汗 )
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
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『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。
曹操から驚きの情報を手に入れる事が出来た翡翠、
それは決して、誠意から得れる事の出来た情報ではなかった。
何れ来るであろう対決の時への宣言。
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