No.144574

真・恋姫†無双 十√ 20

kazさん

なんとかかんとか投稿

 休みがほしい…

登場人物多すぎてタグ書くのめんどくさくなってしまいましたw

2010-05-21 23:14:14 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:49841   閲覧ユーザー数:29009

 

荊州

 

赤壁での戦いはすでに終了し、今は戦後処理をするだけといった状態、

呉に降った五千の北郷軍の兵を冥琳などは自軍に組み込む為に尽力していた。

呉軍にしてみればすでに荊州ではもう何もする事はなかった、元々荊州軍を北郷より離反させ、

さらに北郷軍に敗北の文字を与える戦いでありそれはすでに成していた。

さらにここでの勝利の余勢をかって予州、徐州を奪うのが目的であり、

蓮華、思春、穏と兵三万はすでに赤壁を離れ予州、徐州攻略に向かっていた。

 

本来なら雪蓮達も共に行くはずであったが、雪蓮が何かを感じたのか、荊州に残る事を申し出たため冥琳と祭は兵数千と共に荊州軍に頼み込むと北郷軍追撃の名目で荊州に残り、陣を構えていた、

 

 

「ふう、まったく」

「ははははは!まったく面白い、面白いのう!」

 

雪蓮のいる天幕になにやら疲れた感じで入ってくる冥琳と大笑いして入ってくる祭、

その様子に興味深深の雪蓮が理由を尋ねる

 

「いや、北郷の降った兵達なのだが、おとなしく降る代わりに飯を寄越せと言ってきてな、腹を減らして凶暴になられても困るので与えたら食うわ食うわで追加を要求する始末、あまりにも図々しいと一喝すると”孫呉はなんと度量の狭い奴らか!これでは小覇王などと呼ばれる呉の王の度量もしれるというものよ!”と騒ぎ出す有様、結局事を収める為に飯を食わせるはめになってな、捕虜というよりはまるで我が軍の精鋭かのような振る舞いをする」

 

そんな話を聞いた雪蓮は笑みをこぼし、祭も思い出して大笑いをし、ただ一人冥琳だけが頭を抱えるのであった

 

「笑い事ではない、このままでは奴らは我等の食料を根こそぎ食らうかもしれんのだぞ!、

降伏とは名ばかりで中にあって我等を攻め滅ぼす気としか思えん」

 

「あはははは、さすがは一刀の軍ね、虜囚となっても全然卑屈になってないなんて」

 

「ああ、だからこそ強いのじゃ、真に強い兵というのはどんな状況にあっても戦う事を忘れぬ兵よ、

媚び諂い頭をたれるような者ならば強兵とはならぬであろうよ」

 

改めて北郷軍が大陸一の軍だと思い知らされる雪蓮達だった、そんな感じで楽しく語り合ってると近辺に放っていた細作の一人が酷く青ざめた様子で報告をしに入ってくる、その瞬間雪蓮は何かを感じ取ったのかそれを待ってたかのように立ち上がる、そして兵からの報告を聞く、兵は息を整え

 

「こ…、江陵付近で荊州軍と北郷軍の交戦を確認!!」

 

しかしこの報告には誰も興味を示さない、赤壁の戦い以降荊州軍による北郷軍への一方的な戦闘、

いや虐殺は何度も報告を受けていたからだ、しかし続く言葉に緊張が走る

 

 

「ほ、北郷軍に真紅の呂旗を確認!!」

 

 

「真紅の呂旗?呂布かっ!? 北郷にあの呂布が降ったというのか!?いや、あやつならそれをやりかねんか、しかし呂布が江陵まで来ているという事はそこまでの城が落とされたというのか!?ありえん!早すぎる!」

 

冥琳は信じられないといった感じでその報告を聞く、雪蓮は呂布という言葉に少しだけ興味を示すものの、しかし違う!まだ何かを待っているかのようだった、そしてそれは当たっていた、兵が息を再び呑み、慎重に言葉をさがし、続く言葉を報告する

 

 

「さ、さらに、十の牙門旗を確認!!!!」

 

 

その瞬間雪蓮は天幕を飛び出す!待っていた、これを!やはり来た!必ず来ると思っていた!、冥琳などはきっと信じるまい、だが雪蓮は一刀が必ず来ると思っていた、胸が熱くなる、会うのは洛陽以来、常に心にあり、そして孫呉悲願の為には必ず倒さねばならぬ相手

 

 

「一刀!!!」

 

 

雪蓮、冥琳、祭と護衛の兵達が細作の報告にあった場所に向かう、

そして戦闘が行われてると思われる場所に到達すると一同は驚愕する、そこで行われていたのは

 

 

 

”二千の北郷軍による二万の荊州軍への蹂躙戦”

 

 

 

十倍近い差があるというのに一方的にねじ伏せ続ける北郷軍、その様子を愕然とした様子で見る冥琳

 

「何だこれは…、何が起こっている…、誰が北郷軍を指揮をしている!!!」

 

冥琳が驚いたのは北郷軍の用兵、寡兵にもかかわらず大軍を圧倒し、その動きは敵の急所を的確に潰していく、冥琳は北郷軍の軍師達の用兵を逐一報告させ、それを分析し、対策を考えていた、しかし、この用兵は今まで報告を受けてきた軍師のどれとも違っていた

 

”王佐一等荀文若! いや違う!かの者は堅守を得意とする、守られてこそ脅威!”

 

”烏丸急襲郭奉孝! いや違う!かの者は騎馬の速度を生かした戦い!”

 

”十面埋伏程仲徳! 変幻自在、いや違う!かの者の用兵は誘い込ませ惑わす用兵!”

 

「未だ我等の知らぬ軍師…か…、ここまでの城を落としてきたというのもその者の仕業かっ、

くっ!北郷には一体どれほどの人材がいるのだ」

 

戦場を見回し北郷軍の動きを凝視し、その動きを見逃すまいとする冥琳、

しかし雪蓮は戦場にはまったく興味がないと言った感じ、彼女の目に映るものはただ一つ

 

「一刀…」

 

北郷軍の全軍を見据える位置に威風堂々と位置する騎馬、白く輝く衣服に身を包んだ北郷軍の総大将北郷一刀を見つめていた!

 

 

 

 

「右翼、今下がる!敵の攻め気を誘って後ろに引き摺り出したあと、中央部隊と挟撃!」

「左翼は相手の崩れを見て敵右翼に横撃!、後曲は敵右翼に斉射!」

「前衛の一部を残して突撃準備!態勢が崩れ相手は立て直す為に下がるはず、動きが緩んだ瞬間そこを突くように!」

 

虚と実を織り交ぜた戦法を次々と指示し、詠は声が枯れそうな程叫ぶ、すでに身体は重く普段なら倒れているかもしれない程の疲労、しかし詠は今この時不思議なほど疲れを感じず、そして幸せだった。

 

赤壁で敗戦しボロボロになった秋蘭達を無事に江陵へ撤退させる為に追撃する荊州軍を足止めする、目的はそれだけだった、しかし江陵近辺で布陣していた二万という大軍の荊州軍を発見した時、詠は瞬時に敵の弱点を看破する、行軍での疲れ、すでに戦いは終わったものだと考える油断、二万という兵数ゆえか陣形もなくただ存在するだけの軍、それを見た瞬間詠は”殲滅できる!”と、そして瞬時にはじき出される軍略、しかしこちらは二千、呂布、夏候惇がいるとは言うもののはたから見れば無謀な戦い、しかしそれでも詠は勝てる自信があった、言うべきか、そんな事を思い迷っている詠に一刀が言葉をかける

 

 

「詠、勝てるんだな」

 

 

「!!!」

 

その言葉に詠は一刀を見つめる、一刀はまるで詠の心を見透かしてるかのようにまっすぐ、

そして信頼した目で詠を見つめる、そんな想いを感じたのか詠は力強く

 

「勝てるわ」

 

きっぱりと言い放つ詠のその言葉に一刀は微笑む、そして詠に命を下す

 

 

「詠、荊州軍を叩き潰せ!、二千で二万に勝つ軍師は君だ!」

 

 

その瞬間詠は心躍る、月とは違う自分への絶対の信頼、軍師としての期待、この人物は自分の事を軍師として必要とし、才を認めてくれていると!詠はすぐさま準備をし荊州軍へ攻撃をかける、策は見事に的中し寡兵ながら敵を圧倒し荊州軍は成すすべなく次々と壊走していく、そんな様子に心躍る詠、躍動し指揮をする詠は心の中で叫ぶ ”賈文和 ここにあり!”と!

 

「楽しそうだね♪」

 

ふと聞こえた一刀のその言葉に恍惚としていた詠は”はっ!”と我に返りって振り向く、

そこにはこやかな顔で自分を見ている一刀がいた、それを見た瞬間顔が真っ赤になっていく詠

 

「な、なななな/////// ちちち、ちがうっ!べ、べべべべ別に楽しんでなんか無いわよ!!!/////」

 

「照れなくてもいいじゃないか、詠の指揮ぶりは凄いなぁって関心してたんだよ、ほんと頼もしいなぁって」

 

「ば!//////ば、ばばバッカじゃないの!!こ、こんなの全然たいした事じゃないんだからっ!////

普通よ普通!ってかこっち見るな馬鹿ぁ!!!/////」

 

「わかったわかった、それよりそろそろ追撃をやめた方がいいんじゃないかな?恋や春蘭はまだ大丈夫かもしれないけど兵士の皆はそろそろ限界だと思う、こんな所で無理して被害を出す事もないと思うんだけどどうかな?」

 

「え、ええそうね、確かに荊州軍はもう壊走してるし、秋蘭達に追撃をかける余力ももうないでしょうし、

そうね、すぐに撤退の合図を出させるわ」

 

「ありがと、詠」

 

その言葉に再び顔が赤くなって照れまくる詠、と同時に兵士達の呼吸を感じているかのような一刀の大局を感じる力に驚く詠だった、撤退の合図を出すよう命令し一休みする詠、疲れがじわじわとやってくるのを感じ身体が重くなっていく詠の元に一刀がやってくる、そして詠の肩を揉んでやる

 

「(もみもみもみもみ)ひゃんっ!!!なっ!//// ちょ、ちょっと何するのよ!こんな所で変な事したら許さない「別に変な事なんかしないから、いいから、ほら、じっとして詠、こうやると疲れがとれるだろ」(もみもみもみもみ)か、ら…うっ…、くふぅん…////」

 

一刀の肩揉みマッサージは一流の揉みであった!元の世界でじいちゃんに教えてもらったマッサージ技は48手にまで及ぶ、

それを駆使して詠をマッサージする一刀

 

「んくっ////は、はぁん…//// き、気持ち…いい////」

 

「よかった、お気に召していただいて、(もみもみもみ)…、詠、ほんとにお疲れ様、

そしてありがとうな(もみもみもみもみもみもみ)」

 

気持ちよくマッサージをされ、さらに優しく声をかけられた詠はあまりの気持ちよさに体中から力が抜けふにゃふにゃになって崩れ落ちるのだった

 

「こおおおおらああああ!!北郷何をやっておるかああああ!!!」

「(じーーーーーーー)」

 

なんか機嫌悪い春蘭と、これまた珍しく不機嫌な恋が戻ってくる

 

「ちょっと詠を労ってただけだよ、ほらっ、詠はずっと指揮し続けてて大変だったろ、

だからこうやって肩を揉んでたんだよ(もみもみもみもみもみ)「ん、はぁぁん////」」

 

「わ、わわ私とてずっと頑張り続けてたのだっ!//// わ、私へのね、ねねね労いはないのか!!////」

 

なんか少し赤くなりながら少し拗ねた様子でおねだりする春蘭、なんかそんな春蘭が可愛くて詠を休ませ次に春蘭の肩を揉んでやる、すると気持ち良さそうに

 

「(もみもみもみもみもみ)ふにゅっ、うにゅううううん////、

(もみもみもみもみ)は、はぁっ、か、かぁじゅとおおお、はにゃああああん/////」

 

と何か猫化してくたっとなって猫のように丸まってしまう春蘭、一刀のマッサージは春蘭を無力化できるのだ!

春蘭へのマッサージを終わらせた一刀の服をひっぱられる感触、見ると恋が指をくわえて自分もやって欲しそうに上目使いで一刀を見つめておねだりしている恋、その姿があまりにも可愛くて!一刀は恋にもマッサージをしてやる、恋は初めてのマッサージのあまりの気持ちよさに顔を見る見る紅潮し、気持ち良くなって

 

「(もみもみもみもみもみもみ)ん、んんんーーーー、か、かずと……かず…んきゅっ!!//////」

 

って感じにふにゃふにゃになってしまうのだった、

こうして一刀さんはマッサージだけで三人の女性を陥落させる事に成功する! 

 

なんか戦いの後とは思えないほどの状態の北郷軍、まぁそれが一刀のなせる業とも言えるのだが、ほんわかした空気、しかしその空気は一瞬で破られる

 

今まで無力化してた春蘭と恋が急に殺気をおび立ち上がる、そして一刀を護衛するように武器を構える、一刀は一瞬どうしたのかわからなかったがすぐその答えがわかる、春蘭と恋の見据えるその先に雪蓮がいたからだ、その姿を久しぶりに見た一刀、何かを想い馬に乗ると雪蓮に向かい歩み出す、春蘭と恋も付き従う、そして一刀は雪蓮と対峙する

 

「一刀久しぶりね、洛陽以来かしら、死んだと聞かされてたけど無事でよかったわ♪」

 

「ああ、皆のおかげでね、おかげさまで生きながらえ…「そおんさくうううううううう!!!!貴様ぁ、赤壁での決着をつけに来たのだな!いいだろう、今ここで貴様を倒してやるっ!!!」

 

一刀と雪蓮の久々の再会に空気の読めない春蘭さんが叫んだり

 

「あ、えーーっと、ごめんね夏候惇、今はちょっと一刀と話をしたいの、貴方との決着はまた今度ね」

 

「なあああああんだとおおおお!!!「春蘭」」

 

今まさに雪蓮に攻撃しようとした春蘭を一刀が冷静に止める、春蘭も一刀に諭され渋々引き下がる

 

「久しぶりだね雪蓮」

 

「そうね、しかし油断してたとはいえこれだけの兵でよくもあの荊州の大軍をねじ伏せたものね、指揮をしてたのは誰かしら?教えて欲しいなぁ~「今はまだ内緒」…けち!」

 

「けちって…、ほんと相変わらずだな雪蓮は…、周瑜さんも相変わらず苦労してんじゃない?なんならおとなしくさせる方法教えてあげようか「是非っ!!!」」

 

一刀が言う終わる前に冥琳が叫ぶ、一瞬にしてその場がしーーんっとなる

 

”即答””即答か””即答だな””即答…”そこにいた皆が心の中でそう思う、軽い冗談で言ったのに”周瑜さん、そんなに雪蓮に苦労してるんだね”としみじみ感じる一刀、冥琳は恥ずかしくなって真っ赤になり、雪蓮はなんか馬鹿にされたようで気分が悪くなってプンプンて感じに

 

「ああもうっ!そんなやりとりしに来たんじゃないわよっ!

一刀もあんまり私を駄々っ子みたいに言わないでよ、ムキーーー!!!」(手をぱたぱたとさせる)

 

 

「「「(駄々っ子じゃん…)」」」

 

 

そう心の中で思う雪蓮を除く面々であった

 

 

 

 

なんか変な空気だったが、落ち着いた面々は再び顔を見合す、話し始めたのは一刀

 

「雪蓮は何でこんな所にいるんだ?てっきりもう揚州に引き上げたと思ってたけど」

 

「なんだかね、一刀に会えるような気がしたのよ、きっと一刀は赤壁に向かってくるだろうってね、本気で戦う前に一度会っておきたいなって思って荊州に残ってたのよ」

 

「成る程ね、相変わらず雪蓮の勘は鋭いな、まぁいいや、俺も雪蓮と会いたいとは思ってたしね、一言言いたかったし」

 

「あら、なにかしら?愛の告白なら”うん”て答えてあげてもいいわよ♪」

 

その言葉に春蘭にどつかれ、恋にぺしぺしとはたかれる一刀、

必死で弁明し怒りを納めてもらうのに七分ほどかかったり、ごほんっと改める一刀

 

「さて雪蓮、赤壁では色々とやってくれたみたいだね、荊州を離反させたりとか、やったのは周瑜さんかな?」

 

「策をめぐらしたのは別の子よ、孫呉の頭脳は冥琳だけじゃないって事♪」

 

「成る程ね、まぁ誰でもいいか、雪蓮、赤壁での代償はきっちり払ってもらうからな、覚悟しててくれよ」

 

その瞬間、その場にいた者達は一刀の苛烈なまでの怒りを感じる、しかし雪蓮はそんな一刀に何故かワクワクしてしまう

 

「面白いわねぇ、一刀が怒ったの見たのって反董卓での軍議以来だけど、あの時とは段違い♪けど私達だってむざむざやられたりしないわよ、孫呉の悲願の為には私たちも退くつもりはないから、その為の策も打ってるしね」

 

自信満々に言う雪蓮、しかし一刀はそんな雪蓮に

 

「それを聞いて安心したよ、これで心置きなく呉を叩き潰せる」

 

その言葉に祭が食って掛かる

 

「調子に乗るなこわっぱがっ!貴様如き小僧が何をしようと孫呉は揺るがんぞ!!

何ならいまここで貴様の頸を獲ってもいいのだぞっ!!」

 

「させない!」

 

祭の怒号に対し恋が一刀を庇うように睨む

 

「はいはい祭抑えて抑えて」「恋、大丈夫だから」

 

一触即発の二人を一刀と雪蓮がそれぞれ抑える、二人は武器を納め睨み合う、

そんな二人をよそに一刀は少しうつむく、そして何かを決意したように雪蓮に言う

 

「雪蓮、俺さ、今まで上手くやっていけば被害を出さずにこの大陸を制覇して平和な国を作れるんじゃないかって思ってたんだ、俺の知ってる知識を駆使していけばって、けどダメだった、そんな簡単なゲーム…遊戯みたいなもんじゃなかったんだ、赤壁での戦いも回避する事ができなかった…」

 

「その言いようはまるで赤壁で戦いが起こるのを知ってたような物言いだな」

 

一刀の言葉に冥琳が言葉をかける

 

「…ああ、知ってたよ、きっと、いや多分赤壁で大きな戦いが起きるって、

そして味方が大きな被害をこうむるんじゃないかって」

 

その言葉に雪蓮と冥琳は「やはりか」という感じで一刀を見据える

 

「これから言う事、別に信じてもらおうなんて思ってない、でも言わせてくれないか」

 

「俺はこの世界の人間じゃないんだ、ある世界からここに飛ばされてきたんだ、俺は元いた世界で今この時代で起こってる事に似たような物語を知っている、もちろんすべて同じって訳じゃないけどな、でも良く似てる、そしてそこにいるべき人物、でもここにはいないその人物を演じる為に俺はここに連れて来られたんだと思ってる、ぽっかり空いた世界の隙間を埋める為に、俺は知ってるその知識からその人物のように行動し今ここにこうしている」

 

一刀の話に聞き入る雪蓮と冥琳、一刀はさらに続ける

 

「けどさ、それじゃダメなんだよな、それじゃきっと行き詰まってしまう、それは赤壁の戦いが起こって、大切な人達が沢山傷つき死んでいった事で思い知った、だからさ雪蓮、俺は考えたんだ、もうその人物を演じるのをやめようって」

 

雪蓮はただ一刀を見つめ続ける、一刀は深呼吸をし、決意したように

 

 

 

「雪蓮、俺は北郷一刀だ」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、北郷一刀としてこの大陸を制覇してみせる」

 

 

 

 

 

 

その瞬間その場にいた人物は感じる、一刀から放たれる覇気を

雪蓮は初めて一刀とであった頃の時を思い浮かべる、反董卓連合での陣で出会った一刀は覇気も何も感じないただの少年だった、しかしその後の活躍で段々気になりはじめ大国の王となった時、倒すべき人物の筆頭となった、しかしまだ己自身を奮い立たせるほどの好敵手とまでは感じていなかった、出あった頃のような少年のままであったなら倒す事に何も感じなかったかもしれない、しかし、今眼にいる人物はそれとはまるで違う、そこにいるのは間違いなく己を奮い立たせ全力で倒すべき

 

 

 

 

”覇王 北郷一刀”

 

 

 

 

笑みがこぼれる、こうでなくては、血が沸き立ち、今にも襲い掛かろうとする感情を抑えつつ、雪蓮は一刀に

 

 

 

「一刀、私は貴方を必ず倒すわ、いえ殺してあげる、必ずね」

 

 

 

雪蓮の宣戦布告、しかし一刀は怯まない

 

 

 

「なら俺も雪蓮を殺す」

 

 

 

 

二人の王は互いに互いの必殺を誓う

 

 

 

 

 

「話はこれだけだ、じゃあな雪蓮、今度会う時は雌雄を決する戦場になると思うよ」

 

「ええ、今から一刀と戦うのが楽しみだわ、それまでは生きていてね、

また死士に狙われないように身体を鍛えておくのよ♪」

 

「ああ、頑張っておくよ、あ、そうだ雪蓮、俺を待っててくれたお礼に一言だけ助言をしておいてあげるよ」

 

「助言?何かしら?」

 

 

 

 

「赤壁の代償は孫呉の未来で贖ってもらうよ」

 

 

 

 

「孫呉の未来?」

 

「じゃあな、雪蓮!」

 

そう言うと一刀は春蘭、恋と共にその場を去っていく、そして待っていた軍と共に江陵方面へと去っていく、雪蓮達も自軍の陣地へと帰還していく、その間雪蓮は一刀の言った言葉を考えていた、そして、ようやくその意味にたどり着き、理解し血の気が引き始める

 

 

「冥琳っ!!!!!早馬を出してっ!!!急いでっ!!!!」

 

 

雪蓮の悲痛なまでの声に冥琳と祭は驚く、ここまで慌てる雪蓮を見た事がほとんどなかったからだ、問う冥琳に雪蓮は

 

 

 

「一刀の狙いは蓮華よっ!!」

 

 

 

雪蓮の言葉に冥琳もようやく一刀の言った言葉の意味を理解する、そして合肥にて北郷軍と交戦しているであろう蓮華達に撤退するよう早馬を出す、それを確認した雪蓮はただ蓮華の無事を祈る、雪蓮がここまでうろたえるには理由がある、雪蓮が常々冥琳に言っていた言葉

 

『他国の英雄と渡り合うなら自分の方が上だが、優秀な人材を登用し、国を安定させるなら蓮華の方が上』だと、

 

雪蓮の思い浮かべる孫呉という国は自分が国を広げ、危険なものを排除し、その後に蓮華に王位を譲り呉を磐石なものとする、というものだった、小覇王孫策ここにあり!と自らが派手に動く事でその存在を陰らせる、自分が死んでも蓮華さえ生きていれば孫呉は安泰だと考えるほど、しかし一刀はそんな事すら看破し、自分ではなく蓮華の命を狙った、孫呉の未来を消しにかかったのだ

 

初めて北郷一刀という人物に畏怖の念を感じる、と同時に

 

 

「もし蓮華に何かあったら…絶対許さないわよ…一刀!」

 

 

怒りを露にし、一刀への敵意を強くする

 

 

 

 

 

その頃江陵へ向かう一刀達

 

「ん…んんん…」

 

「あ、起きたかい詠?」

 

「ん…って、なあああああああっ!!な、何やってんのよあんたわっ!!!!//////」

 

詠が驚いたのには訳がある、なんと自分が一刀と同じ馬に乗せられていたのだ、身体の密着に恥ずかしくなってきた詠は

 

「あ、あんたボクが寝てる間になんて事してんのよっ!早く下ろしなさいよ馬鹿ぁっ!!!!//////]

 

ぽかぽかぽかという感じに一刀を殴る詠であったが

 

「ごめんごめん、けどちょっと色々あってね、早く江陵に向かいたかったんだ、

詠は気持ちよく寝て起こすのも悪いと思ったし、ごめんな」

 

 

 ドキンッ!!!/////

 

 

何故か一刀に真っ赤っ赤になって胸がドキドキしてしまう詠、一刀の雰囲気が何か違うと感じたのだ

 

「(な、何ドキドキしてんのよ!こ、こんな奴に!!で、でも何だかこいつ、

さ、さっきまでと雰囲気が違う…、なんていうか凄くかっこいい…///)」

 

そんな様子をじーーっと見る春蘭に気付いた一刀が

 

「ん?どうしたの春蘭?」

 

と声をかけると春蘭も真っ赤になって

 

「なっ!なななななななななな何でもな、ないい!!///////////」

 

そんな感じでドギマギした春蘭、春蘭もまた一刀の変化に戸惑っていたのだ、雪蓮とのやりとりで一皮向けた一刀、その姿は変わらねど内から発せられるその気はまさに王者の風格、前々から気にはなってた人物がいきなりそんな事になってどうしていいのかわからない春蘭さんだった

 

すりすりすりすり

 

そしてこちらでは騎馬を近づけ一刀に顔をすりすりしてくる人物、ほのかに顔を赤らめた恋もまた一刀にメロメロだった

 

 

 

 

 

一刀は騎馬の上で想う、これからの事を、そしてある人物の事を思い浮かべる

 

「(この物語にはまだ舞台に立ってない人物がいる、彼女はこの先どうするのだろうか…それとももう舞台には立たないのだろうか…)」

 

 

 

一刀が想うのは優しき少女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”桃香…”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荊州 夏口

 

夏口の城の一室では劉備軍の主だった面々が集まり軍議を開いていた、話されるのは赤壁の戦いについて、

劉備軍の頭脳孔明こと朱里が一通りの流れを説明する

 

「呉軍が荊州に侵攻し、それを迎え撃つ形で荊州軍は北郷軍に援軍を要請します、要請に応じた北郷軍は八万の兵を持って荊州入り、荊州軍と共に呉軍を攻撃するはずでしたが、荊州軍の裏切りにより赤壁で呉軍と挟み撃ちにされる形となります、この戦いで北郷軍は七万近い兵を失なったそうです、さらに荊州軍は北郷軍の拠点許に侵攻しようとしたのでしょうが許から発した北郷軍によってそれを阻止され、逆に北郷軍によって南郡の主だった城を奪われ形に、そして呉軍は赤壁の勝利の余勢をかって予州、徐州を攻め落としにかかります、合肥にたてこもっていた北郷軍と交戦、有利に戦いを進めますが突如撤退、侵攻は失敗したという形になりました。」

 

「結果としては赤壁での戦いでは北郷軍は大敗、しかし北郷という国に大打撃を与えるまでには到らなかった、

そういう事でいいのか、朱里?」

 

「はい、本来ならこの赤壁の戦いの後、荊州軍が許、呉軍が予州、徐州を奪えば北郷さんは大きくその勢力を奪われたと思われます、ですが…まるでそれを予期してたかのような動きで荊州軍を叩き、呉軍の不可解な撤退で侵攻を耐え、窮地を脱しました」

 

「いまだ北郷の天命が尽きる時ではないという事か」

 

趙雲こと星の問いに朱里が答え、関羽こと愛紗が苦々しく言葉を続ける、張飛こと鈴々は難しい話についてきてない感じ、

そして盟主の劉備こと桃香は辛そうにその話をじっと聞いていた

 

「朱里、今後北郷軍はどう動いていくと思う?」

 

「そうですね、今は赤壁での敗戦の立て直しを計る為に大きな出征は行われないとは思われます、ですがいずれは荊州、もしくは呉への侵攻が考えられます、荊州に放っていた間者からの報告では荊州から北郷さんへ和睦の使者が送られたとの報告がありますが北郷さんはそれを追い返したそうですし」

 

「裏切っておきながら和睦などと、北郷殿にしてみれば心中穏やかではあるまいに、よくも使者を生かして帰したものだ」

 

「北郷の荊州に対する怒りは相当なものであろうな、もし荊州との戦が始まるとなればそれは苛烈な戦い、

いや、北郷軍の力量を考えれば一方的な虐殺となるであろう」

 

星の放った”虐殺”という言葉にビクッとする桃香、辛そうに顔をしかめる、それに気付いた星が声をかける

 

「桃香様、大丈夫ですか?お顔の色が優れませんが…、」

 

「えっ!?だ、大丈夫だよ!、ちょっと…、うん、ちょっと疲れちゃっただけだから、えへへっ」

 

「それはいけません!桃香様、すぐに寝所へ!私がお連れ致します!」

 

愛紗がわたわたとして桃香を心配するが

 

「だ、大丈夫だから、ほんとに、少し座っていれば、うん、大丈夫だから!

あ、お、お茶飲んだら気分良くなったよ、ほ、ほらほらっ!えへへへっ」

 

そういうと桃香は元気そうに笑顔をしてみせる、愛紗もそれ以上はいう事はなく、再び軍議に戻る

 

「朱里、呉はどういった動きをしそうだ」

 

「そうですね、有利に進めていた合肥から何故撤退したのかは謎ですが、領土拡張の千載一遇の機会を無くした為、再度侵攻というのは難しいかもしれませんね、北郷さんも今度は防備を固めているでしょうし、しばらくは静観といった感じかもしれません」

 

「荊州が攻め込まれた場合呉が援軍を送る事は?」

 

「それはないでしょう、呉にしてみれば確かに荊州を取られるのは痛手かもしれませんが、

荊州を助けてる間に呉に攻め込まれればそれこそ元も子もありませんから」

 

「成る程、では荊州が益州の劉璋殿に援軍を請うというのは?」

 

「それもないでしょう、劉璋さんは自らの地位を守るのに必死で自ら望んで火中の栗をひろうような方ではありませんから」

 

「では荊州は孤立無援という事か、自ら撒いた種とはいえ同情を禁じえぬな」

 

「我等はどうすべきか、朱里」

 

愛紗の言葉に朱里は黙ってしまう、夏口にいる兵は劉備軍の2千ほど、

元々この地にいた数千の荊州軍はさきの赤壁の戦いに参戦し出たきり戻っては来てはいない、

 

 

「事の推移を見守るしかないと言うわけか、「そんなのダメだよっ!!!!」」

 

 

愛紗が言い終わる前に今まで我慢していた桃香が叫ぶ

 

 

 

「ダメ、そんなの絶対ダメ!!!!」

 

 

 

 

「何もしないなんてだめだよっ!何か、何かできるはずっ!だってこのままじゃ荊州の人達が戦いに巻き込まれちゃう!!

そうなったら沢山の人達が悲しむ事になっちゃう!、止めなきゃ!一刀さんを止めなきゃ!!」

 

「し、しかし桃香様、此度の事は荊州の裏切りが原因、義に反する事を行ったのですから北郷が怒るのもわからないでは…」

 

「それでもっ!それでも一刀さんを止めないと!大丈夫、一刀さんだったら話をすればきっと戦いをやめてくれるっ!

あの人はとても優しい人だから!だからっ!きっと話せばわかってくれるよっ!」

 

「それはどうでしょうか」

 

桃香の必死な訴えに星が言葉をはさむ

 

「桃香様は北郷殿と言う人物を見誤っております、かの御仁は確かに民の事を考え国を良くしようとし、仲間を大切に想うお方だと思います、ですがそれゆえに大切な仲間を傷つけられた時のかの御仁の怒りは容赦ないものです、反董卓連合の時の軍議を思い出してくだされ、かの御仁は軍議の席にて自軍の軍師が辱められた時、その時最大勢力にして総大将の袁紹に喧嘩を売ったほどの人物、そのような人物が裏切りと言う卑怯な手によって多くの味方の将兵を傷つけ失ったのです、荊州にて大虐殺を行うくらいの事はやりかねません」

 

「そんな…、そんな…事ない!そんな事ないよっ!!一刀さんはそんな事絶対しないっ!」

 

桃香は必死で一刀を擁護する、しかし桃香に呼応する者は誰もいない、皆わかっているのだ、

北郷一刀と言う人物は仲間の為になら鬼にもなる人物だと

桃香の目から涙が零れ落ちる、信じていたいという想い、しかしそんな桃香に星の容赦の無い言葉が浴びせられる

 

「桃香様には悪いですが、仮に桃香様が北郷殿に目通りが叶ったとしても今の桃香様では北郷殿を説き伏せる事はできますまい、かの国は中原の支配し、勢力、兵力において向かう所敵なし、そのような国の王にわずか数千の一城主が何を言った所で心を動かされる事はありますまい」

 

「星!言いすぎだぞ!」

 

星の言葉に愛紗がようやく言葉を発する、しかし桃香はうつむいて何も言えない、星の言葉に反論できないのだ

理想を、夢を、信念を貫こうとすればするほど力が必要なんだと、いくら綺麗な言葉でもいくら聞き心地の良い理想でも力が無ければ誰もついてこない、結果を残していなければ誰も賛同してくれない、それが現実なのだと

 

自分は今まで一体何をやってきたのだろう、大事な時に何もできない、ただうつむき、ただ悲しみ、ただ祈るだけ

 

打ちひしがれてる桃香に声をかけようとする愛紗ではあったが何と声をかけていいのかわからず、戸惑う、そして朱里に

 

「朱里、何かないのか?桃香様の願いを叶えられる為の策は?」

 

あるはずもない、そう誰もが考えていた、しかし朱里から出た言葉は

 

 

「……一つだけ、策があります、北郷さんと荊州の戦いをやめさせる方法…」

 

 

その言葉に皆が驚く、朱里はこんな状況でありながら桃香の願いを叶えられるというのだ、桃香が朱里に駆け寄り

 

「朱里ちゃん教えて!どうすればいいの!私何をすればいいの!何でもする!

この戦いをやめさせられるなら私何でもするっ!!!」

 

必死な桃香に少したじろぐ朱里、愛紗が優しく桃香を朱里から引き離し、星と共に朱里の言葉を待つ

 

「策というのは桃香様に荊州の主になってもらうというものです」

 

その言葉に皆は驚く、当の本人の桃香は特に

 

「わ、私が荊州の主って、む、無理だよそんなの!だ、大体私が荊州の主になったら余計一刀さんが荊州を攻め入ってきそうだよ、だ、だって私弱々だし……か、一刀さんに…嫌われてるし…」

 

寂しそうに言う桃香に朱里が答える

 

「桃香様に荊州の主にと言ったのには訳があります、私と雛里ちゃんは北郷さんの事を自分達なりに色々調べてみました、

そして出した結論は」

 

 

「北郷さんは私たちを過大に評価している、という事です」

 

 

「過大に評価?」

 

「はい、例えば虎牢関での戦いで北郷さんは愛紗さん、鈴々ちゃん、星さんの三人で呂布さんに当たるよう言われましたよね、何故でしょう?愛紗さん達は確かに盗賊退治などで武勇を上げてはいましたが天下に広まるまで、という事はなかったはずです、なのに北郷さんはまるで三人の力量をまるで知ってるかの如く判断し、呂布さんに当たらせました、実際呂布さんと互角の戦いをされた訳ですが何故三人の力量を知っていたのでしょう?」

 

「確かにあの御仁は不可解な所が多い、私がかの国を離れるのをまるで知ってたかのごとく割符を用意していたり、

赤壁の後の行動の素早さといい」

 

「北郷さんは算命に通じてるのかもしれません、それもかなり先を見通せるほどの、

それによって愛紗さん達の力量を知っていた、と私は考えています」

 

算命とは干支暦を元に年と月と日の干支を出して人の運命を占うものである、この時代では一般的なものであり、特に軍師などはこれに通じてる者が多い、孔明などは八門遁甲や奇門遁甲などを考案したとされている

 

「成る程、北郷殿は先を読み解く才に秀でてる可能性があるという訳か、

そして朱里は算命によって北郷殿が我等を過大に…恐れてるのではと言うのか?」

 

「はい、ですので、私達が荊州に行く事で北郷さんは私達の事を意識して多少なりとも進軍を遅らせる可能性があり、その間に私達は荊州を掌握、さらに益州で劉璋さんの圧制に苦しんでいる方々と協力し、益州も支配下に置き、さらに呉と同盟を組み北の北郷さんに抗すれば三国が互いに牽制し合い北郷さんも容易には戦端を開かないと思います、もちろん一時的なものでしょうからその間に講和なり和平への交渉をし、三国で国を支える、これが私と雛里ちゃんの考えた唯一の策」

 

 

 

 

 

「天下三分の計です」

 

 

 

 

 

 

天下三分の計、その壮大な策に皆は静まり返る、桃香自身それに心惹かれていた、

”共に支えあう”、それこそ桃香の望んだものだったから、

 

「で、でも荊州の主って、荊州を奪うって事だよね、そ、そんなのダメだよっ、

そんな事したら荊州の人達と戦う事になるかもしれないし」

 

「今荊州では先の赤壁での行動で蔡瑁一派は粛清され、劉表様の長男劉埼様も病でお亡くなりになったらしく、荊州は内乱状態との事、誰かがこれを収めねば罪無き人達が多く血を流す事になります、生前劉埼様は桃香様の事をお知りになり、死に際に荊州の事を桃香様にと語っていたそうです、ここに劉埼様から桃香様に宛てた書簡があります、ご覧ください」

 

朱里は一通の書簡を見せる、そこには確かに劉埼から桃香へ荊州の事を頼む旨を記したものであった

 

「このような書簡初めて見たが」

 

「申し訳ありません、情勢が掴めなかったのでこの情報は私と雛里ちゃんだけに留めておきました、下手に動けば蔡瑁一派、そして北郷さんの目に止まり攻撃される恐れがありましたから、ですがここに到っては劉埼様の願いを聞き届け桃香様が荊州を束ねるべきだと思います、そしてすみやかに内乱を鎮めれば結果的に流れる血は少なくなると思います」

 

朱里の説明にその場が静まり返る、荊州が、そして劉備軍が生き残るにはそれしか道はない、

愛紗や星などはそれを良しと考えていた、と、その時

 

 

「わ、私……ひっく…ひっく…」

 

 

なんか桃香が泣き始める、それに慌てる面々、そして愛紗が

 

「と、桃香様ど、どうなされたっ!ど、どこか痛いのですかっ!?い、医者っ!医者はどこだっ!!!」

 

「だ、大丈夫だよ愛紗ちゃん、ちょっと…、ちょっと色々考えちゃっただけだから…、

私、ほんとにダメダメな主だよね、皆にこんなに色々してもらってるのに

全然前に進めていない、皆がいつも笑顔でいられる国を作るって言っておきながら全然作れてない、

その上皆をいつも危険にさらしちゃってる、ほんとに、ほんとにダメダメな子だよね」

 

桃香はとめどなく溢れる涙を流しながら皆に語る

 

「わ、私ね、朱里ちゃんの言った通りにしようと思ったの、けどそうなったらまた愛紗ちゃん達を危険な目に合わせちゃうかもしれないって思ったの、自分だけでなんとかできるなら自分だけで荊州に行こうと考えたけどダメなの!、私には何もないの、戦う力も考える力も何もないの、だからどうしていいのかわからないの!

けど私荊州の人達を助けたい、一刀さんに戦いをもうやめてって話をしたいっ!だからっ!だからっ…」

 

 

 

 

「お願い、私に…力を貸してください…」

 

 

 

 

 

自分の無力さにただただ謝り、必死で頼む桃香、そんな桃香に皆が優しく声をかける

 

「桃香様、桃香様は桃香様のままでよいのですよ、優しく、皆に笑顔を与えられるかけがえの無いお方なのです、私はそんな桃香様に惹かれたのです、そんな桃香様の為ならば命を賭けれると誓ったのです、ですからもう泣かれないでください、私は桃香様にも笑顔でいていただきたいのです」

 

「そ、そうなのだ!桃香お姉ちゃんが泣いてると鈴々もなんだか悲しくなってくるのだ!

だ、だから…だから桃香お姉ちゃんにはずっとずっと笑っていてほしいのだ!!!」

 

「桃香様、我が槍は桃香様と共にあります、桃香様がこうと決めたのであれば私はどこまでもついてゆきます、桃香様は我等が御旗なのですから」

 

「わ、私こそ何の力にもなっていません、桃香様の為に策を考えてもそれを実行する勇気がなかったんです、もっと私が、私がしっかりして、行動を…桃香様に嫌われてもそれを行っていれば、もっと、もっと上手くやれたはずなんです!けど、それが出来なかった、勇気がなかったんです、でももう後悔はしません!桃香様の為に策を考えます、どんなに疎まれようとももう二度と桃香様を悲しませるような事はしません!」

 

「あわわ、わ、私も朱里ちゃんと一緒に頑張ります、もっともっとがんばりましゅ!

だからお願い、桃香様泣かないでくだしゃい!」

 

 

泣く桃香を優しくいたわる様に皆が励ます、そんな皆に桃香はただ一言

 

 

「ありがとう…」

 

 

心から大切な仲間達に感謝する、そして桃香は決意する、荊州行きを

 

 

 

荊州の人々を守る為、

 

 

 

そして一刀に戦いをやめさせる為に

 

 

 

 

桃香達が荊州行きを決め、兵達が出立の用意をし始めている頃、桃香は自分の部屋でずっとうつむき苦悩していた、

そんな桃香を星が見つける

 

「桃香様どうなさりましたか?お体の具合が悪いようでしたら出立を遅らせますが」

 

「星ちゃん…、う、ううん何でもないの、ただ、前に星ちゃんに言われた事を思い出してて、私が出て行ったらここの人達はどうなるのかなって…、私、ここの人達を守るって偉そうな事を言っておいて、この人達を置いていこうとしている、そんなのが許されるのかなって…」

 

「桃香様、あの時私は言いましたでしょう、王が民を置いて動く時はよほどの変事か決死の時だと、そして今桃香様は荊州の民を救う為に動こうとなされている、決死の想いで動こうとするのは王として正しい行為だと私は思います、そして夏口の民はそんな桃香様を非難するような事はしますまい」

 

「そうなのかな、きっと不安になってるんじゃないのかな?もし不安になってるんだったら私、荊州に行くのを…」

 

そこまで言って星が桃香の手を取る、そして兵達の待つところまで連れて行く、すでに準備はほぼ整っており、愛紗、鈴々、朱里、雛里、そして麗羽、斗詩、猪々子が号令をまってるという感じだ、さらにその前には夏口の民が大勢集まっていた、皆桃香を待っている

 

「桃香様、夏口の民にお言葉をかけてくだされ」

 

「ええっ!そ、そんな急にっ!ま、まだ心の準備ができてないよぉ~」

 

しかし星は容赦なく桃香を夏口の有力者、長老達がいる所にぽーんっと言う感じにほっぽっていく、桃香はおたおたとしていたが、長老達が自分の言葉を待っていると感じると、心を決め

 

 

「ご、ごめんなさいっ!!!!」

 

 

開口一番大声で謝る、その言葉に面食らう長老達、しかし言葉は発しない、桃香の続く言葉を待っている

 

「わ、私皆さんを守るって言いながら全然守れませんでしたっ!

もっと楽しく、もっと元気になって皆が笑えるような所にしようと思いましたができませんでしたっ!

な、なのに私、今からここを出ようとしています、勝手で、我侭で、ほんとにいくら謝っても許してくれるとは思ってません、でも、必ず戻ってきます、必ずっ!

だ、だから許してくださいっ!皆さんを見捨てるような事をする事を許してくださいっ!」

 

桃香の言葉に場が静まり返る、桃香はただひたすら謝り、じっと耐えている、そんな桃香に長老が優しく声をかける

 

「劉備様、顔をお上げくだされ、ここにいる、いや夏口にいる者すべて、誰も劉備様を非難するような者はおりませんぞ、ここにいるのは皆劉備様を慕い、そして惹かれ共に生きていこうと思った者達、劉備様がここに残れと言われるなら残りましょう、劉備様は荊州の人々を守る為に赴かれるとか、そのような方を非難するような者がおりましょうや、我等が今ここにいるのはただ、劉備様の大願を願う為でございます」

 

その言葉に桃香は呆然とする、てっきり非難されるものだと思っていたからだ

 

 

”劉備様、頑張ってきてください!”

”どうか荊州を頼みます!”

”お怪我をなさらぬよう、お気をつけてっ!!”

 

 

しかし夏口の民から聞かれるのは全て温かい言葉、それは桃香だけではなく、愛紗達や兵達にもおよぶ

 

「張飛ちゃん、はいこれ、長旅でお腹がすいたら困るでしょう、

うちの店の特製のお饅頭たくさん用意したからね、身体にはきをつけるんだよ」

「うわぁぁい、おばちゃんありがとうなのだーーー!!!」

 

「趙雲様、これ、うちのメンマでさぁ、持ってってください!毎日食べていただいてほんと感謝しておりました、

次に来られた際にはもっと旨いメンマを用意しておきますんで必ず無事に帰って来てくだせぇ!」

「おお、これはかたじけない!今後も日々メンマの為に精進なされい、さすればメンマ道を極められるであろう!」

 

「関羽様、これは子供たちからの贈り物です、荷物になるでしょうが受け取っていただけないでしょうか?」

「これは…、ありがとう、皆によろしく伝えておいてください、この関羽必ずやこの世を太平の世にしてみせましょう!」

 

「孔明ちゃん、鳳統ちゃん、はいこれ、入荷したばかりの新刊『お月様が見てる第16巻だよ』持っていきな」

「あわわ///」「はわわ///」

 

一人一人にかけられるのはすべて暖かい言葉、そして皆笑顔で送ってくれる、その姿にただただ嬉しくなる桃香達だった

 

 

城を出ても見送る人々は後を絶たない、桃香はそんな人達に笑顔で手を振り続ける、

そしてその姿が見えなくなると我慢しきれなくなったのか涙が零れ落ちる

 

「愛紗ちゃん、私ね、まだ見えるの、もう姿は見えないのにね、夏口の人達の顔がはっきり見えるの…」

 

「夏口の人々はどのような顔をしておりますか?」

 

「みんな、みんな元気に、みんな力強く頑張ってる顔をしてるよ、そして…皆凄く楽しそうに笑ってるよ…」

 

「それこそが桃香様の成された事でございます」

 

愛紗は答える

 

「頑張らなきゃ、もっと、もっともっともっと沢山頑張らなきゃ!」

 

「そうですな、夏口だけではなく、国中がみな夏口のようになる為に、

桃香様の理想の為に我等も力を尽くしましょう!なぁ皆!!」

 

 

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 

 

 

愛紗の言葉、兵達の声を聞き、桃香は決意を新たにし、荊州へ向かう

 

 

 

 

従うはわずかに千の兵

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの

 

という訳でようやく劉備軍始動、長かった…

 

でも桃香さんはやっぱ動かすの難しいです、ゲーム本編で愛紗さんの台詞にあった

「あの方には際立った武も才もありません、しかし不器用なまでの優しさがあります」

ってのを意識して書いてみたけどどんなもんかなぁ

 

 

とりあえず次の21で第二部完という感じです、書くの遅すぎだぜ…

 

 

萌将伝予約は公式のにしようかな…


 
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