真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます 第12.1話
【桃香の占い曜日】
「ん~~~!今日もいい天気!」
私、桜崎桃香。
聖フランチェスカに通う高校二年生です。
元々は女子高だったらしいんだけど、少子化問題で三年前に共学になったそうです。
「さてと、お弁当作らないと……」
私は髪を梳かし整えて居間に降りていった。
「おはようございます」
居間に入って挨拶する私。でも、帰ってくる返事はありません。
「まだ帰って来てないみたい」
両親はたまに仕事が忙しくなると会社で寝泊りをしています。
お父さんとお母さんは会社で出会い、そのまま数年間付き合ったあと結婚をして私を生んでくれました。
二人ともとても優しい大好きな両親です。
「今日のお弁当はどうしようかな~」
私は冷蔵庫を開けてお弁当に仕えそうな食材を探していると、
(プルルルルッ!プルルルルッ!)
「あ、電話だ。お母さんかな」
私は冷蔵庫を閉めて電話に出る
「はい、桜崎です」
(桃香?私、母さんだけど)
「うん、おはよう。お母さん」
(おはよう。ごめんなさいね。朝食作ってあげられなくて)
「ううん、平気だよ。自分でも作れるから」
お母さんは家に帰ってくれない時はこうして朝、謝りの電話をしてくれます。
でも、少し気にし過ぎかなって思います。
(そう?ならいいんだけど……あ、それとね。母さんと父さん、今日も帰れそうに無いのよ。悪いんだけど、お夕飯と家の戸締りお願いできるかしら)
「うん、わかった。それじゃお母さんも体には気をつけてね。お父さんにもそう伝えて」
(わかったわ。きっと嬉しくなって電話してきちゃうかもしれないわよ。父さんは桃香一筋だから)
「あは、あはははは」
そう、お父さんは私の事が大好きでたまらないのです。
小さい頃から私が泣くと直ぐに駆けつけて来ては何をすればわからずおろおろしていたそうです。
それは今でも変わってなくて、きっと彼氏が出来た日には卒倒しちゃうかもしれないくらいです。
(それじゃね。気をつけて学校に行ってらっしゃい)
「うん、行ってきます。お母さんもお仕事頑張ってね」
私は受話器を置くと徐にテレビのリモコンを手に取り電源を入れた。
『本日最初のニュースです。―――――』
テレビからは昨日の夜から昨夜にかけての出来事をキャスターの人が話していました。
「ん~……今日は少し多めに作っていこうかな」
私はある一人の人を思い、頬を赤くする。
「えへへ、喜んでくれるかな一刀さん」
北郷一刀さん。
あの人は何処にでも居る普通の学生さんです。
でも時より見せる子供っぽい笑顔がとても素敵な人です。
「一刀さんは何が好きなのかな~」
私は色々考えた末、シンプルなお弁当にすることにした。
「ふふ~ん♪美味しくな~れ~♪」
私はフライパンを握りながら美味しくなるように祈りながら作る。
「よし、完成~~!」
私は腰に手を当てて出来上がった二つのお弁当を満足そうに見る。
「うん!改心の出来だよ~」
私は嬉しさのあまりその場で飛び跳ねるが、
「きゃっ!……いった~い」
こけた拍子におもいっきり尻もちをついた渡しはお尻を擦る。
『今日の占い、今日最高の運勢は!』
(ガバッ!)
「……」
勢い良く起き上がりテレビを食い入る様に見つめる。
『今日の第11位から第4位は次の通りです』
下から順々に星座が表示されていくのを固唾を呑んで見守る。
『そして今週の一位と最下位は!』
「ふっふふ~んふ~ん♪」
学園へ向かう道すがら私は上機嫌で登校する。
「きっと良いことあるよね~♪……あっ!」
前を歩く一人の生徒に目が入った。
「愛紗ちゃ~~ん!おはよう!」
愛紗ちゃんは振り向くと笑顔で挨拶してくれた。
「おはようございます。桃香さま」
愛紗ちゃんは一刀さんと一緒のクラスで愛紗ちゃんも一刀さんが好きみたいです。
「今日は一段と機嫌がよろしいですね」
「うん!あのね、占いで今日は最高の一日になるでしょうって言われたの!」
「そうですか。それはよかったですね」
愛紗ちゃんは微笑みながら私の話を聞いてくれた。
「そう言えば、愛紗ちゃんはどうして一刀さんの事が好きなの?」
私は前々から聞こうと思っていたことを聞いてみた。
「すっ?!そ、そうですね……」
愛紗ちゃんは少し考えた後、頬を赤くして答えてくれた。
「一刀さまは何処にでも居る普通の人ですが、人を思いやることの出来る素晴らしいお人です」
「人の痛み、哀しみ、怒り全てを受け止めてどうすれば解決できるか一緒に考えて解決してくださいました。それに……」
「それに?」
「わ、私をは、初めて女として接してくださいました……」
愛紗ちゃんはさっき以上に頬を赤くして恥ずかしそうにしていた
「女って愛紗ちゃんは立派な女の子だよ?」
「そ、そうですね」
愛紗ちゃんは少し顔に陰りを見せて笑った
「ダメだよ、愛紗ちゃん」
「え?」
少し強めに愛紗ちゃんに伝えた
「愛紗ちゃんは十分に可愛いんだからもっと自信を持たないとダメだよ!」
「は、はあ……自信ですか」
「そうね、あなたは十分に魅力的だわ」
「え?……ひゃ~~~~っ!」
愛紗ちゃんがすっとんきょな声をあげたから見てみると愛紗ちゃんの脇から胸を鷲掴みしている手があった。
「あ、琳さん。おはようございます」
「おはよう、桃香。それにしても揉み心地のいい胸ね」
「り、琳殿!その手を離してください!」
「あら残念。もう少し揉んでいたかったのだけど」
琳さんは残念そうに手をワキワキ動かしていてなんだがいやらしく見えます。
「手をワキワキしないでください!」
愛紗ちゃんが恥ずかしそうに叫ぶ。
「別に減るわけではないのだからいいじゃない」
「それでもです!」
「分かったわよ。なら、桃香の胸でも揉もうかしら」
「ふえ?!わ、私ですか?!」
まさか、私に矛先が向くとは思わずビックリしちゃいました。
「琳殿!」
「冗談よ。本当に面白い娘ね」
「う゛……」
愛紗ちゃんは唸って黙っちゃいました
「もう、ダメですよ琳さん。あんまり愛紗ちゃんをからかっちゃ」
「ふふふ、だって面白いのだもの仕方ないでしょ」
「あは、あはは……」
琳さんはニヤリと笑って愛紗ちゃんを見ているところを見るときっとまたするんだろうなと私は苦笑いをしちゃいました。
「桃香さま、あれは一刀様ではありませんか?」
愛紗ちゃんと琳さんでお話していると愛紗ちゃんが前を見て伝えてくれました。
「そうね。あれは一刀見たいね」
私も前を見て通学路を一人で歩く一刀さんを見つけて、
「一刀さ~~~ん!」
大きく手を振って一刀さんを呼ぶと一刀さんが振り向いてその笑顔を見せてくれました
「やあ、みんなおはよう!」
「おはよう一刀さっ?!」
一刀さんに駆け寄ろうと走り出した私だったけど何も無いところで躓き、
「と、桃香さま!」
「きゃ~~~~っ!」
近づく地面に私は目を瞑ったけど、そのあと来るはずの衝撃は来なくて。
「きゃっ!」
「うぉ!っつ~~!だ、大丈夫か桃香?」
「う、うん……だいじょっ」
起き上がり目を開くと目の前に一刀さんの顔があり、そこで動きが止まっちゃった。
「あ、あの……桃香?」
「へ?あ、ご、ごめんなさい一刀さん!い、今どきますね!きゃっ!」
一刀さんの声に我に返った私だったんだけど慌てて起き上がったせいでよろけちゃって、慌てて地面に手をついたんだけど
「「んっ?!」」
「「なっ?!」」
愛紗ちゃんと琳さんは声をそろえて声を上げて、私はと言うと
「あ、あの……その……ご、ごめんなさ~~~~~い!」
顔が徐々に熱くなって、恥ずかしさの余り走って逃げちゃいました。
「と、桃香!」
恥ずかしいよ!顔から火が出るくらい恥ずかしいよぉ!
後ろで一刀さんが私の名前を呼んでるけど今はとにかく恥ずかしさであの場所には居られなくて学園に一目散に駆け出しちゃいました。
「はぁ、はぁ……思わず逃げちゃったけど、変に思われてないかな一刀さんに……」
少し気分が暗くなっちゃったんだけど、さっきの事を思い出すと自然に胸の辺りが暖かくなって。
「えへへ、一刀さんとキスしちゃった……」
唇をなぞると段々と嬉しさが勝ってくる。
「一刀さんに抱き止められちゃったし、不可抗力だったけど一刀さんともキス出来ちゃったし、今日は本当についてるのかな♪」
「と~うか、おはよ!」
後ろめたさもあったけど一刀さんとキス出来たことに嬉しくなっていた私は後ろから声をかけられてビックリして小さな悲鳴をあげちゃった。
「ひゃ!し、雪蓮さん?!」
「なによ驚きすぎじゃない?少し傷ついちゃうな~」
「ご、ごめんなさい!その……急に肩を叩かれたからビックリしちゃって」
雪蓮さんは口を尖らせて怒ってきちゃったから慌てて謝ると
「別にそこまで気にしてないから良いのよ。それにしても桃香は素直すぎよね。よくからかわれるでしょ」
「ど、どうしてわかるんですか?!」
「見てれば分かるわよ。ま、私もその一人なんだけどね♪」
雪蓮さんはおどけた感じでウィンクをして笑いました。
「酷いですよ雪蓮さん」
「ごめんってば、で?」
「はい?」
「なんでそんなに驚いてたわけ?」
「へ?!な、なんでもないですよ?」
「怪しいわね……告白しなさいよ~」
雪蓮さんがニヤリといやらしい笑いを見せるから後ずさりしたんだけど……
「逃がさないわよ。ほらっ!」
「ひゃ~~~?!し、雪蓮さん!こ、こんな道の真ん中でやめてください~~」
雪蓮さんは後ろから羽交い絞めにしたかと思うと胸を鷲掴みにしてきました。
「ほらほら~、早く白状しなさい」
「だ、だからなんでもないんですってば~~~っ!」
し、雪蓮さんしつこいよ~~
「あれ、桃香?先に行ったんじゃなかったのか?」
必死に雪蓮さんから逃げ出そうとしていると後ろから声をかけられてきました。
「「え?」」
後ろを振り返ると疲れ果てた一刀さんと愛紗ちゃんと琳さんがいました。
「一刀!」「一刀さん!」
「やあ、おはよう雪蓮……それより、なにしてるんだ?」
「え?桃香が何か隠してるから聞き出そうと……あっ」
「ご、ごめんなさ~~~い!」
「こら~~!教えなさ~~い!」
一刀さんに気を取られているうちに雪蓮さんの腕から逃げ出してとにかく逃げることにしました。
「はぁ、はぁ、ほ、本当に今日は最高の一日になるのかな~~~~!」
走りながら叫んだけどそれに答える人は誰も居ませんでした。
「……ガクッ」
私は教室についてさらに肩を落とす出来事が待っていました。それは……
「き、今日は土曜日なの忘れてたよ~~~」
そう、今日は土曜日。授業は午前中で終わりなんです。
「うぅ~……折角作ったのに……」
袋の中にある二つ分のお弁当箱を見てがっくりうな垂れる。
それでも……
「は~い!授業を始めるわよ。席に着きなさい」
無常にも時間は過ぎて行くのでした。……ふえ~ん!
(キーンコーンカーンコーン)
授業を終える鐘の音がなり黒板に書いていた手を止め先生が振り返った
「は~い、今日はここまで。次はここの続きから始めるわよ、確り予習しておきなさい。特に次に当たる子はね」
「まじかよ~~!次俺だ!」
「やだ、私も当たりそう、ねえねえ、ここなんだけどさ……」
「ほらほら、これじゃ終われないわよ。日直よろしくね」
先生はやれやれといった感じで苦笑いを浮かべ日直の人に合図を送りました。
「起立!……礼」
「「ありがとうございました!」」
「やっと今週も終わりだな。どっか遊びに行かないか?」
「お、いいな!」
「見てみて、これ可愛いと思わない?」
「可愛い~。これ何処で売ってるの?」
皆、親しい人と思い思いに放課後を楽しんでいる中、私だけが少し落ち込んでいた。
「ねえ、桃香。これから皆とカラオケに行くんだけど一緒に行くでしょ?」
クラスの友達にカラオケに誘われたけど今はそんな気分じゃないので断っておこっと
「ごめんなさい。今日はこれから用事があって……」
「そっか~。残念だな……」
特に用事は無かったんだけどそう言うと友達が少し残念そうにしてたので少し罪悪感が芽生えた。
「うん、次また誘ってね、その時は絶対に行くから」
私は今出来うる笑顔を見せると誘ってくれた娘も笑顔になってくれた。
「もちろんだよ!桃香が居ないと面白味が半減するくらいなんだから」
「あ~、それって私がおかしいってことでしょ!酷いな~。そんな事無いもん!」
頬を膨らませて怒ると友達は笑いながらも謝ってくれた
「ごめん、ごめん。……それじゃ、私達もう行くからさ、じゃあね!」
「うん、バイバイ!」
手を振って別れの挨拶を言った後私も立ち上がり教室を後にした。
「……」
別に何処かに行こうとか思わず、なんとなく校内を歩き回ってると、
「……あ」
いつの間にか剣道場に来ちゃってました。
「……一刀さん居るかな?」
一刀さんが居るか覗こうと道場の中を見ようとしていたところに視界の端で何かが動く気配がしたので振り向いたら、
「あ、一刀さん」
「え?……桃香?」
「お~い!かっ、むぅ?!」
一刀さんも私に気づいてくれたみたいだから手を振って大声で名前を呼ぼうとしたら全力で走ってきて口を押さえられちゃった。
え?え?どういうこと?
私が混乱していると一刀さんが私を落ち着かせるように優しい声で話しかけてきた。
「ごめん、少し静かにしててくれないかな?」
(コクコク)
一刀さんに口を押さえられているから私は頷き返事をする。
「ありがとう」
「……」
一刀さんの笑顔に体中の体温が上がっていくのが分かる。
一刀さんの笑顔はいつ見てもいいな~
だけど一刀さんは急に顔を引き締めて私を見て、
「ごめん、俺の事は知らないって言ってくれるかな?」
「え?え?」
「それじゃ!」
そう言うと一刀さんは茂みの中に身を隠しちゃいました。
「ちょ!ええ?どういうこと?」
「ん?話し声が聞こえると思ったら、桃香殿ではござらんか。このような場所にいか用か?」
私が首を傾げていると剣道部の部長、不動さんが道場から顔を出してきました。
「えと……な、なんでもありません。少し散歩をしていただけです」
「左様か……所で、北郷殿を見なかったであろうか?」
「ふえ?!ど、どうしてですか?」
「うむ、あやつ、ここ最近、部活に顔を出さぬので愛紗殿につれて来て貰ったのだがいつの間にか更衣室の窓から逃げ出しておったのでござるよ」
「そ、そうなんですか」
なるほど、だから一刀さんは大声を出さないように言ってたんだね
「どうやら、逃げ出してそう時間が経っておらぬ様なので外の様子を見てみようとしたら桃香殿が居ったのでござるよ。で、どうでござるか?」
「み、見てないですかな~?」
あぅ~、な、なんか変な言葉になっちゃったよ。
「ふむ……」
不動さんは頷くと徐に私の後ろの茂みを見て私は慌てる
あ、あそこは一刀さんが隠れてる場所!ば、ばれちゃうよ!
「あ、あの!か、一刀さんならあっちで見たような気がします!」
「む?先ほど見ていぬと言わなかったでござるか?」
「あ、いや。その、か、一刀さんに似た人がい、居たような居なかったような、えっとえっと」
しどろもどろになりながら私は一刀さんを庇っていると不動さんはそんな私が可笑しかったのか微笑んでいた。
「なるほど、桃香殿もう十分だ。では、あちらを探してみよう。桃香殿も北郷殿を見つけたら伝えてはくれぬだろうか?」
「ふえ?何をですか?」
「あまり、部活をサボりすぎるとおじい様に報告することになるぞ、とな」
(ガサッ!)
不動さんはニヤリと笑うとウィンクをして私が言った場所に行って見ると言って居なくなりました。
どうやら、あそこに一刀さんが隠れてるのはバレてた見たいです。
それでも見てみぬ振りをしてくれたのは私の為なのかな?
「ありがとうございます。不動さん」
私は歩いていく不動さんの背中にお礼を言った
「一刀さん、もう行きましたよ」
茂みの中に隠れていた一刀さんに伝えるとバツが悪そうに頭をかいて苦笑いを浮かべて出てきました。
「恥ずかしいところを見られちゃったな」
「あはは、でも、なんで逃げ出したんですか?」
私は少し一刀さんをからかおうと逃げ出した理由を聞き出そうとした。
「桃香が気になってさ」
「……え?」
え?今、一刀さんはなんて?
「いやさ、朝なんか逃げるように学校に行ったからどうしたのかなって」
「……」
「それにさ、不可抗力とはいえ……その、キスしちゃったわけだし……いやだったよね」
「っ?!そ、そんな事無いよ!ビックリしちゃっただけで、嫌じゃなかったよ!」
私が嫌じゃなかったことを伝えると一刀さんは安堵したように微笑んでくれた。
「ははは、そっか、良かった。嫌われちゃったのかと思ってたよ」
「か、一刀さんを嫌いになんてなりません。絶対に!」
よかった。一刀さんはずっと私の事を気にかけてくれてたんだ。
私はそのことが嬉しくて胸の辺りが暖かくなるのを感じた。
い、今なら言えるかな、誰も居ないし……
意を決して一刀さんに伝える。
「あ、あの、一刀さん!」
「ん?どうしたんだ?」
「あ、あの、こ、これからい……一緒にお昼を食べませんか!?」
「あ、ああ……別にかまわないよ」
一刀さんは私の勢いに若干引いたけど、笑顔で了承してくれた。
「ほ、本当ですか?!」
「ああ、お腹が空いてた所だしね。どこか落ち着ける場所で食べよう」
「ま、待ってください一刀さん!お、お弁当がありますから、食べてくれますか?」
一刀さんは何処かに食べに行くと勘違いしたのか校門がある方へと歩き出したので慌てて一刀さんを止めました。
「え?桃香が作ったのか?」
「は、はい……美味しくできてるかはわからないんですけど……食べて、くれますか?」
私は上目遣いで恐る恐る一刀さんに聞くと、
「もちろんだよ!桃香の手作り弁当が食べられるとは思ってもみなかったよ」
一刀さんはすごく嬉しそうに言ってくれたので私は少しホッとしました。
「それじゃ何処か座れる場所に行きませんか?」
「そうだね。それじゃ裏庭にでも行こうか」
「はい!」
「では、お嬢様。お手をどうぞ」
一刀さんは右手を差し出し少し前かがみに頭を垂れてまるで王子様みたいでした。
「えへへ、なんか恥ずかしいな」
一刀さんの手に自分の手を乗せると一刀さんは軽く手を握ってきた。
「では、参りましょうお嬢様」
ニコリと一刀さんは私に向かって微笑むと体中の体温が一気に上がったのが自分でもわかった。
「ここら辺でいいかな、桃香」
「……」
一刀さんの横顔をじっと見ていると一刀さんが何かを伝えてきました。
「桃香?」
「ふえ?!あ、うん、元気だよ!……?」
「ははは、ううん、なんでもないよ」
「えー、なんですか?気になるじゃないですか」
一刀さんが笑った理由が分からず私は一刀さんに聞いたけど教えてくれませんでした。
「も~、教えてくれないとお弁当あげませんよ!」
頬を膨らませて一刀さんから顔を背けると一刀さんは慌てて謝ってきました。
謝って欲しいんじゃなくて笑った理由が聞きたいんだけどな。
「それじゃ、教えてくれる?」
「まいったな……」
一刀さんは頭をかきながら笑っていた理由を伝えると私は恥ずかしさで顔を真っ赤にしました。
うぅ~、恥ずかしい……全然、会話になってなかったんですね。
一刀さんは、
「桃香はおっちょこちょいだな~」
と言って微笑むと、
「でも、そこが桃香の可愛いところなんだけどね」
と、さらに顔を赤くするようなことを言ってきて、もう顔が火傷しちゃうんじゃないかと思っちゃいました。
その後、ベンチに座り一刀さんにお弁当を手渡した私。
「おっ!うまそう」
一刀さんはお弁当の蓋を開けると目を輝かせた
「見た目だけかもしれないよ?」
「そんな事無いよ!絶対に美味しいって!」
一刀さんは力強く言ってくれたけど、内心ではすごく心配です。
「それじゃ、頂きます」
「……」
「……」
一刀さんが食べるのを固唾を呑んで見ていると……
「あの、桃香?そうじっと見られてると食べ辛いんだけど……」
「ご、ごめんなさい!どうしても心配で」
「大丈夫だよ。あむっ、もぐ……もぐ……」
「ど、どうですか?」
「……うん、とても美味しいよ!ありがとな桃香」
「やった~~!」
「うぉっと!」
「あ、ごめんなさい」
嬉しさの余り一刀さんに抱きついちゃいました。
「ほら、桃香も食べてみなよ。美味しいぞ」
「はい!」
そう言われながらも、私は一刀さんに見えないようにお弁当箱の蓋をあけて食べ始めました。
「ん?どうしたんだ桃香」
「え!な、なんでもないですよ?あはは」
「……はい」
「?」
一刀さんは手を差し出してきたので首を傾げると、
「桃香のお弁当見せて」
「ふえ?!な、何でですか?」
「ん~……なんとなく、かな」
一刀さんは笑顔で答えましたが今回ばかりはそれに答えることは出来ません。
「だ、ダメです」
自分のお弁当は一刀さんから遠ざける。
見せられないよ……こんなの、
「む~……あ、愛紗!」
「え?愛紗ちゃん?!……誰も居ないですよ?」
一刀さんが指を指したので指した方に目線を向けても誰も居ませんでした。
「隙あり!」
「ああ?!か、返してください!」
「おっ!こっちもうまそうだな、あーん」
「だ、だめーーーー!」
「ぱくっ、もぐもぐ」
一刀さんは焦げた卵焼きを口に放り込み食べちゃいました。
「うん、少し焦げてるけどこれもうまいな」
「うそです。焦げてるのに美味しいはずないですよ」
「そんな事無いよ。桃香の気持ちが一杯詰まってるんだから、美味しくないはずないだろ?」
「私の、気持ち?」
「そうさ、だって、俺の為に作って来てくれたんだろ?」
「はい」
「料理はさ、食べて貰いたい人の事を思って作るとすごく美味しくなるんだよ」
「食べて貰いたい人の事を思って作る……」
確かに、一刀さんに美味しいって言って貰いたくて一生懸命に作った。
「ほら、桃香。あーん」
「ええ?!」
「あーん」
「……」
か、一刀さんにあーんをして貰えるとは思わなかったよ。だ、誰も見てないよね?
「あ、あーん……ぱく」
周りを見回しておずおずと一刀さんが差し出す卵焼きを口に入れる。
「どう?」
「はい、少し苦いですけど……甘くて美味しいです♪」
一刀さんはそれを聞いて微笑んでくれました。
その後、逆に私から一刀さんにあーんをすると一刀さんは恥ずかしそうに口をあけてくれました。
とても楽しいお弁当も食べ終わると、待ち構えていたかのように不動さんが姿を現して私と一刀さんはビックリしました。
「北郷殿、このような場所にいたのでござるな。ふむ、どうやらお昼は食べ終わった様子。では、食後の稽古に付き合っていただくでござるよ」
「ち、ちょっと待ってください!不動先輩!なんでここがわかったんですか?!」
不動さんは一刀さんの襟首を掴んで連れて行こうとしてピタリと立ち止まる。
「それはだな……」
「「そ、それは?」」
私と一刀さんは固唾を呑んで次の言葉を待つ。
「最初から見ていたからに決まっているだろ」
「「……ええええええええ?!」」
さ、最初から?!え!そ、それじゃあ!
「中々初々しいではござらんか、桃香殿は手作り弁当がうまく出来ているかと不安になる仕草がなんとも愛らしい姿でござったな」
「北郷殿は、彼女の手作り弁当を美味しいと舌鼓をし。さらにはお互い箸での口移しとはいやはや、最近の若者は大胆でもあるのだな」
「あわわわわ!」
「わー!言わないでください!不動先輩!」
もう、顔が真っ赤になって卒倒寸前の所を不動さんがさらに追い討ちをかけてきました。
「『はい、少し苦いですけど……甘くて美味しいです♪』とは、私も一度は言って見たいものでござるな」
(ボンッ!)
「ふにゃ~~~~~」
(バタッ)
「と、桃香?!」
「おっと、少しからかいが過ぎたでござるかな」
私は頭から煙を出してその場に倒れてしまいました。
「ん……ここは」
目が覚めると白い天井が目に入ってきた。
「あ、目が覚めたんだね」
「一刀さん?!」
一刀さんが安心したように微笑んでいました。
「私どうして……」
「不動先輩が桃香に謝っておいてくれって、『からかい過ぎた、桃香殿にはすまぬことをしたでござる』ってさ」
そうでした、不動さんに恥ずかしいこと言われて……あれ?
「あ、あの、一刀さん」
「ん?どうかした?」
「私、どうやって保健室に運ばれたんですか?」
「え、それは、俺が抱き抱えてだけど」
「……え?ええええええ?!}
「うわ!ど、どうしたんだ?」
え?ええ?か、一刀さんは今なんて言ったの?私を抱き抱えて?え?ええ?!
私が一人で悶絶していると一刀さんが、
「ご、ごめん!俺、何か悪いことしたかな?」
「ふえ?!ち、違うよ!一刀さんは悪くないよ!」
勢い良く手を振りそれを否定する。
「そう?ならいいだけど」
「あ、あの一刀さん」
「ん?なんだい?」
「お、重くありませんでした、か?」
うぅ~。私、何聞いてるんだろう。
「全然そんな事無かったよ」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、桃香は痩せていると思うよ」
よかった……一刀さんに太ってるって言われなくて。
その後、私達は少し保健室で休憩した後、下校することにした。
「本当に大丈夫か、桃香?」
「うん、平気だよ。一刀さんは心配しすぎだよ」
一刀さんは、私の体を心配してか数分置きに聞いてきます。
「でもさ、心配だからさ」
一刀さんは本当に心配そうな顔をしてくれている。
「本当に大丈夫だよ。あ、一刀さん!あれ食べましょう」
「と、桃香、そんなに引っ張らなくても!」
「早く早く一刀さん!」
一刀さんを急かすように手を引っ張って目的の場所に走り出す。
「わぁ~!美味しそう!一刀さん、美味しそうですね!」
私は目を輝かせてショーケースに飾られている作り物のクレープを眺める。
「何が食べたいの?」
「そうだな~。イチゴも良いけどチョコバナナも捨てがたいな~。ん~!選べないよ~」
「ははは、それなら……すいません。イチゴカスタードとチョコバナナください」
「ええ?!一刀さん!」
「選べないなら二つ買えばいいんだよ」
一刀さんは微笑んで、店員さんに注文をしました。
「で、でも、お金……」
「ここは俺が出すから良いよ」
「そんな!悪いですよ。半分は私が……」
財布を出そうとすると一刀さんがそれを手で抑えてきました。
「いいからいいから」
「……」
手を抑えられてしかも、笑顔を向けられたら何も言えなくなっちゃうじゃないですか。
私は微笑む一刀さんの顔を見てるのが恥ずかしくて目線を外した。
「お待たせしました。イチゴカスタードとチョコバナナになります」
「あ、すいません」
「またのお越しをお待ちしております」
店員さんは笑顔で挨拶をして一刀さんが振り向いた時に私のほうを向くと、
「いい彼氏さんね」
「ふえ?!あ、ありがとう……ございます」
どうやら、店員さんは一刀さんの事を彼氏と勘違いしたみたいです。
彼氏だったら良いんだけどな~。
私は一刀さんを見て溜息を一つついた
「はぁ~、きっと雪蓮さんと付き合ってるんだろうな。あんなに抱き付いたりキスしたりしてるんだもん……キス……」
自分の唇を少しなぞる。
一刀さんは、私とキスしたことどう思ってるのかな……いやだったのかな?それとも……
「おーい、桃香。どうしたんだ?」
一刀さんはついて来ていない私に気づいて、振り向き私を呼んでいました。
「ごめんなさ~い」
私は考えるのを止めて一刀さんの下へと駆け出した。
「はい、桃香」
「ありがとう一刀さん。あむ……ん~!あま~い♪」
クレープを受け取り一口食べると口の中に甘すっぱい味が口の中に広がった。
「そっか、そう言えばここのクレープ屋で前にも一緒に食べたことあったな」
「あ、そう言えばそんなことありましたね」
「あの時は桃香がチョコバナナで俺がイチゴカスタードだったな」
それは一刀さんが事故で腕が仕えなかった時のことだった。
「良く覚えてますね。確か、七月でしたよね」
「桃香も良く覚えてるな。あの時は、左腕が使えなくて結構不便だったんだよな」
一刀さんとのことは何でも覚えてますよ。夏休みの別荘での出来事とか、大切な思い出です。
当時の事を色々思い出して少し胸の辺りが温かくなるのを感じた。
「ははは、桃香はあの時と今も変わらずおっちょこちょいだよな」
「あ~!酷いですよ。私だって成長してるんですから、いつまでもおっちょこちょいのままじゃないんですからね!」
少し頬を膨らませると一刀さんは笑いながら頭を撫でてきました。
「そうやって頭を撫でても許しませんよ」
「それは残念だな」
残念だといいながらも撫でるのをやめない一刀さんに私もつい頬を緩めて微笑む。
「も~、一刀さんったら残念っていいながらまだ撫でてるじゃないですか~」
呆れたように見せながらも私は内心ではとても喜んでいた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもの。それは、私達にも言えることでした。
「もうこんな時間か」
あたりに黄金色が広がっていた。
昼間は子供達で賑やかだった公園も一人、また一人と両親と手を繋ぎ家へと帰っていった。
「誰も居なくなっちゃいましたね」
「そうだね。俺達も帰ろうか」
一刀さんはベンチから立ち上がり手を差し出してくれました。
「……」
私はそれを掴むことができなかった。
掴んじゃったら今日がこれで終わるような気がしたから。
「……もう少し歩こうか」
一刀さんは私が思っていることが分かったのか優しく微笑んでいました。
「はい!」
一刀さんの手を取り私は今出来る精一杯の笑顔を見せた。
一刀さんと夕焼け空の中、街を散策する。
たったそれだけでも私の心は満たされていく。
やっぱり雪蓮さんにも負けたくないな……
横を歩く一刀さんをチラリと盗み見る。
「……」
一刀さんはどんな女の子が好みなのかな?やっぱり雪蓮さんみたいな積極的な娘なのかな?
聞いてみたいけど少し怖い。
そんなことを考えていると不意に一刀さんが立ち止まった。
「どうしたんですか、一刀さん?」
一刀さんはすまなそうな顔をして、
「ごめん、そろそろ寮の門限なんだ……」
「あ……」
そうでした。一刀さんは寮住まいだったのを忘れてました。
一刀さんは本当にすまなそうにして手を離してしまった。
「それじゃ……また、学校でね」
「う、うん……」
一刀さんは笑顔を向けて別れの挨拶をして寮へと続く道を帰っていきました。
「……っ!一刀さん!」
「え?」
私は一刀さんの名前を呼んで呼び止めていた。
「どうかした?」
「……」
どうしよう……思わず呼び止めちゃったけど……
戸惑う私に一刀さんは待っていてくれていた。
も、もう、なるようにしかならないよね!
「一刀さん、ちょっとの間、目を瞑ってくれますか?」
意を決して一刀さんに伝えた。
「?わかった……これでいいか?」
一刀さんは疑りもせず言われた通りに目を瞑ってくれました。
よし、私!勇気出して!
自分を勇気づけるように両手を力強く握り締めた。
「えい!」
「んっ?!」
一刀さんは驚いて目を見開くと目と目が合った。
口から離れると一刀さんは放心していました。
「きゃ~~~~っ!」
「え、桃香?」
私は恥ずかしくなり頬に手を当てて人ごみの中へと紛れた。
あ~、恥ずかしかった……だって、あんな所で一刀さんが目を開けるんだもん。
「……えへへ♪」
さっきの行為を思い出してはにかむ私。
「うん、今日は占い通り最高の一日だったよ。あ、今日のお夕飯は少し奮発しちゃおっかな~♪」
私は夕日の中をスキップをして幸せに浸っていた。
葉月「ども、今回のお話は如何だったでしょうか?」
桃香「えへへ、なんだか照れちゃうな♪」
葉月「あれ?雪蓮はどうしたんですか?」
桃香「雪蓮さんは、なんだか持ってくるものがあるから伝えといてくれって言われましたよ?」
葉月「なんだろう、すごく不安になるんですけど……」
桃香「それより、今回は更新遅れたのはなんでなんですか?」
葉月「はい、ぶっちゃけますと桃香のストーリーが中々浮かんで来なくて遅れてしまいました」
桃香「なんでですか?」
葉月「それは桃香がおっちょこちょいなだけでそれ以外……な、なんでもないですよ!」
桃香「そこまで言ってて、なんでもないはないんじゃないかな~?」
葉月「笑顔で迫ってこないでください!」
桃香「えへへ、逃がしませんよ~~♪」
雪蓮「あら、随分と賑やかね」
葉月「雪蓮さん!助けて!」
桃香「あ、雪蓮さん!」
雪蓮「はぁ~い、桃香。伝言はちゃんと伝えてくれたみたいね」
桃香「はい、ちゃんと伝えましたよ。ところでそれはなんですか?」
雪蓮「これ?これはね……」
葉月「あ、あの、雪蓮、さん?なぜに私を睨んでいるのでしょうか?」
雪蓮「あら、覚えが無いのかしら?」
葉月「まったく持って見当がつきません!」
雪蓮「なら教えてあげる。なんで今回の話で私はあんな短い登場なのかしら?」
葉月「え、そ、そんなことでですか?!」
雪蓮「そんなことでよ。桃香、葉月を抑えて頂戴」
桃香「は~い♪」
葉月「な!?二対一とは卑怯な!」
雪蓮「卑怯でもなんでもいいわ。覚悟なさい」
葉月「い、いやあああぁぁぁぁっ!ん~~~~っ!」
雪蓮「さ、この筒に入れるわよ」
桃香「これは何なんですか?大砲?」
雪蓮「あら、察しが良いわね。なんでもこれで人が飛べるらしいのよ」
桃香「へ~、すごいんですね」
葉月「もが~~~っ!」
雪蓮「うるさいわね。さっさと飛んじゃいなさい♪」
(どーーーーんっ!)
桃香「わー!本当に本当に飛んで行っちゃいましたね……あ、落ちた」
雪蓮「ま、葉月の事は放って起きましょう。次回はこの私の話よ」
桃香「いいな~、雪蓮さんは本編でも主役なのに拠点でも書いてもらえるなんて」
雪蓮「ふふふ♪それが私の実力よ」
桃香「ふえ~。私も頑張らないと……」
雪蓮「どれじゃ、みんな!また次回をお楽しみにね!」
桃香「バイバ~イ」
葉月「はぁ、はぁ……酷い目に遭った」
琳「あら、ならもう少し酷い目に遭ってもらおうかしら?そうよね。愛紗、優未」
愛紗「そうですね。少しお灸をすえておきましょう」
優未「あたしなんて登場すらしてないんだよ!少しどころじゃないんだから!」
葉月「ひいいいぃぃぃぃっ!」
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更新が遅れて申し訳ありませんでした。
桃香の話を考えていて時間が掛かってしまいました。
話は変わりますが、萌将伝のオフィシャル通販が始まりましたね。
私はオフィシャルで予約したのでフルカラー本が楽しみです。
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