ハレルヤが言うのだ。
あの気難しく短気な弟が。
普段のあの尖った視線ではなく、嬉しそうに柔らかに目を細めて。
とても幸せそうな、けれどほんの少しの戸惑いをちらつかせて。
“ライルに好きだと言われた”と。
その言葉が、その表情が、僕の心を抉っていくとも知らないで。
彼が愛してやまない双子の弟に恋人が出来たのは数週間ほど前の事。
弟自らの口から報告を受けたアレルヤ。それ以前から二人の気持ちは少なからず知っていたのだけれど敢えてそれは口にはしない。
その美しい弟は、ここ数日で更に艶めいて、色気を纏うようになった。
嗚呼、とうとう二人は繋がってしまったのだと、アレルヤは冷静に感じ取った。女じゃなくても、恋人と繋がればこうも変わるのか、そう思わずにはいられなかった。
ずっと一緒だと思っていた弟は今はとても遠く感じられて、心にぽっかりと穴があいたような感覚に捉われてしまう。
さして弟、ハレルヤの態度が変わったわけではない。だが確実に、兄である自分の知らない青年へと変容していくのだ。
あの素直じゃない弟がライルの話になるとそわそわとして、まるで女のよう。
それほどに、ハレルヤとライルは深い絆で結ばれているのだろう。
では、アレルヤとハレルヤは?
両親を亡くしてからずっと二人で生きてきて、この先も一生離れることはないのだと思い込んでいたアレルヤにとって、ハレルヤの行動一つ一つが裏切りに思えて仕方がないのだった。
「ねぇ、ハレルヤ。明日なんだけど…。」
「あ?…あー、わりぃ。明日はちょっと……。」
そう言って気まずげに目を逸らす彼。もう慣れてしまったその反応。
また、明日もデートかい?そう言いかけてアレルヤはやめた。辛くなるのは自分自身だから。
「あぁ、わかった。気にしないで、明日の買い物は僕一人で行くから。」
物分かりの良い振りをしてにこりと笑みを浮かべれば弟は無意識にだろうが安心したような表情になる。
何故気づいてくれないの。僕はこんなにも辛いのに。
同じ血肉を分け合って生まれたはずの僕らは、
今では別の生き物なのだ。
だからハレルヤにアレルヤの思いは伝わらない。
悲しい思いに打ちひしがれながらもそれを表に出すことなくアレルヤは振る舞う。もうそれすら慣れてしまった。
二人が付き合い始めた頃のような動揺は見せないことを覚えていた。
「代わりにさ、今度の日曜出掛けようぜ。いい店見つけたんだよ、最初に一緒に行くのはアレルヤがいい。」
「ライルじゃなくて…?」
不意の弟の言葉に軽く首を傾げながら軽い皮肉を込めて返せば、それに気づいたのかハレルヤは少しむくれたような顔になる。
「バッカ、おめぇと行きたいっつってんだろーが。ライルとなんかそのうち行きゃあいいんだよ。」
沸々と沸き起こっていたアレルヤの焦燥がハレルヤのそのたった一言で静まってしまった。
本当に、彼は僕を一喜一憂させる天才だ。アレルヤは苦笑しつつそう思う。
「嬉しいな。じゃあ日曜、一緒に出掛けよう。ハレルヤ。」
先程の苛立ち等とうに消えうせてしまったアレルヤは心底嬉しそうに目を細めた。
…で、また数日後には初めに戻る。終わりがない感じで。アレルヤは延々と報われない片思い。
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ライハレ←アレ。アレハレ双子、現代パロ設定。ライルは名前のみ。