「隊長の・・・バカー!!」
ドンガラガシャーン!!
いつも通りのある日、北郷隊の警備の詰め所に怒号と轟音が鳴り響いた。
声と破壊音の主は北郷隊の良心、楽進こと凪である。
そして破壊音と共に北郷隊の隊長にして天の御使いである北郷一刀が飛び出してきた。
「凪!!俺が悪かった!話を聞いて・・・」
扉が吹き飛んで無くなった部屋の向こうから同じ北郷隊の二人が出てきた。
「あらぁ隊長がわるいわ!」
「頭冷やして来やがれなの、このクソ虫やろーなの!」
関西弁口調の李典こと真桜、不思議な口調にキツいセリフの干禁こと沙和である。
「ちょっ待って、真桜!沙和!」
ガチャガチャ! バタン!!
壊れた扉を無理矢理治して締め切ってしまったようである。
「話聞いてって・・・」
そんなところに見知った二人が通りかかった。
「おや北郷、・・・こんなとこに泥まみれでどうした?」
「兄さまどうしたんです?」
「流琉、秋蘭・・・」
バタッ!
「おい北郷!どうしたんだ!しっかりしろ!!」
「にっ兄様!」
段々と意識が薄くなる中、聞こえたのは秋蘭と流琉の声だった。
(…なんだかまぶしいな)
はっきりとしない意識の中、時折来るまぶしさに目をあける。
「・・・ん」
ぼんやりとしていた意識がはっきりしてくる。
どうやら気を失っていたようだ。
まぶしいと思っていたのは木漏れ日のようだ。
「ここは…」
すると頭上から声が降ってきた。
「おや、北郷目を覚ましたか」
目に入ったのは秋蘭の顔だった。
「…え」
横に寝かせられ目の前に秋蘭の顔が見えるのがわかった。
と、同時に後頭部に柔らかな感覚を感じる。
(まさか…)
一刀は思いきって聞いた。
「なあ・・・秋蘭」
「何だ?」
「なぜ膝枕?」
そう俺は今秋蘭に膝枕をされているのである。
当の秋蘭は実に楽しそうな笑みを浮かべて。
「なんだ?北郷は私の膝枕がイヤか?」
「そんなことは・・・」
いやなわけがない、むしろ願ったりだ。
「まぁもうしばらく寝ておけ、頭を強く打ったみたいだからな」
確かに頭がズキズキと痛む、凪に吹っ飛ばされてどこかで打ったようだ。
「よろしくお願いします」
「ふふっ、素直なのは良いことだぞ」
そんな時、近くから声が聞こえた。
「あーっ!兄様大丈夫ですか!?」
流琉だ。小走りながらこちらに向かって走ってくる。
その手には水桶と手ぬぐいがある。
「秋蘭様、水と手ぬぐい持ってきました」
「おおすまんな、流琉」
流琉は手ぬぐいを水に漬けて堅く絞り俺の額に乗せてきた。
心地よい冷たさに少しばかりか痛みが引いていく。
「ありがとな、流琉」
「いえ、そんな・・・」
流琉は少し顔を赤らめて恥ずかしげに言った。
「兄様、大丈夫なんですか」
流琉が心配げに訪ねてきた。
一刀は心配かけまいと笑顔を作るも、苦痛に顔が歪んでしまう。
「まだ少し気分が悪い・・・こりゃ脳震盪かな」
「のうしんとう?」
「北郷、なんだそれは?」
秋蘭達が聞き返してきた。
この世界では脳震盪という言葉自体はないようだ。
「ん~頭を強く打って気分が悪くなることかな?きっと」
「頭を打ってふらふら~ってことですか?」
「まあそういうことかな」
と言うと一刀の顔が痛みに歪んだ
「っつ…」
頭がくらくらする。
相当強く打ったようだ。
「まあなんにせよ頭を強く打っているんだ、無理はするな」
秋蘭は心配げ一刀に話しかけた。
「そうさせてもらうよ」
二人の笑顔を見て一刀は詰所でのことを忘れ今は二人の優しさに浸っておこう、そう思い再び目を閉じた。
了
二作目です。
前回コメントしていただいた方々、閲覧していただいた方々ありがとうございます。
前回少し湿っぽくなったのでできるだけ明るい話にしようと考えました。
ということでしょっぱなから中を舞う主人公ということです。
一応前回の続きではなく一刀消失前ということにしています。
なんか話短くない?と思った方、これは続きものとして作っていますので短さはご了承ください。
まあ初の続きものなのでどのくらいかかるかわかりませんが読んでいただくと幸いです。
しかし大人な女性って…かっこいいですよね。
魏のメンツで二番目に好きなキャラです、秋蘭。
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前回とは別話でちょっとした続きものにしてみました。
どうぞご覧ください。