その後、俺達は重たい足を動かして、城へと歩き始めた。
相変わらず先方は桂花で、かなりのスペースが空いている。
人九人分くらいだろうか…。
「…………」
「…………」
沈黙。
ただひたすらに沈黙。
――あの時桂花、泣いてたよな?
!?…ば、馬鹿じゃないの?
誰があんたなんかのために泣くのよ。くだらないから話しかけないで…!――
という桂花の最後の言葉以来、会話を交わしていない。
一刀から話しかけてはいるが一向に無視され、現在に至る。
仲良くなった…と一瞬でも思った一刀はとても複雑な心境だ。
中途半端な関係がより綿密になった感じであった。
「…………ぁ………ぅ…。」
「…ん?どーした桂花?また蛙か…。」
突然止まった桂花に疑問を投げかける。
「…なんでもないわよ。」
少し驚いたように、いつも通りの強い口調で否定した。
それきりまた会話は繋がらなかった…。
――魏。
二人は城へたどり着き、重たい足にさらに重りを足した足で、王のもとに報告にいった。
その王はこう言っていた。
「先に城へ帰っていなさい。」
「先に」どころか翌日の朝に帰ってきているので相当なご立腹であろう。
二人は思う。
怒っていれば、地獄。笑っていれば、地獄の地獄だと。
どちらにしろ厳しい罰は待っているだろうが、前者のほうがまだ希望がある…が。
なんとなくだが、華琳は笑っているように思えた。
「…お疲れ様。随分と長旅だったのね。どう?楽しかった…?」
案の定、華琳はとてつもないとびきりの笑顔であった…。
汗が止まらないほどの恐怖。
身も凍る戦慄が二人を駆けた。
先に口を開いたのは桂花で、当然彼女は一刀を売った。
華琳はただ頷いているだけで、話なんて聞いちゃいない。
「ですから、悪いのは全てこの…」
「ふーん。そう。朝帰りするほど仲が良いのね。
それじゃあ今日は、二人はずっと抱き合っていること。それが罰でいいわ。
どう春蘭。こんな易しい罰はないと思うのだけれど…。」
「さすがです華琳様っ。なんと慈悲深い!」
近くにいた春蘭は前々から用意していたセリフのように棒読んだ。
一刀は瞬時に同じく近くにいた秋蘭に助けを求めたが、首を横に振られた。
隣にいる桂花は心底震えていた。
口をかたかたしているだけで、怯えている。
「か、華琳様。そ、それだけは…。他の罰ならいくらでもお受けしますから。」
精一杯振り絞った桂花の力無い反論。
華琳はそれでも笑顔を絶やさなかった。
「そう…。仕方ないわね…。」
「華琳様…!」
「それじゃあ、今ここで、接吻しなさい。それで妥協するわ。」
一瞬なんと言ったか分からなかった。
だが、少しして華琳の言葉が頭の中で復唱された。
接吻…。ようは口づけだ。
そんなことできるわけがない。
ましてや、桂花が男である一刀に、それに皆が見ている前で。
言葉を失くした桂花を横眼で確認し、一刀は静かに怒りを感じた。
「どう?どっちにするの?」
うつむいたまま顔を上げず、唇を噛みしめている彼女を再確認し、一刀が口を開く。
「どっちもなにも…、どっちも受けられない。」
それまでずっと桂花を見ていた華琳が彼を向く。
「…それはつまり、私に逆らうってこと…?」
「……。知ってるだろ。桂花は男が苦手なんだ。
華琳が言う罰ってのは、言うなれば桂花に対する一方的な罰だ。公平じゃない。」
負けじと一刀は華琳に強い口調で対局する。
「それに、桂花には仕事が溜まってるんだ。だから、罰は俺が肩代わりする。
それで今回は見逃してくれないか…。」
うつむいていた桂花は顔を上げ、華琳は笑顔を緩めた。
さらに華琳が反発しようとした際に、一刀は頭を下げそれを遮った。
桂花は一刀の名を弱弱しく呼び、手を握り締めた。
「…っはぁ~。まったく。それだと公平じゃないでしょ?
………まぁ今回は、それぞれ事情があったみたいだし。少しだけ罰を軽くするわ。
でも一刀。罰は公平に受けるものよ。だから、二人には同じ罰を与える。それでいいわね?」
ようやく華琳の顔が普段の顔つきに戻った。
当然この条件を二人は受ける。
春蘭も秋蘭も心なしか、安堵の表情を見せていた。
「ふぅ。何とか回避したぞ。よかったな、桂…って。あれ?」
一刀が隣を見たとき、もうすでに彼女の姿は見れなかった。
「ふふ。面白かった。」
小言でそう言った華琳の一言に殺意が湧いた一刀であった…。
どーもk,nです。
もう少し続けて書こうかなと思ったのですが、
句切れのいいところで3話を終わらせました。
たぶんもう1話くらい続くのでまたのご視聴よろしくお願いします。
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主に桂花メインの話です。3話目です。