No.134989

桂花と一刀 その3

k.nさん

主に桂花メインの話です。3話目です。

2010-04-07 20:27:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5843   閲覧ユーザー数:4872

その後、俺達は重たい足を動かして、城へと歩き始めた。

相変わらず先方は桂花で、かなりのスペースが空いている。

人九人分くらいだろうか…。

 

「…………」

 

「…………」

 

沈黙。

ただひたすらに沈黙。

 

――あの時桂花、泣いてたよな?

 

!?…ば、馬鹿じゃないの?

誰があんたなんかのために泣くのよ。くだらないから話しかけないで…!――

 

という桂花の最後の言葉以来、会話を交わしていない。

一刀から話しかけてはいるが一向に無視され、現在に至る。

 

仲良くなった…と一瞬でも思った一刀はとても複雑な心境だ。

中途半端な関係がより綿密になった感じであった。

 

「…………ぁ………ぅ…。」

 

「…ん?どーした桂花?また蛙か…。」

 

突然止まった桂花に疑問を投げかける。

 

「…なんでもないわよ。」

 

少し驚いたように、いつも通りの強い口調で否定した。

それきりまた会話は繋がらなかった…。

 

 

――魏。

二人は城へたどり着き、重たい足にさらに重りを足した足で、王のもとに報告にいった。

その王はこう言っていた。

 

「先に城へ帰っていなさい。」

 

「先に」どころか翌日の朝に帰ってきているので相当なご立腹であろう。

二人は思う。

怒っていれば、地獄。笑っていれば、地獄の地獄だと。

どちらにしろ厳しい罰は待っているだろうが、前者のほうがまだ希望がある…が。

なんとなくだが、華琳は笑っているように思えた。

 

 

「…お疲れ様。随分と長旅だったのね。どう?楽しかった…?」

 

案の定、華琳はとてつもないとびきりの笑顔であった…。

汗が止まらないほどの恐怖。

身も凍る戦慄が二人を駆けた。

先に口を開いたのは桂花で、当然彼女は一刀を売った。

華琳はただ頷いているだけで、話なんて聞いちゃいない。

 

「ですから、悪いのは全てこの…」

 

「ふーん。そう。朝帰りするほど仲が良いのね。

それじゃあ今日は、二人はずっと抱き合っていること。それが罰でいいわ。

どう春蘭。こんな易しい罰はないと思うのだけれど…。」

 

「さすがです華琳様っ。なんと慈悲深い!」

 

近くにいた春蘭は前々から用意していたセリフのように棒読んだ。

一刀は瞬時に同じく近くにいた秋蘭に助けを求めたが、首を横に振られた。

 

 

隣にいる桂花は心底震えていた。

口をかたかたしているだけで、怯えている。

 

「か、華琳様。そ、それだけは…。他の罰ならいくらでもお受けしますから。」

 

精一杯振り絞った桂花の力無い反論。

華琳はそれでも笑顔を絶やさなかった。

 

「そう…。仕方ないわね…。」

 

「華琳様…!」

 

「それじゃあ、今ここで、接吻しなさい。それで妥協するわ。」

 

一瞬なんと言ったか分からなかった。

だが、少しして華琳の言葉が頭の中で復唱された。

接吻…。ようは口づけだ。

そんなことできるわけがない。

ましてや、桂花が男である一刀に、それに皆が見ている前で。

言葉を失くした桂花を横眼で確認し、一刀は静かに怒りを感じた。

 

「どう?どっちにするの?」

 

うつむいたまま顔を上げず、唇を噛みしめている彼女を再確認し、一刀が口を開く。

 

 

「どっちもなにも…、どっちも受けられない。」

 

それまでずっと桂花を見ていた華琳が彼を向く。

 

「…それはつまり、私に逆らうってこと…?」

 

「……。知ってるだろ。桂花は男が苦手なんだ。

華琳が言う罰ってのは、言うなれば桂花に対する一方的な罰だ。公平じゃない。」

 

負けじと一刀は華琳に強い口調で対局する。

 

「それに、桂花には仕事が溜まってるんだ。だから、罰は俺が肩代わりする。

それで今回は見逃してくれないか…。」

 

うつむいていた桂花は顔を上げ、華琳は笑顔を緩めた。

さらに華琳が反発しようとした際に、一刀は頭を下げそれを遮った。

 

桂花は一刀の名を弱弱しく呼び、手を握り締めた。

 

「…っはぁ~。まったく。それだと公平じゃないでしょ?

………まぁ今回は、それぞれ事情があったみたいだし。少しだけ罰を軽くするわ。

でも一刀。罰は公平に受けるものよ。だから、二人には同じ罰を与える。それでいいわね?」

 

ようやく華琳の顔が普段の顔つきに戻った。

当然この条件を二人は受ける。

春蘭も秋蘭も心なしか、安堵の表情を見せていた。

 

「ふぅ。何とか回避したぞ。よかったな、桂…って。あれ?」

 

一刀が隣を見たとき、もうすでに彼女の姿は見れなかった。

 

「ふふ。面白かった。」

 

小言でそう言った華琳の一言に殺意が湧いた一刀であった…。

 

 

 

どーもk,nです。

もう少し続けて書こうかなと思ったのですが、

句切れのいいところで3話を終わらせました。

 

たぶんもう1話くらい続くのでまたのご視聴よろしくお願いします。

 

 

 


 
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