No.133925

恋姫無双 3人の誓い 第四話「忍び寄る悪」

お米さん

第四話となります。ご感想やご指摘どんどんお待ちしています!

2010-04-02 21:39:20 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2593   閲覧ユーザー数:2354

俺は華琳という子に連れられて(引っ立てられて)、街の役所みたいなところに来ていた。そこで俺は、色々と尋問されているのだが・・・。

「なら、もう一度聞く。名前は?」

「北郷一刀。」

「では北郷一刀。おぬしの生国は?」

「日本。」

「・・・この国に来た目的は?」

「分からない。」

このように俺は、正直に真実を言っているだけなのだが、この娘達はまったく理解できてない様子だ。

 

 

 

 

 

「埒があかないわね、春蘭。」

「はっ!拷問にでもかけましょうか?」

「だから!拷問されようが何されようが、今言ったこと以上のことは分からないし、知らないんだってば!」

まったく前後の記憶の無い俺は、なぜかあの荒野にいただけなんだから!

「本当に埒があかないわね。」

「後はこやつの持ち物ですが・・・」

 

 

 

 

 

 

俺の持ち物なんて、服以外だと、小銭が少々だけなんだけど・・・。

「この菊の彫刻はなかなか見事なものね。これは、あなたが作ったの?」

「いや、ただの百円玉・・・お金だし。」

「お金?その割には、見たことの無い貨幣だけど・・・そのにほんという国はどこにあるの?」

「それはこっちが聞きたいよ。そもそもここ、どこの国だよ・・・日本でも中国ないんなら一体どこだよ。モンゴルか?インドか?」

この部屋に連れてこられるまでに、町並みもちょっとだけ見られたんだけど・・・。

 

 

 

 

 

どう見ても、ここが中国じゃなかったらどこが中国なんだ?と言わんばかりの中華風な建物ばかり。ホント、ここどこなんだ?

「貴様ぁ・・・っ!こちらが下手にでていれば、のらりくらりとワケの分からんことばかり・・・!」

「いや、あんたは下手にでてないだろ。」

「なんだと、貴様ぁっ!」

「はぁ・・・春蘭。いい加減になさい。」

「で、でもぉ・・・」

華琳の言葉に春蘭はシュンと縮こまる。

 

 

 

 

 

「あと、一つお願いがあるんだけど・・・」

「なに?」

「君達の名前、教えてくれないかな?今呼び合っているその名前・・・真名っていうんだろ?」

「あら。知らない国から来た割には、真名のことは知っているのね?」

そりゃあ、身をもって痛感しましたから・・・。

「さっき話した、俺を盗賊から助けてくれた人達に聞いたんだよ。」

とりあえず、程立達の名前はこの場では出さないでおくことにする。あの龍玄さんって人も絡まれると面倒だって言ってたし、助けてもらって迷惑を掛けたんじゃ、こっちとしても目覚めが悪い。

 

「君の真名も、俺が呼んじゃだめなんだろ?」

「当たり前だっ!貴様ごときが華琳様の真名を呼んでみろ・・・。その瞬間、貴様の胴と首は離れているものと思え!」

・・・良かった。本当に良かった。この世界に来て初めて会ったのが、あの程立達にで。この春蘭って子が最初だったら俺、間違いなく死んでた。

「・・・だからさ、ずっと君、って言うのもなんだし。」

「そういえばそうね。私の名前は曹猛徳。それから彼女達は、夏侯惇と夏侯淵よ。」

「ふんっ。」

「・・・」

 

 

 

 

 

「・・・は?」

「聞こえなかった?」

「い、いや・・・ちゃんと聞こえたけど。ちょっと信じられなくてさ。」

だって、この女の子達が・・・?

「それ、通称とか、別名とか、仮名とか、そういうのじゃないよね?」

さっきの戯志才は明らかに偽名を使っていたし、仮の名前を使うって風習はないわけじゃないはず。

「何を馬鹿なことを。それとも貴様、私が父母からいただいた大切な名前を愚弄するつもりか?」

 

 

 

 

 

「い、いやいや!そんなつもりじゃないよ。・・・でもそれは、親が三国志が大好きだったから付けた、ってワケじゃないよね?」

「・・・三国志?なんだそれは?」

三国志も知らないのっ!?だって三国志っていうと、中国の一大古典だろ?中華風の名前で、三国志の登場人物の名前を使ってるくせして、中国の名前さえ知らなくて・・・。

「・・・え?」

い、いやまさか・・・。でも今までの話を聞くと、そうとしか思えないし、そう考えればつじつまは合う。つじつまは合うけど・・・。

 

 

 

 

 

でも、そんなことぁない・・・はず。

「三国志ってのはさ。ほら、魏の曹操とか、劉備とか孫権とかでてくる・・・」

「・・・はぁ?」

「・・・ん?」

二人一緒にハテナマーク。全然わからないらしい。

でも、曹猛徳だけならまだしも、夏侯惇や夏侯淵のセットときたら・・・ほとんど間違いない。

信じられないけど・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・どういうこと。」

「・・・何が?」

「どうしてあなたが、魏という名前を知っているの?」

「どうしても何も・・・曹操って言えば、魏の曹操ってのが定番だろ?」

魏の曹猛徳。三国志で主役級の活躍をする、乱世の奸雄。

でも、曹操と名乗る彼女は三国志の存在を知らなくて、部下に夏侯惇と夏侯淵がいて・・・。

 

「貴様、華琳様の名を呼び捨てするでない!しかも、魏だの何だの、意味不明なことばかり言いおって・・・!」

「春蘭。少し黙っていなさい。」

「う・・・は、はい・・・」

華琳の迫力に押され、しかたなく黙りこむ。

「魏というのはね。私が考えていた国の名前の、候補の一つなのよ。」

「・・・は?」

「どういう意味ですか・・・?」

夏侯惇と夏侯淵は何がなんだかさっぱりだった。

 

 

 

 

 

 

「まだ春蘭や秋蘭にも言っていないわ。近いうちに言うつもりだったのだけれど・・・」

やっぱり。ヒートアップする夏侯惇とは対照的に、答えに辿りついた俺の中身は、妙に落ち着いていて・・・。

「それを、どうして会ったばかりのあなたが知っているの!そして、私の名乗った曹猛徳ではなく、操という私の名を知っていた理由も!説明なさい!」

「まさかこやつ、五胡の妖術使いでは・・・!」

「華琳様!お下がりください!魏の王となるべきお方が、妖術使いなどという怪しげな輩に近づいてはなりませぬ!」

魏っていきなり使ってるし!

 

 

 

 

 

「そんなんじゃない!そんなんじゃないってば!話す!ちゃんと話すからっ!今の話で、いくつか分かったこともあるからっ!」

そう言って、なんとか剣を収めてもらって、事情を説明することになった。

 

 

 

 

 

 

「・・・で、結局それは、どういうことなのだ?」

「だから、俺はこの世界で言う・・・未来から来た人間らしいって事だよ。」

三国志の時代へ、タイムスリップ。マンガかSF小説でしか聞いたことのないその一言で、今までの俺に起こった理不尽な出来事の大半は、きっちりかみ合わせることができた。

「・・・秋蘭。理解できた?」

「・・・ある程度は。しかし、にわかに信じがたい話ですな。」

「俺だって全部信じてるワケじゃないよ。けどそう考えないと、つじつまが合わないことが多すぎるんだ。」

 

 

 

 

 

言葉が漢字のはずなのに日本も中国も知らないこと。三国志の存在を知らないこと。そして、曹操や夏侯惇達の存在。

けど、知らないのも当たり前だ。曹操や夏侯惇がいた時代には、日本も中国も三国志もあるわけがないんだから。

まぁ、真名の風習や、曹操達が女の子っていう分からないこともあるけど・・・事件全体からすれば些細な問題だろう。

 

「・・・ふむ。」

「この時代の王朝は、漢王朝だろ?今の皇帝はよく知らないけど、いちど新に滅ぼされかけて、そこから国を復興させた皇帝の名は・・・確か、光武帝。」

「ええ。そのあたりの知識はあるのね。」

「この間、学校で習ったからさ。」

「学校?」

「ええっと・・・みんなで集まって、いろんな勉強をするところ・・・かな。」

 

 

 

 

 

「私塾のこと?」

「まぁ、そんなもんだと思う。・・・日本はそれを個人じゃなくて国が運営して、国民全員に義務として勉強させてるんだ。」

「なるほど。最低限の学力を平均的に学ばせるためには、悪くない方法ね・・・」

「それで・・・だな。さっき言ってた漢王朝の出来事っていうのは、俺の世界じゃ、千年以上も昔の話なんだよ。」

「確かに、それならば・・・北郷が華琳様の考えていた魏という国の名を知っていても、説明がつくだろう。」

 

 

 

 

 

「だが・・・貴様はどうやってそんな技を成し遂げたのだ?それこそ、五胡の妖術ではないか。」

「それは分からないよ。何かの事故に巻き込まれたのか、本当にそういう妖術を掛けられたのか・・・俺が知りたいくらいだよ。」

第一、それがなぜ俺なのか・・・。頭がこんがらがってくる。

「・・・南華老仙の言葉に、こんな話があるわ。」

「な、なんだ突然。なんかろうせん・・・?」

聞き覚えのある人だな・・・?

 

 

 

 

 

 

「南華老仙・・・荘周が夢を見て蝶となり、蝶として大いに楽しんだあと、目が覚める。ただ、それが果たして荘周が夢で蝶となったのか、蝶が夢を見て荘周になったのか・・・誰にも証明できない。」

「あ・・・胡蝶の夢ってやつか。」

「へぇ~・・・大した教養ね。それも学校というやつのおかげかしら?」

「ああ、古文で習ったばかりだ。」

なんて役に立つんだ、学校制度。地獄の一夜漬けも捨てたもんじゃないな。

 

 

 

 

 

「な、ならば華琳様は、我々はこやつの見ている夢の登場人物だと仰るのですか!」

「そうは言っていないわ。けれど私達の世界に、一刀が迷い込んできたのは事実、と考えることも出来るということよ。」

「は、はぁ・・・」

「一刀が夢を介してこの世界に迷い込んできたのか、こちらにいた一刀が夢の中で未来のことを学んできたのかは分からない。もちろん、私達にもね。」

な、なんて理解が早いんだ・・・。さすが稀代の天才、曹操というべきか。

 

「・・・要するに、どういうことです?」

「諦めろ姉者。華琳様のもお分かりにならないことを姉者が理解しようとしても、知恵熱がでるだけだぞ。」

「春蘭。色々難しいことを言ったけれど・・・この北郷一刀は、天の国から来た遣いだそうよ。」

ああ、すっごく分かりやすい・・・。

「なんと・・・あの占いの天の御遣いが、こんな風采の上がらないやつなのですか!?」

 

 

 

 

 

なんか、春蘭はそれで納得してるっぽいんですけど!?

「で、何?その占いって?」

「この世が大いに乱れし時、天より三人の遣いが舞い降りる。一人は武神となりて悪を討ち、一人は慈愛をもって、民に安らぎを与え、一人は知識を与え、繁栄をもたらす。その三人が乱世を鎮めるであろう。・・・占い師管路の言葉だ。」

ん?じゃあ俺の他にも、あと二人もいるのか・・・。一体だれなんだろ。

 

 

 

 

 

「ってか、俺そんなすごい人じゃないんだけど・・・?」

「五胡の妖術使いや、未来から来たなんていう突拍子のない話よりも、そう説明した方が分かりやすくて済むのよ。・・・あなたもこれから自分のことを説明する時は、天の国から来たと、そう説明なさい。」

「どっちも似たようなもんだろ・・・?」

妖術だろうが天のなんとかだろうが、うさんくささの桁違いは同じだろうに。

「あら。妖術使いと呼ばれて、兵に槍で突き殺される方がマシ?」

 

 

 

 

 

「・・・天の遣いがいいです。」

まぁ、うさんくさいのも言い方一つ、ってことか。

 

「さて。大きな問題が解決したところで、もっと現実的な話をしても良いか?北郷。」

「ええっと・・・その、南華老仙の古書を盗んだ賊の話だっけ?」

そいつらを追って、曹操達はあの荒野を走っていたらしい。俺を見つけたのは、本当についでというか、たまたまだったわけだ。

「そうよ。あなた、そいつらの顔を見たのね?」

「俺が会った三人で確かならね。ちなみに俺が見たのは、頭領格らしいヒゲのおじさんと、チビと、デブの大男。ただし、連中の名前までは聞いてない。」

 

 

 

 

 

「・・・少なくとも、聞いている情報と外見は一致しているわね。・・・顔を見れば見分けはつくかしら?」

「特徴的な三人組だったからなぁ~。多分、顔や格好を見れば、すぐ分かると思う。」

「そう・・・なら私達の調査に協力なさい。」

「分かった。」

「ええっ!?随分と素直だな・・・」

「行くアテもないし、今の俺にできることなんて、曹操の調査に協力するくらいだろうし。」

何の手掛かりもないままいても、一文無しで野宿のやり方も知らない俺じゃ、行き倒れて死ぬだけだ。それよりは、なんであれ曹操のところで厄介になった方が遥かにマシだろう。

 

 

 

 

 

 

「・・・そうでもないわ。あなたが言う未来の知識、上手く使えば私の覇業の大きな助けになるでしょう。」

「ま、そりゃそうだろうね。」

「それにあなたの突拍子のない話を信じる人間も、そうはいないはずよ。」

古代中国のこの時代、タイムスリップなんて話をいきなり信じろって言われて信じるやつなんて・・・いないだろうなぁ。

「了解。なら、俺に利用価値があるうちは、せいぜい上手く使ってくれ。」

「良い心掛けね。なら、部屋を準備させましょう。好きに使うといいわ。

「ありがとう。本当に助かる。」

 

 

 

 

 

「ふふ・・・そうだわ。そういえば、一刀の真名を聞いてなかったわね。教えてくれるかしら?」

「うーん・・・そう言われても、俺のいた世界には、真名なんてないんだよな。・・・強いて言えば、一刀ってのが、俺の真名にあたるのかな・・・?」

「・・・っ!」

「な、ならば貴様は初対面の我々に、いきなり真名を呼ばせることを許していたと・・・そういう事か?」

 

 

 

 

 

「んー・・・まぁ、そっちの流儀に従うなら、そうなるのかなぁ?」

別に俺はなんて言われようと、気にしないけどな。

「そう・・・。なら、こちらもあなたに真名を預けないと不公平でしょうね。」

「へっ?」

「一刀。私のことは華琳と呼んでもいいわ。」

「か、華琳様・・・!こんなどこの馬の骨とも知れぬやつに、神聖なる華琳様の真名をお許しになるなど・・・!」

「なら、どうするの?春蘭は一刀の名を呼びたいとき、ずっと貴様で通すつもり?」

 

 

 

 

「アレとか犬とかお前でいいでしょうに。」

「いやいやいや!それはなんでもひどすぎますからー!」

俺はついツッコんでしまった。

「秋蘭はどう?」

「私は華琳様の決めたことになら従うまでだ。姉者は違うのか?」

「ぐ・・・っ。い、いや、私だってだな・・・!」

「なら、これから私の事は華琳と呼びなさい。良いわね。春蘭も。」

「は、はぁ・・・」

 

 

 

 

 

「それじゃ、よろしくな華琳。」

そして、俺は何も知らないまま、華琳と名乗る・・・自称、曹操のいる所に厄介になることになった。

一方その頃・・・。

 

「おや・・・こいつは・・・?」

そこには一刀や蒼介と同じ服装で、ぐっすりと荒野の上で眠っている少年がいた。

「・・・まさか、あのエセ占い師の言葉が本当だったとはな。くくくっ・・・」

「・・・よ、どうかなされたか?」

後ろから斧を持った黒装束の男が呼びかけてきた。両隣にも似たような服装の者が二人。

「いやなに。今日という日を大いに喜んでおってな。」

「・・・その少年は?」

「ああ、のちのち我らの駒になっていただく人形だ。大事に扱わんとな・・・」

男は口元を押さえながらにやけている、まるで死神が微笑んでいるように・・・。

 

そして男は少年を担いで、黒装束の男達と共に荒野から姿を消した。まるで最初からそこにいなかったかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※どうもお米です。今回の話の最後はけっこう重要になってきます。さてあの四人組はなんなのか!?お楽しみに!ご感想、ご指摘、どんどん待っています。それでは失礼します~。


 
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