No.133502

江東の覇人 拠点2

アクシスさん

お久しぶりです!

拠点の2つ目・・・今回は少し深めに戦闘描写をしてみました。

稚拙な部分もありますが、よろしくお願いします!

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2010-03-31 22:08:33 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2670   閲覧ユーザー数:2271

 

 

長閑な日差しが差し込む広場。

 

そこに、多くの兵士達が切磋琢磨と鍛錬する中で腹を抑える俺の姿があった。

 

さっき、蓮聖の持つ木刀が腹に食い込んだのだ。

 

「んー・・・何つうか・・・・・・お前、弱いな?」

 

「お前みたいな超人と一緒にすんな!!」

 

手加減してくれたようだが、それでもキツイ。

 

「どうする?今日は終わりにしとくか?」

 

明らかな挑発。

 

奥歯を噛みしめながら立ち上がり、木刀を構える。

 

「く・・・まだまだぁ!!」

 

「ほんと、根性だけは一人前なんだが」

 

「うるせぇぇえええ!!」

 

殆ど暴言に似た物を吐きながら、蓮聖に突進した。

 

事の起こりはついこの前。

 

蓮華の練習を見ていただけなのに、鍛えてやると訓練場に放り込まれた。

 

その日から毎日のように、雑務の間で稽古している。

 

だが・・・未だに一太刀も当ててない。

 

まぁ・・・そりゃあ当たり前と言ったら当たり前なのだが・・・・・・

 

何しろ、平和かつ情報経済化している現代の日本の学生と・・・

 

戦争絶えず、諸侯達が群雄割拠する中でも英雄と称される男・・・

 

それこそ天と地程離れている。

 

「はぁ・・・はぁ・・・くそ・・・・・・」

 

再び軽くあしらわれ、膝をつく。

 

もう体力的にも限界が迫って来ていた。

 

「一刀よぉ、少しは頭ぁ使え?お前の攻撃は真っ直ぐすぎんだよ」

 

「んな事・・・言ったって・・・・・・俺は戦闘自体経験してないんだよ・・・」

 

「にしては、素人には見えん素振りだったような気がしたが」

 

一応剣道部だったからな。

 

素人よりは強いと思うが。

 

「まずは基本だなぁ・・・お前、蓮華の事守りたいんだろ?」

 

「・・・ああ」

 

約束。

 

蓮華を守る。

 

その為には・・・力が必要だ。

 

少しだが、力が溢れ、立ち上がる。

 

その姿を見、蓮聖の頬が僅かに緩んだ。

 

「覚悟はあるようだな・・・・・・明命!!」

 

巡回をしていたのだろう・・・ちょうど通りかかった明命を蓮聖が呼ぶ。

 

「はい!何でしょう?」

 

「ちょっくら一刀を揉んでやれ。気絶しない程度で」

 

「ちょ・・・明命を相手にするのか!?」

 

流石に女の子に手を上げるのは・・・

 

「・・・あまり舐めんなよ?こと隠密戦闘となれば、明命の右に出る奴ぁこの国にはいねぇ。恐らく、森の中とかだったら俺でも勝てんだろうな」

 

そうでした。

 

彼女も立派な武将でした。

 

女の子だから・・・というのは男尊女卑というか男女差別というか。

 

反省。

 

「えと・・・じゃあ、明命。お願いできる?」

 

「あ、はい!でも・・・手加減できないかもですよ?」

 

「構やしねぇよ。その方が一刀の為になる」

 

と、自分の木刀を明命に手渡す。

 

「わかりました・・・では、一刀様!周幼平、参ります!!」

 

「ああ!!」

 

 

世界が反転した。

 

 

 

一瞬で懐に入られ、下がる暇なく一閃。

 

慌てて応対したものの、弾かれ、腕を取られて見事に投げられた。

 

浮遊感を感じながら、やっぱ強いなー・・・などと考える。

 

「ぐうぇ!」

 

蛙が潰れたような声を発しながら、俺は着地した。

 

「どうだ?」

 

「・・・・・・蓮聖よりはいい」

 

蓮聖の場合、力の差を見せつけるようにゆったりと流される。

 

相手の行動が見えた事、ある程度の対処が許された事。

 

まだマシと言えるだろう。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ。ちゃんと受け身してたしな」

 

ホント偶然だがな。

 

「これを何度か繰り返せ。そうすりゃあ少しぐらいマシになんだろ。明命、頼むぞ。俺が見回りしとくからよ」

 

「あ、はい!了解しました!」

 

と言い、蓮聖は訓練場から去っていった。

 

「じゃあ一刀様、もう一本、参ります!」

 

「・・・・・・よし・・・来い!」

 

今度は突進せず、こちらの出方を伺っている明命。

 

木剣を両手で持ち、柔らかに構えている。

 

「・・・ふぅぅぅ・・・・・・」

 

息を吐き、集中。

 

明命の速度は流石だ。

 

だが、対応できない訳ではない。

 

弾かれたのは、力が乗っていなかったから。

 

一瞬で懐に入られ、振りかぶる余裕がなかったから。

 

ならば・・・

 

「・・・・・・!」

 

明命の顔が一瞬だけ歪む。

 

俺が取った構え。

 

即ち上段。

 

木刀を天高く構え、一歩近づく。

 

懐に入ってきたら、全力で振りおろせばいい。

 

これならば振りかぶる必要がなくなる。

 

先程よりは多少マシになるだろう。

 

 

「!?」

 

 

消えていた。

 

いつのまにか明命の姿が見えない。

 

何処だ・・・?

 

背後は壁。

 

いざという時、後ろに回り込まれない為にこの配置を選んだ。

 

人間の視界は180°あるかどうか。

 

流石に視界に入らない程高速で動くのは無理だろう。

 

それこそ人外。

 

ならば・・・・・・

 

残るは1つ。

 

 

「上!!」

 

見つけた。

 

俺と同じように木刀を振り上げながら、斜めに降下してくる明命を。

 

僅かに視界に入る木の枝が揺れている。

 

あそこから飛び移った・・・その答えに到達するのは容易かった。

 

「っ・・・!」

 

少し遅い。

 

既に明命は振り下ろす体勢。

 

ここから振り上げるには時間が足りない。

 

どうする。

 

至極簡単な答えだ。

 

振り下ろすのみ。

 

この体勢から、迷わず、戸惑わず、全力を以て振り下ろす。

 

相討ち上等。

 

微かな静寂。

 

「はぁぁあぁあぁあ!!!」

 

気合一閃。

 

明命の木刀が容赦なく振り下ろされる。

 

「づぁあああぁぁぁ!!!」

 

同時、俺も全力で交差するように木刀を振り下ろす。

 

「!!」

 

何よりも戸惑ったのは無論明命。

 

俺がこのような対応をするとは思っていなかった筈。

 

「くっ!」

 

だが、すぐに持ち直し、木刀に力を込める。

 

衝突。

 

「ぐっ!」

 

明命の僅かな隙は、込める力を半減させた。

 

いくら明命と言えど、男子の渾身の一撃を押し返すなど・・・・・・出来は・・・

 

 

!?

 

 

そう考えた時には既に、木刀は押し返される寸前だった。

 

力の問題ではない・・・込め方。

 

体の扱い方を心得ているからこその芸当。

 

重力も重なり、俺に襲いかかる。

 

「ぐっ!」

 

最後の手段として、俺は木刀を受け流し、明命の左半身を狙った。

 

が、かわされる。

 

強引に体を捻り、俺の一撃を避けた上で一撃を加えてきた。

 

俺も明命の一撃を何とか回避・・・出来ず、僅かに腕を逸れ、肩に直撃。

 

「ぐあぁ!」

 

あまりの痛みに思わず蹲るが、すぐに振りかえって応対する。

 

「終わりです」

 

しかし、既に首元に木刀を宛がわられていた。

 

あの体勢から着地し、すぐに応戦できるとは・・・流石だなぁ。

 

「くぅー・・・駄目かぁ」

 

「・・・・・・」

 

「ん?どうかした?」

 

明命の顔に驚愕が張り付いている。

 

驚愕の訳がわからない。

 

何か凄い事でもしたのだろうか。

 

「・・・明命?北郷?どうした?」

 

そこに、兵を扱いていたのだろう祭がやってくる。

 

「いや、ちょっと明命と訓練してたんだけどさ・・・」

 

明命の様子がおかしい事を告げる。

 

「明命・・・?どうかしたのか?」

 

「あの・・・祭様、一刀様の相手をしてみてくれませんか?」

 

「別に構わんが・・・」

 

と、明命の木刀を受け取る。

 

「まさか、超絶的な才能を持っているとでも?」

 

「それこそまさかだよ。俺は至って普通」

 

軽口を叩きながら、俺と祭が一定の距離を保つ。

 

「祭様、あの・・・祭様の方から向かっていってくれませんか?」

 

祭は少し顎を撫でた後、頷いた。

 

「では・・・行くぞ、北郷」

 

「・・・ああ」

 

再び集中。

 

祭・・・弓兵ではあるが、実際、剣の腕も相当だろう。

 

そもそも、この人に弱点はあるのだろうか。

 

いや・・・今は考えるな。

 

ただ、ひたすらに祭の動きに集中する。

 

祭は明命のように一瞬で動く訳ではなく、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 

木刀は垂れさがったまま。

 

どうする。

 

攻撃範囲に入り次第、面か胴を狙うか。

 

いや・・・そんな攻撃は通用しない。

 

そういうオーラのようなものを醸し出している。

 

間違いなく・・・祭は強い。

 

それこそ、蓮聖に近い程に。

 

そんな相手に、小細工は通用しないだろう。

 

ならば・・・どうする?

 

それこそ砕ける覚悟で特攻するか。

 

一蹴されるだけだろう。

 

相手の攻撃に合わせてこちらも攻撃するか。

 

まず、祭の攻撃速度がわからない。

 

不安要素をいれるのは不味い。

 

一か八か・・・・・・

 

「・・・む?」

 

祭の顔が怪訝に歪む。

 

俺は腕をだらりと下げつつ、木剣の先端を祭に向けていた。

 

腰をやや下ろし、下段よりもさらに下段。

 

股のやや下に木刀を持ってくる。

 

狙うはただ1つ。

 

突き。

 

この構えの利点は、攻撃速度。

 

相手が攻撃を振り上げた時、それは即ち、相手も己の攻撃範囲にあるという事。

 

攻撃の動きに入った瞬間、突きで鳩尾を狙う。

 

振り上げ、もしくは振り下ろしよりも早く・・・最大の力で突く。

 

「ふぅぅ・・・・・・」

 

荒れる息を抑え、平常心を生みだす。

 

集中・・・集中・・・・・・

 

 

「つぁ!!!」

 

 

「!!!!」

 

何が起こったかわからない。

 

気付けば、俺の体は動いていて、突きを放っていた。

 

気合も何もない攻撃。

 

容易く防がれた。

 

横薙ぎに祭の木刀が振られ、脇に食い込む。

 

「があぁぁっぁっぁあああ!!!」

 

肋骨が軋む音と共に、俺の体は吹き飛んだ。

 

「ぐぅ・・・」

 

受け身も取れず地面に叩きつけられ、意識が薄れていく。

 

最後に見たのは、若干汗ばんだ、祭の表情だった。

 

 

「何も本気でやるこたぁねぇのに・・・お前らしくもない」

 

遠くで蓮聖の声がする。

 

「儂もまだ未熟故・・・申し訳ない・・・・・・」

 

祭の声もした。

 

「ほぉ、お前がそこまで言うか・・・こりゃあ、俺もやった方がよかったかねぇ・・・・・・そんなによかったのか?」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「確かに攻勢に関しては褒められる物ではないかと思いますが、後の先に関しては、中々侮れぬものがあったやもしれませぬ」

 

「えぇー?マジかよ?どうにも信じられねぇなぁ・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「蓮聖殿も今度試してみるとよいかと・・・」

 

「ははは!!必要ねぇって、あんな雑魚俺が手を出すまでもねぇ!」

 

「誰が雑魚だこらぁあぁっぁぁああぁぁぁあ!!!」

 

「お・・・起きたか。どうだ、成果は?」

 

・・・・・・・・・・・・状況確認。

 

自室。

 

ベッドの上。

 

目の前には蓮聖、祭、明命。

 

3人共俺に視線を集めてる。

 

どうも空気がおかしい。

 

え、何・・・俺の事バカにしてたんじゃないの?

 

「おい、どうした・・・?打ち所悪かったのか?」

 

ひょいひょい・・・と、俺の前で手を振る蓮聖。

 

いやいや、至って冷静だが。

 

「なぁ、蓮聖・・・さっきの雑魚やら云々は・・・?」

 

「あ?俺ぁ今年入る新人の話してたんだが?」

 

ああ・・・さいですか。

 

勘違いですか。

 

「脇の傷はどうだ?」

 

言われて少し体を動かす。

 

「ん、大丈夫」

 

多少の痛みがあるものの、仕事や訓練に支障がある程ではない。

 

「ならいい・・・んで、今日の訓練で何か掴んだか?」

 

「んー・・・何かと言われても、無我夢中だったからなぁ。祭の時だって何をされたかわからなかったし」

 

「気合一発、動揺した一刀様は力の乗らぬ突きを放ち、弾かれて横薙ぎ一閃・・・そのまま脇に食い込み、吹き飛ばされました・・・見事という他ありません」

 

明命が説明する。

 

気合一発・・・一瞬思考が飛ぶ程の気迫。

 

やはり歴戦の武将。

 

根本からして違う・・・技術で経験を補うなど不可能な話か。

 

「でも、一太刀当てただけでも素晴らしいですよ!」

 

興奮したような明命。

 

一太刀・・・当てた?

 

「ほれ、儂の肩を見てみればよかろう」

 

「・・・あ・・・・・・」

 

祭の服の肩部分が・・・僅かに切れている。

 

突きが弾かれてその部分を通ったということ。

 

「まさか祭に当てるたぁな・・・・・・話を聞く限り、お前は攻めにはあんま向かねぇな」

 

「後の先・・・即ち、相手の動きに応じこちらも対抗する戦法。それに関しては、儂も明命も認める程のものがある・・・・・・鍛えるとしたら・・・そこじゃな」

 

「・・・・・・成程・・・」

 

「くく・・・だぁが・・・・・・その前に基礎だな。体力、精神力・・・根本から叩きなおしてやる」

 

「・・・ああ!」

 

強くなる為ならば・・・守る為ならば・・・・・・やってやろうではないか。

 

「んじゃ、明日っからうちの軍で一般兵と一緒に訓練な」

 

「ああ!!・・・・・・・・・・・・ん?」

 

ちょっと待て。

 

え・・・軍?

 

いや・・・そこは別に構わないとして。

 

何か引っかかる。

 

何か・・・何か・・・・・・

 

 

 

 

「やっぱ雑魚って俺の事じゃねぇかあぁぁぁぁぁっぁあああぁぁっぁああぁ!!!」

 

 

からからと笑う蓮聖と祭、そして慌てて俺を抑える明命。

 

 

長閑な日々は・・・過ぎていく・・・・・・

 

 


 
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