No.131032

真・恋姫†無双 十√ 16

kazさん

元々二回くらいに分けようかなとか思ったのですが一回に纏めました、急展開な感じになってしまったかも

  目指せ定期更新!

2010-03-19 21:59:40 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:43021   閲覧ユーザー数:27223

呂布

 

 

反董卓連合と董卓軍が激突した洛陽での戦い、

数で圧倒的に不利な中呂布こと恋はその天下無双の武を遺憾なく発揮して

反董卓連合軍主力の袁紹袁術軍を蹂躙し続けていた、そんな中もたらされた報告

 

 

「恋殿!月殿と詠殿がお亡くなりになられましたぞー!」

 

 

陳宮こと音々音のその言葉に動きが止まる恋、確かめに行こうとする恋を止める音々音

 

「恋殿今はここを離れるべきなのです、そしていつか仇を討つのです!」

 

恋はその言葉に従う

 

こうして逃亡した恋達はしばらく放棄された砦跡で過ごす事になる、恋に付き従うは音々音と兵士1000人ほど、

逃亡するのが当然のような状況にも関わらずこれだけの兵が付き従うのは恋の天下無双の武、

そして恋の保護欲をそそる可愛さに惚れ、守ってあげようと思った熱狂的なファンであったからであろう、

そしてその隠遁生活は数ヶ月にも及ぶ、最初恋は一刀の所に行こうと考えていた、

しかし音々音がもたらした報告

 

「月殿と詠殿を殺した奴を突き止めましたぞ!あいつです!

あのち●こ、北郷一刀が月殿と詠殿を殺したのです!」

 

音々音は隠遁生活の中でも恋の為にと各地の情報を集めていた、そして洛陽で流れていた情報

 

”董卓と賈駆を殺し、この戦いを終わらせた英雄、北郷一刀”

 

月は悪政をしていたわけではなかった、にもかかわらずこのような噂が出たのは一刀達の武勇によるものだったかもしれない、虎牢関、汜水関を落とした英雄、その話は洛陽で英雄譚のように語られ、その風評は国中に広まったのだから

もちろん音々音とてその風評だけで判断した訳ではない、調べるうちに月達のいた屋敷が炎に包まれる前に北郷軍を見たとの情報を調べ上げていたのだ

 

月と詠を殺したのが一刀、恋はその言葉を信じなかった、

しかし音々音が嘘をついていない事を感じると恋はどうしていいのかわからなくなった。

月と詠は恋にとってかけがえのない家族だった、

いつも優しかった月、怖いけど優しい詠、だからその家族を殺した者達は許すつもりはなかった。

でもその二人を殺したのが一刀、恋は一刀も大好きだった、

月や詠とは違う好き、胸が熱くなる好き、その好きな一刀が月と詠を殺した。

 

恋はどうしていいのかわからなくなった

 

色々考えてくうちに恋は元気がなくなる、

そんな恋の姿を見て耐えられなくなった音々音はなんとか恋を勇気付けようとするもののうまくいかない

さらに食料も事欠く状況になりはじめると今後について考える事になる、そして長安に行く事を思いつく

 

長安、ここには元董卓軍の李カクと郭汜の二人が洛陽決戦前に献帝と共に逃げ込んだ地である

裏切った二人を討ち、さらに帝を擁すれば恋は天下人になれる、音々音はそう考えたのだ。

 

こうして恋は音々音の言葉に従い長安へと向かう事になる、

 

 

同じ時期河北では北郷軍と袁紹軍との官渡の戦いが行われようとしていた

 

 

この時の長安は酷い有様だった

李カクと郭汜の二人が入場して来てからというもの献帝を傀儡とし好き放題していたのだ、

長安近辺の民は逃げ出し、その数は半分以下にまで減るといった有様

この様子を知れば反董卓連合同様に討伐軍が出来ていたのかもしれない

しかし各地はそれどころではなかった

一刀と袁紹はまさに決戦を向かえ、袁術は皇帝を名乗り、荊州の劉表は病気で伏せがちになり行動を起こせず、

益州は暗君劉璋によって内部崩壊を起こしつつあり、西涼では外敵の襲撃が度々ありその対応で手一杯だった。

 

その為誰も李カクと郭汜の蛮行を止める事ができなかった、

しかしそんな時長安に現れたのが呂布である、同じ董卓軍だった二人は恐怖する、

董卓を捨てた自分達を許す事はないとわかっていたからだ、では戦うか?

二人は1万の兵を有していた、しかし相手は天下無双の飛将軍呂布である、

兵士達も同じ董卓軍であった事で呂布の力を知っていた、戦えば必ず負けると。

長安は混乱状態となる、そんな時を待ってたある人物たちはその隙をついてその二人を殺し、呂布を迎えいれる

 

 

迎え入れた者の名は董承と言う

 

 

董承は呂布の武勇を利用しようと考え手厚く迎え入れる、

恋は興味なしという感じだったが音々音は幼いながらも軍師であった、意図を読み取り従う事を決める

 

こうして恋は長安に入城する事となる

 

呂布を得た董承は有頂天だった、何しろあの天下無双の飛将軍を得たのだ、逆らう者もいまい、そう思っていた、

しかし、予想だにしない報告に言葉を失う、その報告とは

 

 

"河北において官渡で袁紹が北郷一刀に敗北"

 

 

董承達にとってその報告はあまりにも衝撃的であった。

呂布を得、その威を借りて洛陽へ戻り再び漢の威光を示そうと考えていた、

袁紹などに地位を与え磐石なものとして政を計る

しかしその袁紹が敗れ北郷なる者が大勢力となって河北を治める、

袁紹は馬鹿ではあるが漢の臣である、少なくとも帝に逆らうような事はすまい、

だが北郷なるものはどうか?聞いた話ではこの世の者ではないという、

黄巾党を壊滅させ張角を討ち、汜水関、虎牢関を抜き、さらに数倍もの袁紹軍を討ちその地を支配下に置く、

まるで夢物語、古の皇帝達のような人物ではないか

 

その者は帝をどう扱うのであろうか、帝位を簒奪し我等などは劉協と共に葬り去られるのではないかと

 

 

長安にいる董承一派は危機感を募らせる、そしてその怯えが行動を起こさせる

 

 

 

 

長安

 

董承達に与えられた屋敷で恋は日向ぼっこをしていた

 

「おいで、セキト」

 

「ひゃん!」

 

てててててててて ぽふっ

 

恋は長安に来てから、いや洛陽決戦以来方天画戟を振るうような事はなかった、

今の恋はただ、どうすればいいのかを考える毎日

そして恋と共にいるのは恋の家族であるセキトであった、

このセキト、反董卓連合との戦いが終わった時、洛陽にいたのだが恋を追って一匹で恋の元までやってきたのだ、

それはきっと大変な道のりであったろう、必死で探し、

恋に出会った時には体は傷だらけのボロボロになっていた

恋はそんなセキトをいとおしく、そして優しく抱きしめ介抱してあげた、

そのかいあってかセキトは元気を取り戻し、それ以来共にいる。

 

後に「セキトの大冒険」として子供達の間で大人気となるがそれはまた後日にて。

 

「セキト、恋、かずとに会いたい…」

 

「わふん」

 

「セキトもかずとに会いたい?」

 

「わんっ!」

 

恋はよくこの問いをセキトにする、大好きな一刀に会いたい、でも音々音はそれをダメと言う

 

 

”月殿と詠殿を殺したのは北郷一刀”

 

 

月と詠を殺した、一刀が殺した、きっと嘘、でもねねは嘘じゃないという、恋はどうしたらいいのかわからない

 

そんな問いをもう何度繰り返したのだろう

 

「寂しい…」

 

「わふ~ん…」

 

セキトを優しく抱きとめ恋は一刀の事を想う…

 

 

 

恋がセキトと昼寝をしているとそこに音々音が慌てた様子でやってくる

 

「れ、恋殿ーーーー、帝よりの勅命が下されましたぞーーーーーー!」

 

「んん…?」

 

 

「よ、よく聞いてください、恋殿にち●こを討てとのご命令ですぞ!」

 

 

「「………?」」

 

ねねのその言葉に恋とセキトは「?」だった、そりゃそうだ、理解できてない恋に音々音は言い直す

 

「あのち●こ、北郷一刀を殺せとの命が帝より下ったのです!」

 

その言葉にようやく反応を示す恋

 

「かずと…殺す?どうして?」

 

「月殿と詠殿の仇を討つ為なのです!恋殿、北郷一刀は倒すべき敵なのです!」

 

恋は音々音の言ってる意味がよくはわからない、ただ、一刀を殺すという言葉だけが響く

 

「恋殿、月殿と詠殿の無念を晴らすのです!

そして恋殿やねねをこんな状況にしたあいつらに目にものみせてやるのです!」

 

「恋は…」

 

どうしたらいいのだろう、わからない、でも音々音は必死で恋を説得する

 

 

「恋は…」

 

 

「かずと…」

 

 

 

それからしばらくして恋は音々音、そして兵5千を率いて長安を発する。

 

目的地は許、北郷軍の本拠である。

 

その様子を長安の街より見る人物達、

恋に降った勅命、それは献帝自ら命じたものではなく、この者達が勝手に下したものであった。

その者達の意図を知る者はこの時はまだ誰もいない

 

 

 

 

 

元袁紹の領地を駆け巡り、ようやく一段落といった感じになった一刀は護衛の季衣、流琉と共に久方ぶりの本拠の許に戻ってくる、その帰りを待ちに待ってた桂花ではあったがそれをひた隠し、絶対にこちらからは口を聞かない!と変な意地を誓っていた。

そんな桂花とは裏腹に凪、月、詠(仕方なくなんだからね!)の三人は一刀を暖かく迎える

 

その後久しぶりの再会を果たした面々は仲良く食事をする為に街に繰り出す、そしてしばらくして一刀は思い出す

 

 

「あ、桂花に挨拶すんの忘れてた!…やばい…かな…(汗)」

 

 

月達との久々の再会でほぼ無理矢理に近い感じで街に出てきたせいで桂花さんの事をすっかり忘れていた一刀さん、ちなみにその頃桂花さんは

 

「ふ、ふふっ…、ふっ、ふふふふふ…」

 

自分の部屋で何やら妙な笑いをしながら壊れていた

 

 

そんな許での再会からしばらくした頃河北より星が戻ってくる、烏丸族、そして跋扈していた盗賊や反組織などを一通り制圧した事を報告すると共に手薄になっている許の守りにと稟が戻らしたのだ

 

 

 

城内

 

「んーー、どこにいるんだろ…」

 

そこには星を探す一刀がいた

 

「主殿、誰かお探しですかな?」

 

声の聞こえた方を見ると城壁の上で危なっかしい態勢で酒を飲んでいる星を見つける、

確認した一刀はそこまで行くと

 

「昼間っから酒って…(霞と同じ人種だったか)」

 

「平和な街を見て飲む酒、そしてメンマは絶品ですので」

 

「平和かなぁ、しばらく人手不足で治安悪かったんだけど」

 

「それでも他の街よりは平和ですよ、何せ他国より攻められる心配がほとんどありませぬゆえ、

この辺りで作られる酒は味も良いですし、何よりこのメンマ!このように味のよいメンマは国中探しても中々ありませんぞ!

これだけをみてもここが平和な国だとわかろうものです、平和でなければ安心して作れませぬからな」

 

「うん、皆が頑張ってくれたおかげだよ、でもまだまだ頑張らなきゃいけない、

この国の為にやる事はまだいくらでもあるからね」

 

一刀のその言葉に星は想う

 

(あの御方と同じ事を言われるのだな…)

 

なにやら急に寂しげに話す星、そしてずっと思っていた事を一刀に問いかける

 

「主殿は…、桃香さ…桃香殿の事をどのように考えておられるのですか?」

 

星の突然な問いに一刀は星が何を思ってかと考えたが、

星が真面目に聞いてるように見えたので思ってる事を言う事にする

 

「俺自身たいした事ないからあんま偉そうに言えないんだけど、と…劉備さんは民の事を大切に想える人だと思ってる、でも」

 

「…でも?」

 

「優しすぎるんじゃないかな」

 

「優しすぎる、ですか」

 

「うん、そしてその優しさがいずれ劉備さんを、その周りの人達を不幸にするんじゃないかもしれないって思ってる」

 

「優しさが不幸に…」

 

「俺思うんだ、彼女は王になる覚悟はできているのかなって」

 

その言葉に星は言葉を返さない

 

「劉備さんの理想は大陸にいる全ての人を幸せにする事、笑顔にする事、それは大陸の人達が優しい人達ばかりならできるかもしれない、けど世界は優しくないよ、それを直視しないといずれその理想は破綻するんじゃないかな、

だからその為に覚悟が必要だと思うんだ、人を導くならどんな事にも耐えられるだけの覚悟が、

ってまぁ俺自身の目指すものから見た一方的な感想ね、彼女には彼女なりの正義があると思うしね」

 

一刀の言葉を聞いた星は酒をくいっと飲み干す、そして一刀に杯を渡し

 

「主殿も飲みなされ」

 

「えっ!い、いやほらまだ昼間だしさ、お酒飲んでるの知られたら桂花とかにおこ「私の酒が飲めぬともうされるか!」

…いただきます」

 

なんか妙な迫力に飲む事に、だって何か殺されるかと思ったんだもん by一刀

二人は酒を飲み、メンマを食す(メンマ多いっす by一刀)

 

「そういや星は劉備さんの事どう思ってるんだい?」

 

「そうですな、桃香殿はなんというか危なっかしいお人でしょうか」

 

「ははっ、何かそれわかるな、なんていうか支えてあげたいって感じかも」

 

「一目見た限りではどこにでもいそうな村娘のような感じでしたな、ですがふれあい、話すと段々惹かれていってしまう、

そしてこのお方の為ならば命を懸けても良いと思いました」

 

「それが器って奴なんだろうね、劉備さんは英雄の器を、この国を支える器なんだよ」

 

「主殿もそうでしょう」

 

「俺はそんな大層なもんじゃないよ、英雄でもなんでもないただの人、ただ祭り上げられて今こんな事になってる、

けど後悔はしてないよ、多分俺がここにいて、今こうしているのは何かを成す為なんだって思ってる、

だから出来る事をする、それだけさ」

 

くいっと酒を飲み干す星

 

「北郷殿は河北、河南をほぼ手中に収められた、この後は何を目指されますか」

 

「大陸制覇、出来るだけ被害を出さず、すばやく、そして確実に」

 

一刀は迷い無く言い放つ

 

「覇道を目指されるか」

 

「目指すよ、それでしかこの国を、この国の人達を救えない、俺はそう信じてるから」

 

そう言う一刀を何かを想うように見る星、静かな時間が過ぎさる

 

しばらくして言葉を発したのは星、何かを思い出したかのように

 

「そういえば主殿は私を探していたようですが何か用事があったのでは?」

 

「あっ!」

 

星のその言葉に思い出す一刀、そして神妙な感じになって星に向かうと

 

「うん、実は星に大事な事を伝えにきたんだ」

 

「ふむ、何事でしょう?」

 

 

 

「……荊州が俺達に降伏した」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 

”荊州降伏”

 

 

それが意味するものは

 

「…桃香殿、愛紗達はどうなるのでしょうか」

 

杯の酒を見ながら星は一刀に問う

桃香達は今荊州の劉表の所に厄介になっていて夏口という北郷軍と孫呉に囲まれた最前線の地にいる

 

「劉備さん達次第、としか今は言いようがないね、一応使者を送ってどうするかは聞くつもりだけど…

もし俺たちに降るというのなら仲間として迎えるよ、彼女達の武と知はこの国にとってかけがえのないものだからね、

ただ劉備さんは関羽さん達とは離れさせる事になると思う、

俺は別に一緒でもいいとは思うんだけど桂花がどうしてもって言うんでね。」

 

「でももし戦うというのなら容赦はするつもりはない、手を抜けばこちらに多くの被害が出るだろうから」

 

「……」

 

「あと、もう一つの選択肢として、今いる夏口から別の所に行くというのもあるかな、雪蓮の所は…ないな、後は益州だろうけどそれには荊州を突っ切って行くしかない、けど夏口にいる人達を置いていくような事をするとも思えない」

 

「では、いずれにせよ桃香様の理想は…」

 

「………」

 

一刀は答えない、だが星にはその答えがわかる、一刀の元にいれば一刀の理想と共に進む事になる、それは桃香の理想とは似て非なるもの、かといって戦っても勝ち目は薄い、そうなると待ち受けるのは死、いずれにせよ桃香の理想は潰える事を意味する

 

星は黙ってしまう、自分はどうしたらいいのかと、それを感じたのか一刀が星に問う

 

「星はどうする?」

 

「私は……」

 

星の脳裏に浮かぶのは桃香達の事、共に戦い、共に暮らし、

そして桃香の理想を叶える為に共に生きてきた仲間達との思い出

 

「私の生きるべきは…」

 

星は自問する、自分は今まで後悔をした選択はしてこなかったと、それは自分の信念によって行動してきたから、

今桃香の元を離れ一刀の所にいるのも自ら決めた選択、もしかしたら初めてかもしれない迷い……

 

 

 ”星ちゃん♪”

 

 

「はっ!」とする星、そこに見えたものは…

 

星はククッ!と笑うと何やらふっきれたような感じ、

そしてそうなる事がわかってたような一刀、星は一呼吸置いて一刀に

 

 

「”北郷殿”申し訳ありませぬ、やはり我が槍は”桃香様”と共にあります」

 

 

「…そっか、止めても無駄なんだろうね、できればもっと話をしたり一緒にいたかったけど」

 

「申し訳ありませぬ」

 

星は桃香の元へ帰る事を決意する、そこが自分の本当の居場所なのだ

 

「劉備さんの所に行くんだったらコレが必要だろ、はい」

 

そう言って一刀が星に渡したのは『割符』これを見せれば北郷領内なら誰でもどこでも通れる通行証だ

 

「用意がよろしいですな、まるで私が桃香様の元へ戻られる事を知っておられたかのようだ」

 

「どうだろう、まぁそんな予感はしてた気はするけどね」

 

「それはなにゆえ?」

 

「だって、星に本当の笑顔を作らせる事ができるのはきっと劉備さんだけだと思うから」

 

星は一刀の仲間になってからは笑顔になった事がなかった、笑う事があっても心からの笑顔をした事はなかった

一刀はそれをずっと気にかけていた、そんな一刀の想いを感じたのか

 

 

「ふふっ、貴方というお方がようやくわかってきた気がいたします」

 

 

割符を受け取った星は一刀に礼をすると

 

「先に謝っておきます、次に出会う時は敵として貴方の命を奪いにくるかもしれませぬゆえ」

 

「仕方ないね、けど簡単にはいかないよ、俺には頼もしい仲間がいるからね、

俺自身がって言えないのが情けないけど」

 

「貴方は強くなられます、この趙子龍が保障いたします」

 

「それは心強いね、んじゃ頑張ってみるよ趙子龍」

 

そして星は歩み出す

 

「星、今までありがとう、君がいてくれたおかげで袁紹との戦いに勝つことができたよ」

 

「我が武勇だけではありますまい、風や稟、それに他の皆々にもよろしくお伝えくだされ」

 

 

 

星は馬を駆る、目的地は桃香達のいる夏口、

近いうちに北郷軍の大軍が攻め寄せてくる絶望的な場所、しかし星は心踊る、何故ならそこは

 

 

 

”自分を笑顔にしてくれる事が出来る人達のいる大切な場所なのだから”

 

 

 

 

「桃香様!」

 

 

 

 

 

一刀達の下に来た荊州の使者によって荊州降伏が伝えられてから幾日かの日数が過ぎ去る

現在許にいる一刀、桂花、凪、季衣、流琉、そして月、詠が今後についての話をする

 

「この降伏についてだけどどうしたらいいと思う?」

 

「当然受け入れるべきよ、戦火を交えずあの広大な荊州の地を手に入れることができるんでしょ」

 

一刀の問いに詠が答える、最初の頃はこういった会議に出る事すら拒否していた詠だが月に”詠ちゃんも一緒にね”というウルウルした上目遣いで見られ陥落した、嫌々といいながらも的確な助言をする詠に一刀は「ツンツンデレツンデレツンツン~」と心の中で歌うのだった。

 

「でもどうして急に降伏なんて事になったんでしょうか?」

 

流琉の問いに桂花が答える

 

「多分孫呉のせいだと思うわ、孫策は揚州をほぼ支配下に置いたって報告があるの、

そして領土を広げる為に荊州に目を向けた、荊州の劉表は孫策の母、孫堅の仇でもあるしね」

 

「荊州はその位置から各方面からの攻撃にさらされやすい、西は益州、そして漢中、東は孫策、

そして北に北郷、刈り取り場となるのは必定、戦って勝ち続けられるほど荊州には知も武もないでしょうしね、

だとすればどうするか、どこかに帰順して安寧を計ると考えるのも頷けるでしょ」

 

桂花に続き詠も答える

 

「なるほど」

 

「どこに帰順するかを考えた時、今の時の勢い、兵力などを考えれば北郷を選ぶのは自明の理よね」

 

「それでどうするの?」

 

「ん?もう決まってるんじゃないのか?」

 

「決めるのはあんたでしょ!この変態精液男!」

 

「ちょっと月の前で変な事言わないでよ!覚えたらどうするのよ!」

「え、詠ちゃぁん」

 

なんか急に騒がしくなる王座の間、何だかんだで桂花と詠はいいコンビとか思う一刀だった

 

「いや、俺は戦火を交えずに荊州を得られるならそれに越した事はないと思ってるよ、

何より桂花がそうした方が良いっていうならきっと大丈夫だと思ってる、俺は桂花を信じてるから」

 

その言葉に少し赤くなって黙ってしまう桂花

今後の事は各地にいる皆を呼び寄せたり意見を聞いて詰めていくが荊州降伏を受け入れる方向で意見は固まっていく

その後流琉の作ったお菓子でお茶会などをし、和気藹々と楽しんでいると

 

兵が入ってきて急報を告げる、その兵が伝えたのは

 

 

「西より許に近づく軍あり!旗印は真紅の呂旗!」

 

 

その言葉に皆が驚く

 

 

「真紅の呂旗って…まさか」

 

「呂布さん!?」

 

 

「恋!?」

 

 

 

 

長安より発した恋の動きを察知したのが遅れたのには理由がある

もし事前に知ることができれば霞や春蘭を呼び寄せられていたのかもしれない。

北郷軍は現在広大な領土になったばかりの地を安定させる為に各地に兵、武将を派遣、

さらに南方の孫策、劉表への警戒をしていた為に侵攻の恐れが少ないと判断した西方には兵をあまり配備しておらず許に到る砦に千名ほどの兵を配していた程度であった

 

その砦に突如姿を現した天下無双、数でもかなわず砦の守備隊はなす術も無く砦を放棄して撤退していく

 

「恋殿やりましたぞ!敵は恋殿に恐れをなして逃げていきました、

この勢いのまま一気に敵の本拠まで攻め込むでありますぞ!」

 

 

ぐうううううううううううううううううううううううううううううううう

 

 

陳宮が恋に進撃を提案したと同時に鳴る恋のお腹

 

「お腹…すいた…休む」

 

「う、そ、そうですか、仕方ありませんね、腹が減っては戦は出来ぬと申しますし、

ではこの奪い取った砦で食事をし、その後に攻め込みましょうぞ」

 

「……」

 

陳宮の言葉に恋は答えなかった、”敵”、陳宮は一刀を敵という、

でも恋は一刀の事を敵とは思ってなかった、ただ、”会いたい”

その想いだけであった

 

 

「かずと…」

 

 

 

 

砦を落とされた報はすぐに許にもたらされる

 

「このままじゃここに来るのも時間の問題ね、呂布とまともにやりあえる武将なんかいないってのに…」

 

「やりあうって、恋とか?」

 

「あたりまえでしょ!呂布はあきらかにここに向かっているのだから」

 

「けどそれは俺に会いにきたのかもしれないし!」

 

「はぁ、おめでたいわね、呂布は多分董卓の仇を討つ為にあんたの命を狙ってる可能性が高いのよ」

 

「なら、月と詠が無事なのを教えてやればいい、恋は必ず俺達の仲間になってくれるから」

 

「何でそんな事言い切れるのよ!」

 

「言い切れるよ、恋はいい子だから」

 

なんか我が子をいとおしむ親のような感じで一刀は力説する、その姿に桂花は

 

「どうして…どうして、そんなに信じられるのよ…」

 

「そう思うから、としか言いようが無いかな、ほんとに、ごめんな桂花、心配かけさせちまって」

 

普段ならそんな事を言えば否定しそうなものだが、

桂花は何も言わない、気にはなったが恋の事も心配だったので

 

「じゃあ、行ってくるから」

 

そう言って出口に向かおうとした一刀の服を掴みひっぱられる感じ、見ると桂花が一刀の服を掴んでいる

 

「桂花?」

 

「……何か、嫌な予感がするの…」

 

その顔は何かいつもとは違う感じ、その顔、そして桂花の言葉が気にはなったものの

 

「ありがとう、でも行かないと、俺以外が言っても恋は話を聞いてくれない気がするんだ」

 

「月と詠が行けばいいじゃない、あの二人を見れば呂布も話を聞くわ、

それに河北から霞を呼び寄せてる、霞にまかせれば…」

 

「恋はもう許のすぐ近くまで来ている、あまり時間をかけすぎると戦いが起こると思った人達でパニ…混乱が起こるかもしれないだろ、それから月と詠は連れて行くつもりはないよ、何かあったら「いきます!」」

 

一刀が言う前に月が言葉を発する

 

「ご主人様私も連れて行ってください!恋さんとねねちゃんにこれ以上辛い思いをさせたくないんです」

 

「月、もし戦いになったらどうするのよ!月はここで待ってて、ボクが恋達を連れてくるから」

 

「詠ちゃん大丈夫だよ、ご主人様も言ってたでしょ、恋さん必ず私たちの仲間になってくれるって…」

 

「けど…、ああもうっ!わかったわよ、けどボクも一緒に行くからね!いい!」

 

「くすっありがとう詠ちゃん、だ~いすき」

 

なんか月と詠はいつもの感じ、というか勝手に色々決めてたり

 

「大丈夫、ボクが兄ちゃんを絶対守って見せるから!」

「わ、私も必ず兄様を守って見せます!」

「私も北郷様に傷一つつけさせるような事はさせません!」

 

季衣、流琉、凪が元気に答える、改めてここにいる皆は良い子だなあとしみじみ思う一刀さんだった、

そしてただ一人何かを想う桂花、そして諦めたかのように

 

「わかったわ、けど私もついていくから…」

 

納得してないと言った感じに言う桂花、ほんとに何かいつもと違う感じに戸惑う一刀、

結局ここにいる皆が行く事になる、ただ月と詠は少し顔を隠してもらい離れた所で着いて来る事に、これは詠が月の安全を考えての提案だった

 

 

一刀達はすぐ動かせる兵五千と共に許を発する

 

 

 

 

恋達は落とした砦で休んだ後再び許に向かって進撃する、

陳宮は攻め込む気満々であったが恋はただ一刀に会う為に、

そして双方が出会う、恋は十文字の牙門旗を、一刀が真紅の呂旗を確認すると、

軍を止め、それぞれが馬を進める

 

いつ以来の再会だろう、恋と一刀はその姿をお互い確認する

 

 

「かずと…」

 

「恋、久しぶりだね、元気だったかい?」

 

一刀の言葉を聞いた恋は胸が熱くなってくる、とても懐かしく、そして暖かい

 

「恋殿騙されてはいけませんぞ!こいつが月殿と詠殿を殺したのですぞ!」

 

恋の馬に一緒に乗っている音々音のその言葉に恋は「はっ」!となる、そして少し寂しそうに一刀を見

 

「……かずと、月と詠殺した?」

 

恋の言葉に一刀は優しく微笑み答える

 

「殺してないよって言ったら信じてくれるかい?」

 

恋は一刀を見つめる、一刀もまっすぐ恋を見つめる、

そして恋には一刀のその言葉が嘘じゃないと感じられた、そして

 

「うん…恋は一刀を信じる」

 

恋は微笑みながら答える、しかし音々音は納得しない

 

「恋殿!こいつらが、こいつらが攻めてきたから我等は今このような事になってるのです!

月殿と詠殿がいなくなったのはこいつらのせいなのです!」

 

「陳宮、俺たちは確かに連合を組んで君達を攻めた、でもそれは仕方が無かった、

それについて釈明する気も謝罪するつもりもないよ、

でも今俺は恋と戦おうとは思っていない、出来ることなら俺達の仲間になってほしいと思ってる」

 

「ふざけるなです!お前たちがいなければねね達は平和に暮らせていたのです!

皆一緒にいられたのです!お前達がいなければ…ひっく…お前たちさえこなければ!」

 

そこまで言って音々音は泣き始める、この小さな体で今までどれだけの苦労をしてきたのだろう、たった一人で恋を支え守ってきた

 

「ねね…」

 

「う、ううっ…恋どのぉ…ねねは、ねねは…いつまでも恋殿と一緒にいるです…」

 

恋は優しく音々音を抱きしめる、その姿を見て耐えれなくなったのか顔を隠してついてきていた月が走り出す

 

「恋さん!ねねちゃん!」

「月!」

「ゆ、月殿!」

 

月は何も考えずただ二人の下まで走り崩れ落ちる、その後から詠も続き月に優しく手をかける

 

「ごめんなさい、ごめんなさい恋さん、ねねちゃん、私のせいで辛い思いをさせてしまって…」

 

「ど、どうして…」

 

驚く音々音に詠が説明する

 

「北郷が助けてくれたのよ、あいつは月とボクを助ける為にボクたちが死んだと嘘の風評を流しボクたちを諸侯から隠してくれたの、あんた達にも連絡したかったけど洛陽での戦いの後あんた達どこにいったのかわからなかったし」

 

「そ、そうだったのですか…」

「月、詠…二人共無事でよかった…」

 

「ボクたちだけじゃないわよ、霞も、華雄も無事で今北郷の所で元気にやってるわよ」

 

その言葉に恋だけでなく音々音も大喜び、久々に集まった董卓軍の面々、そんな姿を見た一刀は恋達に近寄り

 

「恋、陳宮、改めてお願いするよ、俺達の仲間になってくれるかな?」

 

一刀の言葉に恋はコクコクと可愛くうなずく、そして音々音も

 

「れ、恋殿が…いいのであれば…でも、ねねは恋殿のものなのです!

だから恋殿が嫌と言ったらねねもすぐ出て行くのです!」

 

「うんそれでいいよ、恋と一緒にずっといてくれれば」

 

「ふんっ!」

 

そんな様子に笑い声がおこる、その後付き従ってきた呂布軍もそのまま北郷軍へと投降する、

ただ元々恋についていた千人ほど以外は好きにさせる、

帰順したい者、長安へ戻る者と、結局半分ほどが帰順する事となる、一段落した所で

 

 

ぐうううううううううううううううううううううううううううううううううううう

 

 

と大きなお腹の鳴る音、音の主は恋さん

 

「ほっとしたら…急におなか…すいた」

 

少し照れながら上目遣いにねだる恋に皆はにゃーーんってなる、可愛いすぎるよね!

 

「相変わらずだなぁ、ここには食料あんまりないけど、

許に来たら美味しいものいっぱい食べさせてあげるから少しだけ我慢してね」

 

 

「美味しいもの!」

 

 

ひゅんひゅんひゅんて感じで触覚(?)を動かす恋、そんな恋と音々音を月と詠が連れて行く、

一刀もやれやれという感じだった

 

恋に音々音という心強い仲間が増えた、これできっとこの国を良くする事が出来る、

 

蒼穹を見つめそんな事を新たに想う一刀

 

 

 

 

 

一瞬の事だった

 

 

 

 

誰もが警戒を解いた、恋すらも気付くのが遅れたほんのわずかな一瞬

 

 

 

 

 

 -長安-

 

 

董承「今頃は北郷なる者と呂布が会敵してるころであろうか」

 

王子服「でありましょうな、呂布は北郷を討つ事ができましょうか?」

 

董承「無理であろうな、北郷なる者にはすでに数十万の軍勢がいるという、

追い詰める事ができても討つのは難しかろう」

 

王子服「では、此度の出征は意味のないものでは?」

 

董承「なに、本命は呂布ではない」

 

王子服「と、言われますと?」

 

董承「呂布軍の中に死士を忍び込ませている、中々に武に秀で漢への忠誠もあり、

そしてなにより後世に名を残そうとの野心のある男よ」

 

王子服「ほお、それは中々、しかし上手くいきますでしょうか?機会はそうありますまい、外せば…」

 

董承「その為に…、アレは確かに効き目はあるのだろうな、吉平」

 

吉平「それはもちろん、矢に塗りこんだ毒は確実にその命を奪いましょう、もし奪えないとするならば」

 

董承「奪えないなら?」

 

 

吉平「その者は人にあらず、まこと天より参った者やもしれませぬな」

 

 

 

 

ドシュッ!

 

 

 

 

「がっ!…な、何…だ?…」

 

 

その瞬間何が起こったかわからない一刀、周りも何が起こったかわからなかった、

そして一刀はゆっくりと、その乗っていた馬から崩れ、落ちていく

 

 

ドサッ…

 

 

静寂、誰も言葉を発する事ができなかった、いつまでも続くと思われたが

 

次の瞬間

 

「ちょ、朝敵北郷一刀討ち取ったりーーーーーーーーーーーーーー!」

 

呂布軍の中より出されたその声、その者は捕らえられる前に持っていた懐刀で自らの喉をかき切り絶命する

一瞬の出来事に再びその場が時間が止まる、それを打ち砕いたのは

 

 

 

「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

桂花の悲鳴、そしてその声の先には矢が刺さり倒れ動かない一刀の姿

 

 

「に、兄様!!!!

 

「にいちゃーーん!!」

 

「北郷様ーーーーー!!」

 

ようやく我に返った流琉、季衣、凪が一刀の元に駆け寄り悲痛な声をかけ続ける

 

 

 

「かず…と」

 

「な、何をしてるですか…お、起きやがれです!、ほ、北郷一刀!」

 

恋はただただ呆然とし、音々音は怒号のような声で呼び続ける

 

 

 

「ご、ご主人…様…」

 

「ちょ、ちょっと、冗談でしょ…、やめてよっ!」

 

月は青ざめ、詠は信じられないといった風に一刀に問い続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし一刀は答えない

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの&補足

 

いきなり恋姫に出てこない人達が好き勝手やってという感じで物語を進めてしまいました

なのでその辺の人達の説明を軽く

 

 

・董承、王子服

献帝が許に来たばかりぐらいの時に曹操が結構好き勝手やってたのを(わしの下僕になってほしいのじゃ(木下秀吉風)「おおおお!!」)

「あのチビマジムカつく!」とかで献帝さんがこいつらに勅を下す『勅 あいつボコれ!』、

んでもって曹操暗殺を企み血判状(手、痛っ!)まで作った人達、けど曹操にバレて二人とも殺されちゃう

劉備さん(ヤバそうなんで俺逃げるわ♪スタコラサッサだぜー♪)馬騰さん(あ、勅の事忘れてた)もその仲間、他にも何人かいる

 

・吉平

 同じく曹操暗殺を企んだ人、この人は曹操を毒殺しようとした医者

 毒を見破られて拷問の末(あっ!いい!そこいい!って感じに)死んじゃった

 

…とかだった、はず…。

 

 

色々がんばろう、うん


 
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