No.125333

真・恋姫†無双 ~祭の日々~17

rocketさん

相も変わらず短くって申し訳ないです。
自分なりに「この回はここまで書こう!」と決めて書いているのですが、話の運び方が下手くそなせいで妙に淡々としてしまうんですねー・・・。
さて、今回は最後に謎の人物たちが登場するわけですが・・・みなさん、誰かわかりますかね?w
ひとりは確実にわかると思いますが、もうふたりはほぼノーヒントですから難しいでしょう。
お暇でしたら、予想してみてはいかがでしょうか?ではでは。

2010-02-19 18:07:47 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:7498   閲覧ユーザー数:6125

 

――その場を満たす、剣呑な空気。

 

それを作り出した張本人は、なぜか涙ぐんでいる。

 

「え、ええと」

 

俺は彼女に声をかけようとするが、祭さんに手で制された。

「祭さん?」

「たわけ。武器を持っておる相手に、何を油断しとるか」

その声は密やかに、鋭く。しかし表情はいつものままで。

 

じりじりと、肌を焼くような殺気が突き刺さってくる。

目の前にいる少女は、どうやら祭さんより俺をこそ殺さんとしているらしい。

 

「・・・鈴々、知ってるのだ。そっちのおば」

 

ぎろっ!

 

「・・・お、お姉ちゃんは、呉の、黄蓋っていう将なのだ」

努めて普段どおりの表情をしていたくせに、少女が禁句を言いかけただけであふれ出すような殺気を放つ祭さん。

・・・や、大人げなさすぎるだろう。

「儂もおぬしを知っとるぞ。おぬし、張飛じゃろ?」

俺も戦場で見たことがある。少しだけなら、成都を制圧し、すべてが終わったあの宴会のときにも。

“あの張飛”がこんなに小さくかわいらしい女の子だとは・・・と驚いたことを覚えている。

「・・・死んだって聞いてたのだ」

首をかしげてそういう張飛は、しかし槍をもつその手をけして緩めようとはしない。

「はて、どうじゃったかな・・・ひょっとしたら、他人の空似かもしれんな?」

白々しくすっとぼける祭さんを、張飛は睨みつける。

「子ども扱いするななのだ!それくらい覚えてるのだ!!」

その叫びとともに槍を俺に向ける。

「・・・どういうつもりかのう?」

すう、と目が細められる。俺に向けられたわけではないのに、背筋が凍る気がした。

 

 

――いやだった。

なにもかもがいやだった。

 

仲間たちに何も言わずにこんな場所まで来てしまったことも、

 

特に恨みがあるわけでもない人たちに武器を向けていることも、

 

武人と称えられさえした自分が震えるほどの殺気を向けられていることも、すべて。

 

どうしてこんなことになってしまったのか。

ただ自分は、大切な人たちに笑っていてほしいと、それだけだったのに。

何もかもが理不尽で、やるせなくて、自分が動けばなにかが変わると信じて・・・

自分なりに考えて、事を成したはずだったのに。

 

今まで一度だって、敵に相対しているときに体が震えることなどなかった。

だけど今は震えている。

 

――殺気を向けられているのが怖くて?

 

――戸惑うような瞳で自分を見ている男の人に申し訳なくて?

 

違う、違う・・・そんなんじゃない。

 

なんの義もなく理由さえなく、誰かに武器を向けている自分が許せないのだ。

 

大切な姉のひとりが、まず最初に教えてくれたことを、自分は破っている。

自分の行動に自信すら持てていないのに、自分は悪戯に人を傷つけようとしている。

もしこのままこの武器を振るってしまったら――自分は二度と、大事な仲間たちに顔向けできなくなる。

そんな思いが、微かに背筋を震わせるのだ。

 

・・・だけど。

 

脳裏に浮かぶ虚ろな瞳の彼の人の姿。

あんなものを、二度と見たくはないから。

 

未だに記憶に新しい、魏に負け、三国が鼎立することが決まったあの日――

負けたというのに、桃香は笑っていた。なんの曇りもない笑顔で、心底ほっとしたように。

これで大陸が平和になるなら、争いがなくなるなら、私は十分だよ、と。

 

あのときの笑顔が、あのときの桃香こそが本物であったと、信じているから。

 

なにもかもが手遅れになっても、自分だけは彼女の傍にいようと、誓っただけ。

 

彼女がもとに戻ってくれるなら――自分はどうなってもかまわない。

もしこの目の前にいる男を倒すことで、大好きな姉がもとに戻ってくれるというのなら・・・

 

「鈴々はっ・・・お前を、殺すのだ!!」

 

 

「鈴々はっ・・・お前を、殺すのだ!!」

 

その叫びと共に、少女は俺に向かって駆け出す。

祭さんは俺をかばうように、しかししっかりと相手を見据えて構えをとる。

 

――と、そのとき。

 

「鈴々ちゃんッ!!」

 

女性の悲鳴。

その声の主は、驚くべきことに、三国の話題の真っ只中にいる人――劉備さんだった。

 

「しまった!」

 

その悲鳴に、祭さんはほんの一瞬だけ気を取られてしまったのだろう。

しかし、その一瞬の間はいかに小さい女の子といえどもあの張飛翼徳――十分すぎたらしい。

 

槍が、迫る。

祭さんに言われたとおりだ――本当に俺は武の才がない。

視界から張飛が消える。槍の行く手さえ見えなくなる。

思わず目を瞑った。

 

―――がきぃいん!!

 

妙に耳慣れた、なにかがぶつかりあい、弾けたようなその音は。

今はもうなつかしい、魏の鍛錬場でよくきいていたものに似ていた。

 

閉じていた目を開ける。

 

そこには――

そこには、予想だにしない、できるはずもない、三人の人物が俺を守るように立っていたのだった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
102
9

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択