~洛陽 城壁~
朔夜は、女の子の姿に変身していた。
「わ、わぁぁぁ///」
朔夜は嬉しそうに、自分の体を抱きしめる。
が、あることに気づいた。
(ん?何であたしは服を着ているのでしょう?虎であるあたしは、一応裸で過ごしていたんですけど・・・)
「どういうことですか、卑弥呼?」
率直な疑問を問う朔夜。
「む。何がだ?」
「何故、服を着ているんでしょうか」
「・・・・・・仕様だ」
「・・・複雑な事情がありそうですね」
「うむ!18禁作品では無いからな!」
腰に手を当てて胸を張る卑弥呼。
「では、もう一つ質問です。何故、金髪なのですか?私には金の要素が無かったのですけれど」
「・・・・・・仕様だ」
「・・・趣味ですか?」
「うむ!作者のな!」
さらに胸を張る卑弥呼。
(作者って誰です?)
と、思いながらも
「分かりました。では、失礼します」
(早く豪臣に見せなくては!)
朔夜は、逸る気持ち抑えながら淡々と言って城壁から降りて行った。
そして、残った卑弥呼は
「うむ。嬉しそうでなによ・・・り!?ぬおぉぉぉおっ!しむぁったぁぁぁぁぁぁああ!!」
頭を抱えてクネクネする。
「むぅぅうう。例の件について言っておこうと思っておったのだが・・・」
そう呟いて、朔夜が去って行った方を見る。
が・・・
(次回にしておこう。今連れ戻したら殺されかねん)
諦める卑弥呼だった。
~豪臣の部屋~
朔夜が出て行った後、豪臣は鈴花から明日のことについて聞いていた。
「ふ~ん。三人使えそうな奴が居るんだな?」
「ええ。実力は十分でしょう。しかし、少々、我が強い方たちですね」
鈴花の答えを聞き、溜息を吐く豪臣。
(俺の周りって、何でそういう奴ばっかり集まるかな?)
「あらあら。溜息を吐いても仕方ありませんよ」
頬に手を当てて、柔らかな口調で注意する鈴花。
すると、ふと、豪臣の背にある窓に朔夜の気配が現れる。
「お帰り、朔夜」
豪臣は、振り向かずに言った。
そして
「あら?お帰りな・・・さ、い?・・・あらあら」
続けて挨拶しようとした鈴花が、頬に手を当てたまま困った顔になる。
(ん?どうしたんだ?)
と、思い、豪臣は振り返る。
そこには
「・・・・・・誰?」
美少女が居た。
二人が固まっていると
「ただいま帰りました、豪臣」
と、朔夜は言った。
「「え?」」
二人は、分からない、という顔をする。
(鈍いですね)
朔夜は、内心で呆れた。
「朔夜ですよ、豪臣。氣で分かりませんか?」
そう言われた豪臣は
「確かに。・・・・・・朔夜、なのか?」
豪臣は、信じられない気持でいっぱいだった。
(この娘が朔夜?何なんだ、いったい!どういうことなんだ!?)
「説明します」
豪臣が思案していると、朔夜が部屋に入って豪臣の前まで来た。
豪臣の目の前に立つ朔夜は、140㎝半ば、といった身長。顔は小さく、大きな瞳が可愛らしい。肌は雪の様に白く綺麗。そして何より、溢れんばかりに輝く金髪が印象的だった。朔夜はそれを、後ろで二つに大きな黒のリボンで結び、腰の辺りまで垂らしていた。
服装に関しては、藍色で無地の和服。しかし、ただの和服では無い。何故か裾の丈が短く、膝上。茜色の帯は後ろで蝶々結び。上品で落ち着きがありながらも可愛らしさを引き立てている。
目の前の朔夜は140㎝半ば。豪臣は約180㎝。
つまり、上目遣いの朔夜が目の前に居る状態だ。
(って、可愛過ぎだろ///!)
豪臣は顔を真っ赤にする。
「お、おう!説明してくれ///」
若干、声が裏返りながら言う豪臣。
(真っ赤になって可愛いですね。まだ、自分の容姿を見た訳ではありませんが、豪臣に気に入ってもらえている様です)
内心ほくそ笑む朔夜。
「では、ちゃんと座って下さい、豪臣」
「あ、ああ」
言われた通り、椅子に座り直す豪臣。
そして
「なっ、何するんだ!?」
豪臣の膝の上に、ちょこんと座る朔夜。
豪臣は焦って訊く。
「何って。抱っこの続きですけど、何か?」
「な、何か、って・・・」
見上げて尋ねてくる朔夜に、ドギマギする豪臣。
(フフフ。もう、他の女に何て目移りさせませんよ、豪臣)
その様子を見て
「問題ありませんよね?」
満面の笑みで訊く朔夜。
豪臣は
「あ、ああ・・・」
と、返すしかなかった。
こうして、豪臣の煩悩との我慢バトルが始まったのだった。
(タ、タスケテ~///!)
~洛陽近郊 草原~
朔夜が、人に変身出来る様になった次の日。
豪臣たちは、義勇軍の陣がある草原に向かっていた。
豪臣と鈴花は馬に乗り、もちろん朔夜は人の姿で豪臣と一緒に乗っている。
ちなみに朔夜は、昨日のその後「貂蝉の友である卑弥呼に、仙桃と言う桃を貰って食べたら成れた」と説明した。
説明後、当然朔夜は豪臣と一緒にベッドに入り、煩悩と戦う豪臣を苦しめた。
当然豪臣は、虎の姿ではない状態では駄目だ、と拒否したが
「嫌なのですか///?」
と、頬を染めての上目遣いでノックアウト。
即了承してしまった。
そんなこんなで、今豪臣は寝不足でグロッキー状態に陥っていた。
「豪臣君、大丈夫ですか?」
鈴花は、心配そうに尋ねる。
「ハハハ、ダイジョウブダイジョウブ」
返す笑顔が、若干怖い豪臣。
(フフフ)
そんな様子に、内心ほくそ笑む朔夜。
(あらあら。豪臣君も大変ですね。でも、これから会う方々も、結構な、いろんな意味で猛者ですよ?大丈夫でしょうか)
そんな様子に、内心苦笑する鈴花だった。
~義勇軍~
豪臣たちの視界に、自陣が見えてきた。
「結構大きいな」
そう感想を漏らす豪臣。
「中央に見えるテント・・・天幕はかなりの大きさですね」
と、朔夜も呟く。
「はい。中央に見える天幕は、三十人程が入ることが出来る謁見用の天幕です。元(げん)さんが、小さいと舐めてかかって来る莫迦が居るからな、と言って大きい物を用意しました」
そう二人に話す鈴花。
(なるほどね。小さな義勇軍じゃ、身分の高い者に顎で使われるだけの存在になりかねない、と)
つまり、普通は貧乏所帯であるはずの義勇軍が、良い物資を持っていれる。これは、大きなバックボーンが付いている、と相手に見せることが出来る。相手が、豪族に支援してもらっている、と勘違いをすれば儲けものだ。
「それにしても、元爺はホントに金持ちだな」
「何でも、主要都市には支店があるから、そこで補給が出来るようにしてある、とのことです」
「・・・とんでもないな」
豪臣は、溜息を吐いて呆れた。
~義勇軍 天幕~
陣に到着した豪臣たちは、謁見用の天幕に案内された。
中に入ると待ち人が、椅子に座って待っていた。その他には、何も無い。
待っていたのは三人の女性。
一人目は、青い髪で槍を携えた女性。髪は肩に届かないくらいの長さだが、一か所だけ腰の辺りまで伸ばしていて結わえてある。可愛いと美しいを兼ね備えた様な女性だ。豪臣を見て、ニヤニヤしている。
二人目は、短髪黒髪で長身の女性。真面目そうな印象を受ける、キリッ、とした顔立ち。彼女の両サイドに鉄鞭が置いてある。豪臣に気づき、品定めをするように見てくる。
三人目は、透き通るような銀髪の少女。髪の長さは肩にかかるくらいで、毛先が跳ねていてアホ毛があるのが特徴的。彼女の後ろには、小柄な少女に似つかわしくない程の大斧がある。豪臣が入ってきても、チラ、と見ただけで目を逸らし、ボ~、としている。
豪臣の三人を見ての印象は
(うっわ~。癖が強そうだな~。今の俺には、少しキツイかも・・・)
だった。
そして、朔夜の第一印象は
(またですか。また、女ですか!)
であり、頭が痛くなったいた。
「さて、荀攸殿。此方が天の御遣い殿か?」
青い髪の女性が立ち上がり、鈴花に話し掛ける。
「ええ、そうですよ」
「なるほど。では、御遣い殿。私の名は趙雲。字を子龍と申す」
と、趙雲が名乗ると、黒髪の女性も立ち上がる。
「我が名は、姓を太史(タイシ)。名を慈(ジ)。字を子義(シギ)と言う。お見知りおきを」
二人が自己紹介をすると、最後の少女が
「徐晃(ジョコウ)・・・公明(コウメイ)」
と、視線は向けずに、座ったまま呟いた。
「ん。俺は紫堂豪臣。姓が紫堂で、名が豪臣な。好きに呼んでくれて良い」
「朔夜と言います。呼ぶときは敬称をお忘れなく」
「「「・・・・・・」」」
朔夜の言葉に沈黙する三人。
そんな中、豪臣は
(おいおい・・・とんでもない奴らが来やがったな。
蜀の五虎大将の一人趙子龍。孫伯符・孫仲謀に重用された豪傑太史子義。魏の五大将の一人徐公明。
三人が三人とも、最強クラスの豪傑じゃないか)
と、内心冷や汗をかくのだった。
朔夜のことは置いておこう、とでも思ったのか趙雲が豪臣の方を向いて口を開く。
「さて、名を教え合ったことですし、ちょっと力試しをしたいのですが?」
「・・・は?」
豪臣は、ポカン、と口を開ける。
「いや何。何でも御遣い殿は、劉表軍にて文聘(ブンペイ)と共に武勇を轟かせる猛将黄祖を破り、たった一人で二万の軍勢を止めたと聞く!その武、我が槍で確かめたい!」
趙雲は、わざとらしい身振りと口調で言う。
(いやいやいや。だからって、いきなりやんなくても)
「お、俺寝不足でさ・・・」
豪臣が言い訳を始めるが、趙雲の言葉に残りの二人も同調する。
「確かに。その武を我が双鉄鞭でやり合ってみたいですな」
ニヤ、と試す様な笑いをして、双鞭を手に取る太史慈。
(おいおいおい。勘弁してくれって)
「いや、疲れが溜まってるからさ・・・」
一歩後退する豪臣。
「ボクも・・・殺ゆ」
ちょっと舌足らずな言葉で言ってくる徐晃。彼女は巨大な大斧を持ち上げる。
(ちょっと待て。殺ゆってなんだよ。“殺”ゆって)
「三本もやる体力が・・・」
さらに一歩後退する豪臣。
しかし、そんな豪臣の後退も、次の一言で止まった。
引き攣った笑みを見せる豪臣を見た趙雲は、わざとらしく肩を落とす。
「ふー。御遣い殿は、思いの外根性の無い方だったか」
ピク、と豪臣の後退が止まる。
その言葉に、太史慈と徐晃も続く。
「の、様だな。まさか、此処まで腰抜けだったとは・・・」
ピキ。今度は豪臣の顔に、薄らと青筋が浮かぶ。
「・・・ヘタレ」
ピキピキ・・・ブチッ。豪臣の顔が赤くなり始める。
(何で、こんなに莫迦にされないといけない!そんなにやりたいのか?そーか、そーか)
豪臣が三人を睨みつける。
「いいぞ、お前ら。俺、丁度ストレスが溜まってたとこだったんだよ。
・・・全員纏めて畳んでやる!さっさと、掛って来い!」
ゾクッ!
豪臣は、その場に居た全員が身震いする程の殺気を放った。
三人は、反射的に自分の武器を握りしめる。
豪臣は、この世界に来て、まだ一度も抜くことの無かった武器を手にする。
それは、常に豪臣の腰の後ろに隠されていた刀。大脇差し・上弦(ジョウゲン)と中脇差し・下弦(カゲン)だった。
二本の刀を抜いた豪臣を見て三人は思う。
(ふふ・・・とんでもない実力者だったか)
自身の愛槍・龍牙(リュウガ)を握りしめながら、若干の後悔とまだ見ぬ高みへの期待を込めて思う。
(これ、は・・・男と思って舐めきっていた。油断したら、即死は確実)
双鉄鞭・烈虎(レッコ)を油断なく構え、冷や汗を流す太史慈。
(・・・強い。・・・でも、負けない)
大斧・壊大戦斧(カイダイセンプ)を構えて笑う。
「準備は良いか?」
三人が構えると、豪臣が口を開いた。
「・・・いくぞ」
【視点・朔夜】
豪臣が殺気を放つ。
隣に立っている鈴花が震えだした。
(仕方がありませんね。豪臣の殺気に耐えているだけ、文官としてはマシなほうでしょう)
あたしは鈴花の前に立ち、仙氣を前面に放出する。
後ろの鈴花の震えが止まった様ですね。
「ふぅ~。・・・朔夜さん。ありがとうございます」
「構いません。鈴花は、そこを動かないで下さい」
あたしがそう言ったとき、豪臣のコートに隠れていた、腰の上弦と下弦を抜刀する。
この二本の脇差しは、豪臣の生み出した小太刀二刀流を発揮するために必要不可欠な武器。
その刀を抜いたからには、豪臣も相当参っていたんでしょう。
(まぁ、あたしの所為ですけど。・・・さて、あの三人は何分持つでしょうか)
そう思い、あたしは笑みを溢す。
(豪臣を挑発したのはあなたたちです。精々、後悔して下さい。無能な雌ども)
【視点・終】
あとがき
どうも、虎子てす。
いや~、お気に入り登録が順調に増えていますね。嬉しい限りです。
目指せ200人!
さて、作品の話ですが・・・
遂に!つ・い・に、朔夜さん人化計画が完了しました!お待たせしました。
容姿についてですが、何で小さいの? と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ズバリ、お答えします。
理由は簡単。長身にしたら、肩に乗れないじゃん! です。
ご理解いただけたでしょうか?
ただ、人化して、若干黒くなったような・・・
では、次。これから仲間となる三人娘が登場しましたね。
まぁ、星(趙雲)に関しては、皆さんご存じでしょうし省きます。
一人目は、呉の豪傑太史慈。“長身の短髪黒髪美女”と覚えて下さい。
二人目は、魏の五大将徐晃。“銀髪の無口な美少女”と覚えて下さい。
二人のプロフは次回に載せますね。
次回投稿は、未定です。
作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。
本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
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皆様!
ながらくお待たせしました!
ついに、遂に朔夜がぁぁぁぁ!!
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