No.120302

真・恋姫†無双 ~祭の日々~10

rocketさん

二次創作していると、ときどき不意に「あれ?・・・こんなだっけ?」といったような感じに、
キャラクターの特徴やらなんやらがつかめなくなって不安になることがあります。
打開策は開き直ることです。(マテ
というのは冗談ですが、微妙に実際のキャラから乖離していくことはあるかと思います。
定期的に本家をプレイしてすり合わせていくつもりではありますが、ある程度は見逃していただけるとうれしいですw

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2010-01-24 12:15:48 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9155   閲覧ユーザー数:7503

 

 

「・・・と、いうわけで。蜀に対して、私たちも警戒しなければならないわ」

 

雪蓮の説明が終わり、今まで驚きで口をつぐんでいた辺りが騒然とする。

まさか蜀が・・・挙兵だと?

劉備を見たことは遠目でしかないが、噂を聞く限りではそんなことするはずもない人物だ。

俺よりずっと彼女を知っているはずの雪蓮がひどく困惑しているから、それは名実共に正しいのだと思う。

「風・・・・・・どう思う?」

隣に座している風に尋ねる。

「・・・ぐう」

「寝るなっ!」

「・・・・・・おおっ!?」

思わず突っ込みを入れてしまう。

・・・なんかこのやりとりも久しぶりだな。

「すみません、あまりに突拍子もなくて寝てしまいました」

「なんでそれで寝ちゃうんだ・・・って、やっぱり突拍子もないことなんだな、これって?」

「そりゃそうですよー、なんてったって三国協定を乱しているんですから。

桃香さんがそれをするとゆーのも、正直言って考えにくいんですが・・・」

 

(・・・というよりも、これはあまりに杜撰(ずさん)過ぎますねー。

挙兵するならするで、我々に気づかないようにやればいいのに・・・・・・これでは戦を起こしたがっているとわざわざ吹聴するようなもの。いえいえ、そんなことをする意味が・・・)

 

劉備がそれをするのは考えにくい・・・彼女を知る風がそういうのだ、それは正しいのだろう。

・・・・・・なんせ風は自分すら客観的に見れる軍師だからな。

「ですが、実際に事は起こってしまっていますからねー」

遠くを見るような目で風はいう。

ぼーっとしているように見えるが、その実、きっと頭の中ではいろいろな考えが頭を駆け巡っているのだろう。

祭さんを見ると、苦い顔で目を瞑っていた。

と、俺が見ていることに気づいたのか、祭さんは肩をすくませてみせる。

 

「協定を破ったのだ、蜀に対して抗議文を送るべきだ!」

 

がたんっ、と音を立てて立ち上がる人がいた。

そう叫んだのは、確か――

「そんなことしたってどうにもならないわよ、蓮華。いい?蜀はすでに挙兵をしているの。いえ、文面を見るとまだ募兵だけかもだけど。

それでも、私たちが抗議文を送ったところで、それが成都に着くころには呉や魏に兵が攻めてきているかもしれないでしょ?」

――孫権だ。

雪蓮と同じ長い桃色の髪。雪蓮よりは幾分と生真面目そうに見えるが。

「ですが・・・っ!」

「私に言わせれば・・・協定を破ったのだから、蜀に攻め込むべきね」

「雪蓮」

はっきりと断じてしまった雪蓮を、冥琳が咎める。

わかってるわよ、と雪蓮は首をすくめて目をそらした。

「ともかく、蜀に対してなんらかの意思表示はしないと。そこらへんは魏とも話し合うべきですね~」

穏がそう意見した。

・・・穏には、さきほどの宴の間に真名を許されていた。

いわく、「天のお話をしてくれるんですか!?ぜ、ぜひ私のことは穏と!これからも末永くお付き合いしていけると嬉しいのですが!」だそうだ。

後で祭さんのきいたところによると、彼女は知識欲が半端ないらしく、彼女が知りえない知識を持っている俺は金の卵を産む鶏にでも見えているらしかった。

雪蓮がちらっとこちらを見る。

俺というよりは、風の反応を見ているのだろう。風はそれに応えた。

「・・・華琳さまはおそらく呉と話し合う前に、やるべきことはすべてやっておくかとー」

「まあ華琳ならそうするでしょうね・・・冥琳?」

「我らもやるべきことはやっておこう。いつでも軍が出せるように・・・それと蜀に人を入れておきたい」

人を入れる・・・つまり間諜か。

って、こんな大事な話をしているときに、俺たちはここにいていいのだろうか?

「いいんですよ、お兄さん」

俺の顔を見て察したのか、風は答えをくれる。

「蜀が乱してしまったとはいえ、もともと協定は絶対です。

・・・魏と呉は、まだ仲間ですよ」

蜀はその限りではない、と風は言っている。

 

俺が消えるのを覚悟して――実際に消えてまで、彼女たちとたどり着いた平和はこんなにも脆いものだったろうか。

俺はひとり、そう嘆くのだった。

 

その夜、遅く。

与えられた部屋で寝る準備をしていると、不意に扉が開いた。

「・・・祭さん」

そこにいたのは、今、無性に会いたいなと思っていた人。

「夜遅くにすまんな。今いいか?」

やけに真剣な顔をしている。いや、それも当然か。なにせまた戦が起きるかもしれないのだから。

どうぞ、と椅子を勧める。

「どうしたの?・・・蜀のこと?」

「ああ・・・一刀、明日から本格的におぬしを鍛えようと思ってな」

「え?」

突然のことに驚いた。というのも、祭さんにはもうそれをやる暇はないように思えたからだ。

「明日からって・・・明日から祭さん忙しいんじゃないの?」

「戦がまだ起きるかはわからんが、そのためにやるべきことはやっておくべきだと冥琳も言っておったじゃろう?」

「・・・俺を鍛えるのが、やるべきことなの?」

首をかしげる。俺よりも、祭さんの配下の人間を鍛えるのが先じゃないのか?

「もちろん、儂の多くの時間は軍の強化にかける。・・・かなりの時間、部下たちも放っておいてしまったしの」

呉に帰ってきたとき会った、祭さんの部下であったという門番兵を思い出した。

聞いた話だと、彼は戦が終わった後に軍を辞めた人物らしい。

祭さん以外に仕えるつもりはなく、しかし呉のためになりたいからと、門番をやっているのだと。

「じゃが、たぶん・・・戦になったら、おぬしも出るじゃろう」

「それは・・・どうだろう。よくわからないけど、そうなるかもしれないな」

なにせ俺はまだ華琳のもとへ戻っていない。

こんな状況じゃ、易々と洛陽へ戻れるのかも疑問だ。

「おぬしは智で戦う人間じゃが、それでも弱すぎる。そんなではいざというとき自分の身も守れんではないか」

まあ、確かに警備隊を指揮していたとはいえ俺自身の力はそんなに強くないしなあ。

「そりゃそうだけど」

「なんじゃ、不満なのか?」

「いや、そうじゃなくて・・・・・・その、祭さん」

「はっきり言わんか、なにが不満なんじゃ!」

不機嫌極まりないといった感じの祭さんを、慌ててなだめる。

「本当に不満じゃないよ。ただ・・・祭さん、ひょっとして心配してくれてる?」

そうきくと、祭さんはきょとんとした顔をした。

そして自分の言動を振り返ってみたのか、顔を赤らめてそっぽを向く。

「・・・わ、悪いか」

「いや、うれしい」

「む」

「ありがとう・・・明日から、俺、がんばるよ」

祭さんの好意に報いるためにも。

せめて、自分の身くらいは守れるように。

そういうと、祭さんは少しだけ不機嫌そうになった。

「・・・ずるいのう」

「ん?」

祭さんは不意に俺に手を伸ばし、襟をつかんですごい力で引き寄せた。

「うわっ!?」

「・・・ちゅ」

「!?」

唇に触れた、やわらかいもの。

「んっ、んー・・・・・・んちゅっ」

「・・・!・・・、・・・っ!」

続々と続けられるキス。俺は慌てることしかできない。

数秒の後、ようやく俺の口は開放された。

祭さんは俺を放したとたん、すぐに背を向け扉へと歩き出してしまった。

「え、えっと」

おそらく俺の顔は今、真っ赤だ。

驚きと、恥ずかしさと・・・なによりもうれしさで、胸がいっぱいになっている。

扉の前でぴたりと止まった祭さんが、顔をこちらに向けずに言った。

「儂ばかりおぬしのことで頭がいっぱいになるのはずるい・・・おぬしも少しはそうなればよいわ」

 

祭さんは扉を開け、去っていく。

予想外の言葉に、俺は呆け、そしてより顔が熱くなった。

彼女の言うとおり――今日はもう、彼女以外のことを考えられないに違いなかった。

 

廊下を歩く妙齢の女性がひとり。

彼女は顔を真っ赤にして、さらには少しにやけさせて道を歩いていた。

夜風の冷たさで頭も冷えたのか、しばらくするとはっとしたような顔で反省を始めた。

 

「・・・いかんいかん、儂はいったい何をしておるのだか。まるで生娘のようではないか」

 

自分よりも年下の男に。

口付けするのでさえ、少し戸惑って。

自分はもう少し、そういうことに抵抗がないと思っていたが・・・。

 

「・・・あやつのせいじゃな、うん、そうじゃ。儂はちっとも悪くない」

 

理不尽極まりない言葉で、彼女は自身を納得させる。

 

「大体、儂の帰還祝いの宴で他の女とよろしくするとは何事か・・・あのたわけめ」

 

冥琳と楽しそうに会話をしているところを、偶然見てしまった。

まったく、自分の目を良さを呪ったのは生まれて初めてだ。

 

「明日から・・・どうなるかのう」

 

――蜀の挙兵。

自分が命を賭した戦では、なにも成し得なかったのだろうかと、ひどく悲しくなる。

 

「・・・儂が終わらせてみせる」

 

誓いを胸に、しっかりとした足取りで歩き出す。

 

「見ていてくだされ、文台殿――。儂はまだ、やるべきことが残っているようじゃから」

 

――成都。

 

執務室で山のように積まれている書簡には見向きもせず、ひたすらに思考に耽る少女がひとり。

彼女こそ、かの有名な諸葛孔明。真名を朱里という。

反董卓連合の際にはまだ無名に近かった蜀を、大陸の中で三大勢力のうちのひとつになるまでに導いたのは、まさに彼女だ。

彼女がいなかったなら、蜀は地方の一義勇軍で終わっていた可能性すらある。

そんな彼女が――その智謀はまさに神の如しとまで称えられる彼女が、今、必死で頭を悩ませている。

 

「・・・・・・桃香さまぁ」

 

なかなか考えがまとまらない。

大事な主君。その志に共感し、感銘を受け、自分の持てる智のすべてを捧げると誓った。

そんな彼女が、最近おかしい。

それについて自分はなにができるのだろう。

もしくは、なにをしなければならないのだろうか。

 

「朱里」

 

扉が開き、誰かが入ってきた。

「あ・・・星さん。どうしましたか?」

「これを見てくれ。領内各地で発表されたものだ」

入ってきたのは、趙雲。真名を星という、蜀の将だ。

彼女には珍しく、見てわかるほど慌てていた。

その手に握られているのは竹簡。

そう――洛陽で覇王が手にしているだろうそれと同じものだ。

嫌な予感しかしないが、朱里はおそるおそるそれを受け取り、開いた。

そこには魏王への弁解のしようがないほどの批判と、募兵の要請。

 

「・・・・・・は、はわわっ!なんてことを・・・!!」

「・・・まったく、桃香様は、どうしてしまわれたというのか」

星がうなるようにつぶやいた。

 

――ちょうど一週間ほど前から、彼女たちの主の様子がおかしくなった。

民のためにと考えていた政策を次々とやめにすると言い出したのだ。

その中には、彼女自ら指揮しようとしていた“学校制度”まであった。

なぜかと問うても、「そうしたほうがいいと思うの」といつもの笑顔を浮かべながら言う。

 

「私たちは確かに華琳さんに負けてしまったけれど、でも私の夢が間違っていたわけではないんだよ。

“この大陸を笑顔にする”――そのために、私はなんだってする。

私は朱里ちゃんたちみたいに賢くないけれど、いっぱいいっぱい考えたの。

やっぱり華琳さんのやり方じゃ駄目だよ。華琳さんのやり方だと、戦はいつまでたっても終わらない。

好戦的な指導者の下では、けして戦は終わらないんだよ」

 

――だからあなたが戦を起こすのか?

その場にいた誰もがそう思った。けれども、言わなかった。

桃香がおかしいことは誰の眼にも明らかだったからだ。

それはまったく彼女らしくなく、政治的にも危ない発言だったが、幸いその場にいたのは重鎮のみ。

今日はたまたま虫の居所が悪かったのだろう。この失言については後日、改めて諌めればいい。

誰もがそう思い、誰もが彼女を放置した。

怖かったのかもしれない・・・だってそれは、彼女たちが信じた主とは到底異なるものだったから。

 

そして、例の声明が各地に発表された。

桃香は朱里も雛里も、誰の手も通さずに――挙兵を発表してしまったのだ。

すでに魏にも呉にも知れ渡っているだろう。

 

「軍師殿、どうなさる?このままでは・・・」

「・・・ともかく、魏と呉の両国には早急に弁解しなければ。それに民にも・・・」

 

頭の中でやるべきことを整理する。

ちらっと窓に目をやると、桃香の私室が見えた。

布か何かで窓を遮ってあり、中の様子をのぞくことはかなわなかった。

星には言わずに、朱里はひとり、心の中で思う。

(そして・・・桃香さまも、なんとかしなければ)

星はその表情をみて、ひどく焦った。

桃香のことを考えているのは明白で、その表情は今まで見たことがないほど鋭かったからだ。

 

(朱里は、桃香様の処置を考えているのだろうが・・・それは諭すだけで済むのだろうか?もしくは・・・)

 

――どこよりも平和を謳うこの国で、しかし、今はどこの国よりも疑心が渦巻いていた。

 

――???

 

「・・・・・・蜀王に手を出したのは、お前か?」

「ええ、私です。なにか不満でもありましたか?」

「・・・・・・・・・いや」

「このまま行けば、戦が起こる。戦が起これば人が死ぬ。

外史はもとより脆いもの・・・主要人物の誰かさえ死ねば、支持を失うでしょう。

なにせ、どの人物にもそれなりの“支持者”がいますからね」

「蜀王は手のうちにあるんだろう?そいつを殺してしまえばいいんじゃないのか?」

「それではあまりにつまらない・・・混乱が混乱を呼び、多くの主要人物が死ぬ。これこそが外史の破滅でしょう?」

「・・・お前は性格が悪すぎる。でも、まあ・・・まさかあの変態どもの先を越せるとは思っていなかったぜ」

「この外史はひどく見つけやすかったですからね・・・おそらく、黄蓋が生きていることが原因でしょう」

「どういうことだ?」

「つまりですね、ある外史を見た誰かが思ったのです。黄蓋に死んでほしくない、と。

そこまではよくある話。数多の外史のひとつ。ですが――」

「・・・」

「それと同じくして、この外史から弾かれたはずの彼まで呼び戻してしまった」

「・・・・・・終わったはずの外史を続けるには、それ相応の理由が必要・・・」

「そう、つまり、弾かれたはずの彼を呼び戻したのはあまりに“無理がある”ということです。

正当性のない外史は脆く、消えやすい・・・我らが見つけやすかったのも頷けるでしょう?」

「ふん・・・」

「失敗の多いこの仕事ですが・・・今回は、どうもこちらに分があるようですよ」

「関係ない。分があろうとなかろうと、俺はこのふざけた物語をぶち壊すだけだ」

「ふふっ・・・いい、いいですよ、そういうところが私の心をときめかせるのです・・・」

「殺すぞ」

 

男はある方向を向く。

そちらにあるのは、呉。

話題の中心にいる彼の現在地。

 

「今度こそ、お前を殺してやるぞ。・・・・・・北郷一刀」

 


 
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