No.116977

恋姫無双~異聞録 IFルート~ 第6話(タイトル修正)

鴉丸さん

タイトル変更しました

それと多分次話までシリアス展開だと思います

2010-01-06 22:55:05 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2670   閲覧ユーザー数:2451

 

 

「狂骨と刑天が北郷一刀につきましたか」

 

 

とある神殿に二つの影があった 一人はメガネをかけた青年于吉 もう一人は銀色の髪の少年左慈

 

 

「ちっ……どうする?」

 

 

「簡単です 邪魔者は排除すれば言い訳で、狂骨・刑天を殺すなり、しばらくの間行動不能にすればいいだけのことです」

 

 

「だが、奴らは戦闘能力で言えば神仙の中でも上位に入るぞ? 唯一狂骨は経験の差で付け入る事はできるが、刑天を相手にするのは俺たちでは無理だぞ?」

 

 

「ですが……もし『狂骨が暴走し、それを刑天が止める』とすると?」

 

 

雛里の恋人として認識されており、腕も立つ狂骨 そしてなんだかんだで数百年以上生きており、戦や政務両方に広い見識を持つ刑天 さらに最近は「父親」と覚醒して、信頼を受けている二人 なら、その二人が戦闘不能に陥れば?

 

 

「……二虎競食の計か?」

 

 

「まあ、細かいところは違いますが概ねその通りです」

 

 

策の準備をするといい、神殿から出た于吉 その顔には酷薄な笑みが浮かんでいた

 

 

「いくら不老不死になろうと……付け入る隙はあるんですよ」

 

 

そして策を弄するために跳んだ

 

 

 

 

「それじゃあ……魏と一戦構える事にしたんだな?」

 

 

軍議の題目は魏と戦争をする事 元々、曹操も愛紗を狙っていたのは知られていたが本格的に狙う事にしたようだ

 

 

「ああ それで今回は華雄や白蓮は成都の守備に残ってもらって、他の将に出てもらおうと考えている」

 

 

一刀が華雄などを成都の守備に残し、残りの武将を魏との戦に連れて行くこと そして、全員その方針に文句は無いようで軍師たちはそれを元に策を練り始めている

 

 

「それじゃあ、みんなよろしく頼むよ!」

 

 

「「「「御意!」」」」

 

 

「(一応、薬を用意しておくか)」

 

 

もしものために、能力を使い治療薬を作り出しておく事に決めた刑天 それが功をそうしたのかも知れない

 

 

蜀は動き出した そして魏も―――

 

 

「蜀が攻めてきそうね」

 

 

「それなら、すでにいろいろ策は練っております」

 

 

華琳が部下である桂花からの報告を受け、向かってくる蜀に対する準備を始めていた

 

 

「そして……関羽を私の手に……」

 

 

目的はいろいろあるが、もっとも欲しいのは愛紗の身柄 そして、華琳の脳内では愛紗をどう料理するかの妄想と、敵に対する『覇王』としての感情があった

 

 

 

 

「始まりましたか……」

 

 

于吉は小高い丘に立っていた 眼下に広がるのは蜀と魏の戦闘 つい先ほど始まったばかりの戦闘は、互いに未だに付け入る隙はないが―――

 

 

「さて……この場で狂骨を暴走させれば、刑天が止めるしかない」

 

 

不老不死だろうと『天敵』と言うものがある そして餅は餅屋というようにその道のプロなら用意するのは容易い

 

 

「それでは行きましょうか」

 

 

そして于吉は配下の白装束を大量に出現させ、戦場へと向かわせた狙いは狂骨を暴走させる事ができる重要な鍵である鳳統士元……雛里を―――

 

 

「なんだ!?」

 

 

前線に居た狂骨や愛紗は突然現れた白装束に驚いていた 最初は白装束たちと魏が手を結んだのかと思ったが、魏の兵や将にも襲い掛かっているのを見るとそうではないらしい

 

 

「なんだこいつらは!」

 

 

現に目の前にいる夏候惇―――春蘭―――も白装束を斬り捨てている だが、前線と本陣のちょうど中間に居た刑天は何かに気付いた

 

 

「まさか……しまった!」

 

 

隣にいた聖や星にここを任せ、本陣へ走る刑天 だが―――

 

 

「雛里!」

 

 

一刀の叫びが聞こえた 

 

 

 

 

それは突然の事だった 乱入してきた白装束だったが前線に集中していたので、油断していた その油断を突き、本陣の後ろから一人の白装束が奇襲を仕掛けてきて、雛里を奪取していった

 

 

「行かせるか!」

 

 

走ってくる白装束に向かい餓虎を振り下ろしたが、それをギリギリで避けられ前線のほうへ走っていった 刑天はすぐに方向転換し、懐から薬の入った小瓶を取り出しておいた

 

 

「クソ……情けない」

 

 

どうやら聖たちも抜かれたのか前線に向かう姿を見つけた刑天 白装束の詳しい目的は分からないが、雛里を攫ったこと・前線に向かっている事から考えられるのは

 

 

「狂骨を暴走させる気か!」

 

 

いくら自制していようとも狂骨は雛里がいなければ壊れる 以前、狂骨が雛里に依存していると評していた 元々が仲間を守るために、忘れられようとも人から仙人になった それは気が狂ってもおかしくない判断 だが、奇跡的に雛里は狂骨の事を覚えていた それを理解したときの狂骨の喜びはいかほどか そして、そんな雛里に狂骨が依存するのも理解できなくは無い

 

 

「楽観視が仇になったか」

 

 

以前にも書いていたと思うが、『狂骨』と言う名は『狂人』を意味する だが、狂骨は狂ってはいなかった なぜか? それは、繋ぎとめる存在が居たから なら……繋ぎとめる存在がいなくなれば?

 

 

 

 

「ご主人様!」

 

 

「雛里!?」

 

 

狂骨にとっては聞こえるはずの無い言葉 ここには居らずに、本陣にいるはずの愛しい少女の声

 

 

「……鳳統……とった」

 

 

その言葉と共に雛里に短剣が突きたてられた その光景に蜀・魏を問わず驚愕した だが、次の瞬間雛里が苦しみだした

 

 

「あああああああああー!」

 

 

普通なら短剣を突きたてられた痛み だが、雛里の苦しみようはそれではない 狂骨は、白装束を斬り捨てると雛里に駆け寄る そして、突き立てられている短剣を見ると何かの液体が塗られていた それは毒 そして、どこからか聞こえてくる声をその場に居た全員が聞いた

 

 

『ククク……どうですか? 不老不死にも効果のある……いえ、不老不死だからこそ苦しみ続けなければならないんですよ』

 

 

刑天はその能力ゆえに効果がなく 狂骨は戦闘者として一流であるから効果が薄い毒 だが、雛里は戦闘はしたことが無く身体能力も年相応の少女のそれである つまり―――

 

 

『毒に対する免疫などが無いんですよ! 分かりますか? これも全て貴方のせいなんですよ!』

 

 

声の主―――于吉―――は狂骨を責め続ける お前が雛里の元に戻ってきたから、お前が油断していたから、お前がここにいるから、と 狂骨に駆け寄った愛紗や鈴々は「そんな事は無い! 気をしっかり持て」と必死に言葉をかける だが―――

 

 

「俺が……俺が……アアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

雛里が刺される姿を見て、雛里が苦しむ姿を見て動揺している狂骨に、于吉の責めは止めを刺していた 一度皹が入っていしまった堤防は、荒れ狂う水に耐える事ができずに崩壊するのみ そして視界が赤に染まり、思考も「雛里を傷つけた敵を殺す」というものに染まる 狂骨は文字通り狂人となり目の前にいる白装束に斬りかかった

 

 

 

 

『クククク……これでこの場にいる人間が全て死ねば上々 それでなくとも刑天はしばらく戦闘不能になる』

 

 

愛紗はこの言葉を聞き、声の主の狙いが狂骨に我を失わせる事が目的だった事を知る そして、鈴々に未だに苦しむ雛里を連れて下がるように命じ―――

 

 

「夏候惇! ここは退け!」

 

 

状況が理解できていない春蘭に叫ぶ 春蘭も狂骨を危険と判断し、部隊に下がらせるように号令を下す 撤退する直前に愛紗に「勝負は預ける それと……負けるな」と声をかけた それは、狂骨ではなく声の主の策に負けるなという激励の言葉 愛紗は力強く頷くと、狂骨に走り寄ろうとする だが―――

 

 

「お前では止められん お前は本陣の防御に向かえ……桔梗と紫苑だけでは持たない」

 

 

横から出てきた刑天にそういわれた 既に、聖や星、翠には本陣の守護に向かうように伝えてある

 

 

「だが!「雛里にこれを飲ませろ」これは?」

 

 

刑天から小瓶を渡される 愛紗は中身を問うと「治療薬だ」と言われる そして、急いで鈴々やその部下に警護されている雛里に走りより、飲ませる すると先ほどまでの苦しみが嘘のように、落ち着いた

 

 

「刑天殿!」

 

 

安堵しながら刑天のほうを見ると、すでに狂骨との戦闘を開始していた

 

 

「雛里をすぐに本陣に連れて行け! 聖に後の対応は任せてある!」

 

 

狂骨の斬撃を受け流しながら叫ぶ刑天に頷き、雛里を連れて本陣に向かう愛紗たち そしてその場に残されたのは斬り殺された白装束の死体、それと―――

 

 

「敵か? 敵だな?」

 

 

未だに暴走状態で眼の焦点があっておらず、標的を刑天に定めた狂骨と

 

 

「……はぁ……まったく、最近は本当に面倒な役回りだな」

 

 

餓虎を蜻蛉に構え、狂骨に対峙する刑天だった

 

 

「来いよ……このままお前をかつての俺のようにするつもりは無い」

 

 

その言葉と共にかつて虎牢関で戦った二人が再び斬り合う あの時と違うのは、互いの持つ感情のみ

 

 

「男ならウダウダ悩んでいるんじゃねぇ!」

 

 

先に踏み出したのは刑天 その動きに迷いは無い 刑天にあるのは「狂骨(バカ)を正気に戻すこと」のみ 

 

 

 

 

仕組まれた暴走はどこに行くのか そして―――

 

 

「……ご主人……様 だめ……です……」

 

 

雛里の呟きは本陣に向かう愛紗たちの足音に飲まれ消えた

 

 

 


 
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