波の音が低く響く。

海風に揺れる旗と、規則正しく回る機物の音。

ここは蒼生大和の軍港地区――戦時下における物資の動脈であり、海軍戦力の根幹を支える戦略拠点の一つ。

草薙悠弥が立つその場所には、彼自身が築き上げた“意志”が刻まれていた。

民の手で運ばれる補給箱、避難民の労働者、そして――肉体を揺らして巡回する蒼生軍女兵士たち。

蒼生大和は“民の総力”で立つ場所だ。

魔大国、神聖国という強大な敵と相対するために。

民間人も、兵も、女も老人も、等しく「戦う者」として役割を持つ。

軍港地区は、特にその傾向が強い。