No.1158133

運命の双子と鏡の悪魔

Nobuさん

※オリキャラがいますので、ご注意ください!

絶望鬼ごっことSoundHorizonのクロスオーバーです。
双子の姉弟が屋敷の中で冒険をします。

2024-12-15 08:02:42 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:123   閲覧ユーザー数:123

 ここは、日本のどこかにある桜ヶ島。

 そこに住む双子の姉弟、有栖と章吾は、ごく普通に中学校に通い、ごく普通の一日を過ごす。

 ――いや、鬼がいるから、「ごく普通」とは言い難いのかもしれない。

 

 いつものように双子は中学校の授業を終え、自宅に帰ろうとした。

 優しくて美しい母親が待っていて、双子を出迎えてくれる。

 

 しかし、運命というのは残酷である。

 狡猾な蠍の影が、双子の後ろから迫った時――

 

「……有栖、ここはどこだ?」

 

 双子は見知らぬ部屋の中に閉じ込められていた。

 チカチカと、部屋の中で灯りが点滅する。

 その部屋には、古い鏡が壁中に飾られていた。

 

「分からないわ、章吾……。どうしてここにいるのか、分からない……」

 

 双子は何故閉じ込められたのか、全く思い出せない状態だった。

 幸い、名前だけは憶えているようだが、この状況が双子には理解できなかった。

 

「だが、身体は何故か覚えている。鬼に力を授かった……かもしれないのを」

「私も……魔法が何となく使える、のかと思って」

 双子がお互いの状況を理解しようとした時、突然、有栖の後ろで大きな音が鳴った。

「きゃっ!」

「どうした、有栖!?」

「章吾、鏡が……!」

 振り返ると、古い鏡が壁から一つ、落ちていた。

 そこにはポッカリと、真っ暗な通路が大きく開いていた。

 もしかしたら、ここを通り抜ければ脱出できるかもしれない、と有栖は思った。

 

「……穴が開いているな。飛び込むぞ」

「ええ!」

 双子は意を決して、通路の中に飛び込んだ。

 有栖は超能力を持っていた時に残っていた暗視能力を使い、章吾と共に暗い通路を進んでいく。

 古い人形に、剥がれかけた呪符、腐りかけの注連縄、そしてたくさんの古い鏡。

 無数の鏡の中で、双子が同じように不安げな表情を浮かべている。

 

「ここは、どうやら幽霊屋敷みたいね。いや、鬼屋敷と言った方がいいかしら。肝試しに来たら行方不明になるらしいわ」

「有栖の言う通り、多分、鬼が住み着いたのだろう。あいつらみたいな不思議な術を使うからな」

 鬼は現代科学では解明できない様々な術を使いこなす。

 この屋敷にも術をかけ、双子を混乱させようとしているのだろう。

「やる事はただ一つ。鬼を倒して、脱出する事よ」

「ああ。俺達を酷い目に遭わせた鬼は、絶対に許さない!」

 双子は鬼を倒すために、先に進む。

 ふと、何かが動いた気がして、双子は視線を向ける。

 

 ――鏡に映っていた双子の顔に蠍の模様が浮かんだ後、ニタリと笑った。

 それが鏡の中から手を伸ばし、双子を捕らえようとする。

「有栖、下がれ!」

「ううん、私も戦うわ!」

 章吾は持ち前の運動能力を活かして、鏡の怪異に飛び蹴りを繰り出す。

 有栖は力を「思い出し」、魔力の弾丸を放って鏡の怪異に何とかダメージを与えた。

 無数の鏡が割れて砕け、キラキラと破片が落ちる。

「やった!」

 喜ぶ有栖だったが、さらに廊下の奥から無数の手が伸びてくる。

「逃げるぞ!」

「はっ、やっぱり鬼ごっこだからね!」

 この数を相手にするのは得策ではない。

 双子は無数の手から逃げ出した。

 

「ふう……何とか撒いたな」

「あいつらはしつこくなかったのかしら」

 何とか無数の手から逃げ切った双子は偶然、倉庫らしき部屋を発見した。

「うわぁ、結構物がたくさんあるわね」

 倉庫の中には道具がたくさんあったが、壊れていたり、子供では使えなかったりと大したものではなかった。

 ここで使えそうなものは何もなさそうだ。

 しかし、この倉庫には鏡がないため、無数の手は襲い掛かってこない。

 双子はひとまず休憩し、記憶を整理する。

 

「あの鏡にはやっぱり鬼が潜んでいたわ。私達で祓いましょう。……でも、どうすればいいのかしら……」

「俺達が家に帰る前に、何をしていたのかを思い出せ」

「ええ……分かったわ……」

 

 15分後、何とか有栖は記憶を取り戻し、鬼が屋敷に取り込む瞬間を思い出す。

 合わせ鏡の状態にある鏡に、鬼がいたのだ。

 つまり、鬼の本体は合わせ鏡の中にいる、という事になる。

 

「合わせ鏡……そういう事だったのか。鬼らしいな」

「もう少し、正々堂々と戦ってほしいわね」

 双子は鬼の狡猾さに呆れながらも、合わせ鏡――鬼の本体がいる場所に向かった。

 

 双子はいくつもの鏡のある部屋を探索し、何度かあの手を撃退し、一際広い部屋に辿り着く。

 そこには巨大な鏡が合わせ鏡になっており、鏡像が連なっている。

「さぞかし鏡鬼、といったところかしら」

「そうだな。いくぞ、有栖!」

 双子がそう呟いた瞬間、鏡の中の双子が再びニタリと笑った。

 

「有栖は俺が守る!」

 章吾は木刀を振るい、自分の真似をする鏡鬼を次々に攻撃し、気絶させていく。

 鬼の力を失ったとはいえ、運動能力は健在であり、有栖も負けじと鏡鬼を魔法で攻撃する。

「きゃっ!」

「有栖に触るなっ!!」

 鏡鬼から攻撃を受けた有栖に章吾は怒り、なんと木刀で二体の鏡鬼を真っ二つにした。

 次の瞬間、鏡鬼は無数の鏡の欠片となって砕け散り、屋敷が大きく揺れる。

 合わせ鏡の一つから光が見えると、双子は大急ぎでその中に飛び込んだ。

 

「う、うぅ……」

「私達……一体、どこに……あれ、ここ、は……?」

 気がつくと、双子は自宅で眠りから覚めていた。

 先程双子が体験していたのは、はっきりとしていたが、夢だったようだ。

 恐らく、鬼が見せたものだろうとは思ったが、どうしてこんな夢を見たのかは双子には分からなかった。

「どうしたの? もう朝ご飯、できてるわよ」

「は、はーい」

 母親が双子を呼ぶと、双子は朝食にありつくのだった。

 

「……やれやれ、双子を夢の中に閉じ込めようと思ったけど、失敗だったようだね。魔法使いも超能力者も消えてくれないか」

 その様子を見ていた一匹の鬼がいたのには、双子は気が付かなかった。


 

 
 
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