むかしむかし、ある村で伝染病が流行りました。
弱っている人には致命傷でしたが、それ以外の人には感染力が強い以外には大した症状は出ないものでした。
しかし、汚いものが嫌いな村人は、伝染病にかかった人を迫害しました。
それどころか、伝染病を黒魔法で広めたという魔女が存在すると言ったのです。
恐怖に狂った村人達は、魔女探しに躍起になりました。
村人が同じ村人を捕らえ、魔女と名指ししました。
裁判が行われましたが、名ばかりの裁判でした。
すぐに有罪判決が下され、拷問後処刑されました。
処刑方法は、もちろん火炙りでした。
そんな中、自然を守るレンジャーが、村人達にこう言いました。
「伝染病そのものに罪はない。野生に生きる者の中で密かに暮らしていて、それを人間が広めたに過ぎない。
だから自然にこれ以上踏み入れるべきではない」
レンジャーは村人を踏み止まらせようとしました。
しかし効果はなく、それどころかレンジャーを「伝染病に味方する裏切り者」と糾弾しました。
村人は伝染病の流行で恐怖に支配され、人を信じられなくなってしまったのです。
自分以外は全て敵に見えてしまったのです。
レンジャーは落胆して村を去ろうとしましたが、村人達は一斉にレンジャーを捕らえました。
伝染病の元凶は、レンジャーだと思ったからです。
「こいつを処刑すれば伝染病は治まる」
「伝染病を庇う者は魔女だ。誰であっても殺す」
ついにレンジャーの処刑が始まりました。
レンジャーは火炙りにされる前、こう言いました。
「魔女は君達人間の心の中にいる。私を処刑したところで、伝染病はなくならない」
結局、魔導医によって伝染病は収束しましたが、血なまぐさい悲劇は起きてしまいました。
これが、魔女を処刑すれば伝染病が消える、という世界にならない原因なのでしょう。
ある人物はそれを嘆かわしく思って、世界を書き換えてしまったのでしょうね。
ですが、本当にそれが幸せなのかは分かりません。
少なくとも、不幸になった者はいると思いますが。
恐怖は人を狂わせるもの。
たとえ自然災害や伝染病が流行したとしても、それに恐怖せず立ち向かう事が、人間にできる数少ない事なのです。
「人の振り見て我が振り直せ」ですよ?
ま、世界が単純化された方が楽になる、という考えもいると思いますが。
現実はあなただけのものではないとだけ言います。
恨むならあなたの恐怖心だけを恨んでくださいね。
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パンデミックをテーマにした、一話完結のフィクションです。
舞台はファンタジー世界ですが、現代世界をかなり皮肉っています。