私はベンチにすわらされた。
逆らうつもりもないけど、逆らえない。
相手は180キロある金属ボディーだから。
「うさぎ、『何が忘れられたのか』よかったよ」
並ぶ達美さんが微笑んだ。
血の繋がりはない、そもそも種族も違うけど。
達美さんは、ボルケーナ先輩の旦那さんの妹さん。
そのお兄さんの手で脳に併設された量子コンピュータが、ネットワーク上のあらゆる情報にアクセスできる。
その達美さんに言われたなら、ちゃんと見たんだろう。
「でも、今日はチューもなしですか?」
思いっきり顔をよせてみる。
いつもなら抱きつかれてホッペにチューぐらいするのに。
私のアイドルは遠ざかった。
微笑みに寂しさをにじませて。
達美さんのしっぽがバタバタ降れている。
不機嫌なネコの特性が。
フカフカモフモフの赤い毛でおおわれたしっぽ。
そのなかにも重く固いフレームがある。
当たるといたい。
私は背筋をのばして、礼を返す。
「ありがとうございます」
だけど、ここでほめられたくなかったな。
この仕事についてイヤなこと。
それは自分の経験が、イヤな記憶のイメージで上書きされていくことだよ。
「あんまりよかったから、今アーリンくんに見てもらってる」
たとえ誰に見てもらっても、この日を思いだすんだろう。
私を無視して、それにファントム・ショットゲーマー九尾 朱墨の監督も無視して、勝手に飛びだしてつかまったアーリンくんを尋問する今日を・・・・・・アレ?
「なんで勝手に見せてるんですか」
何となく予想はつくけど。
「うちの店のデジタル緞帳、アレってシャイニー☆シャウツがなにか更新するとお知らせがでるでしょ。
それに興味をもった」
やっぱりだよ。
だけどムカついた。
「こっちの世界を知ってもらうよい教材だと思ってね。
もともと、そのつもりだったでしょ」
「そうですけど、総理大臣がオカルトな謎をそのままにする話しなんて、あの・・・・・・マズイことになりませんか?」
達美さんの表情に、活気が戻ってきた。
「人の苦境をバカにする奴なら、このまま切っても問題ないと思うよ」
その誘惑には、引かれるものがあるけど。
「引かれる必要はないみたいだよ。
本人は、君と朱墨ちゃんたちのためにやりたかったことみたい」
私たちのため?
あのロボルケーナで何を……私たちに力を示したかったとか?
「たぶんね。
でもそれは教えてくれなかった」
そうですか、そう言えば。
「そもそもあれ、15分の動画です。
行かないとマズイんじゃ?」
腰を浮かしかける。
でも。
「私の店でパティシエがいないことなどありません。
それに、タケくんが細かい説明をしてる頃だと思うよ」
全自動こん棒つなぎマシンを、食い入るように見ていたアーリンくん。
その姿は、本当にメカが好きと言うパワーがあった。
タケくんとは、鷲矢 武志さん。
達美さんの彼氏で、ピアニスト。
そして、達美さんとほぼ同じ型のサイボーグ。
「それなら、時間は問題ないですね。
今日の戦闘については、車のなかでだいたい見ました。
他に覚えておくことは?」
「あるよ。今夜の妖菓子鬼茶天タイムは、アーリンくんにやってもらうから」
妖菓子鬼茶天タイム。
あやかしきっさてんたいむ。
ここ、グロリオススメで使うことができる、達美さんの最強形態。
ボルケーナ先輩が認めた神の力を、依頼人の願いの力を糧に使うことができる。
ただし、店のなか限定で。
依頼人は、「丸い角砂糖ください」と言えば・・・・・・アレ?
「じゃあ、私の依頼は?」
「アーリンくんの依頼と同じだった。
あんたが店に入ったら、実行するよ」
そういって立ち上がった。
・・・・・・朱墨ちゃんに会いたかった?
ロボルケーナのことで、なにか話があるのかしら。
私も立ちあがり、エスカレーターで上に向かう。
「そうそう、あのロボルケーナ、パーフェクト朱墨って言うんだって」
へぇ~~。ええ~~?!
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「わんだふるぷりきゅあ」にはまってます
犬飼夫妻にも受け入れられて、よかった!
これでミラクルライトふってもらえますね!