No.113739

Sky Fantasia(スカイ・ファンタジア)三巻の1

ドラゴン事件から数ヵ月後、リョウはいつもと変わらない平穏な学園を送っていた。季節も夏に変わり、学園ももうすぐ夏休みを迎えようとしていた。しかし、そう簡単にはいくはずもなく。学生の天敵である試験がリョウの前に立ちはだかる。はたして、リョウはこれをクリアできるのか?そして、実技試験で事件が―――。
夏の苦悩バトルが今始まる!

お早う御座います。こんにちは。こんばんは。
Sky Fantasiaシリーズ第三弾。今回は、バトルシーンに力を入れたので、是非見てください!

2009-12-22 22:55:25 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:769   閲覧ユーザー数:760

エピローグ

 

 

 辺りは緑一面の野原だった。

「ガノン……ガノン……起きろ。そろそろ行くぞ」

青年は気持ちよさそうに寝ている獣を、揺らして起こした。

 ガノンと呼ばれた獣は、獅子に似た姿に、立ち上がれば二メートル近くあるだろう体をしている。

 そして、額には立派な角を生やしていた。

ガノンはまだ眠い目を、一生懸命に開けた。

「まったく。小僧、何時まで寝ている。とうに雨は上がったぞ」

そんなガノンに、青年の後ろから、狼が現れた。

その狼は、ガノンを睨みつけた。

 現れた狼は、とても綺麗な銀色の毛をしており、体はガノンと同じぐらいの大きさだった。

 そんな様子の狼に青年は「まあまあ」となだめる。

「仕方ないだろ。ガノンはまだ子供なんだから疲れたんだよ」

「子供?……どう見てもそうは思えんが」

狼はガノンを見て呆れた。

「……ま、それはおいといて」

「おくのか?」

狼は呆れると、溜息をつく。

 そんな姿に、青年は苦笑い浮かべた。

「そろそろ行かないと、また野宿になるから、な……よし、出発するぞ。ガノン」

青年は歩き出す。

 そのあとを、狼がついていく。

 その姿に、ガノンは焦った。

「あ! 待ってよ!」

ガノンは立ち上がると、青年と狼のあとを追った。

 それは、雨が上がったとても穏やかな日のことだった。

一章 試験勉強

 

 

梅雨も終わり、夏が訪れた。

リョウたちがいる世界《グラズヘイム》でも暑い日が続いている。

そして、リョウが通う学園では、少しずつ夏休みムードになり始めてきた。

だが、その一方では、学生には最大の山場である定期試験が近づき、教室の生徒たちからは、殺伐な空気が漂っている。

 そして、ここにも、最大の敵である試験に立ち向かう、一人の少年がいる。

 その名はもちろん、リョウ。

そして今、リョウの机の上には、目を覆いたくなるような光景が、広がっている。

「……でもよー。これは酷くねぇか?」

「……」

リョウとサブは、机の上にある紙を挟んで座っていた。

その紙は、講義中受けたテストの答案である。

 リョウは困った様子で両腕組み、机の上の答案を睨んでいた。

そのリョウの横には、リニアが立っており、呆れながらリョウの答案を眺めていた。

「……つーか。テメエって、頭ワリんだな?」

「……うっせえ」

リョウはリニアの悪口に、言い返すが、その言葉はかなりダメージだった。

 そんなやり取りに、ジークは苦笑いを浮かべていた。

「えーと。でも《戦術学》と理系科目は、まだ大丈夫みたいだよ。

これだけなら、今からでも挽回できるよ」

「……お前も、何気に喧嘩売ってんのか?」

とフォローしようとした様だが、何気に酷いことを言っている。

「《魔法歴史学》と文系科目は、最低だな。

これは、今からやっても無理だろ。

ま、落ち込まないようにな」

「テメエ、人事だと思って……」

サブは「まあな」と、リョウの言葉に平然と答えた。

 ちなみに、みんなの成績は、サブは兵士科の学年トップ。次に二位のジーク。

そして、少し空いてリニアとなっている。

リョウはというと、実技はトップの方だが、筆記になると、下から数えた方が断然早いといった状態である。

「でもよー。マジで今のまんまなら、テメエ、退学(クビ)にさせられちまうぜ。

いったい講義中なにしてやがったんだ?」

「……寝てた」

その答えに、リニアは「バカだろ」と呆れながら言った。

 リョウはサブに視線を向けた。

「サブ、教えてくれ」

だが、サブは椅子の後ろ足で遊びながら答える。

「やだ。

大体、俺自体が別に勉強してるわけじゃねえし。

そんなのに、人のなんか見るわけねぇだろ」

リョウとリニアは驚き、サブを凝視した。

「……マジ?」

「テメエ、もしかして天才か?」

その二人の言葉に、サブは当たり前かのように「ああ」と即答した。

そんな腹の立つサブなんかに、頼むのをすぐにやめると、すぐに切り替えて、ジークの方を向いた。

「じゃあ、ジークた―――」

「ゴメン。僕は人に教えられるほど頭よくないよ」

と、ジークは申し訳なさそうに言った。

リョウは「学年二位が何言ってんだ」と胸の中で突っ込むと、最後にリニアの方を見るが、あきらめ、落ち込んだ溜息をついた。

その姿に、リニアは癇に障り、机を叩いた。

「テメエ! 喧嘩売ってんのか!」

「だって、お前。俺とそう変わんねぇだろ?」

「ふざけんな!」

と、リニアに言うと、リョウを怒鳴りつけた。

そのあと、暴れようとするリニアをジークは止めに入った。

そんなリニアを抑えながら、ジークは顔だけリョウに向いた。

「でも、ホントにこのままだと危ないよ」

「他に教えるのがうまい奴がいればな」

「って、言っても―――」

そのとき、教室の扉が開いた。

そこからは、四人の見知った、黒い髪を後ろで束ねた女の子が現れた。

 その女の子、リリを見た瞬間、リョウを除いた三人は「あ!」と一斉に声を出す。

リリは、いきなり向けられたみんなの視線に、訳が判らずきょとんとした。

「え? みんなどうしたの?」

リョウだけは、嫌そうな顔を浮かべていた。

 

「……」

「せめてなんか言え」

「えーと、どうコメントしたら言いか……」

リョウの言葉に、リリは苦笑を浮かべて答えた。

 すると、リニアはリリ向かって言った。

「っで、どうにかできんのか? この絶望な状態で」

「うーん。やる気しだいで、まだいけると思うけど……」

リリはチラッとリョウを見て言った。

ジークは、リリの返答に驚きの表情を浮かべた。

「え? これが?」

「……だから、お前の言葉はいちいち刺さるんだよ」

リョウはジークを、睨みつけながら突っ込んだ。

そのやり取りを、さっきから黙って、ずっと椅子の足で遊んでいたサブが、リョウに向かって言った。

「じゃあ、リリで決定だな。

よかったじゃねぇか。

近いとこにいい適任がいて」

その言葉に、リョウは、急に顔が引きつった。

「いや、それは―――」

「だな、魔法科の学力トップに教わるんなら、何とかなんじゃねぇの?」

「いや、だから……」

 リニアの意見を、リョウは止めようとした。

 こいつらは知らないのだ。

リリの勉強を教えるときは、容赦がないことを……

「でもよー。このままだと、マジで退学だぜ」

「うっ!」

サブの言葉に、リョウは言い返すことができない。

 そのときの顔は、うっすら笑みを浮かべている。

(コイツ。判って言ってんじゃねぇか?)

リョウは、サブを非難するような目で見た。

 そして、ゆっくりと、リリの方へ視線を移した。

 すると、リリはにっこり笑った。

「いいよ。私でよかったら、リョウ君の力になるよ」

「いや…お前も試験受けるわけだし……」

「大丈夫だよ。わたしの復習にもなるし」

リョウは冷や汗を額に浮かべ、断る方向で会話をもっていくが、リリは逃がしてくれない。

 そのやり取りの中、リョウはサブの方をチラ見した。

 すると、サブは「あきらめろ」といった、楽しそうな笑みを浮かべていた。

 それをリョウは「覚えてろよ!」と目で送った。

 それからは、観念し、溜息をついた。

「じゃあ、頼む」

「うん」

リリはうれしそうな笑みを浮かべて答えた。

 すると、リニアは悪戯な笑みを浮かべて、リリを茶化した。

「よかったじゃねぇか。リリ。リョウとふたりっきりで、勉強できるぜ」

その瞬間、リリの顔がどんどん紅くなると、リニアに向かって怒り出した。

「何考えているの!わたしはただ、リョウ君に学園やめられても困るから。だから……」

「わかった。わかった」

リニアはニヤニヤしながら、リリの言葉に返事していた。

 そんなやり取りを見て、リョウはなんでリリが怒っているのか判らなかったが、だが、どんな形でも、自分の為に時間を作ってくれることに、礼ぐらい言っとこう考えた。

 なので、リョウはリニアと言い合っているリリに向かって、

「ありがとな。リリ」と言った。

リリは「えっ」と呟くと、リョウを見たまま固まってしまった。

 すると、さっきより、顔を真っ赤になり、俯いてしまった。

 同じく固まっていたリニアは、呆れた目になると、

「お前、卑怯じゃねぇ?」と言ってきた。

 そんな言葉に、リョウは「なにが?」と訊き返すと、その言葉に反応したサブが、溜息をついた。

「天然って、こえーな」

と呆れたように言ってきた。

 リョウは、その言葉の意味が判らず、ジークに視線を向けた。

 だが、ジークも苦笑いを浮かべていた。

リョウはますます、意味が判らなくなり、ただ首を傾げるだけだった。

 

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 時間が立ち。

リョウとリリは、夕ご飯をとった後、さっそく勉強を始めた。

 場所はリリの部屋。

 リリの部屋はとてもきれいに片付いているが、人形などの置物はあまりない。

 だが、部屋の大きな本棚が数台あり、その棚の中には、本がびっしり詰まっていた。

 今、二人は部屋の真ん中に置いている机に教科書とノートを広げて座っている。

 リョウの目の前には、リリが座っている。

「……なぁ、ここだけど」

「ここはね―――」

と、いう感じに、リョウはリリに判らないところを聞きながら、少しずつ進めていた。

 リョウが今、リリがリョウの答案から、どこが悪いか分析し、そこから対策を考え、勉強メニューを決め、ひたすら問題を解かしている。

 リリはリョウの訊いた質問にとても的確に教えている。

 だが、リョウは「教えるのはうまいが、この量はないだろう」と胸の中で呟きながら、隣に積んでいるプリントを横目で見て、うんざりしていた。

 そんなことを思いながら、リョウは何気なしに、リリの目の前の教科書を見てみた。

 そこには、見たことがない図形やら数式やらがかかれていた。

「―――なるから、って、もう。リョウ君聞いてる?」

リリはリョウがよそ見しているのに気付くと、少し怒った顔した。

「わり……なぁ、リリのところって、そんな難しそうなのやってんのか?」

リョウはリリの叱ってきたのを流し、リリの前にある教科書を指した。

 リリは「ん?」と呟くと、リョウの指したところに視線を向けた。

「これは、この前図書館で借りた魔導書だよ。わたしの科とは関係ないよ」

「じゃあ、お前の勉強は?」

「大丈夫だよ。わたしは普段から予習、復習してるから、試験前に見直すぐらいで十分だよ」

「……」

リョウは平然と言った、リリの優等生発言に何も言い返す気にならなかった。

 急に黙ったリョウに、リリが「どうしたの?」と訊いてきた。

「いや、お前に少し殺意が生まれた」

「え! なんで?」

リョウのいきなりの告白に、リリはわけが判らず、驚いた声を出した。

 そんなリリを無視して、リョウは体を伸ばすと、立とうとした。

「んじゃ。今日は終わりに―――」

「だめ。なに普通に終わろうとしてるの。まだ、こんなに残ってる」

だが、リリが立とうとするリョウの腕を掴んで、したから睨んできた。

 リョウは視線を逸らして「チッ」と舌打ちした。

「さあ、がんばろ」

すると、リリは笑みを浮かべた。

 それを見て、リョウは逃げれないと、諦めると、溜息をつき、座りなおした。

 そして、リョウの長い夜が続くのだった。


 
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