最終決戦を迎えた一窃と龍天

龍天の真の姿に一歩も退かない一窃との戦闘も

ラストへ向かっていった

その後の悲劇は誰も知る由もなく

　　　終節　～暗闇の穴～

真桜(未来)「実験の時よりも10倍はある………大陸の半分を消滅しかねない大きさや………」

蓮華「っ!!?そんなものが放出されたら………!!!」

華琳(未来)「……………万事休す……くっ!!!」

未来の華琳は歯を食いしばって悔しさを露にする

龍天「もろとも塵へ消えよ」

一窃「「………………」」

『時空伝過砲』はまだ少しずつ肥大化していく

龍天「全て貴様が招いた結果だ、一窃」

一窃「「………グチグチうるせぇぞ？」」

龍天「なに？負け惜しみか？」

一窃「「そっちがそう来るなら、こっちもそれ相応にいかせてもらうぜ」」

ｶｱｧｧｧｧｧｯ!!!

一窃から膨大な量の『邪闇気』が放出される

龍天「貴様、まだそんな力を残していたのか………」

一窃「「あれ？一言でも『全力』なんて言ったか？」」

一窃は右腰辺りに両手を移動させ、気を溜め始める

だが、ただ溜めるだけではなく両手の中心部に『死の閃光』を放ち、溜める気の塊がみるみるうちに禍々しい紫色に変色する

一窃「「この状態だからこそできる、完成された技だ」」

龍天「意味が分からんな」

一窃の言葉の意味、それは

一窃「「かつて、北郷一刀は過去に一度だけこの技を放った

だが、それはあくまで擬似的な技で、未完成だった

北郷一刀の『幻龍破』、響窃の『死の閃光』を組み合わせたこの技はたった今、完全体になった」」

溜められた気の塊は少しずつ膨張していく

龍天「…………成る程、ハッタリではなさそうだ」

龍天は一窃の溜めた気の質量を『万能眼鏡』で読み取り、神妙な顔つきとなる

一窃「「後ろの連中には傷１つ、つけさせねぇ……………」」

龍天「私の『時空伝過砲』と打ち合いをする気か？

もろとも消し飛ばしてやろう」

そして、僅かな沈黙が流れ

その時がやってきた

龍天「消えよっ!!!『時空伝過砲』っ!!!発射っ!!!」

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

一窃「「喰らえっ!!!完全版っ!!!『死の幻龍破』っ!!!」」

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

絡繰人間の気塊と死を司る龍が同時に放たれ、衝突した

龍天「ぬうっ!!!ぐおぉぉぉっ!!!」

一窃「「はあぁぁぁぁっ!!!」」

互いの攻撃がぶつかり合い、均衡を保つ

左慈「押し負けた方が死ぬ……!!!」

稟「一窃殿っ!!!お願いしますっ!!!勝って下さいっ!!!」

鈴々「負けるなぁっ!!!お兄ちゃんっ!!!」

各々が一窃への応援の声をあげる

龍天「この龍天がっ!!!最強なのだっ!!!」

龍天も負けじと一窃へ果敢に挑む

左慈「孤軍奮闘だな、文字通り」

と、ここで

龍天「貴様を倒しっ!!!私が最強だとっ!!!示してやろうっ!!!」

龍天が『時空伝過砲』に力を込める

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

すると、『時空伝過砲』が一回り肥大化し、『死の幻龍波』を押し返し出した

一窃「「んっ!!?うおっ!!?」」

ジリジリと追い詰められていく一窃

雛里「あわわっ!!?まずいですっ!!!」

一窃「「なめんなよ………龍天っ!!!」」

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

一窃も同様に力を込め、振り出しに戻させる

龍天「ぬぅっ!!?ぐおぉぉっ!!!」

再び均衡状態に陥った

亞莎「どちらが勝つか………まだ分かりません」

龍天「ならばっ!!!これならどうだっ!!!」

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

均衡状態を打ち破ったのは龍天

ありったけの『異形気』を『時空伝過砲』へ流し込む

『時空伝過砲』はみるみるうちに大きくなり、直径1mにまで膨れ上がった

一般的なバランスボールと同様の大きさである

だが、破壊力は計り知れない

真桜(未来)「アイツ………マジで国ごと吹き飛ばすつもりや………」

一窃「「おぉっ!!?」」

龍天「これで終わらせてやろうっ!!!」

龍天の力が徐々に強まり、勢いが増していく

一窃に『時空伝過砲』が迫る

一窃「「ぐぅぅっ!!!」」

龍天「息絶えよっ!!!人間っ!!!」

龍天の一際大きい掛声が響き渡った時だった

一窃「「俺は………今の俺は」」

ｶｱｧｧｧｧｧｯ!!!

一窃から尋常ではない『邪闇気』が放出される

一窃「「人間じゃねぇ………」」

龍天「むっ!!?」

少しずつ一窃が押し始めた

一窃「「魔人だっ!!!ガラクタ野郎っ!!!」」

ｷﾞｭｵｫｫｫｫｯ!!!

龍天「なっ!!?くっ!!!このぉっ!!!」

瞬く間に一窃が逆転し、龍天が追い詰められる

一窃「「どうした龍天っ!!!その程度かっ!!?」」

龍天「おのれっ!!!こんな事がっ!!!」

一窃に妖しい笑みが浮かぶ

左慈「あのバカ……遊んでやがるな」

蓮華「それだけ、力の差がついたって事でしょ？」

左慈「そういう問題じゃねぇ、これは遊びじゃねぇんだ」

左慈が苛立ちと焦りを混ぜた感情を露にする

一窃「「結局、てめぇはその程度だったって訳だ」」

龍天「だ、黙れっ!!!」

余裕のある一窃に対し、ギリギリな状態の龍天

勝負がほぼ決まった状態であった

ﾋﾟﾘﾋﾟﾘ……………

衝突し合う中心部に小さな綻びができるまでは

一窃「「さて、もう終わりだな」」

一窃が左手のみで打ち合いをしながら、右手を離して気を溜め込む

龍天「なっ!!?き、貴様っ!!!」

一窃「「終わりだ、龍天…………」」

そして、右手の気を『死の幻龍波』に混ぜこんだ

すると、『死の幻龍波』は更に大きくなり一気に龍天を追い詰める

龍天「ぬおっ!!?うぐっ!!?ぐおぉっ!!!」

龍天は抵抗するが、目の前に『時空伝過砲』が迫ってきていた

その時だった

ﾋﾟﾘﾋﾟﾘ………

一窃「「ん？」」

龍天「ぬうっ!!?」

一窃と龍天が同時に違和感を覚えだした

一窃「「何だ？なんか抵抗がなくなったような…………」」

一窃の呟きが終わったタイミングで、互いの攻撃が消えるように消滅した

雪蓮「へ？」

桃香「き、消えた？」

流琉「？？あれ、なんですか？」

流琉が指差す方向

そこは、龍天の数m先にある黒い物体

龍天「な、なんだこれは？」

それはまるで渦を巻くように回転をしている

その存在にいち早く気づいたのは、管理者達

左慈「っ!!?于吉っ!!!」

于吉「えぇっ!!!急ぎますっ!!!」

卑弥呼「まずいぞっ!!!」

貂蝉「皆ぁっ!!!何かに掴まるのよんっ!!!」

骸漸「やばいよっ!!!」

管理者の慌てる様子に、何が起きたか分からない大陸の面々

すると

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

黒い物体から強大な風が発生し始めた

しかも、黒い物体から『吹く』風ではない

黒い物体に『向かって』の風である

つまり

霞「な、なんやっ!!?」

星「…くっ!!?……吸い込まれるっ!!?」

黒い物体が周囲を吸引し始めたのだ

一窃「「なんだ？一体…………何が起きてるんだ？」」

どうやら一窃にはあまり影響を及ぼしていないようだ

左慈「一窃っ!!!『あれ』は危険過ぎるっ!!!離れろ、今すぐにだっ!!!」

左慈は言葉を荒くしながら叫ぶ

華琳「一体何なの、あれは？」

近くの岩陰に隠れる華琳が呟く

卑弥呼「あれは巨大なエネルギー………気が発生した際に生じる空間の歪み………

『次元の裂け目』と我々管理者は呼んでおる」

骸漸「高密度の気が衝突し合う事で発生して、余程の事がない限り発生しない稀な現象なんだけど………」

貂蝉「特徴はお分かりの通り、この吸引力よん

万物全てを飲み込むことからぁ、別名『管理者界のブラックホール』とも呼ばれているわん」

管理者達が各々口を開き、発生した『次元の裂け目』について説明していると

于吉「それ」

于吉が術を施し、結界が張られ、大陸の面々全員が『次元の裂け目』の吸引力から解放される

于吉「ですが、一番恐ろしいのが吸引された先です」

翠「何処かに繋がっているのか？」

翠の質問に骸漸がいち早く、神妙な顔つきで答える

骸漸「………『異次元空間』だよ」

冥琳「っ!!!確かそれは………」

左慈「そう、一度は入ったら二度と出られない空間の墓場………

ついさっきまで絶頭がいた死の空間だ」

桂花「けど、実際には出てきてるじゃない」

骸漸「それは管理者で且つ『禁止術』を乱用したからだよ

しかも出れるなんて思ってなかったもん」

于吉「その通り………『異次元空間』からの脱出は、正に奇跡なのです

我々も迷い込んだら、最期です」

雛里「あ、あわわ………か、管理者さん達でも危険視しているんですか………？」

雛里がガタガタ肩を震わせて聞く

卑弥呼「うむ………それほどヤバいものじゃ、あれは」

左慈「ほら、現に見てみろ………」

左慈は龍天を指差す

龍天「ぐっ!!!ぬおぉぉぉ………!!!」

龍天は『次元の裂け目』からの吸引力に抵抗していた

だが、一窃との戦闘により体力が消耗している為か、少しずつ吸い込まれていく

無理矢理、地面に足をめり込ませて逃れようとするが、そのまま引き摺られるように『次元の裂け目』に接近していく

一窃「「………後味が悪いが、俺が手を下す必要もなく終わりみたいだな」」

一窃は『次元の裂け目』の吸引力も諸共せず、腕を組んで龍天を見る

龍天「くっそおぉっ!!!こんな外乱的要因でっ!!!この龍天があぁぁっ!!!」

抵抗も虚しく、最早時間の問題となっていた

そして

龍天「っ!!?ぬおっ!!!ぐおぉぉぉおぉぉぉっ!!!」

龍天は吸引力に負けたことで宙に浮き、『次元の裂け目』へと一直線に吸い込まれていく

一窃「「悪運尽きたな、龍天………」」

龍天「くぅっ!!!ただではぁっ!!!転ばんぞおぉぉぉっ!!!」

龍天は目付きを鋭くして、大陸の者達を睨み付ける

龍天「そらっ!!!」

龍天は右手を結界へ伸ばす

すると

ｺﾞｵｫｫｫｫｯ!!!

細い竜巻が結界へ伸びていく

人の眼で認識するにはかなり細く、難しい

左慈「なんだ？何する気だ？」

于吉「軌道が、読めません………!!!

そして、早いっ!!!」

蛇行しながら高速で近づく竜巻はあっという間に接近し

風「おぉっ!!?」

龍天「貴様を道連れだ、程昱っ!!!」

竜巻が風の足元に絡み付き、風を結界から引っ張り出してしまった

稟「なっ!!?風っ!!?」

稟が手を伸ばすも、間に合わず

一窃「「っ!!?何しやがるっ!!!」」

一窃は咄嗟に体を動かす

その動揺で、一窃は一刀へ戻ってしまった

一刀「風っ!!!手を伸ばしてっ!!!」

風「お兄さんっ!!!」

流石の風も余裕はない

風も必死に手を伸ばす

龍天「無駄だっ!!!」

一刀と風の手が重なる事は叶わず、龍天と風が吸い込まれていく

龍天「残念だったな、北郷一刀っ!!!ハッハッハァっ!!!」

龍天は笑いながら『次元の裂け目』に消えていった

風「お兄さん………!!!」

一刀「風っ!!!」

そして、風も瞬く間に吸い込まれていった

一刀「風ーーーーーーーっ!!!」

第七章

‘決戦!!!　一刀VS絡繰人間0号『龍天』’

　　　　　　　　　　　……終……