「リース!!」
フラミーの背中に乗り、飛び去ろうとしたリースに、オレは思わず声をかけた。
「デュラン?」
不思議そうな顔で首を傾げるリース。その美しい、真っ直ぐな眼差しに見つめられ、オレは立ち尽くした。
「こ、これを……」
そう言って、絞り出したような声と共に差し出したオレの右手には、一振りの古ぼけた剣が握られていた。
「これは……デュラン!?」
リースには、前に一度話した事があった。この剣が、一体何を表すものであるのかを……。
「受け取って欲しいんだ」
ただ一言。それだけを伝えた。
「で、でも……そんな大切なものを」
さすがのリースも、オレのこの行動には驚いたのか、狼狽し切った色が彼女の言葉の中に見て取れる。
「リースだから」
「……え?」
「リースだから、受け取って欲しいんだ」
「デュラン……」
このときのオレの顔。とても人様に見せられない程に真っ赤になっていたんだろうなぁ……。
今思ってもよくこんな事言えたもんだ。あ~、恥ずかしい。
「わかりました」
「え?」
「その剣。私が大切に預からせていただきます」
「リース……ありがとう」
「その代わり、あなたには私のこのリボンを預かっていただきます」
「いいのか? それは確か……」
「それを言うならデュランだって。つまり、お互い様です。それとも何ですか、デュラン。あなたは私からの預かりものは出来ないとでも言うのですか?」
オレが剣の話をした時に、彼女もまた、そのリボンの思い出を話してくれた。
「いや……そんなことはない、さ。……わかった、そのリボンはオレが、大切に預からせてもらう」
「ありがとうございます、デュラン」
そう言うとリースは、自分の髪からリボンを解き、それをオレの手に握らせた。
「次に逢うまで、忘れずに手入れをしておきますからね」
「ああ。オレも、いつも綺麗にしておくよ」
「では、デュラン。また逢えるのを楽しみにしていますね」
「ああ、またな」
「はい……また」
それだけを言うと、リースは一瞬の内に大空の彼方へと飛び去ってしまった。
本当に、風のような少女だと、その時のデュランは思った。
そんな彼の手にはしっかりと彼女からの大切な預かりものが握られていた。
Tweet |
|
|
3
|
0
|
追加するフォルダを選択
「ウェンディの想い」の中で、ウェンディがデュランに背負われている時に夢みていた、彼とリースのやりとりです。
すでに既出のネタでしょうが、ついでにUPしておきます。