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呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第040話

どうも皆さんこんにち"は"。

最近はお隣の国から新型ウィルスやらなんやらが流れて来ていたりして、予防にマスクが必需という情報が流れ、小売店からマスクが枯渇していますね。
実際、あんまりマスクは意味がないなどと言う情報が流れたりしていますが、風邪をひかない為にも、皆さんマスクはしっかり付けて、病気に備えて下さいね。

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2020-02-06 17:59:06 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1699   閲覧ユーザー数:1633

 呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第040話「撫で斬り」

 隴を主軸とする完全武装した最近正規軍入りした新兵1000人の呂北軍は、暴徒と化した民の鎮圧に向けて行脚していた。前方には隴を筆頭にして郷里、兵の一人として関羽と張飛。後方では呂北、副官に白華。見物人として劉備が控えている。ただ黙って着いて来さされた劉備は、何を話したらいいか判らず、一刀と白華の背中を見ては逸らしと、落ち着きなく馬の手綱を引いて付いてきている。

「さて、劉備ちゃん。もうすぐ君達も平原に向かわなければならない。初めて会った時に比べて、随分成長したな」

「ほえっ?い、いや、まさか」

「あらあら、謙遜することは無いわ。最近は仕事を与えられる前に、自分で動いて、自主的に行動を起こす様になったじゃない。なかなか出来ないことよ。どんなに才能がある人間でも、行動力が無ければ意味が無いわ。自らが行動を起こせば、必ず周りも動き出す。上に立つ者としては必要なことなのよ」

突然呂北夫妻に褒められた劉備は、顔を赤くし、頭を掻いてだらしなく顔を朗らかし、そんな劉備を見て、一刀は不適な笑みを浮かべる。

「さて劉備ちゃん、今我々は暴徒と化した民の殲滅の為に軍を進めている。理解しているな?」

その言葉を聞くと、朗らかな表情から一転し、劉備は背中を丸くして、影を落としたかのように顔を暗くさせる。

「はい。説得も無駄に終わったと聞いています。なんとか話し合って、わかってもらえればと思ったのですが――」

「結果は領内の村が一つ消滅したな」

「………はい――」

劉備の手綱を持つ手が強まる。彼女は今どの様なことを考えているのか。自らの力不足を嘆いているか。人の争いを嘆いているのか。それとも不穏分子に踊らされた民を憐れんでいるのか。どう考えているのかは、彼女自身が知っているのみである。しかしその様なことお構いなしに、一刀は不適な笑みのまま鼻で笑って話を続ける。

「そう、村が消滅した。恐らく数十人から百何人の民が犠牲になったことだろう。無論これは俺の力不足が原因だ。また、不穏分子の侵入を許した俺の責任だ。そのせいで関係のない村が巻き込まれてしまった。このままでは同じような惨劇が起こらないとも限らない。また同じことを起こしてはならない。その責任は統治者である俺にある。言っている意味がわかるか?」

劉備はその問いにゆっくりと頷いた。恐らくは一刀の言っている意味合いを単純に捉えた意味で頷いているのだと予想する。

「そうか。さてここで質問だ、劉備ちゃん。俺は何の為に隴に命じて、こうして軍を興し、暴徒の下へ向かわせていると思う?思ったままの答えを言え」

一刀は劉備に率直な意見を求めた。劉備も曖昧な返事は許されないと思ったのか、真剣に考えこむ。少し考えこんでも、一刀は根気よく劉備の回答を待ち、そして劉備は答える。

「.........民を......威圧させるためでしょうか?力を見せつけ相手の闘争心を折り、そして交渉の場に持ち込んで、相手を従属させるため......では?」

「もし相手が激情してこちらに斬りかかれば?」

「その時は.........已むを得ません。身を守る為に何人か犠牲になるかも知れませんが、ある程度の力を見せつけることが必要でしょう」

「さらに相手が抵抗を止めずに、こちらに襲い掛かれば?」

「そ、その時は降伏を薦めつつ迎撃をするしか――」

「はぁ~~、劉備ちゃん。君の答えは堂々巡り過ぎる。それでは手を抜いているこちらに大きな被害が及ぶかもしれない。他の民衆にも、我らが暴徒如きに手間を取ってしまう軍部という認識を与えかねない」

「.........」

一刀にそう説教されると、劉備は黙り込んでしまう。

「まぁ、力を見せつける。その解答が出ただけでも少しは学んできているのかと思うがな。初めて会った時の君であれば、恐らくは『徹底的な話し合い』という理想論......いや、空想論を述べていただろうな。俺からの回答は、その場次第だ。人の考えは書面では測れない。統治者の能力にもよる。その時の領内の統治具合にも左右される。解決の方法もその者それぞれだろう。手間だから暴徒民を殲滅する方法。相手に交渉権を与えて、話し合いに持ち込む方法。首謀者を捉えて完全武装放棄を施す方法と多種多様だ。君も統治者となるのだから、あらゆる方法を創作しては駆使し、領内を統治していかなければならない。言っている意味はわかるな?」

また一刀にそう施されると、劉備は素直に了承した。

「......さて、問答は終わりだ。今回我らが駆逐しなければならない相手があそこにいる」

そう言いながら一刀が指を指すと、その指さす方向にいた敵を見ると、劉備は驚愕するのである。

 

 ところ変わり前線では。

「おいそこの......えぇっと、劉備の矢玉の乳でか女」

「ち、乳でかおn――」

隴が指差し問いかけると、関羽は自分のことを言っていると即座に気付き、顔を引きつる。それに対し張飛は笑っている。

「し、失礼ではないか‼?我が名は関羽、字を雲長だ。劉備様一の矛にしt「あぁあぁ、そんなんはいいんじゃき。そげんよりも、あんさんの獲物はそいつけ?」そ、そんなこととは......えぇ、確かにそうですよ」

隴は手をひけらかしながら、関羽の口上を拒否する、余りのすっけらかんとした対応に、怒りのタイミングを逃したのか、素直に応じてしまい、偃月刀を取り出す。

「そっちの小さいのも、獲物だしぃ」

「り、鈴々は小さくないのだ。お姉ちゃんも、体は大きいのに、おっぱいは大きくないのだ‼」

「こ、こら、鈴々」

両腕を挙げて抗議する張飛に対して、気にしていたことなのか、隴の背中に漆黒の怒気が落とされたような気がして、関羽は慌てて張飛から蛇矛を奪い取って、隴に渡す。

隴は二人の獲物をしばし眺め、二三度それぞれの刃をかち合わせると、獲物を自らの背中に背負い、懐を弄り何かを取り出して二人に渡した。

「あ、あのぅ、これは?」

隴に渡されたのは手甲であった。

「あんさんらもカチコミやったらトーシローでもないんやろ?こん相手はシノギを乱した愚連隊や。頭のシマ荒らす半端(モン)でも、トーシローに本気出すこと無い。せやけど手ぇ抜いたら舐められる。あんさんらは今回はそれで戦いぃ」

いきなり愛刀を没収されたと思いきや、馴染みのない武器で戦えとの要求に、関羽の頭に血が昇ったが、しかしそれより前に張飛が激高した。

「ふざけるななのだ。鈴々の蛇矛返せなのだ」

「そうだ。愛刀は自らの分身。いきなり貴様は何をいいだすのだ!?」

少し遅れて関羽も激高するも、隴は薄ら笑いを返しながら二人を挑発した。

「なんや?恐いんか?それやったらしゃあないな。あんさんらは劉備の下で幾多の抗争を抜けてきた生粋の矢玉と思ったんやけどな。トーシローやったら仕方ないじゃけんのぅ。ほいな、獲物返そか」

そう言って隴が背中の偃月刀と蛇矛に手をかけようとした瞬間、二人は両頬を強張らせる。

「そこまで言われれば私も武人の端くれ。その挑発、乗りましょう」

「そうなのだ。鈴々はお姉ちゃんよりいっぱい敵を倒してみせるのだ」

二人は挑発に乗る宣言をして、両手に手甲をはめ込んだ。そんな二人を隴は陰で笑うと、前方に指さして、二人に告げる。

「ほれ見えてきたけんのぅ。こん相手の三下集団じゃき」

隴の指さす方向に見えてきた集団は、暴徒と化した民500。だがその装備は正規軍とは異なり、十分な装備が整っているわけではなく、武器の刃が欠け・折れた剣やつぎはぎの鎧。最悪そんな物も持たずに、農作用の鉈や鎌を武器として持参した者もいる。そんな集団を目の前にして、関羽と張飛の中に躊躇いが生じた。

相手が賊徒であれば、二人も躊躇はしなかったであろうが、目の前の集団は、暴徒と言えど民である。本来守らなければならない者達なのである。そんな彼らが拙い武器を携えて自らに向かって来ようとしている。武人として、”人”として躊躇いが生じてしまった。

 

「なんですか......あれは?」

「何だとは変なことを言う。見ての通り敵の集団だな」

「そ、そ、そんな事って、だってあれは!?」

劉備の問いに一刀は素の回答を返してみせる。それでも劉備の狼狽は止まらない。目の前に現れた暴徒と化した集団は、紛れもない扶風に住まう民であった。

現在の中華大陸全土の国から見て、比較的治安が良質的である扶風郡でも完全ではない。一刀の手が届かない場所もあれば、他国より扇動されやすい場所も存在する。

 

「さぁって、貴様(きさん)ら。奴さんらはカタギの世界で満足していればええもんを、シノギの世界に足を突っ込みおった。シノギに入ったんなら、シノギ流に片ぁ付けるのが礼儀いうもんじゃぎ。じゃけんどもシノギに中途半端に首突っ込んだ、三下カタギ(モン)に、獲物なんか必要ない。殴り殺せ‼そんで奴さんの獲物を奪い取って、撫で斬りにしたらんかい‼‼」

隴の常人であれば身の毛もよだつ口上にて、兵の指揮は最大限にまで昂られた。

「蹂躙せいやぁ‼‼」

隴の咆哮と共に、兵士も獣の如き咆哮にて暴徒兵に走り出す。どの兵も自らの爪を立て、前傾姿勢で駆け行き、暴徒兵に襲い掛かっていった。その動きは、まるで獣。狼の集団が生態圏に入ってきた動物を追い回す様であった。

その異様さに、暴徒民は戦場での高揚感は失われ、冷静さからやがて恐怖が生まれ、一戦も交えぬうちに退却を始めようとしていた。

しかし所詮は突発性で発足された集団。指揮系統があるわけでもなく、個己それぞれで民兵が逃走していくが、それを許す呂北兵士では無かった。やがては追い付き、民兵を捕まえては殴打にて殴殺していく。

命乞いをしようとも、そんなことをお構いなしに殴殺していく。

「ひ、ひぃ、た、助k――」

民兵は命乞いをする間の無く殴殺される。そんな光景を理解も出来ず、ただ傍観していた関羽と張飛の目の前で、民兵を殴打している呂北兵の一部の光景を目の当たりにする。

「ひえぇ、もう止めてくれ。もう逆らわないから殴らないでくれ‼‼」

民兵である男は、数本指が折れた両手で顔を覆い、命乞いをしている。そんな民兵をいたぶる様にして、呂北兵は笑いながら殴打するが、その腕は関羽に捕まれた。

「おい‼‼止めろ‼‼この男に戦う意思は無いじゃないか。矛を収めないか‼」

「そうなのだ‼‼弱い者いじめは良くないのだ‼‼」

呂北兵は挑発するかのような目線にて、腰を曲げて二人を見上げる様にして恫喝する。

「あぁん。先に喧嘩を吹っ掛けて来たのはこいつ等じゃねぇか。誰に喧嘩売ったのか分からせてやっているんだよ‼‼」

「だからといってやり過ぎだ。無抵抗な人間を甚振ることなど、仁義に反する‼‼」

「......仁義?......はっ、仁義だとよ、こいつはお笑い草だな。罪を犯した奴らに対して仁義も糞もあるか‼屑は屑らしく、俺たちに殴り殺されればいいんだよ‼」

兵士は笑いながらそう答え、関羽と張飛はその兵士に対し臨戦態勢を取ろうとすると、そんな中で鮮血に塗れた拳の隴が、自身の金髪を靡かせてやって来る。

「どないしたんじゃ。貴様(きさん)ら今は抗争の最中じゃろ。内輪揉めは余所でやらんかい」

他の呂北兵士に比べて、誰よりも鮮血に塗れた隴を前に、関羽と張飛の背筋は凍った。体に塗れた鮮血分だけ、敵を殴殺したことになるというと、どれ程の人を殴殺したのか計り知れなかったからだ。

「はっ、この者らが将軍の命の妨げを行なう者であった為、改めて将軍の命を言い聞かせていた次第であります」

先程の皮肉に満ちた表情とは裏腹に、呂北兵は胸に手を当て、自らの正当性を主張した。そんな言を聞くと、隴は二人を睨みつける。

しかし関羽と張飛はそんな視線に負けじと、自らの意見を主張する。

侯成(こうせい)殿、貴女方の軍では、無抵抗の民を暴力で蹂躙する行為を正当化するのですか?そこに正義はあるのですか‼‼?」

「そうなのだ‼‼いくら悪いことをした奴らでも、ごめんなさいしている人を殴りつけるのは良くないのだ‼‼」

二人は激昂しながら隴に主張する。それを聞くと隴は少し顎を触って、周りの状況を確認した。拳を必要以上に血で濡らしている部下。その部下の周りには、民兵の死体は3人も無い。近くには顔面以外にあらゆる部分に痣を残した民兵。

それらの状況を加味した上で、隴は恐怖に狼狽している民兵に対し、優しく微笑みかける。顔を血塗らせながらも、戦場で眺めるその微笑みは、あたかも荒野に咲いた一凛の華。民兵は一瞬気を許し、覆った手を顔から取り除きだすと、隴は両眼を眼孔開くぐらいまでに瞼を上げると、民兵の頭部を跡形もなく殴り潰し、その鮮血は先程民兵を甚振っていた呂北兵に飛び散る。

隴は兵士を見下ろしながら語り掛ける。

「誰が必要以上に甚振れと命令を下した。我らが主の望みは蹂躙である筈だが?誰が貴様の趣味や性癖を戦場に持ち出せと命じた」

その静かな恫喝に、呂北兵は震えだす。また普段の下手な訛り言葉ではないことも相まって、恐怖はより掻き立てられる。

「.........いらんな―――」

そういうやいなや、隴は兵士の股間に向けて膝で蹴り上げる。兵士は蹲りながら、泡を吐きながらも、股間を抑えて蹲り倒れる。また見たところ股間より血が滲み出ていることから、その膝蹴りは兵士の性器を潰し、股関節の骨を股が突き抜ける程にまで入ったに違いなかった。

「甚振るのが好きなのだろう。だったら存分に味わうがよい」

隴は兵士の脹脛に足を置くと、そのまま踏みつぶして切断した。未だ意識のある兵士は、痛みのあまり、声にならない絶叫を出す。

そのまま隴はもう片足、両腕と潰していき、兵士の両腕足は引きちぎられ、胴体を残すのみとなった。

その余りにも鮮烈な暴力に圧倒されたのか、関羽と張飛は静黙しまっていた。

「ほう、まだ生きているか。思ったより丈夫な体だったらしいな」

兵士は首を掴まれながら胴体を持ち上げられ、かすれ声で隴に懇願する。

「......こ......こ、こぉ......殺してくだしゃい」

「なに、遠慮することは無い。まだまだ痛覚は沢山ある。存分に楽しむといいさ」

自らの殺害を懇願する兵士に対し、隴は冷徹にそう告げるが、そんな彼女に関羽が肩を置いて刑の執行に対する制しを求める。

「もう......いいでしょう。十分でしょう。何故貴女はこれほどまでに凄惨な状況を作り出すことが出来る」

関羽のその言葉を聞き、隴は頭を一つ掻くと、近場にいる兵士を呼びつける。他の兵士と違い鋭敏さが目立つため、隴直属の兵なのだろう。

「コレの止血をしろ。”まだ”生かしておけ」

隴の言葉を聞いて二人はまた唖然として、その決定に意を唱えようとしたが、主張する言葉が見当たらなかった。「殺せ」と主張すれば、自分たちも拷問・殺害の手助けをしたとも取れる。「生かせ」と主張すれば、まだ生き地獄を味合わせることを意味する。以前の二人であれば、まず思考よりも主張を優先したであろう。だが主張を優先したところで逆に問い変えされるだろう。「なればどうすればよいか?」と。そう問われると、二人は何も言えないことは判っており、その後はただただ意味の持たない思想や理念を主張するだけで解決には至らない堂々巡りになったことは目に見えている筈であった。

頭が熱くなった時でも、冷静な思考が出来るということは、扶風での生活が二人を変えたのだ。そんな二人とは裏腹に、隴は二人に言った。

「そいじゃそこん二人。奴さんは大分片ぁつけとるはずじゃき。儂はもういくからのぅ」

何時もの下手な広島弁に戻った隴はそのまま先に進んでいき、残された二人は遅れて従軍していくのだった。

 

 それから先は散々な物であった。呂北軍の行脚の先には、民兵や民の死体しか残らず、やがて血染めの軍は、暴動を起こした民兵がねぐらとしていた砦へとたどり着いた。呂北軍の行脚で恐れを為した民兵は降伏の使者を寄こしてきた。劉備は必死に一刀に対し降伏を受け入れる様に進言したが、それは聞き入れられず、呂北軍は砦を焼き討ちにして、蜘蛛の子を散らす様に逃げ狂う民兵を撫で斬りした。

敵は文字通り殲滅され、生きている者はおらず、劉備達もようやく終えたかと安堵したが、それでも呂北軍は行脚を止めず、軍はとある場所へとたどり着いた。

 


 
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