三国の武将がその覇を競う、武の祭典――『天下一品武道会』。
本戦を勝ち上がり、見事優勝を果たしたのは。
夏侯惇こと春蘭であった。
――苦悩する者、危惧する者、勘違いする者。そんな様々な背景に彩られながら。
/医務室
天下一品武道会の決勝戦の後、医務室では星と春蘭が仲良く(?)隣り合った寝台に寝かせられていた。
何しろ双方ともに重傷である。すぐさま国付きの御殿医が治療し、二人揃って全治一ヶ月と相成った。
この重傷が全治一ヶ月で済んでしまう辺り、流石は常人離れした英傑というべきか。
「やあ。お邪魔するぞ、姉者。星」
訪ねてきたのは夏侯淵こと秋蘭であった。
「まずは優勝おめでとう、姉者。……内心、色々複雑だろうが」
「……ふん」
目を逸らしてしまった姉に苦笑し、秋蘭は星へ向き直る。
「星も見事だったな。流石は『常山の昇り龍』といったところか」
「負けてしまっては、流石も何もないがな。……さて、秋蘭は愛紗の現状について知っておるか?」
星は、決勝戦前に春蘭と話していた内容を持ち出した。
「まあな。正直、申し訳ない気持ちもあるが……こればかりはな」
「そのことについて、春蘭がとんでもない勘違いをしておってな。説明してやってくれぬか?」
「??」
何のことやら、全く分かっていない顔の春蘭。
さしもの星も汗を垂らしつつ説明する。
「何をどこでどう聞いてどうなったのか分からんが。愛紗が華琳殿に懸想していると思い込んでいてな」
「それは……私にもよく分からない理屈だな、姉者。 逆なら得心もいくが……」
「ええい、うるさい! 霞の奴が適当なことを言いおったのだ! 華琳様が北郷を閨に呼んだらどう思うとか、愛情と友情の板挟みとか……」
「ああ、そういうことか……」
春蘭の思考回路について、誰よりも造詣深い秋蘭である。その一言で、おおよその予想が付いたらしい。
「姉者。まず華琳様が北郷を閨に呼んだらどう思うのだ?」
「霞にも言ったが、北郷を殺す!」
「それは何故だ?」
「あんな奴に華琳様が穢されるのを黙って見ていられるか!」
拳を握って力説する春蘭に、秋蘭は冷静に質問を続ける。
「それだけか?」
「これ以外にどんな理由が必要だと言うのだ!」
「そこに“北郷に華琳様を奪われるかもしれない”という恐怖はないか?」
「う……」
言い詰まる春蘭。秋蘭はそれを確認して、更に質問を口にする。
「また、逆にだ。姉者は北郷をどう思っている?」
「……仮にも蜀の代表として戦乱を生き抜いたのだ。癪ではあるが……英雄と認めてもいいとは思っている」
「それだけか?」
「う!? な、何が言いたいのだ、秋蘭!」
明らかに動揺する春蘭へ、秋蘭はひとつずつ事例を持ち出し始めた。
「前回の成都での三国会談。華琳様への土産に超人気店の饅頭を買う為、行事管理に忙しい北郷に夜も明けぬ朝から付き合わせたり」
「う」
「その挙句、浮かれて荷馬車に激突し、転んで饅頭を台無しにして。北郷が彼方此方の伝手(つて)を伝ってくれて、丸々譲ってもらったり」
「うう!」
「華琳様の衣装……『めいど服』と『きゃみそーる』を作ってもらったり。……あれは素晴らしい出来だったな」
「ううぅ~!」
「私事でもかなり世話になっているだろう?」
全く反論出来ない春蘭に、そんな姉を見てニヤニヤが止まらない秋蘭。
「それは……秋蘭の言う通りだが……」
「華琳様も、ここ最近は北郷を魏に招聘したいとお考えのようだ。……蜀の皆の手前、悩んでおられるようだがな」
「な、なに!?」
「…………」
秋蘭の爆弾発言に、目を見開く春蘭と、対照的に冷静な星。
「また、魏の将や軍師の中でも、北郷に惹かれているものは多い。季衣や流琉などは兄と慕っているし、風や真桜も興味津々のようだ」
「そ、そうなのか……し、秋蘭。お前はどうなのだ?」
「私か。そうだな……少なくとも魏に――いや、大陸にあれ程の男はいない、とは思っている」
「…………(ぱくぱく)」
「ほう。華琳殿やその他の者は知っていたが、秋蘭にそこまで言わせるとは。流石は我が主といったところか」
酸欠の魚のように口を開閉するしかない春蘭。
星も、常よりクールな秋蘭から予想以上の好感発言に多少の驚きがあったようだ。
「それに魏だけではない。呉も同様だろう? 特に孫家の御三方はかなりご執心の様子」
「…………(あんぐり)」
「そうだな。雪蓮殿と小蓮殿は真正面から婿にしたいと申されているな」
「むむむ、婿!?」
「うむ」
「蓮華殿も、冷静にしている積もりのようだが。端から見れば主に好意があるのは一目瞭然だ」
「そ、そのような状況になっていようとは……」
今更ながら北郷を取り巻く三国の状況に呆然となる春蘭であったが。
「さて、姉者。愛紗にとって北郷一刀とは、我らにとっての華琳様のような存在。その北郷がこのような状況では、あの有様も……仕方ないと言えるだろう?」
「……そうか。そういうことだったのか……」
秋蘭の段階を踏んだ丁寧な説明にようやく得心がいったらしい春蘭は、大きく息を吐いた。
「しかし……北郷は華琳様の招聘や、呉の求婚を受け入れるのか?」
少し思案した春蘭は、そう秋蘭に聞いた。
「それは……ありえぬだろうな」
「ならば、そんな心配など杞憂というものではないか」
そんな春蘭のある意味当然の疑問に、星が答えた。
「ところがなぁ。我が主は、器が広いというか、心が大らかというか、節操がないというか。戦乱時代においても降将、敵将問わず籠絡してみせた英雄であられるのでな」
と笑う星。
元董卓軍の官僚・将軍はその殆どが蜀に降っており、曹操に敗れた袁紹達も保護している。また、やはり曹操に敗れ放浪していた馬超・馬岱を引き入れ、入蜀の際に益州での戦いで降った将軍である黄忠、厳顔、魏延も重用している。
そして、その全員が一刀と関係を持っているのである。
そういう意味ではまさしく『雄として俊英たる者』即ち英雄の名に恥じない北郷一刀であった。
「ああ……華琳様にも通ずるところがあるな、姉者」
「そうだな……いやいや、華琳様はその者の“才能”を欲するのであってだな……」
「“容貌”は第一条件ではないか」
「…………そうだな」
「くくっ。主も『美しい女性に悪人はいない』と断言されていたな。全く似たもの同士ではないか」
更に大きく笑う星。が、一瞬痛みに顔を歪め、その後――大きく息を吐き、遠い目をした。
「……愛紗は、我らの中でも特に“女の性(さが)”が強い女子(おなご)だ。故に……主を独占出来ぬことに大きな苦痛を感じる。蜀という一国内ですらそうだったのだ。それが……三国同盟以後、大陸全ての女が敵になったと言っても過言ではあるまい」
「「…………」」
春蘭、秋蘭の姉妹は沈黙した。
優秀な人材を愛する覇王、曹操・華琳という主に仕えてきた二人には、星の言うことがよく理解出来たからだ。
「一度は主君たる桃香様との板挟みで苦悩したが、乗り越えた。だがそれは相手が桃香様だからこそ解決したとも言える。しかし……無差別といってよい程に女性を惹きつける主の業がある限り。そして、それでも主に侍ることを望むのならば……覚悟を決めるしかないのだ」
「覚悟、だと?……大勢の中の一であることに対する……その、なんというか~」
「諦観――“諦め”か、姉者?」
「そう! その間違いではないのか?」
夏侯姉妹の一言は鋭く穿ったものだったが、星は即座に否定した。
「それは全く違う。私の言う覚悟とは――自らが、主にとって……」
三国会談の祭典に沸く蜀都・成都のとある大通りを、酒を呷りながらぶらつく一人の女性がいた。
呉の宿将、黄蓋こと祭である。
「ぷはぁ~。……全く平和なことよ」
最早街中が無礼講のごとき喧騒である。
とは言っても、当然警備も厳しくなっている(兵士側も祭典に参加する為、交代制となっている)。
道行く人々には笑顔が溢れている。
「三国同盟万歳! 我らが御遣い様万歳!」
「そうだ! 北郷様万歳!!」
(……『天の御遣い』北郷一刀、のう)
喧騒から聞こえた単語を祭は心中で繰り返した。
実は呉の武将達はこの三国会談の間に、とある密命を帯びていた。
それは呉王孫策より直に下された、まあ相当にアレなものであった。
以下回想。
「私ね~?『天の御遣い』って呼ばれてる北郷一刀のことが、ずーっと好きだったの♪」
三国会談に参加する為、蜀都・成都へ向かおうかという直前。
呉王孫策こと雪蓮はいきなり愛する妹二人と呉の武将達へ向け、ぶっちゃけた。
『はぁ!?』 『えぇ!?』
当然と言うべきか、誰もが(冥琳と祭を除く)驚き、聞き返した。
しかし雪蓮は取り合わず、さらに続ける。
「で。出来るなら私か、そうでなければ蓮華か小蓮の婿にしちゃいたいんだけど、蜀の娘達が許してくれないだろうから。みんなで彼を誘惑して、呉に来てくれるように説得して頂戴♪」
『ええ~~!?』
雪蓮、連続の大暴言。
しかし、冥琳が(額を押さえつつとは言え)何も言わないところを見ると、どうやら大都督たる彼女が認めているらしい。
年長者の余裕か、祭は周囲を見回してみた。
雪蓮はにこやかに(?)笑っている。(全く。悪戯猫のようじゃ)
冥琳は額を押さえて嘆息。(毎度ながら苦労しておるのう)
蓮華は「本気で姉様が!? というか私が一刀をゆ、ゆわ!?」(……権殿は余計に緊張するだけじゃな、これは……)
思春は暴発寸前の感情を無理矢理抑えているようだ。(このカタブツに誘惑は無理じゃろ……)
小蓮は唯一乗り気のようで「まっかせて♪」(まあ小蓮様は北郷を気に入っておったからのう)
穏は「まぁ~、雪蓮様ったらだいた~ん♪」とマイペース。(伯言は……頼りになるような、ならないような)
亞莎は真っ赤になった顔をその長い袖で隠すのがやっと。明命も顔を赤らめ、わたわたしている。(子明も幼平も、男を誘惑するような手管は持っとらんじゃろ……)
対して雪蓮は、全員を一瞥しニヤリ。
「みんなだって。彼のこと、かなり気になってるんでしょう? うふふ……♪」
と、のたまったのだった。
はたと回想から戻った祭。
(……我らが王も無茶を仰せになるものじゃ……)
祭自身、この一年で幾度となく彼と会い、話を交わした。
その印象は……民を愛する高潔な理想、現実を見据える目、真っ直ぐな意志、意外にも据わった肝。優しい物腰。天の知識を利用した柔軟な発想。ここ最近は王としての威厳も出てきた感がある。
(まあ身体はもっと鍛えた方がよいな。一度稽古姿を見たが、剣筋は悪くなかったしの)
総じて祭の評価は相当に高いと言えた。たまーにどうしようもなく小物っぽくなるところを除けば、王と仰がれるのも納得出来る。また男としては正に俊英、英雄の名に恥じないものだ。話によると蜀の将達は皆、彼と関係を持っているらしい。
しかし、如何に呉の武将達が彼を誘惑しようと。
少なくとも三国同盟という結束を維持する為には、北郷がその誘いに乗ることはあるまい。
となると、策殿を初めとする孫家の方々の恋を成就する為には……。
(……何にしても大問題になりかねんのう……)
「あら、祭さん。お一人ですか?」
「おお、これは祭殿。どうです、こちらで共に呑りませぬか」
思索に耽り始めていた祭へ、そう声を掛けてきたのは蜀の“老将”二人組――紫苑と桔梗だった。
「ほう。貴殿らも街中で呑んでおったのか。では儂も交ぜて貰おうか」
……
…………
暫くの間、三人は相当に強い酒を呑みつつ、街の通りを眺めていた。
「全く平和なことよ……」
いつしか祭はまた道中と同様に漏らしていた。
「うふふ。そうですわねぇ。わたくしも思わずそう漏らすことがありますわ。……でも、どちらかというと――」
紫苑がそう同意しつつも、桔梗に目配せ。
「ふむ。どうやら祭殿も、わしと同様の感覚がお有りのようだ」
「ほほう。……“武官”として平和を求めて戦うのは当然。しかし、平和となったとなると」
「左様。“武人”としては少々寂しくもある」
そう言い合うと、祭と桔梗は大きく笑った。
そんな二人を見て、紫苑は少し困ったように微笑んでいた。
「そういう物騒な方々は、是非とも天下一品武道会で発散してくださいな」
「そう言ってくれるな、紫苑。あれはあれでいい喧嘩の場だがな」
「他国の武将と戦えるのはよいが、どうにも無粋じゃ。……命を懸けるわけではないからのう」
そう零した武人二人であったが。
紫苑は指を立てて、二人が看過出来ないであろう一言を発した。
「もう、二人とも。そんなことを言っているから、精神的なところで蜀のみんなや、今回優勝した春蘭ちゃんに負けているのよ。桔梗も、もし出場したとしてもきっと勝てなかったわよ?」
「むぅ? どういう意味だ、紫苑」
「今回は星に一本取られたが。老骨とは言え、まだ若い連中に然(そ)う簡単に遅れは取らんぞ?」
反論混じりに疑念を返す二人へ。
「そういうことではありませんわ。つまりね――」
片頬を掌で押さえ、紫苑はにこりと微笑んだ。
「蜀の皆は“ご主人様にいいところを見せる為”に戦っているのよ♪」
「くくっ、わはははは! 成る程、それは戦意が違うな! 確かに春蘭は華琳殿に優勝を捧げると言うておったわ!」
「はっはっは! 全くじゃ! ――星め。冠せし称号以上の負けられぬ理由とやらはそういうことか!」
「あら。相変わらず星ちゃんは冷静なのに情熱的ねぇ♪」
ひとしきり笑い合った三人。
祭はふと二人に問うてみた。
「……ふむ。蜀の若い連中が北郷にぞっこんなのはよく分かったわい。しかし、ぬしらはどうなのだ?」
そんな祭の問いに、紫苑と桔梗は顔を見合わせ。一拍おいて、二人とも妖艶に笑って見せた。
「うふふふ、もちろん♪ 私達も、皆と同じ。あの方のご寵愛なしでは生きていけないわ。ね?」
「そうだな。全くお館様は恐ろしい御方よ。――ふふ、祭殿も気をつけれられい」
牽制とも忠告とも取れる桔梗の一言。
「確かに儂も奴を相応に気に入ってはおるが。あれだけの女子等(おなごら)に囲まれておるのだ。今更こんな年増に手を出すとも思えんがな……」
祭が独り言ちるように付け足した。
だが、その言葉を聞いた二人は、なお笑った。
「うふふ♪ ご主人様は、わたくしが子供を成していても気になさらなかった方ですわよ?」
「全く。そういう心持ちでいると……危ういですぞ、祭殿。くっくっく……」
幾ばくか年下の二人にニヤニヤと笑いながらそう言われても、困った顔しか出来ない祭であったが。
「あれ?三人だけで酒宴かい?」
「「「!!?」」」
噂をして影が射したか。この時代ならば『曹操の話をすると曹操が現れる』と言うべきか。
話題の中心、北郷一刀が姿を見せた。
「こ、これはお館様。自由時間はこの時間帯でしたか」
「お、おほほ……偶々、祭さんとお会いしたもので」
「う、うむ。この三人で呑んでおったところじゃ」
話していた内容が内容の為、少々どもりつつ対応する三人。
「して、北郷は……独りか?」
「うん。ようやく天下一品武道会の後片付けが終わったんでね。しかし……この三人だと、歯止め掛ける人がいないような……」
思わず視線を外して呟く一刀。
「まあ、ご主人様。それはあんまりなお言葉ですわ」
「それよりも、お館様よ。一仕事終わったならば、どうです?一献」
「う、この三人に囲まれてか……?」
一瞬言い詰まる一刀。脳裏に浮かぶのは……一献どころか延々と強~~い酒を勧められて酔い潰される自分の姿。
一刀の動揺に、祭がぽつりと洩らす。
「……やはりこんな年増とでは楽しくない、か」
「そんな訳ないじゃないか!」
祭の言葉に、即座に反論して身を乗り出す一刀。祭は思わず仰け反り、目をぱちくりとさせた。
紫苑、桔梗の二人はそんな祭をニヤリと見やる。
「こんな美人三人と呑めるなら、寧ろこっちがお願いしたい……けど、呑む量がね。まだ仕事残ってるし」
と一転、苦笑の一刀。
「な、なんじゃい軟弱な。男なら女の誘いを断るものではないぞ?」
「あはは、まあそう言うと思ったよ。――だから一杯だけね♪」
「…………」
素直な笑顔を見せる一刀に毒気を抜かれ、祭はその笑顔に見惚れてしまっていた。
「ね?祭さん。こういう方なんですもの♪」
「何ともはや、心憎い方でありましょう?」
「……ふぅ。全くじゃ」
長い息を漏らし、やれやれとばかりに杯に残った酒を呷る。
(これほど“オンナ”を揺さぶられたのは久々じゃわい。くっくっく)
雪蓮からの無茶な命令はともかく。
これからの短い時間、旨い酒が呑めそうだと笑う祭だった。
祭典三日目。
ここは蜀都である成都でも有数の大劇場。
その楽屋(控え室)……本来ならば演者が着替えや化粧をする部屋で、三人の女性が微動だにせず硬直していた。
胸元から肩口、背中までを露出する純白のビスチェドレスと附属の装飾品を見つめる、馬超こと翠。
黒地の衣服と数々の帯や紐が掛けられた台の前に立ち尽くす、楽進こと凪。
胸元の開いた真っ赤なトップスに、裾にフリルがあしらわれた丈の長い同色のスカートを手にする、魏延こと焔耶。
(((……これを着て、大勢の前に出るのか……)))
三人が考えている事は、奇しくも……というよりは予想通りに同じであった。
(((……どうしてこんなことに……)))
三人とも、説得されてしまった背景はほぼ一緒。
意匠の考案者である一刀と、この服を彼女に着せたがる協力者に推しに推され(誤字に非ず)、とうとう頷いてしまったのだ。なお協力者とは、翠には蒲公英、凪には沙和、焔耶には桃香と桔梗のことである。
今回は各々が担当の衣装を着て、劇場の舞台から歌舞伎の花道のように伸びた通路を往復することになっている。
所謂ファッションショーの形式であるが、当然これも一刀の提案である。
普段着飾ることすら滅多にない三人が、天界の知識から起こされた、ある意味奇抜な衣装を身に纏い、観衆の前に晒されなくてはならない。
正直、説得されてしまったことを大きく後悔している三人であったが、最早後の祭である。
が……
「「「…………」」」
見るに同じ状況に追い込まれてしまったらしい人間が、目の前にもう二人。
「「「逃げよう」」」
三人は手を取り合った。
……
…………
「大変!大変だよ、沙和ちゃん!!」
「ど、どうしたの? たんぽぽちゃん」
別の楽屋で朱里と雛里の着替えを手伝っていた――というか無理矢理着せ替えていた――沙和のもとへ、大いに慌てた蒲公英が飛び込んできた。
沙和と蒲公英は、衣服や小物の趣味が合うのか、三国同盟以後、非常に仲が良くなった。
ファッションセンスへの自負、そのセンスを理解してくれない近しい友人(翠や凪、真桜のことだ)など、共通点が多く、互いを好敵手と見ている節もある。
それはともかく。
「お姉様と、あの馬鹿と、凪ちゃんが逃げちゃった!」
「ええーー! なんてことなの~!!」
((こそこそ……))
騒ぐ二人を尻目に、逃亡を図った朱里と雛里であるが……
「はわわーーー!?」「あわわっ!?」
部屋を出ようとした瞬間、両足の足首に縄が絡まり。
その場に転んでしまった。
「そんなぁ……一体いつの間に罠なんてぇ~~」
「ふえぇぇ……両足が一緒に……もう歩けないよぅ」
「ふっふっふ。罠を解除しないで廊下に出ようとするとそうなるようにしておいたんだよん♪」
「さっすが、たんぽぽちゃんなの! 二人とも~逃がさないの!」
因みに朱里と雛里が担当する衣装は……つば付きの黄色い丸い帽子、薄青く襟の大きな上着、短めのスカート、そして背負う赤い皮製の背嚢。――つまり、園児服+ランドセルのコンボである。
一刀から詳細な説明はされていない二人だったが、なにやら自尊心がこれを着ることを拒否していたのだ。……結局は熱心な一刀の説得に説き伏せられてしまったのだが。
「とりあえず、朱里と雛里を二人掛かりでひん剥いて。それから追いかけよう!」
「分かったなのー!」
せめて着替えさせるとか、他の言い様はなかったのか蒲公英。
ともあれ。
「はわわわわ……」「あわわわわ……」
「「覚悟(なの)!」」
……
…………
一方、逃亡した三人はというと。
「ここの劇場、借りもんだって分かってんのか!? ったく、たんぽぽの奴~……」
裏口から逃げるべく廊下を進んだ三人だが、あまりの罠の多さに辟易していた。
「よほどワタシ達にあの衣装を着せたいらしいな……」
「あの衣装がもっと似合う人達は、いくらでもいると思うんだけどな……」
幼少より屈強な男どもと荒馬に囲まれ、男と同様に育てられた(かつ自身への視線に鈍感な)翠。
可愛らしい服飾は嫌いでないものの、常から静かなプレッシャーを放ち、男を寄せる事もなく。自身の傷だらけの肌に劣等感のある凪。
桔梗とともにひたすらに武の道を極めんと歩み続け、自身より強い男に会った事のない焔耶。
結局この三人の共通点は、女性らしさに対する劣等感なのだ。
「「「はぁ……」」」
故に、自身を他の女性と同じように扱う一刀に対して、嬉しさよりも戸惑いや不安が先に立ってしまう。
そんな三人がほぼ同等の、同性が羨む程のプロポーションを誇るのも……皮肉な話ではある。
「……よし。とにかくもう少しで裏口だ。逃げたことに気付かれる前に街まで出ないと」
「そうだな。行くか」
「はい」
と三人が(自覚のない)重い腰を上げた時。
「「待ちなさーい(なの)!」」
と追いかけてくる声。言うまでもなく蒲公英と沙和である。
「や、やばい!」
「行きましょう!」
逃亡者三人は駆け出した。追う二人も走り続ける。
「裏口だ!」
ばん!と大きな音を立てて裏口の扉を開き、飛び出した焔耶だったが。
「うぁ~~~~~~~!?」
両の足首に縄が絡まり、そのまま逆さに宙吊りに。どうなっているのか、上半身まで拘束されている。
……どこかで見たような光景である。
「ひっかかった~♪」
蒲公英が快哉を叫ぶ。
「待てこら!裙子(スカート)のあたしが引っかかったらどうする気だったんだ、これ!」
「あはは、その時は下着丸見えなの~♪」
容赦も罪悪感の欠片も全く見えない、追っ手二人組であった。
「無念!……翠、凪! ワタシはもう駄目だ、お前達だけでも逃げろ!」
「そんな、焔耶殿!?」
「くっ!……仕方ない。行くぞ、凪!……焔耶、お前の犠牲を無駄にはしないからな!」
「そうだ、行け翠!……凪。次に会った時はタメ口で話せよ……」
「焔耶殿!……焔耶、焔耶ぁーーー!」
「……ねえ、沙和ちゃん。お姉様たち、すっごいノリノリだね……」
「なんだか沙和たちの方が悪役みたいなの~……」
とまあ何やらドラマチックに逃亡劇を続けようとした翠・凪だったが。
すぐそこの巨大落とし穴にて、敢え無く二人もまた捕縛されたのだった。
……
…………
「このフニャチンどもー! この劇場で催されるものの重大さが分かってないようだななの~~!」
「あのねぇ、お姉様達! この『天界衣装お披露目会』は、ご主人様が主催者なんだよ! なのに出演者が逃げちゃったら、ご主人様の面目丸潰れじゃない!!」
「「「……ごめんなさい」」」
「一人じゃ無理だって言うものだから、お姉様は月と一緒だし! 凪ちゃんも沙和ちゃんが一緒に出て歩く事になってるでしょ!?」
「「……はい」」
「焔耶!あんたに至っては、ご主人様と一緒に演舞するんでしょうが! あれだけ練習したのを無駄にした上、ご主人様に恥をかかせる気!?」
「……申し訳ない」
正座した(いつもなら説教する側の)三人に、(普段なら怒られる側の)二人が説教中である。
「ま、まあまあ。たんぽぽ、沙和。三人も反省してるし、開演には充分間に合うから……」
ギギロッ!
フォローに入った一刀に、蒲公英と沙和の視線が突き刺さる。
「このクサレチ●ポ野郎~~! 折角着替えさせて、逃げないよう縛っておいた朱里ちゃんと雛里ちゃんの縄を解いたのは、どこのどいつだったかなの~~~!!」
「い、いやいや! あれじゃあ二人とも厠にも行けないじゃないか。だから……」
沙和の迫力に押されつつも、言い訳を口にする一刀。
その一刀へ背後から抱きつき、蒲公英が耳うちする。
(……たんぽぽ達が部屋に入ったとき、縄だけじゃなくて服にも手を掛けてたでしょ?)
(ナ、ナンノコトカナ?)
(……あの格好の二人って、物凄い可愛いよねぇ?)
(そうなんだよ! あの格好で二人に『漏れちゃいますぅ~』なんて言われたら! 我慢が……)
(やっぱり手を出そうとしてたんだ? ……お姉様達に言っちゃおうかなぁ~?)
(ごめんなさい! それだけは許して! お願い!)
(ふふっ。貸し、ひとつだからね。ご主人様♪)
(オテヤワラカニオネガイシマス……)
あっという間に馬脚を露わし、蜀の小悪魔に屈する一刀であった。
紆余曲折あったが『天界衣装お披露目会』の開演である。
会場には三国から集まった仕立物屋や針子、服飾商人などが集まっていた。一般客も少々遠めの立ち見席ではあるが、相当数が入場していた。正に満員御礼状態である。
開演時間自体はそう長くはないが、錚錚(そうそう)たるメンバーが見たこともない衣装で練り歩く様に、会場は大いに沸いた。
胸元が大きく開いた薄藍色のドレスを身に纏い、ポニーテイルの結び目に蒼い花を模した髪飾りをつけた愛紗。
黒のワンピース、フリル満載の白いエプロン、同じく白いフリルの付いたカチューシャ――王道メイド服姿の華琳。
胸に四角い名札を貼り付けた白い半袖の上着に、濃紺の下穿き――体操服+ブルマ姿の小蓮。
薄青いワンピースと白いエプロンが一体化したエプロンドレスを纏い、髪には青いリボン、そして胸元には目に映える赤のリボンをつけた亞莎。
矢絣のお召と葡萄(えび)茶色の袴を組み合わせた衣装、所謂『葡萄茶式部』(女子大生が卒業式で着る奴だ)を身に纏った斗詩。
黄緑色の背広に細めのスラックス。濃茶色の開襟シャツ。胸元を彩る複数の金属製の首飾り――ホスト姿の霞。
お披露目に練り歩く彼女達の衣装を、一刀がアナウンスのように説明を行なう。
次に出てきたのは、小さい二人組。
園児服と大きなランドセル姿の朱里と雛里である。
「は、はわわわわ……////」「あわ、あわ、あわ……////」
二人とも緊張でガチガチで、手足が一緒に出てしまっていた。
(だがそれがいい!!)
一刀は心の内で漢泣きしながら吼えていた。
会場の反応は、男よりも女性の黄色い声「かわいい~~!」が大きく響いていた。
『ここより司会解説を代わらせて頂きます、蜀将・馬岱です。さて、天界衣装お披露目も残すは三品となりました。この三品は、少々趣向を凝らしたもの、或いは天の御遣いで在らせられる北郷一刀様にとって思い入れのあるものです。どうぞお楽しみ下さい』
会場に蒲公英の声が響く。
『ここまで衣装のお披露目ということで、粛々と進めて参りました。ひとつ趣向を変えまして、動きのある一品をご紹介致します』
会場の上手からは、拳法着のような白い衣装の一刀が現れる。その右手には細身の直剣が握られている。。
そして下手からは、鮮烈な赤に染められた、裾にフリルがあしらわれた細身のロングスカート姿の焔耶。同じく右手には柳葉刀。
『魏延将軍が纏いますは、天界にて舞踏に用いられる衣装です。残念ながら本来の舞踏は再現出来ませんが、お二方の演舞をご覧下さい』
会場に音楽が流れ、二人は舞い始める。
一刀は直剣を両手で振るい、静動のはっきりした大きい動き。
焔耶は、片手で刀を振るい、もう一方の手で自らのスカート――フラメンコボトムスの裾を握る。
常に動き続ける彼女がひらひらと舞い踊るたび、裾も同様に舞い上がりフリルがその動きをより大きく魅せる。
それはまるで、風に揺られる赤い大輪か、燃え上がる情熱の炎か。
五分程続いた演舞は、最後に焔耶を一刀が背後から抱くような形で終了となった。
会場には拍手の嵐。演じきった二人も、笑顔で手を振った。
『続きまして。広き天界でも北郷一刀様のお国古来の衣装――『着物』です。模特(モデル)は魏より楽進将軍と于禁将軍です』
上手からは凪。
黒地で前身頃の下側には赤、上側には白い花々が散りばめられた意匠の着物。敢えて肩付近の装飾を抑え目にすることで、結い上げた凪の銀髪と黒い布地が鮮やかなコントラストを為していた。
下手からは沙和。
薄桃色の生地に、白・赤・桃・紫の様々な模様をあしらった着物だ。そして結われた髪に挿された牡丹の大きな花飾りの簪(かんざし)が一際、沙和の可愛らしさを引き立てていた。
先ほどの焔耶の演舞とは好対照な、静静(しずしず)とした歩み。
しかしその色彩は、見るものに鮮やかな印象を残す。
花道で振り返り、戻りゆけば――結い上げられた髪、色気を醸す項(うなじ)、そして背中の帯の大きな結び目がさらに目を惹く。
(うふふ♪ 北郷さん、凪ちゃんが体の傷を気にしてるって知って、露出のないこの服選んでくれたんだよ?)
(そ、そうなのか!?……お礼、ちゃんと言えるかな……)
(あは♪ がんばってなの!)
特に大きな声援を送っていたのは、普段活動的な二人の意外な姿を見た魏の人間だったかもしれない。
『最後にご覧頂きますのは、天界において婚礼の際に花嫁が纏う衣装です。模特(モデル)は馬超将軍と、北郷一刀様専任の付き人であられる董殿です』
上手からは、一刀と共に二人の女性が姿を現した。
肌理細やかな刺繍に彩られた純白のビスチェドレス。対してスカート部分には刺繍が無く、歩くたびにふわふわと揺れて清楚な印象を残す。二の腕までを覆う白い長手袋と、控えめに輝くティアラ、そして顔を隠すベールが花嫁姿の翠をより清純に見せる。
一方の月は、純白の着物――白無垢だった。ただ月は身重の為、着物ではあるがゆったりとした装着になっている。また本格的な髷は結えない為、色素の薄い髪を頭上で結い上げ、綿帽子に似せた白い大きな頭飾りを被っていた。綿帽子と俯き加減によって月の目線や表情が隠れることで、より神秘的な雰囲気を醸し出している。
一刀はそんな二人を左右に引き連れて、花道を歩いた。
(は、恥ずかしいですぅ……)
(あ、あたし、なにがなんだか分かんなくなってきた……)
身を包む純白に反して、二人は恥ずかしさで真っ赤になっていた。
一杯一杯といった感で零す二人に、一刀が小声で話しかける。
(まあまあ。結婚式の予行演習だと思えばいいんじゃない?)
((!!!!))
「へぅ~////」「あぅあぅあぅ////」
自分の一言に尚更固まってしまった二人に少々困りつつも、一刀は笑っていた。
『――以上をもちまして、天界衣装お披露目会を終了致します。
なお、今回お披露目となった衣装の製法等につきましては、明日以降の文化交流会会場にて販売されます。
ご興味のある方は是非お買い求め下さい。
それでは、本日はご来場ありがとうございました――』
こうして天界衣装お披露目会は好評の内に幕となったのだった。
/呉勢宿舎 大広間
祭典三日目の夜。
呉勢に宛がわれた宿舎の大広間では、雪蓮、冥琳、蓮華、思春が酒を呑んでいた。
「ぷはぁ~。やっぱ、華琳の開発した酒って美味しいわぁ~♪」
「余り呑み過ぎるなよ、雪蓮。この酎は飲み口の割りに強いからな」
「誰に言ってるのよ。この孫伯符、この程度で酔い潰れたりしないわ♪」
そう言って、かぱかぱと呑み続ける親友に、溜息を吐く冥琳。
「姉様、そう言えば背中の傷は大丈夫なのですか?」
「…………。思い出させないで、蓮華……」
「ご、ごめんなさい」
「…………」
途端にテンションを急降下させた姉に、思わず謝る蓮華。
原因である冥琳は、涼しい顔で杯を傾けていた。
怪しげな道具を使い、勝手に天下一品武道会に参加していた雪蓮に、冥琳がたんまり“おしおき”したのだ。
とは言え、傷が残らないように叩いているあたり、流石ブチキレていても冷静な冥琳らしい。
しかし……木に括り付けられ、散々冥琳の『白虎九尾』で背中を打ち据えられた雪蓮は、昨日一日身動きが取れなかったのだ。何せ、ちょっとでも身体を動かすと、背中の皮膚が激痛を訴えるのである。
結局、雪蓮は昨日一日この宿舎の自室に籠り、うつ伏せで寝ていたのであった。
「……私に被虐趣味はないっての……」
「ふん。自業自得だ」
しれっと答えた冥琳だが、彼女は身動き出来ない雪蓮を看病する為、昨日一日付きっ切りだった。
ここまで出来るからこその『断金』なのか。少なくとも雪蓮に叩かれて悦ぶ趣味はないらしいが。
ともかく、今日の昼過ぎには痛みこそ引いたものの、疲労感がどっと出てしまった雪蓮は、冥琳と共に今日一日も宿舎でのんびりとしていたのだった。
「今日って確か、『天界衣装お披露目会』だっけ? ウチからは誰か出たの?」
「……小蓮と亞莎が出演しました」
「へー。どんな服着たのかな。蓮華は見に行った?」
「ええ。亞莎の服は大変可愛らしかったです。小蓮のは……なんというか。一応“運動着”らしいのですが。どうも一刀の説明の言葉に、別の感情が混じっていたような……#」
「……確かに、何か邪なものを感じました#」
蓮華はそう言うと、杯になみなみと注がれていた酒を一気に呑み干した。
思春は蓮華の言葉に同意しつつ、空になった蓮華の杯に酒を注ぐ。
「あらあら。ヤキモチ?」
「違います!#」
「もう、怒りっぽいわねぇ。一刀と二人で街を回れないからって八つ当たりしないでよ」
「ッ!? な、なんのことです!?」
惚けようとした蓮華であるが。
「ふふん♪ 『あなたに逢えない時間は、とても長いようにも感じているの』……だっけ?」
「なっ! 何故、雪蓮姉様がそれを知っているのですか!?」
「だって読んだもん」
さらりと口にする雪蓮。
「私も読ませて戴きました」
「思春まで!?」
「だってさー。王である私に内緒で公文書を蜀に送ろうとしてるんだもん。検閲して当然でしょ?」
「う!?」
「私信だって、正直に言えば中身まで見なかったのに。ヘンに恥ずかしがって誤魔化そうとするから、罰が当たったのよ~♪」
「あ、あう……」
裏切られた気分の蓮華だったが、雪蓮の言葉はまさしく正論。反論も出来ず俯いてしまった。
「もぉ~、口では気のないようなこと言っておいて。あれって、どう読んでも恋文よね~。ね、思春?」
「……そうですね#」
不機嫌さを隠そうともしない思春に、蓮華は更に縮こまる。
「『私は、あなたがくれた、あの蒼玉の耳飾りを心の支えにして、毎日を過ごしています。
王家である私と、女である私。ふふ、結局のところ、これって公私の区別よね。』だったかしら~?」
「きゃーーー!きゃーーー!きゃーーー!!」
手紙の内容を暗記しているのか、雪蓮の暴露に、蓮華は錯乱気味に叫ぶが、全く意味がない。
「まだまだ覚えてるわよ~。『私としての私は、最近、あの耳飾りを外して眺めることが多くなったわ。早く三国会談であなたに逢いたい……。私の寂しさを、あなたも感じてくれているなら……とても嬉しく思います。 もし。もし……時間が取れるなら。私と一緒に街を回ってくれる?』 と来たもんねぇ?」
「やめてぇ~~~~~! 姉様ぁ、もう許してぇ~~~~~~~!?////」
酔いではなく、明らかに羞恥で顔が真っ赤の蓮華。雪蓮はそんな妹にニヤニヤ笑いが止まらないようだ。
「……伯符。それくらいにしてあげなさい。蓮華様が倒れてしまうぞ?」
「だってぇ~。ちょっと前から、珍しく玉(ぎょく)付きの耳飾りなんてしてるなー、とか思ってたらさぁ。一刀からの贈り物だっていうのよ? ちょっとくらい苛めても許されると思うな~?」
「只の嫉妬ではないか……」
「そうよ!」
「「「…………」」」
余りに素直な返答に、一同沈黙。
只一人、蓮華だけは顔を赤くして俯いていた。
「なになに、どうかしたの~?」
「遅くなりました! 亞莎が中々来てくれなくて……」
「だ、だって……やっぱり恥ずかしい……」
そこへ小蓮、明命、亞莎が入室してきた。
「ほお、それが天界の意匠か。よく似合っているぞ、亞莎」
冥琳が言うように、亞莎は『天界衣装お披露目会』で着ていたエプロンドレス姿だったのだ。
「やぁ~ん!亞莎、可愛いわよ♪」
「あ、ありがとうございます……////」
冥琳、雪蓮の褒め言葉に、赤くなって畏まる亞莎。
「はぅあ~、羨ましいです……」
「で、でも。北郷様は、明命にも衣装を作って下さるって仰ってたじゃない」
「あ、そうでした! どんな服なのでしょうね?」
「『にんじゃには――あみたいつだ!』とか、不思議なことを仰っていたけど……」
「「…………」」
どうにも嫌な予感のする二人だった。
「小蓮も衣装貰ったんでしょ? 着て来ないの?」
「うふふ♪ あれは“とっておき”だよ!……一刀を誘惑するのにね♪」
「成る程、流石は小蓮ね。くすくす……」
「小蓮!? はしたない真似をしたら駄目よ!」
「はいはい、大丈夫だよ~」
明らかに馬耳東風の小蓮。
「あら、蓮華。はしたないっていうなら、あの手紙だって……」
「姉様ぁ! もう、本当に許してください~////」
「む。さては……お姉ちゃんも一刀に手紙出してたのね?」
相変わらず、妙なところで勘の働く小蓮である。
「そうなのよ、小蓮。熱烈な恋文だったわぁ~。“あなたに逢えない時間が長く感じる”とか、“くれた耳飾りを支えに頑張ってる”とか、“一緒に街を回りたい”とかね~」
「きゃーーー!きゃーーー!きゃーーー!!」
「ぶぅ~~! お姉ちゃん、シャオが一刀を誘うと怒る癖に! しかも……ちょっと気になってたけど。やっぱりその耳飾り、一刀から貰ったんだ!」
「う!? こ、これは……////」
蓮華は思わず、右耳の耳飾りに指を当てる。
「……あれ? 蓮華様。その耳飾り、昼間につけてらしたものとは違うのですか?」
「あ、本当。石の色が違う……」
そこまで話に加わらなかった明命と亞莎が、蓮華の耳飾りの石の色の違いに気付いた。
「あ、あの……その……////」
「……その石は、陽の光には薄青く、蝋燭の光には薄赤く。その色彩を変えるのだそうだ」
しどろもどろの蓮華に代わって、思春が説明した。
「はぅあ~! 吃驚な石なのですね~!」
「でも……蓮華様、とてもお似合いです」
「はい! 私もそう思います!」
「……ありがとう、二人とも」
年下の二人が、こぞって蓮華を褒める。
が、一人不満げな小蓮。
「ぶぅ~~~……」
「ふふっ。そんなに怒らないで、小蓮。あれは一刀の優しさのカタチなのよ」
「「姉様?」」
今までの悪戯半分嫉妬半分の表情から一転、雪蓮は穏やかに語り出した。
「蓮華は、母様や私の後継者として、いつも頑張ってくれていたわ。でも……正直、硬くなりすぎていたのも事実」
「そうだな。真面目なのは美徳だが。かつての蓮華様は、杓子定規になっていた感があった」
年長二人の話を、若輩四人は静かに聞いていた。その真ん中、思春は、複雑な表情でもって手酌で呷る。
「孫家の後継者としての重圧。それに潰されそうだった蓮華を救う為に、一刀が手を差し伸べてくれたのよ」
雪蓮は語る。
一刀が、三国会談で幾度か蓮華と逢う内に、蓮華の双肩に掛かる、その重圧に気付いたこと。
そんな時、この特殊な石を配(あしら)った耳飾りを見つけ。
一刀は蓮華を諭す好機として、その耳飾りを贈ったこと。
孫家の証である碧眼の如き青。 孫仲謀の『真名』たる“蓮の華”の如き赤。
王族たる蓮華も、一個人としての蓮華も。どちらも正しく、自然な蓮華本人であり。
王たらんと毅然とするだけでなく、一人の女の子としての自分も受け入れて欲しいと。
そうすることで、重圧を受け流す“柔らかさ”を持つことが出来たなら――
一刀がそう語ったのだと、雪蓮は締めた。
「……ほんと、女の子に甘いし、優しいわよね~」
「……雪蓮姉様はそのことをご存知だったのですね……?」
「ん? ふふっ、実は一昨日、祭典初日の夜に、何人かで呑んだんだけど。その時に、酔って口の軽くなった一刀から無理矢理聞き出したの♪」
「……はぁ……」
悪戯っぽく舌を出して笑う雪蓮に、蓮華はやれやれと息を吐いた。
さしもの小蓮も、一刀の優しさのカタチには文句を付ける気にはなれなかったようだが。
逆に、一刀本人への不満が表に出てきたようだ。
「一刀って、そういうとこには気付く癖に、女心を全然分かってくれないんだもん……」
「はははっ。確かにそうですね。……私も、そのせいで謝儀を渡せず仕舞いでした。その気にさせる癖に、なんだかんだと躱されるのには困ったものです」
「謝儀?」
小蓮のぼやきに、珍しく冥琳が乗ってきた。
彼女は杯を傾けながら語り続ける。
「ええ。北郷は私の命の恩人です。その謝儀には相応のものが求められる。そこの馬鹿が“貞操を捧げろ”とか言ったもので」
「「「「ええっ!?」」」」
「奴も乗り気そうだったので、誘ってみたのですが。『嬉しいけれど、お礼として“受け取る”のは女性に失礼だから』と断られてしまいました」
「「「「ほっ……」」」」
柔らかく微笑む冥琳。
冥琳からすれば、謝儀を拒否された形であり、この世界で言うならば、それこそ失礼に当たるのだが。
三国のバランスの問題や、呉に『天の御遣い』を招聘する切っ掛けに出来るかもしれないという下心が冥琳自身にあったことも事実。
何より、その時の一刀の真剣な表情と、自身を気遣う彼の態度に、怒る気は失せてしまったのだった。
――それこそ、心から身体を委ねてもよいと思えたというのに。
「全く。女心が分からない男ですよ。ふふっ」
(め、冥琳まで……)
(い、いつの間にか、雪蓮姉様だけじゃなくて冥琳も恋敵になってるなんて……予想外だよぉ!?)
(はぅあ~……冥琳様、色っぽいです~////)
(あぅぅ////)
「危うく冥琳に先を越されるところだったわね~♪」
「……ふん」
「なかなか一刀といいカンジになれないのよね。なんかいい手はないかしら、我が軍師殿?」
「……腹案がないではないが、正直難しいな。魏とも連携しなくてはならないしな」
「あー、やっぱそうなるんだ。……桃香とか、納得してくれるかしら?」
「……今後を考えれば、了承はするだろう。……感情はともかく、な……」
「……複雑な気分ね……」
「…………」
冥琳の(ある意味)爆弾発言に、固まっている若輩組をさて置き、断金の二人は何事か話し合っていた。
一刀を巡る様々な思惑渦巻く大広間へ続いてやってきたのは。
「お邪魔しますぅ~~ひっく」
「失礼致しますぞ。……おや、全員集合しておるとは珍しい」
泥酔している穏と、誰かを背負った祭。
「遅かったわね、二人とも。何かあったの?」
「ええっとぉ~~……」
「ええい、おぬしに説明させとると夜が明けてしまうわい。……実は、今晩は此奴とも呑んでおりましてな」
と言って、背負った男の顔を全員に見せる。
『一刀!?』『北郷(様)!?』
そう。祭が背負っていたのは、酔い潰れた北郷一刀だったのだ。
「実は先日の昼、少しだけ共に呑んだのですがな。仕事が残っているとか言いおって。此奴め、一献しか呑みませんでな。そこで今日の仕事終わりを襲撃して、先程まで共に呑んでおったのです」
「えぇー!? 祭ったらずるいわよ!」
「はっはっは! まあそう仰るな、策殿。ですからこうして連れて来たではありませぬか」
「……完全に酔い潰れてるじゃない」
「これは策殿のお言葉とは思えませぬ。これは――好機では?」
祭の一言に、雪蓮の瞳がギラついた。
「……そうね。これは千載一遇の好機、よね」
「伯符。涎を拭け」
「おっと。まずは……ちょっと苦しそうだし。服を脱がせてあげましょ♪」
「くっくっく。それでこそ我が王」
祭は床に一刀を寝かせる。
雪蓮は早速、一刀の制服に手を掛け始めた。
「しぇ、雪蓮姉様!? 何をしておられるのですか!?」
「やぁ~ん! シャオも交ぜて~~♪」
「…………#」
「はぅあ~~~////」
「……っ////」
「全く……(嘆息)」
呉勢の皆の反応は様々だったが。
「ん?あれ? これってどうやって脱がすんだろ? 天界の服ってよく分かんない……」
「姉様、これを引っ張ればいいんじゃない?」
制服を脱がすのに、雪蓮が梃子摺っていると。
「うぅ……ん? んん!? ちょっ! 何してんだよ、雪蓮!!」
「あ、起きちゃった。ちぇっ」
「“ちぇっ”じゃないでしょ!? あー、吃驚した……」
「ちっ。完全に酔い潰したと思ったのじゃが……」
「……祭の策略か……」
一刀は服の乱れを直しつつ、立ち上がる。
少々酔いで足元がふらつくが、隙を見せれば眼前の餓虎どもに“喰われて”しまう。
それはそれで……と囁く煩悩を叩き伏せ、一刀は直立した。
「あー……呑み過ぎた……というか呑まされ過ぎた……。手加減してよ、祭」
「はっはっは! 酒とは、こうやって強くなるものじゃぞ?」
「それは確かにそうだけどさ……」
「……はい、一刀。お水よ」
「ああ、ありがとう、蓮華。戴くよ」
杯に汲まれた水を一気に飲み干す一刀。
「ぷはぁ~。全く……大体、なんで脱がされそうになってんの、俺?」
「え~? 何だか一刀が苦しそうだったから~?」
「ね~?」
「…………」
(流石に雪蓮やシャオとかの気持ちも……いや、だからって寝込みを襲うのはどうかと思うけど)
白々しい雪蓮と小蓮の言い訳だったが、一刀は追及を止めた。
そんな一刀から空になった杯を受け取り、蓮華がこっそり尋ねる。
「(ね、ねえ一刀。その。て、手紙……読んでくれた?)////」
実は呉勢からの手紙は三国会談ぎりぎりに届いた為、一刀からは返事が送れていないのだ。
勿論、蓮華も返事が間に合うとは思っていなかった。故に今、直接尋ねている訳だが。
正直、今思い返すと、かなり恥ずかしいことを書いてしまった気がして、顔を赤らめる蓮華である。
「(読んだことは読んだんだけど……)」
ところが、蓮華の言葉に困った顔の一刀。
不思議に思った蓮華は更に尋ねる。
「(どうしたの?)」
「(いや、あの手紙。思春の“閲覧済み”って署名があってさ。彼方此方が墨で上書きされてて、半分くらい読めなかったんだ)」
「ええっ!?」
思わず叫んだ蓮華。すぐさま、座ったまま手酌で呑んでいた筈の思春の姿を探すが。
既に思春は、部屋の入り口まで退避していた。
「思春! これはどういうこと!?」
「あのような……あのような手紙、私には認められません! 自ら毒牙に掛かりに行くようなものです!」
「っ!?////」
その発言に蓮華が赤面し動揺した隙。思春が走り去る。
「思春! 待ちなさーい!!////」
その後を、羞恥か怒りか、真っ赤な顔で蓮華が追いかけて行った。
「……毒牙って……何かのお誘いだったのかな……」
呆然とする一刀だったが。
「北郷さぁ~~ん……」
「うわっ!?」
後ろから、穏が抱きつく……というか背に乗ってきた。
背中に感じる、とてつもなく大きく柔らかい感触……
(自制!自制!自制!自制!)
「ど、どうしたのかな、穏?」
「北郷さぁ~~ん……」
「それはさっきも聞いたよ?」
「私……」
「うん?」
「私……私……気持ち悪い……」
「うえっ!?」
「もう駄目ですぅ……えれえれえれえれ」
「ぎょえーーーーーー!?」
結局。
その後の(穏の介抱と)処理を呉勢の皆に任せ。
深夜、一刀は泣く泣く自分で制服を洗う羽目になったのだった。
祭典三日目の夜が更けていく……
続。
諸葛瞻「しょかっちょ!」
曹丕「そうっぺ!」
周循「しゅうっちの!」
三人「「「真・恋姫†無双『乙女繚乱☆あとがき演義』~~~☆彡」」」
諸葛瞻「お読み戴き多謝でしゅ。朱里の娘にして北郷一刀の第23子、諸葛瞻(せん)こと、しょかっちょでしゅ!」
曹丕「乱文なれど筆者にはこれで精一杯。華琳の娘にして北郷一刀の第9子、曹丕(ひ)こと、そうっぺよ♪」
周循「少しでも楽しんで戴ければ重畳。冥琳の娘にして北郷一刀の第25子、周循(じゅん)こと、しゅうっちで~す☆」
曹丕「……それにしても……お父様の“女殺し”っぷりは凄いわね~」
周循「呉勢の皆様全員、春蘭様、秋蘭様、凪様、もしかしたら沙和様もですかね」
諸葛瞻「お父しゃまがハーレムを築く話でしゅから、当然の帰結でしゅけど」
周循「それを言っちゃあお仕舞えよぉ☆」
二人「「…………」」
周循「ツッコミぷりーず! スルーはイヤぁ~(泣」
諸葛瞻「あ、全然関係ないんでしゅが、ひとつ訂正を。今までしょかっちょの『舌足らず』を表す表記で、漢字の後ろに括弧書きで読み方を書いてましたが、邪魔っぽいので、今後は書きましぇん。脳内変換をお願いしましゅ(ぺこり)」
周循「二人が冷たい……(さめざめ)」
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○議題:紫苑、桔梗、祭の年齢について
三人「「「…………」」」
曹丕「ナニコレ。ワタシタチニ、シネッテコト?」
周循「紫苑様の怒りの矢は、(無意識的発動の)氣による爆発を伴う強力無比な最終兵器ですからね……」
諸葛瞻「はわ……(ぼそぼそ) あ、ああ、そうでしゅか。“年齢順”の設定をはっきりさせておこう、という意味だそうでしゅ」
三人「「「(安堵の吐息)」」」
曹丕「しかし、これは個人によって感覚やイメージの違うネタね。本作中での設定は以下の通りよ」
紫苑 = 桔梗 < 祭
諸葛瞻「要しゅるに、紫苑しゃまと桔梗しゃまが同い年で、祭様はもう少し年上と。本文中にもちらっと書かれてましゅね」
周循「なお、紫苑様は“母性溢れる妄想お姉さん”、桔梗様は“武侠な豪快エロいお姉さん”、祭様は“騒ぐの大好き、ちょっと子供っぽいお姉さん”という書き分けをしているそうです。……成功しているかはともかく」
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周循「さて! 今回はコメント戴きました、我等の姉妹がゲストに3人も来てくれています!」
諸葛瞻「以後、人名の後にすみ括弧書き【xx】とあった場合、その方の娘であるということを指すでしゅ」
曹丕「早速、自己紹介をお願いします(ぺこり)」
璃々「お邪魔しております。黄忠こと紫苑が第1子、北郷一刀様の義理の娘となりました。名は黄敍(じょ)、真名は璃々です。皇帝たる北郷一刀様の直系の血筋ではありませんので、帝位継承権は持っておりませんが……私には不要な権利ですわね、うふふふ♪」
黄越「同じく、黄忠こと紫苑が第2子にして、北郷一刀の第21子。黄越(えつ)です! 諱は元明代の戯曲における黄忠の息子(フィクションの人物)から戴きました!」
厳紫玉「応! 厳顔こと桔梗の娘にして、北郷一刀の第15子。厳紫玉(しぎょく)――通称“タマ”ぞ! 史実の厳顔の子は不詳の為、諱は筆者の創作ぞ。母の真名である“桔梗”の花の色の宝石、という意味らしいぞな」
諸葛瞻「因みに、実は皇女は全員『洛陽学園』という同じ学校に通っています。でしゅので、同じ学年の子には“姉”の尊称を付けてましぇん。この六人だと……」
周循「そうっぺとタマ姉さんが年長下級(小5クラス)。私としょかっちょ、越が年少上級(小4クラス)です。
そして、お義姉様――璃々様は、既に小学部を卒業され、高等部の文官科に進学されています。
小学部はそのまま小学校のイメージです。基礎的な読み書き、算術、道徳、乗馬などを習います。
高等部には、文官科・武官科・芸能科の3学科があり、初年度は中学・高校のように学生を纏めて授業が行われます。
そして次年度より、大学のように学生自身で受講する授業を決め、単位を取得していく形式になります。
一定単位を取得後、卒業試験に合格すれば卒業となります。特に卒業までの期間は決まっていません。
お義姉様はメインの文官科だけでなく、武官科の殆どの単位も取得されている文武に優れる才媛として非常に有名であり、『洛陽学園の女帝』と呼ばれています。卒業が近いとの噂もあり、それを惜しむ学生が多々いるとか」
璃々「あらら。私はあんまりそう呼んで欲しくないのだけれどね。一応、お義父様――皇帝の義娘ですし……仕方ないのかしら(頬に片手を当てて溜息)」
曹丕「その尊称は当然です。皇女全員の“義理の姉”であり、その誰もが頭の上がらぬ女傑。武芸百般に精通し、気功を操り、勉学においては他の追随を許さず、礼法も完璧。私達の誰もが憧れ、目指す方ですもの。……皇女が単純に“お義姉様”と呼称した場合、璃々お義姉様を指しているのよ」
璃々「うふふ、ありがとう。……そうそう、私は原作登場時で4~5歳の設定なんですって。帝暦・黄平12年の誕生日で、ようやく18歳……うふふふふ♪」
曹丕「(やっぱりお父様を"狙ってる”というのは本当なのかしらね?)」
諸葛瞻「(よく惲(うん)ちゃん【桂花】と密談してましゅよ。如何にお父しゃまを籠絡しゅるか、とか)」
周循「(何でも父さんのいた天界では、18歳までは駄目とかで。ナニが、とは敢えて言いませんが)」
------------------------------------------------------------
○質問:特に仲の良い姉妹は?
厳紫玉「タマが一番仲が良いのは、やはり母君らの関係もあって越ぞ。ただ、綺麗な姉ちゃんはみんな大好きぞ! いや、レズっ気はないが。あと……柄(へい)【祭】とは所謂“ライバル関係”って奴ぞな!」
黄越「越は……お姉ちゃん(璃々)、そうっぺ、タマお姉ちゃん、惲ちゃん【桂花】、延(えん)おねえちゃん【穏】かな」
周循「(皇女で延おねえちゃん【穏】の『延時空』に影響を受けないのは越だけだからな……)」
曹丕「(コツがあるなら教えて欲しいわ……きっと生来のものでしょうけど。……『延時空』というのは、延おねえちゃん【穏】が纏う、周囲を強制的にまったりさせてしまう雰囲気のことよ。捕まったが最後、もう逃げられないわ……延おねえちゃん【穏】が満足するまで嬲られる運命……)」
璃々「私は越ちゃん、惲ちゃん【桂花】とはよく話すけれど。基本的には誰にも平等くらいね。学園の学部が違うせいで余り会わないというのもあるけれど」
諸葛瞻「でも、宏(こう)ちゃん【雛里】がよく修行をつけて貰いに、お姉しゃまに会いに行ってましゅよね?」
璃々「そうねぇ。宏ちゃん【雛里】たら、凪様みたいになりたいって言ってるのよ。元気があっていいと思うけれど、雛里様には心配の掛け通しだし。あのお転婆ちゃんにも困っちゃうわね(苦笑)」
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○質問:特技・特徴は何ですか?
厳紫玉「タマは何といっても投石器(スリング)『武龍哭苦(ぶりゅうなく)』ぞ! 百発百中、本気となれば岩とて砕いてみせようぞ! 弾丸を変えることで、様々な戦法が取れるのも大きな強みぞ。筆者によると、ワンピ●スのウソ●プをイメージしているとか聞いたぞな。実はちょっとした仕掛けがあるのだが……ここでは秘密としようぞ」
曹丕「(じぃーーーーーー……)」
厳紫玉「そ、そうっぺよ。何故にタマの胸を凝視するぞな……? 豊かな乳が見たいなら、お義姉様のを見ればよかろうぞ。タマのは母君やお義姉様より随分小さくて、そのように凝視するに値するようなモノではないぞ?」
曹丕「(同い年の癖に……。いや、寧ろ半年くらい年下の癖に……)何でもないわ……今までの発言を見ていれば分かったろうけれど、タマは語尾に“ぞ”と付ける癖があるのよ」
黄越「越はコレと言ってないなぁ。弓はちょっと得意だけど、お姉ちゃんみたいに強くはないし……。勉強も上の中くらい? でも、年少上級組には、惲ちゃん【桂花】・しょかっちょ・宏ちゃん【雛里】・しゅうっちと『神童』が四人もいるから、上の中程度だと目立たないんだよぉ~……」
諸葛瞻「うーん、越ちゃんの最大の特徴は“仲裁の妙手”であることだと思いましゅよ。場の雰囲気を壊しゃず、宏ちゃん【雛里】と譚(たん)ちゃん【麗羽】の諍いを止められるのは本当に凄いでしゅ。しょれこしょ、劉禅しゃま【桃香】に匹敵しゅると思うのでしゅ(このお二人は、お父しゃまの“血”が濃いのかも知れましぇんねぇ……)」
曹丕「弓の腕もお義姉様と比べてはね。一部では『五虎将ジュニア』という呼称もあるとか。きっと、あなたは『未完の大器』なのでしょうね」
黄越「えへへ、そうかなぁ(てれてれ)。ありがと♪ 曹丕様、思遠ちゃん――じゃなかった。そうっぺ、しょかっちょ」
周循「……そう言えば説明していなかったのではないか? しょかっちょは普段、姉妹からは字である“思遠(しえん)”と呼称されている。自称もそうだな」
諸葛瞻「そうでしゅね。しょかっちょ――思遠はお母しゃまの“孔明”のように、字が有名になるというのに憧れがあるのでしゅよ。……しゃて、最後はお義姉しゃまでしゅね」
曹丕「お義姉様はまさしく完璧超人。何をやらせても超一流であるけれど……“努力の天才”であることが最大の特徴であられると思うわ」
璃々「あらら。“真の天才”であるそうっぺにそんなに持ち上げられちゃうと、照れちゃうわね////」
周循「ならば、何か必殺技などを披露されては如何ですか?」
璃々「そう? じゃあ――」
シュパッ!(壁に紫色の“長い針”が刺さっている)
周循「うひょっ!?」
璃々「どうかしら? 髪の毛に『氣』を込めることで、近接・投擲両用武器に変える『髪紫千本(はっしせんぼん)』。鉄の鎧くらいなら簡単に貫けるわね♪」
曹丕「流石です、お義姉様……でも、壁に穴が……」
璃々「あらら……(汗)」
曹丕「という訳で。今回は3人のゲストをお迎えしてのあとがきだった訳だけれど如何だったかしら?」
周循「皆様の妄想が少しでも加速して下さると嬉しいですね。ゲスト希望は引き続きコメントをお願い致します! それでは、お三方も最後の挨拶をお願いしますね」
三人「はい♪」「うん!」「応!」
諸葛瞻「……しぇーの!」
六人「「「「「「バイバイ真(ま)~~~☆彡」」」」」」
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第5話を投稿です。
二日目の天下一品武道会の直後から、三日目の夜までをお送りします。
一刀くんを巡る現状。これからどうなっていくのか……
あ、前々回の蓮華の手紙の内容が判明しますw あと、何気に呉勢オールキャストですw
おっと、あとがき企画にはゲスト(笑)も来てますよ~☆
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