No.1001873 英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~soranoさん 2019-08-15 01:01:55 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1626 閲覧ユーザー数:1465 |
~七耀教会・レグラム聖堂~
「この声……!」
「姉さん……!」
「ようやく現れたか、放蕩娘が……!
声を聞いて血相を変えたセリーヌとエマ、ローゼリアが声を上げ、アリサ達が背後へと振り向くとクロチルダが転位によって姿を現した!
「ミスティ――――――クロチルダさんか……!」
「独自に動いているのは聞いていたが…………」
クロチルダの登場にマキアスは驚き、ラウラは真剣な表情でクロチルダを見つめ
「ふふ…………久しぶりね、婆様。エマにセリーヌ、Ⅶ組のみんなも。それとライサンダー卿、仲立ちしてくれて助かったわ。」
苦笑しながらアリサ達に話しかけたクロチルダは意味ありげな笑みを浮かべてトマスに話を振った。
「いや~、家族がすれ違ったままなのも哀しいですからねぇ。」
「フフ、それならリィン君達の事についての仲立ちもして欲しかったのだけど?」
「ア、アハハ…………耳が痛いですね~…………私もそうしたいのは山々なんですが、貴女もご存知のようにメンフィル帝国関連で七耀教会が介入するのは厳しい状況なんですよね~。」
「あら…………確か”外法狩り”――――――いえ、今は”千の護手”に渾名を変えたのだったかしら?”千の護手”とその従騎士が”影の国”の件で”英雄王”達と知り合いになれたのだから、それを頼る事はできないのかしら?」
「いや~、私もその僅かな可能性に賭けて彼らに頼んでみたのですけど、その程度の関係では”英雄王”達は相手にもしなかったらしいんですよね~。」
「姉さん、どうして…………やっぱり戻ってくるつもりじゃないのよね…………?」
クロチルダとトマスの話が途切れるとエマは複雑そうな表情でクロチルダに訊ねた。
「ええ、前にも言ったように私の忠誠は”盟主”に捧げている。その意味では貴女や婆様みたいに魔女としてのみは振舞えない。」
「……………………」
「だから何なのよ、その”盟主”ってのは…………」
「フン…………どんな人物かは知らぬがその人物が討たれてもなお、忠誠を捧げるとは大した入れ込みようじゃな。」
クロチルダの意志を知ったエマが複雑そうな表情で黙り込んでいる中セリーヌとローゼリアは呆れた表情で呟いた。
「――――――ならばヴィータ、ヌシがこの場に現れた理由…………ようやく”結社”がどう動くか決まったというところか?」
「ええ、”盟主”や私と”鋼の聖女”を除いた”使徒”達亡き後盟主の”見届け人”であったカンパネルラを含めた一部の執行者達が全員一致で決定したそうよ。私が戒めてきた”禁忌”を破り…………宰相と地精の『巨イナル黄昏』に協力して終焉の中で『幻焔計画』を完遂することを。」
「そ、それって…………!?」
「…………そういう事か…………クロスベルに護送されていたアルスターの民達の襲撃に裏切ったはずの”黒の工房”と共に結社の”執行者”が関わっていた話を聞いた時から、そんな気はしていたのよね…………」
ローゼリアの問いかけに答えたクロチルダの答えを聞いたエリオットは信じられない表情で声を上げ、サラは真剣な表情で呟き
「…………自分達の計画を何としても進めるために――――――敵対者と裏切り者に恭順することを検討していたわけですか…………!」
「ば、馬鹿な…………!もしそうだとするなら――――」
「全てが敵に回った…………?」
トマスの推測を聞いたマキアスは声を上げた後不安そうな表情をし、フィーが真剣な表情で呟いたその時突如通信の音が聞こえてきた。
「私ですか。このタイミングでかかってきたという事はまさか…………――――――こちら、ライサンダー。一体何が…………――――――な。」
「フフ…………どうやらその様子だと始まったみたいね。『幻焔計画』とはよく言ったものよ。どこまであの方はこれを予見していたのかしら?」
通信を開始したトマスが血相を変えた様子を見て状況を察したクロチルダは苦笑し
「ええい、何を浸っておる……!知っているのならとっと見せい!」
クロチルダの様子を見たローゼリアは声を上げてクロチルダを睨んで促した。
「グリアノス抜きだと厳しいから婆様も手伝ってちょうだい。エマ、セリーヌもね。」
そしてクロチルダは自身の武装である魔杖を構えてローゼリア達に協力を要請し
「はい……!」
「くっ…………コキ使ってくれるわね!」
クロチルダの要請に頷いたエマとセリーヌもそれぞれ魔術を行使する用意を始め、そしてローゼリア、クロチルダ、エマ、セリーヌは協力して魔術を発動するとカレル離宮の風景がローゼリア達の頭上に映った。
~帝都ヘイムダル郊外・カレル離宮~
カレル離宮ではカンパネルラがクロスベルの”星見の塔”から盗んだ大鐘をカレル離宮の傍に設置し、ゼノとレオニダスはガレス達赤い星座の猟兵達と共に”緋の騎神テスタ=ロッサ”の残骸をエントランスに設置した後エントランスから撤収した。
一方カレル離宮の外からは様々な勢力の人物達―――――オズボーン宰相、クレア少佐、気を失ったミリアムを抱き上げているレクター少佐、シャーリィ、マクバーン、ルトガー、ゲオルグ、ジークフリード、アルベリヒ、シャロン、虚ろな目をしたセドリック皇太子がカレル離宮の様子を見守っていた。
「それでは『巨イナル黄昏』の開始と『幻焔計画』の再開を祝して――――――No.0”道化師”が始めさせてもらうよ。」
そしてカンパネルラが指を鳴らすと大鐘は鳴り始めた!
離宮地下500アージュ地点――――――
900年前ヘイムダルの聖堂の地下からカレル離宮の地下に転位した”始まりの地”に眠る黒き聖獣は大鐘が鳴り始めると起き上がり、全身から黒い瘴気を吹き出し始めた!
~カレル離宮~
オズボーン宰相達が状況を見守っているとカレル離宮を中心とした空間に歪みが生じ、歪みが消えると空をも貫く黒紫の柱を放つ巨大な”杯”の形をした”何か”――――――”黒キ星杯”が顕れた!
「わぉ…………!」
「ハン……大したモンだな。」
「へぇ……?」
”黒キ星杯”を見たシャーリィとルトガーは感心し、マクバーンは興味ありげな表情をしていた。
「フン……既視感(デジャブ)か。」
「「……………………」」
一方ジークフリードは鼻を鳴らし、シャロンとクレア少佐は目を伏せて黙り込んでいた。
「…………まさかこんな事になっちまうとはなぁ…………」
レクター少佐は複雑そうな表情で呟いた後気を失っているミリアムに視線を向けた。
「――――――では、始めるとしよう。案内するがいい、地精の長にして工房の主。”黒のアルベリヒ”よ。」
そしてオズボーン宰相は号令をかけた後アルベリヒに視線を向けて指示をし
「畏まりました、偉大なる主よ。」
視線を向けられたアルベリヒは前に出て恭しくオズボーン宰相達に礼をした。そしてオズボーン宰相達はアルベリヒの先導によって”黒キ星杯”へと向かい始めた。
~七耀教会・レグラム聖堂~
「これは…………」
「ミリアム…………」
「団長…………ゼノにレオも…………」
「…………恐らくあの仮面の男が”蒼のジークフリード”とやらなのだろうな…………」
「うん…………ヴァイスハイト陛下の情報通り、確かにあのジークフリードって人は仮面で顔を隠してはいるみたいだけど、間違いなくクロウ君だよ…………」
「そしてやはりジョルジュも”黒の工房”の関係者だったとはね…………」
ローゼリア達の魔術によってカレル離宮の様子を見ていたアルゼイド子爵は表情を厳しくし、ユーシスは辛そうな表情をし、フィーとガイウスは真剣な表情で呟き、悲しそうな表情で呟いたトワの言葉に頷いたアンゼリカは厳しい表情を浮かべた。
「火焔魔人ともう一人は見た事がない人物ですけど…………あの人物も恐らく結社の執行者なんでしょうね…………」
「ああ。――――――執行者No.0”道化師カンパネルラ”。”リベールの異変”でも現れた”執行者”だ。それにしても療養中であったセドリックがいつの間にか回復していた事には驚いたが、まるで”人形”のように表情がないあの様子…………まさかとは思うが――――――」
「かつてのヨシュア君のように、”暗示”によってオズボーン宰相達に従わされているかもしれんな…………!」
不安そうな表情で呟いたエマの推測に頷いた後表情を厳しくしたオリヴァルト皇子の言葉に続くようにミュラーは怒りの表情を浮かべた。
「どう…………して…………」
一方アリサは愕然とした表情を浮かべて呟いた。
「3日前の夕方に、話したばかりで…………それに、それに――――――そんなのあるわけない!!」
辛そうな表情でシャロンを思い浮かべた後アルベリヒと今は亡き父フランツ・ラインフォルトを思い浮かべて二人を比べたアリサは悲痛そうな表情で声を上げた!
「ア、アリサ…………?どうしたの…………?」
「シャロン殿の件以外にも何か思う所があるようだが…………」
アリサの様子を見たエリオットとラウラは困惑した。
「フフ…………『フランツ・ルーグマン』。G。シュミットの一番弟子にして、RFグループ現会長の亡き夫…………フランツ・ラインフォルトの旧姓であり、今は黒の工房の”長”を名乗っている”黒のアルベリヒ”の肉体の持ち主でもあるわ。」
アリサの様子を憐れみの目で見つめながら説明したクロチルダの説明を聞いたその場にいる全員は血相を変え
「…………なるほど、20年前から動き始めていたというわけか。」
「ええ――――――恐らくは宰相と協力し、この状況を作り出すために。」
重々しい様子を纏って呟いたローゼリアの推測にトマスは頷いて考え込んだ。
「……………………ぁ……………………」
「アリサさん…………」
呆けた様子でいるアリサをエマが心配そうな表情で見つめたその時
「呆けている暇はないわ!”黄昏”がどんなものだろうと士官学院の教官として放置はできない!――――――君達はどうなの!?」
サラがその場にいる全員を一喝してアリサ達に問いかけた。
「ああ…………こんな所で立ち止まってはいられない。」
「…………正にここで動く為にⅦ組が存在しているのかもしれぬ。」
「ん…………そだね。アリサはどうする?」
「…………勿論行くわ!」
マキアスとラウラの言葉に頷いたフィーに話を促されたアリサは決意の表情を浮かべて頷き
「私達も君達に助太刀させてもらう。…………まあ、宰相殿達の戦力を考えると微々たるものだろうけどね。」
「だが、このまま宰相達の計画の成就を黙って見ている訳にはいかん…………!」
「例えどのような劣勢であろうと、我らが何とか其方たちの活路を見出そう…………!」
「微力ながら私とトワもこの場にはいないリィン君とセレーネ君…………そしてミリアム君の分の代わりに助太刀させてもらうよ…………!」
「うん…………!ジョルジュ君の真意を知る為に…………そしてクロウ君の事を知る為にも!」
「オリヴァルト殿下にミュラー少佐、子爵閣下…………」
「それにトワ先輩とアンゼリカ先輩も…………」
「…………とても心強いです。」
オリヴァルト皇子達の加勢の申し出を聞いたガイウスとマキアスが驚いている中、エマは明るい表情を浮かべた。一方トマスと互いの視線を交わして頷いたローゼリアはクロチルダに問いかけた。
「――――――ヴィータ。ヌシはどうするつもりじゃ?」
「そうね…………カンパネルラ達に対する意趣返しの意味でも…………そしてリィン君達の件の責任を取る為にも付き合わせてもらうわ。」
「姉さん…………」
「全く素直じゃないんだから…………」
自分達に協力する事を口にしたクロチルダの意志を知ったエマは嬉しそうな表情をし、セリーヌは苦笑していた。その後アリサ達はカレイジャスに乗り込んだ後”黒キ星杯”へと急行し、”黒キ星杯”近辺に到着するとカレイジャスを滞空させたままローゼリア、クロチルダ、エマ、セリーヌ、そしてトマスが協力した転位術によって”黒キ星杯”の中へと転位し、全員で協力して襲い掛かってくる魔物達を撃退しながら進んで行くと最初の関門としてマクバーンとカンパネルラが立ちふさがっていた!
~黒キ星杯~
「聖獣か…………ちょいとソソりはするんだが。――――――オレの焔が通用がするか、試すのもアリなんじゃねえか?」
「いや、君が入れば儀式は台無しになるから本気でやめてよね。」
遥か下にいる黒き聖獣に視線を向けて呟いたマクバーンにカンパネルラは疲れた表情で指摘し
「へいへい…………まずは前菜を味わうとしようかね。」
カンパネルラの指摘に軽く流した様子で答えたマクバーンはアリサ達に視線を向けた。
「まさか君達まで宰相殿に協力するとはね…………」
「”巨イナル黄昏”というのが何をもたらすのか知っているの!?」
視線を向けられたオリヴァルト皇子は真剣な表情で呟き、サラは厳しい表情で問いかけた。
「フフ、全ては亡き盟主(グランドマスター)の『幻焔計画』を導くためだよ。」
「ゾクゾクするような祭りが始まるみたいだからなぁ。乗らないのも勿体ねぇ話だろ?」
サラの問いかけに答えた二人はそれぞれ戦闘の構えをし、マクバーンは更に”火焔魔人”と化した。するとその時予め打ち合わせていたアルゼイド子爵、ミュラー、クロチルダが前に出た。
「――――――其方たちの相手は我らだ。」
「先はまだまだ長い。こんな所で時間を取られる訳にはいかないのでな。”火焔魔人”とやらは俺と子爵閣下の二人がかりで止めさせてもらう。」
「フフ、私が戒めてきた”禁忌”を破る事を提案した張本人であるカンパネルラには意趣返しの意味も込めて私が直々に相手をしてあげるわ。まあ、手が空いたらそちらの二人の援護もさせてもらうけどね。」
「へぇ……?」
「フフ、こちらの最大戦力に対してそちらの最大戦力を当てて他のメンバーを先に行かせるのは定石だけど…………僕はともかく、”火焔魔人”と化したマクバーン相手にたった二人で抑えられるのかい?ましてや”光の剣匠”の得物はともかく、放蕩皇子の懐刀の得物じゃあ、魔剣(アングバール)に対抗できないと思うんだけど?」
アルゼイド子爵達の言葉を聞いたマクバーンが興味ありげな表情をしている中、カンパネルラは嘲笑しながら問いかけた。
「フッ、得物については心配無用だ。」
カンパネルラの言葉に対して静かな笑みを浮かべたミュラーは自身の得物である碧き魔剣――――――”ウィスタリアス”を構え、ミュラーが構えた魔剣を見たカンパネルラとマクバーンは血相を変えた。
「――――――”ウィスタリアス”。”果てしなき碧”の意味を持つウィル殿――――――”匠王”を始めとした様々な才能ある技術者達の協力によって生まれた凄まじい氷の魔力が秘められた魔剣だ。少なくてもそちらの魔剣とまともに打ち合う事は可能だろう。」
「なんて凄まじい霊力(マナ)…………」
「確かにあの魔剣なら”劫炎”の得物である”外の理”で作られた魔剣ともまともにやり合えるでしょうね。」
「フム…………”匠王”とやらも恐らくシュミットの小僧のような突然変異の類なのであろうな。」
「いや~、そうだったらよかったんですけど、ワジからの報告によりますと”匠王”の娘さん達も、”匠王”程ではないとはいえ、古代遺物(アーティファクト)クラスの武装を作れるとの事ですから、その方達も将来は”匠王”クラスの優れた技術者になるかもしれないんですよね~。」
ミュラーは静かな笑みを浮かべて自身の得物の説明をし、エマはミュラーの魔剣を見て驚き、セリーヌは真剣な表情で分析し、興味ありげな表情をしているローゼリアの推測にトマスは苦笑しながら指摘した。
「ちょっ、そんなのアリかい!?というかその魔剣から感じる霊力(マナ)からして、アングバールと互角…………下手したらそれ以上な気がするんですけど!?」
「クハハ…………!来い、”アングバール”!」
一方カンパネルラは表情を引き攣らせ、マクバーンは好戦的な笑みを浮かべて笑った後異空間から自身の魔剣――――――”アングバール”を取り出して構えた!
「クク、”光の剣匠”にヴァンダールの二人がかりなら、”煌魔城”の時よりは愉しめそうだなぁ…………?」
「――――――たとえそなたの”力”と”剣”が私達を凌駕しようと、振るうのはあくまで”己”の魂と意志―――最後にはそれが全てを決する!」
不敵な笑みを浮かべたマクバーンの言葉に対して静かな表情で答えたアルゼイド子爵は自身の得物である大剣に光の闘気を纏わせて光の翼と化させてマクバーンに突き付けた!
「オリビエ、皆も!ここは俺達に任せて先に進め!」
「先はまだまだ長いわ。今は自分達が最優先すべき事を考えなさい!」
「姉さん…………!」
「無茶をするでないぞ、放蕩娘が…………!」
「3人ともこの場は任せた――――!くれぐれも気を付けてくれ!」
ミュラーとクロチルダの言葉にエマは心配そうな表情で、ローゼリアが真剣な表情で声を上げ、オリヴァルト皇子は激励の言葉を送った後アリサ達と共にマクバーンとカンパネルラを通り過ぎて先を急ぎ始めた。
「そう簡単にはいかせないよ――――――」
それを見たカンパネルラはオリヴァルト皇子達の行動を妨害しようとしたが
「させないわよ!」
クロチルダが発動した魔術によってカンパネルラとマクバーンは足元から現れた茨によって封じ込められた。
「やれやれ…………脱退したとはいえ、さすがは”蛇の使徒”だね。」
「クク、愉しませてもらうぜ――――――!」
クロチルダによって動きが封じられ、オリヴァルト皇子達が先に進むのを見送ったカンパネルラは溜息を吐き、マクバーンは不敵な笑みを浮かべた後それぞれを拘束していた茨を消滅させてアルゼイド子爵達との戦闘を開始した!
マクバーン達の相手をアルゼイド子爵達に任せて先を進み続けたオリヴァルト皇子達だったが、ある程度進むと今度はルトガー、ジークフリード、シャロン、シャーリィが待ち構えていた為、次に足止めするメンバーを決めた後ルトガー達の所に向かい、ルトガー達と対峙した。
「”千の武器を持つ魔人”かぁ。”テスタロッサ”、これの由来になっただけはあるね。」
「厳密に言やぁどっちも”工房製”になるんじゃねえか?ま、いい得物なら由来は何だっていいんだが。」
黒き聖獣の近くに待機し、霊力を集束しているテスタ=ロッサを見て呟いたシャーリィにルトガーが指摘した。
「へ~、話には聞いていたけど、まさか君もいたなんてね~!おっきくなったねぇ、西風の妖精(シルフィード)!」
「――――――久しぶりだな、フィー。」
そしてアリサ達に視線を向けたシャーリィは興味ありげな表情をし、ルトガーは懐かしそうな表情でフィーに話しかけた。
「団長…………”不死者”として甦った事を今まで黙っていた事には言いたい事もあるけど、まさか”血染め”と気が合ってるなんてね。」
「…………まさか宿敵同士の猟兵団が手を組むなんてね。」
フィーはジト目で、サラは真剣な表情でルトガーとシャーリィに話しかけ
「うーん、最初は本気でやり合うつもりだったんだけど。」
「ま、内戦を終わらせたお前さんたち相手に流石に気は抜けねぇからな。それなりのメンツで迎えさせてもらったぜ。」
話しかけられたシャーリィは苦笑し、ルトガーは不敵な笑みを浮かべた。
「…………上等。」
「それなりどころじゃない気がするんだが…………」
「うん…………残りの二人にしたって…………」
「…………そうだね。」
「……………………」
ルトガーの言葉にフィーは表情を引き締め、マキアスとエリオットは不安そうな表情で呟き、二人の言葉にアンゼリカは重々しい様子を纏って頷き、トワは辛そうな表情でジークフリードに視線を向けた。
「シャロン、どうして…………それに…………それに、あの黒衣の人は一体―――――!?」
「―――――お嬢様も察している通りです。かつてわたくしは結社の任務で、お嬢様のお父様を訊ねました。地精の一人として結社の依頼を受け”あるもの”を研究していた彼を。しかし開発結果をめぐって交渉は決裂し、わたくしはフランツ様と対峙しました。そして死闘の果て彼を殺めてしまったのです。しかし爆発事故の現場にはフランツ様の遺体はなく…………わたくしは会長に命を救われ、名前までいただきました。会長は言われました――――――『代償にラインフォルト家で働きなさい。期限はあの人が戻ってくるまででいいわ』。…………本当に生きているとは会長も思ってらっしゃらなかったでしょう。ですが事ここに至り、”契約”は完了しました。」
辛そうな表情で問いかけたアリサの問いかけに対してアリサにも語らなかった自身の過去を語ったシャロンは自身の得物を構え
「シャロンという名と、お嬢様がたとの思い出をお返しし、”死線”に戻らせていただきます。」
「…………シャ、ロン…………」
シャロン――――――執行者No.Ⅸ”告死戦域”のクルーガーはアリサ達との決別を宣言し、クルーガーの宣言を聞いたアリサは愕然とした。
「…………そして君もここで立ち塞がるとはね。クロウ――――――いや、今は”蒼のジークフリード”と呼ぶべきか。」
「アンちゃん…………クロウ君…………」
「クク…………それでいい。どちらかというと数合わせだがせいぜい果たさせてもらおう。」
アンゼリカが真剣な表情でジークフリードを睨んでいる中、トワは辛そうな表情をし、ジークフリードは不敵な笑みを浮かべた後両手に導力銃をそれぞれ構えた。
「一度手放した”生”をゲオルグに拾われ…………虚ろな形だが、アルベリヒに繋いでもらった義理くらいはな。」
「…………やっぱり…………」
「仔細はわからんがそういうカラクリか…………」
ジークフリードの話を聞いたエリオットは複雑そうな表情をし、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。そしてオリヴァルト皇子達を先に進ませる為にルトガー達の相手をするメンバーであるアリサ、フィー、ラウラ、サラ、トマスが前に出てルトガー達と対峙した。
「へぇ?その様子だと妖精や紫電のお姉さんたちがシャーリィ達の相手をして、他のメンツを先に進ませるつもりのようだねぇ?」
「クク、しかも守護騎士(ドミニオン)まで付き合ってくれるとは、先はまだあるってのに、随分と大盤振る舞いだな?」
「いや~、さすがにメンツがメンツですので、私達も相応の戦力で挑まなければなりませんので、守護騎士(ドミニオン)として…………そしてトールズの教官として、”希望”になりうる生徒達の血路は切り開かせてもらいます。」
シャーリィとルトガーの問いかけに対して苦笑しながら答えたトマスは背中に聖痕(スティグマ)を顕させた!
「これがトマス教官の…………」
「守護騎士(ドミニオン)としての真の力――――――”聖痕(スティグマ)”ね。」
トマスの聖痕(スティグマ)を見たエマは驚き、セリーヌは真剣な表情で呟いた。
「さて、始めるとするか。フィー…………せいぜい成長を見せてもらうぞ?」
「妖精と”光の剣匠”の娘もだけど紫電のお姉さんもよろしくね!」
「…………いいよ。拾ってくれて、育ててくれた証、その目で確かめて。」
「”アルゼイド”を継ぐ者として…………フィーの”友”として…………そして”Ⅶ組”の一員として、全身全霊を持ってお相手させてもらう――――――!」
「伝説と現役最強、せいぜい届かせてもらうわ!」
ルトガーとシャーリィの言葉に対して答えたフィーとラウラ、サラは戦意を高め
「死線――――”告死戦域”が由来、とくとご覧あれ。」
「”Ⅶ組”の力、見せてみるがいい。」
「いいわ…………確かめさせてもらう。その上で断言させてもらう――――――貴女がウチのメイドで、家族だって!いつまでも私は子供じゃない!貴女と対等の人間として、家族として、向き合ってもらうわ!クロウ――――――貴方もⅦ組の仲間として、貴方とだって向き合ってもらうわ!」
「守護騎士(ドミニオン)として…………そしてトールズの教官として、お相手させて頂きます!」
シャロンとジークフリードの言葉に対してはアリサとトマスが答えた後フィー達に続くように戦意を高めた。
「クク…………大した啖呵だ。」
「お嬢様…………本当に成長なさいましたね。」
アリサの決意を知ったジークフリードは感心し、シャロンは複雑そうな表情で呟いた。
「――――――殿下、みんなも手筈通りここはあたしたちに任せなさい!」
「すぐに追いつく…………!」
「殿下達は先を急いでください…………!」
「…………わかった、ここは頼む…………!」
「みんな、絶対無理しちゃダメだよ…………!」
「必ずや追いつくがいい!」
「待ってるから…………!」
「武運を祈っているよ…………!」
サラとフィー、ラウラの言葉を聞いたオリヴァルト皇子、トワ、ユーシス、エリオット、アンゼリカはサラ達に声をかけた後ルトガー達を通り過ぎて先へ急ぎ、アリサ達はルトガー達との戦闘を開始した!
ルトガー達の相手をアリサ達に任せて先を進み続けたオリヴァルト皇子達だったが、更にある程度進むと最後の関門である鉄血の子供達(アイアンブリード)――――――クレア少佐とレクター少佐が待ち構えていた為、次に足止めするメンバーを決めた後レクター少佐達の所に向かい、レクター少佐達と対峙した。
「皆さん…………オリヴァルト殿下まで…………」
「…………やっぱ来ちまったのか…………」
オリヴァルト皇子達と対峙したクレア少佐は辛そうな表情をし、レクター少佐は複雑そうな表情で呟いた。
「…………当たり前です。」
「…………そちらこそ、仲間であるはずのミリアムを何らかの儀式に利用しようとし、”黄昏”に手を貸すとは何のつもりだ?」
レクター少佐の言葉に対してマキアスが真剣な表情で答え、ユーシスは厳しい表情で問いかけた。
「正直、言葉もねぇな。」
ユーシスの指摘に対して苦笑したレクター少佐はクレア少佐と共に得物を構えた。
「…………オリヴァルト殿下、Ⅶ組の皆さん…………こんな事になって残念です。そちらに理があるのは百も承知。全力で来てください。」
「ま、アッシュもそうだがミリアムの扱いはさすがにアレだからな。ここを突破できたら何とか救ってやってくれよ。」
クレア少佐は辛そうな表情を浮かべ、レクター少佐は苦笑しながらオリヴァルト皇子達に声をかけた。
「貴方は…………」
レクター少佐の言葉を聞いたガイウスは真剣な表情でレクター少佐を見つめた。
「今よ、エマ――――――」
「Ala ad eum locus(彼らをあの地へ)!」
するとその時オリヴァルト皇子達の背後で魔術の詠唱をしていたセリーヌとエマが魔術を発動するとオリヴァルト皇子、トワ、アンゼリカ、ローゼリアがレクター少佐達を超えてレクター少佐達が守っていた先に進む出入り口に転位した!
「な…………っ!?」
「魔女の”転位”かよ…………!ったく、さすがにそれは反則じゃねぇか!?」
オリヴァルト皇子達が転位した事を見たクレア少佐は驚き、真剣な表情で声を上げたレクター少佐は苦笑しながらユーシス達に指摘し
「フン、”転位”はそちらの専売特許ではないという証拠だ…………!」
「貴方達の相手はオレ達だ…………!」
「オリヴァルト殿下、ローゼリアさん、それに先輩方!この場は僕達に任せて殿下達は先を急いでください!」
「後で必ず追いつきます!」
レクター少佐に対してユーシスは鼻を鳴らして答え、ガイウスは真剣な表情で答えた後仲間達と共に得物を構え、マキアスとエリオットはオリヴァルト皇子達に声をかけ
「…………っ!」
「――――わかった。お言葉に甘えて先行させて貰うよ…………!」
「ヴィータ達と共に必ず追いついてくるのじゃぞ…………!」
「みんな、どうか武運を祈っているよ――――――!」
自分達を先に行かせるユーシス達の決意にトワは思わず息を呑み、アンゼリカ、ローゼリア、オリヴァルト皇子はユーシス達に声をかけた後先に進み、ユーシス達はレクター少佐達との戦闘を開始した――――――
という訳でかなり飛ばしていますが今回の話で閃Ⅲのラストイベント直前まで一気に飛ばしました。そして原作と違い、閃Ⅲラストダンジョンの最奥に辿り着くメンバーはリィンどころか、Ⅶ組メンバーが一人もいないというおかしさに(汗)まあ、リィンはそもそもメンフィル軍の上、新Ⅶ組メンバーが一人もいない事を考えるとこういうおかしな展開になるのも仕方ないかと(ぇ)なお、”黒キ星杯”のBGMは原作通りだと思ってください♪
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第35話